カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2026年4月19日 (日)

海神

Photo_20260419125901

著者:染井為人

 東日本大震災で甚大な被害を受けた天ノ島に、NPO法人代表の遠田政吉が姿を現す。彼は当初こそ島の救世主のように振る舞うが、実際には災害を食い物にし、復興支援金を横領するなど、弱者につけ込む卑劣な人物であった。
 島民たちもはじめは彼を崇めていたものの、あまりに派手な金の使い方に疑念を抱き始める。ただ、東京から長期休学してボランティアに来ている女子大生・姫乃だけは、終始遠田を信じ、尊敬し続けていた。

 染井為人の小説は、いつも冒頭から読者を強く引き込む力がある。しかし本作は震災という重い現実を背景にしているためか、ドキュメンタリーのような質感が漂い、さらに時系列が頻繁に入れ替わる構成が読みにくさを生んでいた。そのうえ、登場人物の誰にも共感しづらく、物語に没入するのが難しかったのも否めない。

 極悪非道な遠田はもちろんだが、ヒロインである姫乃にも終始苛立ちが募った。現代の若者は、一度誰かを信じると、まるで神を崇めるかのように“推し”の感情に支配されてしまうことがあるのかもしれない。
 後半になって多くの人が遠田を批判しても、姫乃が耳を貸さなかったのは、遠田への心酔だけでなく、「信じ続けた自分」を否定することへの恐れもあったのだろう。

 そして結局、彼女は遠田に裏切られ、尊厳を踏みにじられ、命まで危険にさらされることになる。身から出た錆と言ってしまうにはあまりに酷だが、他者の意見を受け入れず、一方的な感情だけで人を判断する姿勢には、どうしても賛同しがたいものがある。二年間の休学とボランティアの末、彼女はいったい何を得たのだろうか。
 もちろん得難い経験もあっただろう。しかし、周囲にかけた迷惑や失ったものの大きさを思うと、複雑な思いが残る。いずれにせよ、これもまた染井作品らしさなのかもしれないが、読後にどこか苦い余韻が残る作品であったことも否めない。


評:蔵研人

 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

2026年4月11日 (土)

信仰

Photo_20260411170901

著者:村田沙耶香

 本書は、タイトル作『信仰』を中心に十一編を収めた短編集である。ただし、『信仰』のみが約五十頁を費やして丁寧に物語を紡いでいるのに対し、他の十編は一編十頁前後の、いわばショートショート的な趣を持つ。私はもともと短編小説を好まないため、『信仰』以外を数編読んだところで、本書を閉じてしまった。

 表題作『信仰』は、コストパフォーマンスを過剰に重視するあまり、カフェのコーヒーにはじまり、ディズニーランドの土産物、エステやネイル、ブランド品に至るまで、「原価に比して高すぎる」と批判し続ける女性を主人公とした物語である。

 当然のように、彼女は友人から「他人の夢や幻想を壊さないで」と反論される。そこで主人公は、自らの性格を改めようと決意し、知人が主宰する奇妙なセラピーに参加する。無駄遣いだと理解しながらも、あえて十万円を支払うという選択は、彼女なりの“信仰”への第一歩なのかもしれない……。

 村田沙耶香は今年四十六歳になるが、その文章から立ち上がる感触は、どこか二十代前半のような瑞々しさを帯びている。小説家としてのデビュー作は、2003年の『授乳』で、第46回群像新人文学賞優秀作に選ばれた。その後、2016年に『コンビニ人間』で第155回芥川賞を受賞している。

 私が彼女の作品に初めて触れたのも『コンビニ人間』であり、その後『消滅世界』、そして本作を読んだ。村田沙耶香の小説には、どこか「異常」「不思議」「荒唐無稽」「非現実」「非常識」「奇妙」といった臭気がまとわりついている。しかし不思議なことに、読み進めるうち、いつのまにかその世界に強く引き込まれてしまう。なぜ彼女の物語は、これほどまでに読者の感覚を揺さぶるのだろうか。

評:蔵研人

 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

2026年3月19日 (木)

「時間」はなぜ存在するのか

Photo_20260319185901

★★★☆
著者:吉田伸夫

 著者は東京大学理学部を卒業し、同大学院博士課程を修了した理学博士である。専門は素粒子論だが、科学哲学や科学史など、学問の境界を越えて幅広い研究を続けている。

 本書は、そもそも時間とは何なのか、私たちが“時間の流れ”を感じるのはなぜなのかといった根源的な疑問に、できる限り平易な言葉で迫ろうとする一冊である。もっとも、学者としての習性ゆえか、ところどころ難解な概念や理論も顔を出す。しかし、『時をかける少女』や『火の鳥 未来編』、『インターステラー』、『スタートレック』といった小説・マンガ・映画の例を巧みに織り交ぜて説明してくれるため、読者が藪の中に置き去りにされることはない。

 さらに著者は、生命の歴史に刻まれた時間、そして宇宙の始まりから終焉に至る壮大な時間のスケールにまで視野を広げ、時間という概念の多層的な姿を描き出す。

 いずれにしても素人の私には、本書を解説したり評価する能力は存在しないので、その目録だけを次に記しておきたい。

はじめに 何もない場所に時間は流れる?

