カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2021年9月10日 (金)

著者:佐藤正午

 アルファベットの「Y」というタイトルの意味は、人生の分岐点と考えて欲しい。つまりあの日あのとき、もし別の選択をしていたら、現状とは全く異なる人生を歩んだかもしれない、ということで言葉を変えれば「パラレルワールドの世界」ということになる。

 1980年9月6日、井の頭線・渋谷駅のプラットホームで、ある青年がかねてより想いを募らせていた女性を見かけて、同じ車両に乗り込むところからはじまる。そして彼は車内で彼女に声をかけることに成功し、二人して下北沢で降りることになる。だが手違いが重なって、ドアが閉まる直前に、一度ホームに降りた彼女が再び車内に戻ることになってしまう。この電車はそのまま発車し、そして運悪く次の駅の手前で凄惨な事故に遭遇してしまうのである。

 それから18年後の8月に、主人公の秋間文夫は自宅で不審な電話を受ける。声の主は北川健と名乗り秋間の高校時代の親友だと言うのだが、秋間には全く心当たりがなかった。戸惑う秋間だったが、北川の必死な願いを受けて、彼の代理人と名乗る女性から、1枚のフロッピーディスクと巨額の預金通帳を受け取ることになってしまう。そして18年前に井の頭線で起こった大惨事の顛末を知ることになる。

 というような荒唐無稽でミステリアスな時間SFである。そして秋間文夫の現状の生活と、フロッピーディスクに記載されている北川健の過去の話が並行して語られてゆく。なんとこの創作手法もまた、ある意味でパラレルワールドなのであろうか・・・。

 本作は作中でも言及されているとおり、18歳から43歳までの25年間を何度も生き直す男の話を描いた、ケン・グリムウッドの『リプレイ』が下敷きになっている。さらに北村薫の『リセット』、筒井康隆の『時をかける少女』、さらに映画『恋はデジャヴ』などを参考にしているようだ。

 いずれにせよ「あの日あの時、ああすれば良かった」「あの時に戻ってやり直しをしたい」という人間の永遠のテーマを描いたストーリーはかなり魅力的だ。もし私自身が現在の記憶を持ったまま過去の自分に戻れるとしたら、小学生になりたての頃に戻りたい。そして沢山の失敗を正してみたいのである。そしてその結果と現在の自分とを比較してみたいのである。もしかすると失敗ばかりの現在の自分のほうが、幸せなのかもしれないことを確認するために・・・。

評:蔵研人

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2021年7月 6日 (火)

不思議の扉 時をかける恋

★★★★
編者:大森望

 翻訳家・書評家でとくにSFに造詣の深い大森望氏が選んだ「タイムトラベルロマンス」の短編小説6編が収録されている。その中身を並べると次のようになる。

「美亜へ贈る真珠」著者:梶尾真治
 タイムトラベルロマンスの達人である"カジシン"さんの処女作にしてかつ名作と言って良い作品。航時機という名のタイムマシン、その装置の中と外では時間の流れが異なっている。航時機に乘り込んだ男性を、外から見守るしかない女性のいじらしさと切なさを描いたポエムのような小品だ。

「エアハート嬢の到着」著者:恩田陸
 長編小説『ライオンハート』の中の一節である。時代を超えて何度も出会う恋人同士の話で、ロバート・ネイサンの名作『ジェニーの肖像』の本家取りである。

「Calling You」著者:乙一
 一時間時間のずれた「こころの電話」で知り合う男女の悲しく切ないラブストーリー。『きみにしか聞こえない』といういうタイトルで映画化されている。

「眠り姫」著者:貴子潤一郎
 授業中に居眠りばかりしていた少女が、どんどん睡眠時間が長くなり目覚めるのに数年間もかかるようになるという話。手塚治虫の短編『ガラスの脳』も同じような話だが、本作のほうが後に書かれているので、手塚作品を参考にしたのかもしれない。
 
「浦島さん」著者:太宰治
 太宰の小説なのでSFというよりは、昔話を皮肉とイヤミでくるんだ作品なのだろうか。竜宮との時間差、そして乙姫へのあこがれということで、実験的に本書に掲載したのかもしれない。

「机の中のラブレター」著者:ジャク・フィニイ
 『ゲイルズバーグの春を愛す』の中に納められていた『愛の手紙』福島正実訳を、大森望の新訳にしてタイトルを変更したものである。古い机の引き出しを介して文通をする話で、韓国映画『イルマーレ』が影響を受けているようだ。さていつもながらだが、ジャク・フィニイの作品は、古き良き時代の風景描写が巧みだよね。

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2021年6月25日 (金)

