カテゴリー「映画・テレビ」の記事

2017年2月22日 (水)

西遊記 孫悟空 vs 白骨夫人

★★★☆

製作:2016年 中国,香港 上映時間:118分 監督:ソイ・チェン

 映画だけではなく、TVや舞台も含めると今までに数え切れないほど繰り返し製作されてきた『西遊記』だが、本作は中国発の最新の西遊記映画である。
 岩山に閉じ込められた孫悟空が、三蔵法師によって封印を解かれ天竺までお供をするところからはじまる。途中で猪八戒と沙悟浄も引き連れてゆくのだが、本作は白骨夫人という妖怪を退治する話に特化している。

 この白骨夫人を演じたのは、演技派女優のコン・リーで、本作でもなかなかの存在感を振りまいていた。西遊記映画の中でも本作の評判がやや高いのは、アクションと特撮の評価だけではなく、悪女だがどこかもの悲しさの漂う妖女を演じた彼女の魅力によるところも大きいだろう。

 ストーリー展開については、乱暴者だが妖怪を見抜く力を持っている孫悟空と世間知らずでお人好しの三蔵法師のすれ違い、頼りにならない猪八戒のおバカぶりと言ったお馴染みのパターン。そしてラストは孫悟空が、三蔵法師を危機一髪のところで救い出し、妖怪をこてんぱんに叩き潰してめでたしめでたし。とにかく水戸黄門を観ているような安心感があるのだが、逆に言うともう少し目新しく捻りの利いた脚色が欲しかったね。

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2017年2月17日 (金)

ブルックリン

★★★☆

製作:2015年 アイルランド,イギリス,カナダ 上映時間:112分 監督:ジョン・クローリー

 ブルックリン区は、ニューヨーク市に置かれた行政上の5つの区の一つであるが、1898年に行われた区画整理までは、独立した市として存在していた。また人口250万人のブルックリン区を市とみなせば、ロサンゼルス市、シカゴ市に続き全米で3番目に人口の多い市となるくらい多くの人々が住んでいる。
 さらにブルックリンは、様々な文化・民族・人種が集う場所でもあり、今日形成されている文化の混合は海外からの移民がその風習をそのまま持ち込んだ結果と言えよう。まさにアメリカの象徴のような地区なのだが、今後はトランプ大統領の排他的政策でどのように変貌して行くのだろうか。

 さて本作はアイルランドの田舎町に住む少女エイリッシュが、母と姉と別れて単身ブルックリンへ移住し、デパートの仕事を覚え、ホームシックに罹ったり、恋をしたりしながら成長してゆくシンプルなお話である。
 前半は主演のエイリッシュが、淋しさや不慣れな仕事を克服しながらも、夜学に通って良い成績で卒業すると言った前向きで純真な姿に共感するはずである。そして明るく優しいイタリア系の青年と恋に落ちて結婚する。
 そこまではどこにでもある恋愛ドラマだったのだが、心の支えだった姉の急死のため、アイルランドに帰郷するあたりから、エイリッシュの心が急変していくのである。

 ここからは恋愛ドラマ転じて『女の打算ドラマ』に変貌してしまうのだ。有能で人格者だった姉の死に対する同情と、都会で磨かれたエイリッシュに対する羨望の眼。そして彼女の帰郷を望む母や友人たち。そんな熱い雰囲気に呑まれて、結婚していることを隠し続けるエイリッシュ。
 ところが田舎町では良いこともすぐ広まるが、悪いことはもっと猛烈に広まって行くものである。我を忘れいい気になっていたエイリッシュに、そんな田舎町の恐ろしさを思い出させてくれたのが、皮肉にも彼女がブルックリンに旅立つ原因になった意地悪女店主であった。

 そして彼女は再び母を置き去りにしたままブルックリンに戻るのである。はじめは素直で可愛い娘だと思っていたのだが、結局は身勝手で打算的なつまらない女だったと感じる人も多いだろう。というよりは、女とは所詮そんな生物なのだということなのか、あるいは都会は人を変えてしまうという教訓だったのだろうか。