第1章 時間はどこにあるのか
1.硬直したニュートンの時間
2.時間の伸び縮みが重力を生む
3.アインシュタインの時空

第2章 「流れる時間」という錯覚の起源
1.始まりの謎
2.ビッグバンは爆発ではない
3.宇宙は壊れていく

第3章 循環する時間、分岐する時間
1.循環する時間
2.未来はどこまで定まっている?
3.分岐する時間

第4章 いきものの時間、人間の時間
1.物質世界も進化する
2.生命誌から見た時間
3.人間にとって時間とは

第5章 時間の終わり
1.壊れていく宇宙の末路
2.人間と時間

以上である

評:蔵研人

 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

2026年1月10日 (土)

ふたつの星とタイムマシン

Photo_20260110115001

★★★☆
著:畑野 智美


 本書は「小説すばる」に掲載された5作品に、書き下ろし2作を加えた短編集である。また表題作『ふたつの星とタイムマシン』という短編は見当たらないものの、タイムマシンを題材とした書き下ろし作として『過去ミライ』がその役割を静かに引き継いでいる。

 収録されている7つの短編を、簡単に紹介しておきたい。

1.過去ミライ
 大学教授が研究するタイムマシンに乗り、過去の自分へ「ある男性に告白するよう」仕向ける女性の物語。

2.熱いイシ
 「好き」か「嫌い」かを見分ける不思議な石をめぐるエピソード。

3.自由ジカン
 時間を自在に操る力を持つ少女を描いた、ささやかな成長譚。

4.瞬間イドウ
 テレポーテーション能力を使い、気軽に海外旅行へ飛び回るOLの日常。

5.友達バッジ
 服につけるだけで、いじめっ子とも自然と打ち解けてしまうバッジをめぐる物語。

6.恋人ロボット
 至れり尽くせりの恋人ロボットの発明によって、「人間の恋人」の存在意義が揺らぐ世界を描いた一篇。

7.惚れグスリ
 その名のとおり、媚薬をめぐる小さな騒動を描いている。

 いずれの作品も、近未来に芽生えるときめきや友情をやわらかく照らし出し、読後にほのかな温もりを残してくれる。そんな、優しい光を帯びたSF短編集である。


評:蔵研人

 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

2025年12月 8日 (月)

シネマコンプレックス

Photo_20251208102301

著者:畑野智美

 本作はクリスマス・イブのシネコンを舞台に、その内部を支えるさまざまな部署の視点から出来事を描いた連作短編集である。

 フロアはチケットのもぎりや館内案内・清掃
 コンセッションはポップコーンやドリンクの販売
 ボックスはチケット売り場
 ストアはグッズ販売
 オフィスは事務作業を担う
 そして新人がまず配属されるフロアでは、チラシの補充やポスター交換、トイレチェックなど、こまかな雑務が絶えない。
 さらにプロジェクションでは映写技師が映像の質を守っている。

 こうした仕事の内容を、裏側の事情も含めて丁寧に描いているため、読んでいるうちに自然と映画館にまつわる蘊蓄が身につき、映画通になったような気分を味わえる。

 また、シネコンでは大半がアルバイトスタッフで構成され、正規社員を含めて百名ほどが勤務しているという実態にも驚かされた。だが、年中無休で長時間営業という現実を思えば、それも必然なのだろう。
 さらには、近年のシネコン拡大による小規模劇場の衰退、フィルム上映の減少から映写技師が姿を消しつつある現状にも触れられており、作品世界を越えた余韻を残す。

 前半はやや情報量が多く、どこかカタログ的な印象も受けた。ところが終盤になると、周囲から敬遠されていた副支配人の思いがけない優しさが明らかになり、長くアルバイトを続けてきた男女二人をめぐる静かな恋物語が温かな灯をともす。
 そしてそれらの結びつきが見事に絡み合い、読み終えたときには、まるで劇場の照明がそっと上がるような心地よい余韻が残った。


評:蔵研人

 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

2025年11月30日 (日)

