カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2017年8月 4日 (金)

クイックセーブ&ロード

著者:鮎川 歩

 普通の人間なら、人生は一回限りでやり直しがきかないのだが、本作の主人公は何度でもやり直しができる能力を持っている。つまり死んでも再生可能ということなのだが、事前にセーブしておくことが必要となる。そうすることにより死後に再生する時間と空間が、セーブした時点からのやり直しで済むことになるのだ。

 セーブそのものはただ頭の中で念じるだけなので、脳に針を突き刺すような感覚が一瞬走るだけなのだが、死ぬときの痛みと恐怖感は半端ではない。それでも主人公は何度も何度も自殺を繰り返して再生しているのである。その感性は余り理解できないし、主人公の暗くてドジではっきりしない性格も好きになれない。

 ただ唯一の協力者である「超能力研究会」の常盤夢乃先輩のキャラだけは、なかなか好感が持てるし、染谷の漫画チックなイラストもなかなか良い味を漂わせている。

 ストーリーは、幼馴染の女の子を救うために、主人公が何度も自殺と再生を繰り返して別の結果を導こうとするのだが、ドジで非力で弱虫のためなかなか思うような結末にならない、といったループものにはよくある展開なのだ。そして終盤になって致命的なミスを犯してしまうのだが、それが通常のゲームと違い平行セーブできないという弱点であった。

 いずれにせよ新鮮さやストーリーの緻密さにはやや欠けるものの、読み易さという面ではかなり評価できるかもしれない。なにせ超・遅読症の私でも、350ページ近い本作を、僅か3日間で読了してしまったのだから…。

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2017年6月 6日 (火)

著者:小山田浩子

 本作『穴』は第150回芥川龍之介賞を受賞している。最近の芥川賞は有名人や若い女性の受賞が多く、内容的にも分かりづらく読みにくい作品が多かった。そんな中で本作は、久々に分かりづらいが読みやすい作品であった。
 話のあらすじは、主人公が夫の転勤で、田舎にある夫の実家隣に引っ越してきたところからはじまる。
 とある日、姑に頼まれてコンビニに支払いに行く途中で、不思議な黒い獣と遭遇し、河原のほうへそれを追いかけるうちに、胸の高さくらいある穴にすっぽりと落ちてしまう。

 この黒い獣も謎めいているのだが、姑が連絡してきた支払金額がだいぶ違っていたり、突然聞いたこともない義兄が登場したりと、かなり不条理な雰囲気が漂いはじめる。ところが主人公は、それほど奇妙には感じていないようだし、悩むでなし夫や姑に相談するではなし、抵抗感が全くなく淡々とかまえている。そんな主人公の飄々としたような生活感度も、さらに不条理さの深みに誘っているような気がするのだ。
 だからなんとなく、つげ義春の後期のマンガや安倍公房や村上春樹の小説を読んでいるような雰囲気が漂ってくる。またインタビューによると、作者自身も何を書こうとしているのか不明であり、何なの分からないまま推敲し彫琢したものが、この作品になっているのだと言う。

 この『穴』という作品は約90頁で、本作だけで書籍するには短過ぎる。それで『いたちなく』と『ゆきの宿』という短編二作品を追加して書籍としてまとめられている。この『ゆきの宿』は本作を書籍化するにあたり書き下ろされた作品で、『いたちなく』の続編といったポジションのようだ。そしてどちらも舞台は田舎である。『穴』も田舎が舞台であることを考えると、著者は田舎に対して憧れ感を抱いているのであろうか。

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2017年3月12日 (日)

約束

著者:村山由佳

 村山由佳がイラストレーターと創った絵本から、文章の部分だけを取り出して再構成した『絵のない絵本』である。子供向けで字数も少なく読み易いので、誰でもあっという間に読めるだろう。
 収録作品は表題の『約束』をはじめ、『さいごの恐竜ティラン』、『いのちの歌』の三作で紡がれている。
 この中で一番長いのが約80頁の『約束』で、4人の少年たちの友情をノスタルジックたっぷりに描いた『スタンド・バイ・ミー』もどきの小説である。その中で難病で入院した友達を助けるために、タイムマシン製作に夢中になってゆく3人の少年たちの涙ぐましい努力が実に微笑ましい。