不思議の扉 時間がいっぱい

★★★☆
編者:大森望

 翻訳家・書評家でとくにSFに造詣の深い大森望氏が選んだ「時間テーマ」ものの短編小説7編が収録されている。その中身を並べると次のようになる。

「しゃっくり」著者:筒井康隆
 時間が何度も繰り返すお話なのだが、一人だけではなく全員の記憶が残っているところがユニークである。ただ1966年に発表されたものなので、やや陳腐化してしまった感が否めない。

「戦国バレンタインデー」著者:大槻ケンヂ
 ゴスロリ少女が戦国時代にタイムスリップし、そこで同年代のお姫様と意気投合という軽くてポップなお話である。

「おもひで女」著者:牧野修
 幼い頃の記憶の中に恐ろしい女が立っている。その女は時間の中を少しずつ現在に向かって近づいてくる。といった恐ろしい記憶ホラーの傑作であり、本書の中では一番面白かった。

「エンドレスエイト」著者:谷川流
 本書の中では一番長く、他の短編の2倍以上あるのだが、正直一番退屈であった。内容はタイトルの如く夏休みの8月17日から31日までを1万回以上繰り返す話なのだが、読者にはその感覚が全く伝わらず著者だけの独りよがりな感がある。

「時の渦」著者:星新一
 時間が過去に向かって空転しながら、人間だけを回収するという摩訶不思議なお話。初出は1966年だが、全く古くささを感じない。さすがショートショートの名手である。

「めもあある美術館」著者:大井三重子
 摩訶不思議な美術館での出来事を綴った児童文学の名作。

「ベンジャミン・バトン」著者:フィツジェラルド
 産まれたときは老人で、だんだん若くなり最後は赤ちゃんから無にというベンジャミン・バトンの生涯を駆け足で描いた小説。どちらかと言えば、ブラッド・ピット主演の映画のほうが印象的である。

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2021年6月16日 (水)

誰も書けなかった死後の世界地図

著者:A・ファーニス
翻訳:岩大路邦夫 編者:山口美佐子

 本書は死亡したイタリア貴族フランチェッツォが、死後の世界を現世に伝えようと、A・ファーニスという霊媒に詳しく語った話を基に構成されている。そしてその内容をまとめると次のようになる。

1章 死の「扉」の向こうに何が見える?
 --“死後の世界”に関するソボクな疑問

2章 死んだらあなたはどこへ行く?
 --「死後の世界」の歩きかた

3章 ここまでわかった! 霊界の「しくみ」
 --学校、仕事、人間関係、宗教

4章 フランチェッツォが旅した「地獄」
 --地獄にも“希望の光”は差している

5章 “天国”へ到る道
 --フランチェッツォが教えてくれた「幸福な生きかた」

 そして死後の世界は単純に天国と地獄だけではなく、少なくとも15以上の世界に区分されているという。また死者がどの世界に行くかは生前の自分自身の行動などによって自動的に決められてしまうようだ。さらにそれぞれの世界の風景や暮らし方も、全て自分自身の心が創っているものだというのである。
 なお本作は三部作の1作目であり、以下「地上生活編」と「完結編」が続くのだが、死後世界の概略を知りたいのなら、本書だけで十分かもしれない。

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2021年6月12日 (土)

昨日は彼女も恋してた

★★☆
著者:入間人間

 本作には続編があるのだが、続編のタイトル名が『明日も彼女は恋をする』なので、間違ってそちらから読んでしまう人もいるらしい。確かに私自身も危うく間違うところであり、また連作と分かってもどちらが上巻なのか迷ってしまった。
 これを区分するには目次を開いて第1章から始まるのが上巻で、第6章から始まるのが下巻と見分けるしかない。だがそれだと書店で手に取って買わねば分からないではないか。最近の傾向では、ネットで本を買う人が増えているのだから不親切としか言い様がない。読者側に立てば余り気取ったタイトルに拘らないで、素直に同じタイトルにして上巻・下巻と表記して欲しいものである。

 いずれにせよ、本作は著者が明かしている通り、あの名作映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のパロディー小説であり、ドクに該当するのが松平博士で、タイムマシン・デロリアンに相当するのが、オンボロ軽トラという笑える構成になっている。
 ニアのことが大嫌いなマチだが、9年前のあの出来事によってマチが障害者になるまでは大の仲良しだったはず・・・。そしてその9年前に2人でタイムトラベルし、その原因を取り除こうとするお話である。

 上巻ではその原因が一体何だったのか、そしてそれはなぜ起きたかの説明は一切ない。だが何となく取り除いた雰囲気だけを残して、また現代に戻るのだが、大変な事態を巻き起こしているではないか。それでいやでも応でも下巻を買うハメになるのだ。
 それにしても一人称がニアとマチにコロコロ変わり過ぎるので読みづらいことこのうえない。さらにテンポが悪くてクドいので、なかなか先に進まない。もっとテンポが良ければ上下巻に分割する必要もなく、一冊にまとめられたはずである。

