カテゴリー「映画・テレビ」の記事

2026年5月10日 (日)

遺書、公開。

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★★★☆
製作:2025年 日本 上映時間:119分 監督:英勉

 奇妙なタイトルだが、内容はまさにその言葉どおりであり、ただそれだけで十分に成り立つ作品だった。
 私立高校の新学期、2年D組の生徒24人と担任教師に、全員の“明確な順位”を記した「序列」メールが一斉に届く。誰が作成し、誰が送信したのかは不明のまま、半年が過ぎてゆく。そんなある日、誰もが羨む人気者で序列1位の女子・姫山椿が、校内で謎めいた死を遂げる。そして葬儀の後、クラス全員の机の上に、彼女からの遺書が置かれていた。

 どこかマンガ的な匂いがする──そう感じたのだが、調べてみればやはり原作は陽東太郎による漫画作品で、2017年から2022年まで『ガンガンJOKER』に連載され、全9巻が刊行されていたという。

 物語は、担任教師を含むクラス全員が、自分宛ての遺書を教室で読み上げるという異様な展開で進む。遺書が読み進められるたびに、姫山に向けられていた嫉妬や憎悪、羨望といった感情が次々と露わになっていく。 

 序列を作った者、遺書を書いた者──その正体が少しずつ明らかになっていく構成だ。舞台のほとんどが教室内で完結しており、製作費も抑えられているのだろう。クラス全員が物語の中心人物であり、誰が主役とも言い切れない群像劇としての面白さがある。

 ただ、時折挿入される“誰かが水槽を覗き込む”シーンが気になっていた。その意味がラストで明かされるのだが、むしろそここそが、この物語で最も背筋の冷える瞬間だったのかもしれない。


評:蔵研人

 

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2026年5月 8日 (金)

DOGMAN ドッグマン

Dogman

★★★★

製作:2024年 米国 上映時間:114分 監督:リュック・ベッソン

 ある夜のこと、1台のトラックが警察に停車を命じられる。運転席には負傷した女装の男性、荷台には十数匹の犬。拘留されたその男は「ドッグマン」と呼ばれ、事情聴取に訪れた女性精神科医に、自らの半生を静かに語り始める。物語は彼の告白を辿るように、過去へと遡りながら進んでいく。

 なぜ彼が“ドッグマン”と呼ばれるのか。その答えは、救いのない少年時代に潜んでいる。父親に犬小屋に押し込められ、暴力に晒されて育った少年。
 犬たちの存在に支えられながら成長し、恋を知り、社会に馴染もうとするも、人間の裏切りによって深く傷ついていく。だからこそ彼は人間を信じられず、犬にだけ愛情と信頼を注ぐようになったのだ。

 悲壮感と狂気が漂う雰囲気は『ジョーカー』を思わせるが、あちらほど重苦しくはなく、わずかながら救いの光が差しているようにも感じられる。
 犬たちを使った盗みや殺しの場面は、タイトルを体現するアクションとして興味深いが、何より印象に残ったのは、車椅子を降りて舞台で歌うシャンソンのシーンである。さらに、エンドロールに流れる主題歌も心地よく、席を立つのが惜しくなるほどだ。

 いずれにせよ、本作はドッグマンを演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズの存在感と役者魂に尽きると言ってよい。「ニトラム」や「ゲット・アウト」など、彼の他の出演作もぜひ鑑賞してみたくなってしまった。


評:蔵研人

 

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2026年5月 4日 (月)

絶叫

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★★★☆
製作:2019年 日本のドラマ全4話 監督:水田成英


 本作は、主人公と思しき女性の独白から静かに幕を開ける。
 国分寺のアパートで、一人暮らしの女性の遺体が発見される。死後およそ半年が経過し、遺体は複数の飼い猫に食われ、すでに原型をとどめていなかった。警察は当初、「よくある孤独死」として処理しようとするが、刑事・奥貫綾乃は、そこに拭いきれぬ違和感を覚え、独自に捜査を続けていく。

 同じ頃、国分寺署はNPO法人代表・神代武の殺害事件も追っていた。一見、何の関係もなさそうな二つの事件。しかし、ある接点が浮かび上がった瞬間、物語は思いもよらぬ方向へと転がり始める。