 『さいごの恐竜ティラン』は、肉食恐竜に子供を食われた草食恐竜が、その肉食恐竜の赤ちゃんを育てるというお話。また『いのちの歌』は、人間によって汚染された海の中に迷い込んでしまったくじらの母子の愛情物語である。ともにいのちの尊さと母性本能の深さを、しみじみと描いてジーンとくる短編小説に仕上がっている。

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2016年10月10日 (月)

タイムトラベラーK

著者:本木治

 「人生どこからやり直す」というサブタイトルで、どうやら過去に何度もタイムスリップして人生をやり直すという『リプレイ』のような小説のようだ。そう聞いてタイムトラベルファンの私は、どうしてもこの小説を読みたくなってしまった。  ところがなぜか現在アマゾンでは扱っていないのである。それに出版元が文芸社なので、半分自費出版のような扱いなのだろうか。
 そんな疑問を感じつつも半ば諦めていたのだが、ひょんなことからセブンイレブンのネットショップで購入できることが分かった。それで早速購入したのだが、なんと100ページにも満たない超薄い文庫本だった。従って超遅読者の私でも、あっという間に読破してしまったのである。

 本作の目次を見ると次のような構成になっている。
Ⅰ.序
Ⅱ.ナオコ
Ⅲ.マサコ
Ⅳ.ナオコとマサコ
Ⅴ.マサコ

 この中の序章は、まさに著者自身のことを書き綴っているようである。そしてその後のタイムトラベルは、著者の願望なのだろう。
 著者は貧しい家に生まれ育ったが、ハンサムで頭脳明晰で女性たちのあこがれの的だったという。ただ家が貧しく私立校には行けなかったため、必死で勉強ばかりしていたことと、吃音だったため内に籠り易く「強迫性障害」を患わってしまった。そのために望む職業にもつけず結婚もできず、50歳を超えて生活保護に頼るだけのただのデブおじさんになってしまったのだという。

 そんな現状を嘆きながらも、もし過去に戻ることが出来たら、もう一度人生をやり直したいと、考えながら自転車を漕いでいるとき、なんと脇道から急に飛び出してきた自動車に跳ねられて意識を失ってしまう(死んだ?)、という寂しく悲しい現状を嘆いているのである。
 
 まあここまでは良いとして、その後のやり直し人生については、K・グリムウッドの『リプレイ』のように複雑ではなく、学生時代に知り合った二人の女性と上手く付き合うということだけに絞った単調な展開なのだ。だから100ページに満たない薄さなのである。
 それにしても、もう少し複雑な展開やタイムパラドックス、どんでん返しなどを期待していた私には、かなり物足りない内容であった。まあだからと言って決してつまらない話でもなく、読み易くて楽しく読ませてもらったことも否めない。いま一つの展開と工夫があればと、残念さが身に沁みるような作品なのである。

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2016年8月24日 (水)

時をつなぐおもちゃの犬

著者:マイケル・モーバーゴ

 図書館で偶然この本を見つけ、そのタイトルから、てっきりタイムスリップものかと勘違いし、中味もよく見ずに喜び勇んで借りてしまった。時をつなぐという意味は、ストーリーの紡ぎ方が「お母さんが子供の頃」、「私が子供の頃」、「私が大人になった頃」の三つの時代に分類しているからである。そしてその時代の全てを繋いでいるのが木製の『おもちゃの犬』なのだ。

 本書はジュニア向けなので、字が大きく挿絵も沢山描かれている。さらに142頁という薄い製本である。従って小一時間もあれば、簡単に読破出来てしまう。とても読み易い本だ。
 主人公はイギリスの農場に住む少女チャーリーだが、おもちゃの犬の持ち主はその少女の母である。さらに物語の中では、戦争の悲劇と友情と奇跡、それに加えてサッカーのワールドカップについても触れている。切ないがとても心温まるお話に、思わず熱い涙を落してしまった。

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2016年7月15日 (金)

望郷

著者:湊かなえ

 全6作を収めた短編集なのだが、全てのお話が『白網島』に絡んだオムニバス形式となっている。また『白網島』という名の島は実在しないが、作者である湊かなえの故郷である『因島』がモデルだと言う。
 その因島は、かつては船で本土に行くしかなかった。だが1983年に向島とを結ぶ因島大橋が開通し、実質尾道まで地続きとなったのである。これにより孤島というイメージは消失する訳であるが、本作はまだその因島大橋が架かる前に、島に来る人、島から去る人、島に戻る人、ずっと島に留まっている人たちの悲哀を綴った短編集に仕上がっている。