 そして下巻になっても、最後までマチが障害者になった原因が分からないのだ。まあ裏袋が代わりに障害者になった経緯が、たぶんマチが障害を負った原因なのだろうと想像するしかない。どうしてそんなにもったいぶるのか理解出来ない。
 さらに下巻ではストーリーが現実離れしてきて、かなり意味不明な展開になってしまう。またそれにとどまらず、ストーリー自体が全く面白くないのだ。かなり期待して本書を手にしただけに、非常に残念な気持ちで一杯である。

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2021年3月10日 (水)

時空棋士

著者:新井政彦

 奨励会三段の棋士中島遼平が、時空を超えて幕末にタイムスリップしてしまう。彼は茶屋で仕事をしながらも、将棋の真剣師と対戦して連戦連勝を続け、とうとう伝説の棋士・天野宗歩の若かりし時代の天野留次郎と対局することになる。というなんとなく想像できそうなタイムスリップストーリーであるが、そのテーマが将棋だというところが斬新なのである。

 江戸の町並みや風俗に関しては、かなり丁寧に調査した跡がみられ、読みやすいし、きよとの淡い恋もなかなか楽しめる。ただ棋譜とその解説の部分が異常に長く、将棋を知らない読者は完全に置いてけぼり状態。将棋を良く知っている私も、最初のうちは棋譜とその解説部分を丁寧に読んでいたものの、だんだん面倒臭くなり棋譜部分はカットして読むようになってしまったくらいだ。
 
 この棋譜部分が特徴と言えばそれまでだが、本作は将棋本では無いのだから、棋譜部分はもっと簡略化したほうが良かったのでは無いだろうか。そのあたりの考え方は過去に大ヒットしたマンガの『ヒカルの碁』を参考にされたい。
 またすぐ天野宗歩を登場させるのではなく、もう少しストーリーに幅を持たせた方が良かったのではないだろうか。さらにラストにどんでん返しや、過去との繋がりを示唆するような何かを用意しなかったのも味気なかったね。

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2021年2月20日 (土)

プリズム

著者:貫井徳郎

 小学校の女性教師殺人事件がテーマになっているミステリーである。殺害されたのは美貌の新人教師山浦美津子で、凶器は彼女の家にあったアンティーク時計。従ってこの時計が落下した不運な事故とも考えられるが、窓がガラス切りで外されたうえ、睡眠薬入りのチョコレートが発見されてしまい、他殺の線が濃くなってきたのである。

 本作は1.虚飾の仮面 2.仮面の裏側 3.裏側の感情 4.感情の虚飾 の4部構成となっており、第一部は被害者の教え子である小宮山真司ほか4名の小学生が探偵役を務め、被害者の同僚で恋敵の桜井先生が犯人だと結論付ける。
 ところが第2部では、その桜井先生が探偵役となり、犯人捜しをするのである。なんだ彼女は犯人ではなかったのか。そして何人かの怪しい人物が浮かび上がるが、結局は元恋人で医師の井筒が犯人と断定する。

 第3部に突入するが、井筒は犯人ではなく、今度は井筒が新犯人捜しの探偵役となる。そしてやっとたどり着いたのが、冒頭で探偵役をこなした小宮山真司の父親で、被害者の不倫相手だった。やっとこれで決着し、第1部に結局ループしてゆくのかな…。
 と思いきや、第4部ではその小宮山が探偵役となって、またまた犯人捜しをはじめるのだ。それでは一体誰が犯人なのだろうか。そして小宮山が行き着いた結論は、余りにも恐ろしい結論であった…。

 だが結局のところ犯人は想像だけの存在であり、含みを残しながらも曖昧なまま終劇となってしまう。どうもこれらのストーリー形式は、英国のミステリー作家アントニイ・バークリーが1929年に著した『毒入りチョコレート事件』を参考にしたようだ。
 結局本作は犯人捜しのミステリーを装いながら、被害者山浦美津子の多面性をじっくりと描くことが主眼だったのだろうか。彼女は生徒たちの視点からは、はつらつとして子供たちの立場で考えてくれる信頼できる存在だが、恋敵の同僚の視点は自由奔放で身勝手な女に映っている。
 また元恋人にとっては、女王様のような我儘な存在なのだが、忘れられない魅力的な存在でもあった。ところが年長の不倫相手には、孤独な女性に映ったようである。