滅茶苦茶

Photo_20251130103101

著者:染井為人

 まさにタイトル通り、滅茶苦茶な構成と展開が印象的な一作である。

 物語の主人公は三人————マッチングアプリでロマンス詐欺に騙されるキャリアウーマンの今井美世子、不良と遊ぶようになる高校二年生の二宮礼央、そしてラブホテルの経営不振に悩む中年男・戸村茂一。それぞれがまったく接点のない生活を送っており、彼らの物語は平行に語られていく。つまり、三つの異なる視点によるパラレルストーリーの形式を取っているのだ。

 ただし、三人には共通点がある。いずれも真面目な人物であるにもかかわらず、ある日を境に人生の歯車が狂い始め、もがきながら深みへと沈んでいく————。その過程はまるで、負けが込んだ博打に熱を上げて際限なく金を注ぎ込むかのようで、読んでいて次第に焦燥感が募ってくる。とはいえ、現実社会にもこのようにして身動きが取れなくなってしまう人々は少なくないのだろう。

 まったく無関係に思えた三人のストーリーだったが、なんと終盤で突然交差するのだ。しかも、肝心な時に誰一人としてスマートフォンを所持していないという不自然さを抱えながら、物語はさらなる混沌へと突入する。やがて展開はドタバタ劇の様相を呈し、漫画さながらの追走劇が繰り広げられる。そして、読者の期待をあざ笑うかのように、結末は尻切れトンボのまま幕を引いてしまうのだ。

 面白いことだけは保証するが、初めから終わりまで、まさに「滅茶苦茶」————それ以外にこの作品を形容する言葉は見つからない。

評:蔵研人

 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

2025年11月24日 (月)

歌舞伎町ララバイ

Photo_20251124103401

★★★
著者:染井為人

 とにかく凄まじい小説である。だが同時に、ある意味で読後に強い不快感を残す作品でもある。ぼったくりバー、ホスト、キャバクラ、ヤクザ、家出少女——。もし歌舞伎町の実態が本書の描く通りであるなら、それはまさに現代の地獄絵図と呼ぶべきだろう。
 著者・染井為人が、かつて芸能マネージャーであったという経歴を持つことも興味深い。彼はいったいどのような経路で、この街の闇に肉薄したのか。想像するだけで背筋が寒くなる。

 物語の主人公は、わずか十五年の生を経て「完璧な絶望」を味わった少女・七瀬である。中学卒業と同時に家を飛び出し、たどり着いたのが歌舞伎町だった。彼女にとってその街は、唯一心が安らぐ“居場所”であった。
 トー横広場で仲間と語り合い、危険なバイトに手を染め、そして闇社会の住人や家出少女を食い物にする大人たちと関わっていく——。

 本作は二部構成をとる。第一部では、七瀬が堕ちてゆく過程とともに、歌舞伎町という都市の暗黒がこれでもかと描き出される。そして、やり過ぎた彼女がヤクザによって生き埋めにされる場面で幕を閉じる。
 第二部では、奇跡的に生還した七瀬が壮絶な復讐劇を繰り広げる。まるでタランティーノ監督の『キル・ビル』を彷彿とさせる、血と報復のカーニバルだ。

 全体として、作品は強い吸引力を持つ。前半の「闇の街・歌舞伎町」の描写は吐き気を催すほど生々しく、後半の復讐劇は悪人たちを次々と斬り伏せていく痛快さに満ちている。
 だが、総理大臣暗殺にまで及ぶ復讐のスケールは現実味を欠き、やや漫画的な誇張に終始した点が惜しい。それでも、ホストを葬る場面には必殺仕置人のような陰惨なカタルシスがあり、思わず溜飲が下がる思いだった。

評:蔵研人

 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

2025年11月14日 (金)

時帰りの神様

Photo_20251114120501

★★★
著者:成田 名璃子

 北鎌倉の静かな一角に佇む、一条神社。参拝客もまばらなこの神社を切り盛りするのは、イケメン神主・若宮雅臣と、美しい妹巫女・汀子の兄妹である。一見なんの変哲もない、時代に取り残されたような古びた神社。だが、ここにはある特別な力が秘められている——それは「過去へ時帰り(タイムリープ)できる」という不思議な力である。

 本書は、雑誌に掲載された短編5話を収めた作品集であり、川口俊和の『コーヒーが冷めないうちに』の“喫茶店”を“神社”に置き換えたような構成とも言えるだろう。どの物語も、過去に戻り、やり直したい瞬間と向き合う人々の心の旅を描いている。

各話のあらすじ:

第1話『この胸キュンは誰のもの』
 女子高生の頃、思い切ってイケメンのクラスメートに告白したものの、その後悔を抱え続ける20代半ばの女性が、もう一度“あの日”の自分と向き合う物語。