 ヒロインの鈴木陽子は、地味で貧しく、特技もなく、まともな仕事にも愛にも恵まれない女性として描かれる。だが、彼女だけが特別に不幸なのではない。この物語に登場する人物の多くが、それぞれに深い闇と傷を抱えながら生きている。そのあまりの陰鬱さに、正直なところ、何度も視聴を中断しようかと迷ったほどだ。

 それでも最後まで観ることができたのは、鈴木陽子を演じた尾野真千子の、まるで暗闇を這いずり回るかのような凄絶な演技と、不幸の最底辺から覚醒していく展開に強く引き寄せられたからである。

 本作は、社会の底辺や影の世界に追いやられた人々の、救いのない不幸と苦しみを、容赦なく突きつけてくる。観る者の心に、重く、湿った痛みを残す──そんな、悲しみに満ちたドラマであった。


評:蔵研人

 

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2026年5月 2日 (土)

ヘッド・オブ・ステイト

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★★★☆
製作:2025年 米国 上映時間:116分 監督:イリヤ・ナイシュラー

 犬猿の仲にある米国大統領と英国首相が、世界を揺るがす陰謀を阻止するため、互いの確執を捨てて手を結ぶ——本作は、そんな設定を軸にしたコメディタッチのアクション映画である。

 NATOの会合に向かうため、二人が搭乗したエアーフォース・ワンが、正体不明の敵の襲撃を受けて墜落する。二人だけは、辛くも残された二つのパラシュートで脱出したものの、降り立ったのはロシア国境に近いベラルーシであった。

 その後、執拗に襲いかかる刺客たちとの戦いを通じて、二人は次第に奇妙な連帯感を育んでいく。しかし、すでに機密文書は敵の手に落ち、NATOの結束は崩壊の危機に瀕していた。果たして彼らは無事に帰還し、迫りくる瓦解を食い止めることができるのだろうか。

 物語の骨格は以上の通りで、まるで『ジョン・ウィック』シリーズを思わせるように、敵が次から次へと押し寄せる。スピード感とテンポの良さは評価できる一方、その執拗さと刺客たちの“ほとんど不死身”とも言える描写には、やや苛立ちを覚える場面もある。ただ、コメディ仕立てであるがゆえに、その過剰さもどこか許せてしまうのかもしれない。

 元アクション俳優という設定の米国大統領は、明らかにアーノルド・シュワルツェネッガーを想起させる造形であり、それが本作をより愉快に味わえるスパイスとなっていることは否めない。

評:蔵研人

 

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2026年4月29日 (水)

アキラとあきら

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★★★★
製作:2022年 日本 上映時間:128分 監督:三木孝浩

 銀行からの資金融資を断られたことが引き金となり、倒産へ追い込まれた町工場。その息子・山崎瑛(アキラ)と、大企業の御曹司である階堂彬(あきら)は、ともにトップクラスの成績でメガバンクに入行し、ライバルとしてしのぎを削っていく。

 しかし、同じ銀行員という肩書きの裏で、二人の動機は大きく異なっていた。

 山崎は、実家の町工場のように、確かな技術を持ちながらも資金に恵まれない企業を救いたいという理想を胸に銀行の門を叩いた。一方の階堂は、名家に生まれたがゆえに避けがたかった一族の醜い財産争いから距離を置くため、銀行という組織を選んだのである。

 だが、理想と信念に忠実すぎた山崎は、やがて組織の論理に弾かれ、僻地の支店へと左遷されてしまう。対照的に、階堂は順調に出世街道を歩んでいた。ところが父の死をきっかけに、彼もまた否応なく一族間の権力争いへと引き戻される。弟が父の跡を継ぎ社長に就任するも、その暴走によって、盤石に見えた大企業ですら存亡の危機に立たされることになる。

 観ているうちに、銀行の描写の生々しさに「もしかして」と思わされたが、案の定、原作は元メガバンク行員であり、『下町ロケット』で知られる池井戸潤であった。組織の論理と個人の信念がぶつかり合う構図は、本作でも健在である。

 キャストも実に的確だ。山崎瑛を演じる竹内涼真、階堂彬を演じる横浜流星は、ともに役柄と見事に重なり合い、「はまり役」という言葉がこれほどしっくりくる配役も珍しい。また奥田瑛二、江口洋介といったベテラン俳優陣が脇を固め、物語に確かな厚みを与えている点も好印象であった。