 その不倫相手の小宮山から見た美津子については、次のような記述がある。
 美津子は私が思っているような女性ではなかった。堅すぎず、かといって軽薄にはならず、適度に抑制があり、適度に奔放だった。
 美津子のお喋りは、手綱を解き放たれた駿馬のようにあちこちに飛んだ。音楽や絵画鑑賞など趣味の話かと思えば、若い女性らしくファッションや食事の話になる。そしてそこから派生していきなり哲学を論じたかと思えば、なぜか医学用語にも精通していたりする。私にとってそれは、目まぐるしく姿を変える万華鏡か、あるいは様々な光を乱舞させるプリズムのようだった。話をすればするほど、私の目に彼女は謎めいて映じた。

 これでタイトルの『プリズム』の意味が理解できたはずである。とにかくこうした異色作品も読めるのだから、ミステリーの奥深さをつくづく感じてしまった。

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2021年2月14日 (日)

こどもしょくどう

著者:ひろはたえりこ

 映画『こどもしょくどう』の完全ノベライズである。
 車の中で寝泊まりし、行方不明の親を待ち続ける少女姉妹たち。そんな二人に、おずおずと手を差し伸べる少年。豊かに見える日本社会のひずみを受け、満足に食事をとることのできない子どもたちもいるのである。

 大きな文字でかつ138頁の児童向け書籍なので、遅読の私でも1時間足らずで読破してしまった。映画のほうは観ていないが、近いうちに是非レンタルしてみたい。

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2021年2月 7日 (日)

飛ぶ夢をしばらく見ない

著者:山田太一

 奇妙なタイトルだが、「空を飛ぶ夢」というのは、青春真っ最中と言うことで、男女二人で飛ぶ場合は恋愛かつセックスの比喩だというらしい。ということで、本書の中身もエロチックで奇妙な展開が続くのだろう。

 田浦が初めて病院で逢ったときの睦子は67歳の老女だったのだが、なんと退院後は逢うたびに若返ってゆく。2度目に逢ったときは40代の女盛り、3度目は20代半ばの美女、4度目は悪戯っぽい18歳位の少女、そして最後は5歳の幼女として田浦の前に現れるのである。
 まさに女性版『ベンジャミンバトン』なのだが、本作の方が先に発表されているのでパクリではない。ただ『ベンジャミンバトン』の下敷きになったのが、1922年に書かれたF・スコット・フィッツジェラルドによる短編小説なので、そちらを参考にしたかどうかは著者に聞かないと分からない。

 36年前の作品なのだが、全く色褪せていない。本作の主人公田浦修司は、建設会社の営業部次長で妻子のある働き盛りの男性である。ただどうした弾みで精神を病んだのかは説明されていないが、寿司屋の二階から飛び降りて骨折して入院する。そしてそこで自殺未遂で骨折した睦子という謎の女と遭遇するのであるが、エロチックでかつ謎めいた序段はなかなか秀逸であった。

 本作は時間を逆行して生きる女性がヒロインなので、ある種のタイムトラベルファンタジーとも考えられるのだが、かなりきわどい性描写が多いのでエロ小説の趣も備えている。またある意味で、異常世界と精神異常と狂気の漂う純文学と言えなくもないし、当時50歳だった著者の「初老人の恋愛願望」かもしれない。
 いずれにせよ、最初から最後まで目の離せない興味深い小説であることは間違いないだろう。ただ拳銃を携えて映画館で強盗事件を起こす下りは、全く必然性もなく馴染めなかった。またラストも予想の範囲内で、特に目を見張る展開がなかったのも味気なかったね。
 さて余談であるが、本作は1990年に細川俊之、石田えり主演で映画化されているようなので、機会があればそちらも鑑賞してみたいものである。

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2021年1月31日 (日)

1日10分のしあわせ

 NHK国際放送が選んだ日本の名作シリーズで、いくつかの短編をまとめた文庫本である。いまのところ本作のほかに『1日10分のごほうび』と『1日10分のぜいたく』の三冊が出版されていて、シリーズ累計で25万部を突破しているという。
 本書はわずか167頁の薄い本の中に、10作の短編が詰め込まれているため、1作平均約17頁という超短編集であり、まさに1日1作読めば10分程度で読み切ってしまうだろう。作者は8名で以下のような構成になっている。

 朝井リョウ 『清水課長の二重線』
 石田衣良  『旅する本』
 小川洋子  『愛されすぎた白鳥』
 角田光代  『鍋セット』
 坂木司   『迷子』、『物件案内』
 重松清   『バスに乗って』
 東直子   『マッサージ』、『日記』
 宮下奈都  『アンデスの声』

 全て駄作はなく、皆しっかりと読書を楽しむことはできたが、その中でも特に味わい深かった作品は以下の通りである。もちろん私自身の独断であり趣味の問題なので、決して他の作品がつまらないというわけではないので念のため。

 『鍋セット』、『迷子』、『バスに乗って』、『マッサージ』、『アンデスの声』で、いずれも家族愛がいろいろな角度から描かれており、読了後には、じんわりとしたような感動に包まれてしまった。

評:蔵研人

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