 とりあえずそれぞれの作品を簡単に紹介してみよう。
1.みかんの花
  主人公の姉は、島を出て作家になり、なぜか25年ぶりに白網島に帰ってくる。まさにこの姉こそ、湊かなえの分身なのではないだろうか。終盤になって25年間島に戻らなかった秘密が解明されるとき、急にミステリアスな展開に変貌する。

2.海の星
 日本推理作家協会賞を受賞した名品で、海の星とは夜光虫のことであろう。少年の頃に知り合った親切なおっさんの真意とは、いったい何だったのだろうか。

3.夢の国
 幼いころから夢にまで見た東京ドリームランド(モデルはたぶん東京ディズニーランド)。大人になってやっとその夢が叶い、これまでの白網島での生活を回想するお話。

4.雲の糸
 芥川龍之介の児童向け短編小説『蜘蛛の糸』を捩ったようなタイトルである。白網島出身の歌手が島に住んでいた頃のいじめっ子に無理やり招待され、島の中での生々しい心理状態を赤裸々に描いてゆく。本短編集の中では一番ミステリーらしい作品である。

5.石の十字架
 白網島に猛台風が襲いかかり、家の中まで水が浸水してくる。だが玄関のドアが開かない。そんな窮状の中で子供の頃の苦い思い出を回想してゆくお話である。

6.光の航路
 教師である主人公は、教え子のいじめに遭遇して苦悩する。こんなときやはり教師だった父親が生きていたら、どういう行動をとっていたのだろうか。良く判らない父だったが、ある日父の教え子だった男が訪ねてくる。

 以上ざっと6作の一口レビューを記したが、本作はミステリーとしてはある意味異質の作品かもしれない。それはここに掲載されている作品のほとんどが、前半は普通の小説なのだが、終盤近くになると、実はこんな謎があったのだと驚かされる展開だからである。したがってミステリーが苦手の人でも楽しめる作品と言っても良いかもしれない。

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2016年2月18日 (木)

マイナスゼロ

著者:広瀬正

 オールドジャズファンなら記憶の彼方に残っているかもしれないが、著者は『広瀬正とスカイトーンズ』のリーダーであり、テナーサックス奏者として鳴らしたことがあるという。残念なことに43才の若さで他界しているが、存命中は『マイナスゼロ』、『ツィス』、『エロス』と連続三回も直木賞候補にノミネートされている。
 また著者はタイムマシンに異常な執着心を持っており、故人となった彼の棺には「タイムマシン搭乗者 広瀬正」と書かれた紙が貼られていたという。

 さて『マイナスゼロ』の主人公は、タイムマシンに乗って、現在(昭和38年)から昭和7年へタイムトラベルするのだが、登場人物や出来事については、タイムパラドックスを回避すべく、用意周到でかつ綿密に伏線が準備されている。そして始めから終わりまで、息もつかせぬスピーディー感のある面白いストーリー構成。
 さらに全編に趣味の良いパロディー風味が漂い、ラストにはなんとどんでん返しが3度も続くのだ。またその全ての事象が寸分の狂いもなく、驚くほど緻密かつ完璧に収束されてしまうのである。
 
 とにかく唸るほど見事な職人芸である。この安心できる爽快感が、最高のカタルシスへと導いてゆくのだ。まさに本作こそ、和製タイムトラベル小説の金字塔と断言しても許されるだろう。
 また本作は、時間テーマSFなのであるが、丹念に描写された古き良き時代の東京風物詩や、ミステリー風の謎解きもブレンドされており、余りSFに馴染みのない読者にも口当たりの良い印象を与えるものと確信する。とにかく呆れるほど凄い小説なのである。

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2015年11月 1日 (日)

パラドックス13

著者:東野圭吾

 いかにも私好みのタイトルだったので衝動買いしてしまったのだが、相変わらずの読書不精で1年以上も積読状態のまま本棚の隅っこに放置したままにしていた。だが読み始めると、この562頁の分厚い文庫本を、一気に読み耽ってしまったのである。
 さてタイトルの13とは何を意味するのだろうか。3月13日13時13分13秒、突然街から人と植物以外の生物が消えてしまう。だが
無人のはずだった東京には、なんと境遇も年齢も異なる13人の男女だけが生き残っていたのである。そして首相官邸で見つけた『P-13現象』を記す機密文書には、13秒間の空白の謎が・・・。つまりタイトルの『パラドックス13』とは、全てが13に係ってくる大いなる謎と矛盾を意味しているのであろう。

