海神
著者:染井為人
東日本大震災で甚大な被害を受けた天ノ島に、NPO法人代表の遠田政吉が姿を現す。彼は当初こそ島の救世主のように振る舞うが、実際には災害を食い物にし、復興支援金を横領するなど、弱者につけ込む卑劣な人物であった。
島民たちもはじめは彼を崇めていたものの、あまりに派手な金の使い方に疑念を抱き始める。ただ、東京から長期休学してボランティアに来ている女子大生・姫乃だけは、終始遠田を信じ、尊敬し続けていた。
染井為人の小説は、いつも冒頭から読者を強く引き込む力がある。しかし本作は震災という重い現実を背景にしているためか、ドキュメンタリーのような質感が漂い、さらに時系列が頻繁に入れ替わる構成が読みにくさを生んでいた。そのうえ、登場人物の誰にも共感しづらく、物語に没入するのが難しかったのも否めない。
極悪非道な遠田はもちろんだが、ヒロインである姫乃にも終始苛立ちが募った。現代の若者は、一度誰かを信じると、まるで神を崇めるかのように“推し”の感情に支配されてしまうことがあるのかもしれない。
後半になって多くの人が遠田を批判しても、姫乃が耳を貸さなかったのは、遠田への心酔だけでなく、「信じ続けた自分」を否定することへの恐れもあったのだろう。
そして結局、彼女は遠田に裏切られ、尊厳を踏みにじられ、命まで危険にさらされることになる。身から出た錆と言ってしまうにはあまりに酷だが、他者の意見を受け入れず、一方的な感情だけで人を判断する姿勢には、どうしても賛同しがたいものがある。二年間の休学とボランティアの末、彼女はいったい何を得たのだろうか。
もちろん得難い経験もあっただろう。しかし、周囲にかけた迷惑や失ったものの大きさを思うと、複雑な思いが残る。いずれにせよ、これもまた染井作品らしさなのかもしれないが、読後にどこか苦い余韻が残る作品であったことも否めない。
評:蔵研人
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