 山崎瑛のひたむきな奮闘を追っていると、どこか青春映画のような瑞々しさが漂ってくる。その一方で、本作には恋愛要素や女性キャラクターの存在感がほとんどないことに、ふと違和感を覚えもした。おそらくそれは欠落ではなく、原作者が描きたかった「メガバンクという巨大組織への理想と批評」を、極力純化させるための選択だったのだろう。


評:蔵研人

 

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2026年4月27日 (月)

バレリーナ The World of John Wick

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★★★☆
製作:2025年 米国 上映時間:125分 監督:レン・ワイズマン

 本作はサブタイトルが示す通り、キアヌ・リーブス主演の大ヒットアクション「ジョン・ウィック」シリーズのスピンオフである。シリーズ第3作『ジョン・ウィック:パラベラム』と交錯しながら、女暗殺者イヴの復讐の旅路を描いてゆく。

 興味深いのは、ジョン・ウィック世界の象徴ともいえるコンチネンタルホテルや、支配人ウィンストンらおなじみのキャラクターが登場する点だ。さらにダンスホールでは、ジョン・ウィックさながらの死闘が繰り広げられ、シリーズの空気が濃密に漂う。

 そしてキアヌ演じるジョン・ウィック本人も姿を見せるが、今回は主役ではなく、掟を破り暴走するイヴを止めるために送り込まれた刺客としての登場である。果たして二人の対決がどのような結末を迎えるのかは、ぜひ劇場で確かめてほしい。

 見どころは何といっても、イヴを演じるアナ・デ・アルマスのダイナミックなアクションだ。彼女の努力は称賛に値するが、童顔で小柄な体躯ゆえに、格闘シーンにわずかな不自然さと限界が感じられたのは惜しいところであった。

 また、次から次へと途切れなく現れる敵との戦いは、ジョン・ウィックシリーズの“お約束”とはいえ、ほぼ全編アクションといってよい構成は、年齢を重ねた身にはやや体力を試されるものがありしんどかった。


評:蔵研人

 

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2026年4月25日 (土)

PARKER/パーカー

Parker

★★★☆
製作:2013年 米国 上映時間:118分 監督:テイラー・ハックフォード

 主役の強盗パーカーを演じるのは、『トランスポーター』シリーズで不動のアクション俳優としての地位を築いたジェイソン・ステイサムである。
 パーカーは犯罪者でありながら、汚れた金しか奪わない、殺すのは悪人のみ、そして仕事は完璧かつ美しく遂行するという、三つの厳格なルールを自らに課している男だ。

 ある日、パーカーは師匠ハーリーの依頼を受け、新たに集められた四人の仲間とともに強盗計画に参加する。舞台はオハイオ州の祭り。計画は成功したかに見えたが、彼は仲間の裏切りによって瀕死の重傷を負い、置き去りにされてしまう。

 ここまでくれば、物語が復讐譚へと転じることは想像に難くない。生き延びたパーカーは、やがて現地の不動産会社に勤める女性レスリーと知り合い、彼女から情報を引き出しながら敵を追い詰めていく。
 このレスリーを演じるのは、ラテン系のスター女優ジェニファー・ロペスである。ただし、パーカーにはすでに恋人が存在し、二人が情熱的な関係に発展することはない。アクション一辺倒になりがちな物語に、柔らかな彩りを添える存在として配置されたのだろう。

 渋く、知的で、そして圧倒的に強い──それがこれまでのステイサム像であった。しかし本作のパーカーに、スーパーマン的な無敵さを期待してはいけない。重傷に苦しみ、殺し屋との戦いでも死力を尽くしてようやく勝利を掴む。その姿はリアルである反面、爽快感を求める観客にはやや物足りなく映るかもしれない。

 それでもなお、本作が一定の娯楽性を備えた作品であることは確かだ。完璧ではない男の復讐劇として、最後までそれなりに楽しませてくれる一本である。


評:蔵研人

 

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2026年4月23日 (木)

ペリフェラル ~接続された未来~

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★★★☆
2022年 米国ドラマ

 原作は、ウィリアム・ギブスンによるSF小説『The Peripheral』。
 テクノロジーが社会のあり方を大きく変貌させた2028年、アパラチア山脈の麓に広がる静かな田舎町に暮らす女性フリンは、仮想現実のゲームに没頭する日々を送っていた。だがある日、彼女は何の理由も告げられぬまま、現実世界で突然刺客に狙われる。