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2017年2月11日 (土)

オデッセイ

★★★☆

製作:2015年 米国 上映時間:142分 監督:リドリー・スコット

 火星探索隊が突如巻き起こった大砂嵐に襲われ、全員が必死に宇宙船に引き返すのだが、途中折れたアンテナがマーク・ワトニー(マット・デイモン)を直撃し、彼はそのまま吹き飛ばされて行方不明になってしまう。船長はマークを探し出そうとしたが、余りにも激しい嵐のため、宇宙船が倒れそうになる。もし倒れてしまったら、もう二度と宇宙船は飛べなくなってしまう。
 そんな難しい状況の中で、クルーたち全員がマークは死んだと判断し、残ったクルー5人の生命を尊重した船長はやむなく宇宙船を発進させる。

 ところがマークは奇跡的に生きていたのである。ここからたった一人火星に取り残されてしまったマークのサバイバルストーリーが始まるのであった。
 次の火星探索ミッションが開始されるのは4年後である。マークはこの4年間を必死で生き抜こうと決心するのだが、火星の厳しい環境下で生き抜くのは至難の業としか言いようがない。

 なんとか残されたプレハブ居住施設と火星探索車の存在だけが頼みの綱である。植物学者であるマークは、まず水、空気、電気を確保し、プレハブ居住施設内に火星の土を運び込み、クルーの排泄物をもとに耕作用の土を生成し、ジャガイモの栽培に成功するのだった。さらには探索車を駆使して、土に埋もれたマーズ・パスファインダーを探し出し、その通信機能を回復させて地球との通話に成功するのである。

 SF映画であるが怪獣や宇宙人が登場する訳ではない。登場するのは過酷な火星の環境だけである。地味であるが実に現実的で科学的な作品である。そういった意味では『ゼロ・グラビティ』と似ている。だが本作はマット・デイモンが主演だったことと、地球との交信が出来たことなどからほとんど悲壮感がなく、主人公の前向きな努力と逞しさとに脱帽という展開であった。

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2017年2月 7日 (火)

サヨナラの代わりに

★★★☆

製作:2014年 米国 上映時間:102分 監督:ジョージ・C・ウルフ

 本作はALS(筋萎縮性側索硬化症)で余命僅かとなった女性ケイトと、彼女に介護人として雇われた女子大生ベックとの交流を描く感動作である。難病ものと言えば、大体がラブストーリー系が多いのだが、本作は難病の介護に疲れて夫が浮気してしまうという逆展開。
 そしてその薄情な夫に代わって、心底ケイトの役に立ちたいと「住み込み」で介護するベックの存在もユニークである。またケイトは真面目で気難しい性格だが、ベックは教授と不倫関係にあったり、歌手を目指していたり、言いたいことを遠慮なく口に出してしまうという自由奔放な性格なのだ。

 そんな反比例したような二人の女性の生き方を同時進行しているところが、この映画の面白さであり、単純な難病ロマンス映画では終わっていない理由なのだろうか。そして最後は涙が溢れて止まらないのだが、私は常々から「人の死に対する涙イコール感動作」とは考えない人なので、そのあたりはこの映画でも評価の対象にはしていない。
 ALS患者を演じたヒラリー・スワンクの演技は抜群であり、そこそこ良くできた映画だと思えるのだが、やはり暗くて救いがないものは苦手である。またベックの急変も納得できないし、彼女の過去にもう少し焦点をあてても良かったよね。

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2017年2月 2日 (木)