 この小説を読むほどに、東京中心を襲う直下型大地震の恐ろしさを思い知らされる。飲料水や電気が供給されなくなるのは当然だが、首都圏を縦断する一級河川が氾濫して洪水となる。網の目のように広がる地下鉄によって道路が陥没し、地獄行きの暗黒トンネルと化してしまう。もちろん食べ物も、腐敗したり流されたり消費して徐々に消失してゆくだろう。
 またこの小説の世界では、13人しか存在しないので、誰も救援に駆けつけてくれない。だから13人全員が一体となって力を合わせて、なんとか凌いでゆかねばならないが、それも限界があるし、そもそも13人全員の心が一つになれるはずもないであろう。

 こうして物語の大半は、物語中の天候と同じように暗くくすんでほとんど救いようがない展開に終始する。僅かに冬樹と明日香の淡い恋心だけが唯一の救いなのだが、それもこうしたパニック状況下では成就するはずもない。そして一人死に二人死に、生存者が10人以下になった時、全員が失望しながらも、僅かな希望の灯りを求め仲間達は分裂してゆくのである。さて彼等は一体どうなるのか、謎の13秒間とは一体何なのか。極限状態の中で彷徨う人間の真理を追究した意欲作と言えよう。

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2015年9月23日 (水)

水の時計

著者:初野 晴

 第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞した初野晴のデビュー作である。さて本作では第一章が語られる前に、序章と言うべきなのか・・・いきなりオスカー・ワイルドの『幸福の王子』という童話の要約が記載されているのだ。それはさらに要約すると次のようになる。

 ある町の中に、金箔に覆われ、両目は蒼いサファイア、剣の柄にルビイをあしらった王子の像が立っていました。王子の像は足元で休んでいたツバメに、町の困っている人々に、自分の体の一部分を次々に運んでゆくように懇願します。
 ツバメは南の国へ旅立つ日を延ばして、王子の頼みを聞いてあげることにします。そして王子の像が灰色に成り果てるまで、町の人々に少しずつ金箔やサファイアなどを運ぶのでした。

 読み始めたときは、一体何の比喩なのだろうかと考えていたのだが、この王子とツバメの童話こそ、本作のメインテーマだったのである。本作では王子の代わりに、葉月という脳死と診断された少女が登場し、ツバメの役は暴走族のアタマである高村昴が演じることになる。
 奇妙なことに葉月は、脳死と宣言されていながらも、月明かりの漂う夜に限り、特殊な装置を使って会話することが出来るのだ。そして彼女は高村に、自分の内臓などを移植を必要としている人々に運んでくれと哀願するのである。

 それにしても、何とも言えない摩訶不思議な雰囲気と、おどろおどろしさが漂うファンタジックな寓話ミステリーだ。ラストは、童話のツバメと違って、なんとなく光明を見いだせるところに救いを感じた。まさに横溝正史ミステリ大賞に相応しい作品と言えるだろう。

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2015年8月28日 (金)

九月の恋と出会うまで

著者:松尾 由美

 志織は入居したばかりのマンションで、不思議な現象に遭遇する。なんと隣室に住んでいるが、ほとんど話したことのない平野という男性の声が、エアコンの穴から聞こえてきたのだった。それも一年後の未来から話していると言うのである。
 はじめは信じられない志織だったが、翌日から先一週間分の新聞見出しを言い当てられ、未来からの声だということを信じざるを得なかった。それで現在の平野を尾行すると言う、奇妙な未来の平野の依頼を受けてしまうのである。

 登場人物が不動産屋、大家とマンションの住人4人しか登場しない。階下に住んでいる倉さんや祖父江さんとは、少し話をするのだが、それだけでほとんどいてもいなくてもよい存在だ。面白いのだがどちらかと言えば、ストーリーよりもアイデア優先の小説と言い切って良いかもしれない。

 タイムトラベルロマンスにややミステリアスな展開も含んでいて、梶尾真治の作品と似たような味がするのだが、過去改変の影響について、いま一歩深みにはまり切っていないところが物足りない。また序盤はやや読み辛いものの、中盤からは一気に読み抜けるところは好感が持てるものの、シラノの正体はすぐ分かってしまったし、その種明かしも単調過ぎるような気がする。
 まあワインにフレンチやイタリアンではなく、香り良いコーヒーを飲みながら、とりあえず美味しいパンケーキを食べたいと言う方には、ぴったりの作品かもしれない。

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