第2話『想い出の苦いヴェール』
 管理職としての重責に疲弊し、平社員時代の自由を懐かしむ中年男性が、自らの初心と再会する物語。

第3話『高くついた買い言葉』
 初めての子育てに追い詰められ、夫との些細な言い争いを悔やむ女性。母となった自分の弱さと向き合いながら、夫婦の絆を見つめ直す女性の話。

第4話『永遠の縁日』
 転校が決まった親友と最後に夏祭りへ行けなかった——そんな後悔を胸に秘めた小学生が、子どもながらに友情の重みを知る一篇。

第5話『だいすき』
 事故で幼い娘を失った夫婦が、彼女と過ごした最後の日へと時帰りする。子どもを育てたことのある読者なら、きっと涙を禁じ得ないだろう。

 著者がライトノベル出身ということもあり、どの物語も重すぎず、暗さや陰惨さを極力避けた、優しく穏やかな語り口で貫かれている。心温まる雰囲気に包まれながら読み進められるのは、本作の大きな魅力の一つだろう。

 ただ、物語がすべて「過去の後悔を癒す」という同じ構図の繰り返しであるためか、読み終えた後にはやや物足りなさを感じたのも事実である。またもう一歩踏み込んだ心理描写や、想定外の展開があれば、より深みが増したのではないかとも思う。とはいえ、人生の機微にそっと寄り添うような、静かで優しい短編集として、多くの人の心に小さな余韻を残すことだろう。

評:蔵研人
 

 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

2025年11月 7日 (金)

黒い糸

Photo_20251107195401

著者:染井為人

 怖い、怖い、とにかく怖い。久々に心の奥をざらりと撫でられるような恐怖小説に出会った。
 ただし、最初から恐ろしいわけではない。どこか不気味な、子どものいたずらのような違和感から始まり、じわじわと日常が侵食されていく。そして気づけば、終盤には震えるほどのホラーへと成長しているのだ。

 主人公の平山亜紀は、39歳のシングルマザー。結婚相談所で勧誘員として働き、小学6年生の息子・小太郎と二人暮らし。物語は、小太郎の同級生の女子が行方不明になるという事件をきっかけに動き始める。それを皮切りに、次々とクラスに関連した不可解な出来事が起こっていく。

 さらに、亜紀がストーカー気質のある顧客とトラブルを起こした後、無言電話やゴキブリの死骸といった執拗な嫌がらせが日常を襲う。ページをめくる手が止まらないほど、常に緊張感が張りつめており、読者の精神すら巻き込んでいく筆致は見事というほかない。

 気づけば、夜更けに灯りを消すこともためらわれるようになり、あっという間に読み終えてしまった。

 物語のもう一人の軸として登場するのが、小太郎の担任教師・長谷川祐介だ。彼もまた事件に深入りし、やがて「巻き込まれる側」へと転じていく。その姿が、読者自身と重なって見える瞬間すらある。

 終盤に至るまで真相はベールに包まれ、犯人の気配すら掴めない。だがラスト直前、まるで堰を切ったように怒涛の展開が押し寄せ、真実が明らかにされる————その急転直下ぶりには、やや狐につままれたような感覚も残った。

 そして、最後にただ一人「生き残ったある少女」の存在が、不気味な余韻を物語に残して終わる。恐怖の正体が明かされたあともなお、読み手の心に黒い糸が絡みつく。そんなほろ苦い後味を持つ一冊であった。

評:蔵研人

 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

2025年11月 1日 (土)

芸能界

Photo_20251101134801

著者:染井為人

 本書は、芸能界を舞台に描かれた七編からなる短編集である。ふだん短編集には途中で気持ちが途切れてしまいがちなのだが、染井為人の筆力はさすがと言うべきか、気づけば一気に全作を読み終えていた。

 これら七つの物語はすべて芸能界という共通の舞台を持ちながら、それぞれが独立した構造を持ち、異なる角度からこの世界の光と影を描き出している。その展開の巧みさと、多彩な視点が実に魅力的だった。

 『クランクアップ』『ファン』『いいね』『終幕』『相方』『ほんの気の迷い』『娘は女優』の七作は、いずれも2019年から2023年にかけて「小説宝石」に掲載された作品であり、全体としては、染井作品の中では比較的軽やかな語り口が特徴的である。

 とはいえ、SNSの「いいね」に執着するかつてのアイドルを描いた『いいね』、芸能プロダクションの女社長が見せる老いらくの恋を綴った『終幕』など、作者特有の“病的な執着”がにじむ作品もあり、その狂気じみた感情の描写に引き込まれてしまった。

 全体的に陰影の濃い話が多い中で、最終話『娘は女優』だけは例外的に、さまざまな人々の愛情が交錯し、未来への希望を感じさせる温かい物語となっていた。この一点において、染井為人には珍しい、柔らかな光が差す一編と言えるだろう。

評:蔵研人

 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

より以前の記事一覧