 実は、彼女が単なるVRゲームだと思い込んでいた世界は、70年後の未来そのものだった。フリンはゲームを進める過程で、自覚のないまま重大な機密情報を脳に移植されており、それを巡って未来のリサーチ機関の命を受けた刺客たちが、現在の彼女の命を狙っていたのである。

 主人公フリンを演じるのは、子役時代に『キック・アス』で鮮烈な印象を残したクロエ・グレース・モレッツ。活発さと知性を併せ持つ本作のヒロイン像は彼女に驚くほどよく似合い、まるで彼女のために用意された役柄であるかのようだ。

 ストーリーそのものの魅力もさることながら、特筆すべきは「未来に存在するアバターを操作することで時間を越える」というタイムトラベルの発想である。従来の時間移動SFとは一線を画すこのアイデアには、思わず心を打たれた。

 シーズン1は1話約1時間、全8話という構成で、米国ドラマとしては比較的コンパクトにまとまっている。その後シーズン2の製作も発表されたが、全米脚本家組合および俳優組合のストライキの影響を理由に、Amazonスタジオは最終的に制作中止を決定した。

 難解ながらも、クロエの存在感、美麗な映像、そして数多く残された謎に強く惹かれていただけに、物語が途中で断ち切られてしまったことは痛恨の極みである。これほどの世界観を提示しながら、完結を許されなかったことに、やり場のない悔しさを覚えずにはいられない。


評:蔵研人

 

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2026年4月21日 (火)

ビーキーパー

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★★★☆
製作:2025年 米国・英国 上映時間:105分 監督:デビッド・エアー

 タイトルの「ビーキーパー」とは養蜂家を意味し、ジェイソン・ステイサム演じる主人公アダム・クレイの異名でもある。かつて彼は、世界最強と謳われる秘密組織「ビーキーパー」に所属していたが、今は米国の片田舎で静かに養蜂を営み、世間から身を隠すように暮らしている。

 そんなある日、彼の恩人である善良な老婦人がフィッシング詐欺に遭い、全財産を奪われた末に絶望して自ら命を絶ってしまう。深い怒りに駆られたクレイは、たった一人で詐欺組織への復讐に乗り出すのだが──その背後に潜む黒幕は、想像をはるかに超える大物であった。

 FBI、CIA、傭兵部隊、暗殺者……。押し寄せる強敵たちにほとんど丸腰で立ち向かい、なお悠然と引き上げていくクレイの姿は、まさに現代のスーパーマンそのものだ。現実では到底あり得ないはずなのに、ジェイソン・ステイサムが演じると、なぜか妙に納得してしまうから不思議である。
 とにかく胸のつかえがすっと下りる、痛快無比の一本であった。

評:蔵研人

 

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2026年4月17日 (金)

ラブ・アンド・タイムトラベル

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★★★☆
製作:2016年 ニュージーランド 上映時間:92分 監督:ヘイデン・J・ウェアル

 珍しいニュージーランド製の映画である。タイトルに掲げられた「タイムトラベル」という言葉に惹かれ、軽い気持ちで鑑賞したのだが、いわゆるタイムマシンが登場するわけでも、時空を自在に行き来する描写があるわけでもない。そのため、観賞中はその意味が掴めず、どこか腑に落ちない感覚が続いた。

 しかし物語の後半になって、主人公自身が五日前の自分に向けてメッセージを残していたことが明かされる。その瞬間、これまで曖昧だった出来事の輪郭が静かに結び直されていく。

 本作の核心は、文字通りの「時間移動」ではなく、時間を隔てた因果の連なりにあるのだろう。「タイムトラベル」という言葉は、その構造を象徴するメタファーに過ぎず、物語の中心に据えられているのは、恋愛と人間関係の微妙な揺らぎである。

 中盤までは明確な方向性が見えないまま物語が進むが、その間にも、ニュージーランドの美しい風景には何度も心を奪われる。また、淡々としていながら突如として激しさを見せる主人公の振る舞いも印象的で、気づけば終盤へと導かれていた。

 一般的な評価は決して高くないようだが、静かに観る者の内側へ入り込んでくる、不思議な魅力を備えた作品である。派手さはないが、ふとした拍子に思い出される──そんな「掘り出し物」と呼ぶにふさわしい一本かもしれない。

評:蔵研人

 

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