島々清しゃ 

★★★

製作:2017年 日本 上映時間:100分 監督:新藤風

Simajima
 読み辛いタイトルだが、しまじまかいしゃと呼び、沖縄では有名な曲の名である。本作はその曲を演奏することにより、耳が良すぎて雑音に耐えられない少女が、必死に立ち直るまでのエピソードを描いている。
 その少女「うみ」を演じた伊東蒼は抜群の演技力を発揮していたが、祖父や学友たちのセリフ棒読み状態は学芸会以下のレベルだったのは悲し過ぎる。確かに彼等はど素人なので下手でも仕方ないのだが、もともと無口な祖父にあれほど喋らせる必然性はなかったし、吹き替えなどで対処する方法もあったはず。素人たちの余りの下手さ加減のためか、逆に俳優たちの演技が猛烈に上手に感じてしまった。やはり伊達にプロではないのだね。

 さらにうみと母親の関係や、母親が那覇に別居している背景などの説明も皆無で、葬式にいきなり踊りだす彼女の心情もいまひとつ理解できない。それに何といっても、超演技派の安藤サクラの使い方がもったいない。あの程度の役柄なら彼女でなくても良かったはずである。
 メガホンをとったのは、新藤兼人の孫である新藤風だが、まだまだ力不足なのであろう。テーマは悪くないのだが、脚本・演出などに稚拙さを感じてしまったのは、決して私だけではないはずである。

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2017年1月25日 (水)

奇跡のリンゴ

★★★★

製作:2013年日本 上映時間:129分 監督:中村義洋

 絶対に不可能と言われた『リンゴの無農薬栽培』を成し遂げた男がいる。青森リンゴ農家の木村秋則さんである。この映画はその木村さんが、なんと11年間も失敗を続けながらも、やっとリンゴの無農薬栽培に成功するまでの実話を参考にして創られたという。

 木村さんは少年時代からあらゆることに夢中になる性癖を持っていたが、何ひとつとして成功したためしがない。それでも少年時代は笑い話で済んだのだが、所帯を持って老人と子供3人を抱えて生計を維持して行かねばならないときに、リンゴの無農薬栽培に取りつかれて、一家は10年以上に亘って究極の貧乏生活を送る羽目になってしまうのである。

 村中から変人扱いされ、途中で挫折しそうになり、離婚や自殺も考えるのだが、舅や妻子に支えられて何度か立ち上がることが叶う。つまりリンゴの無農薬栽培の成功は、彼一人の力ではなく家族全員の忍耐と励ましのお蔭だったのである。
 とても良い話で、後半は途中で何度も涙が止まらなくなってしまった。私は常々人の死で泣かせる作品よりも、人の温かさに触れて泣かされる作品こそ、真実の感動作品ではないかと考えている。まさにこの映画こそ、そういった意味での感動作品と言って間違いないだろう。
 
 また脚本の出来も素晴らしかったのだが、何と言っても配役のどれもがピタリとはまっていた。ことに主人公に阿部サダヲを起用したことにより、前半の暗く苦々しい生活感がかなり緩和されているし、妻役の菅野美穂がとても優しさに溢れていた。
 そして舅役の山崎努のいぶし銀のような渋味のある演技にも大拍手を送りたい。ただ実話とはかけ離れたとしても、この舅も一緒に無農薬栽培の成功を喜んだ映像も加えて欲しかったね。

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2017年1月18日 (水)

デッドプール

★★★★

製作:2016年 米国 上映時間:108分 監督:ティム・ミラー

 マーベルコミックスの破天荒ヒーローの実写映画である。全身癌に冒された主人公ウェイドが生き延びるために選んだのは、無茶苦茶な人体改造による細胞の強化実験だった。
 苦しい実験に絶え、超人的な治癒能力と不死の体を手にしたウェイドだが、なんと体中の皮膚が皺々になりまるでフレディーのような醜い姿になってしまう。それで実験をした男を捜して復讐することを決意するのだった。

 ヒーローものとしてはかなり異色である。このヒーローは正義や人助けには全く興味がなく、ただ復讐だけに燃えている。またお喋りでギャグを連発したかと思うと、かなりどぎついアクションとスプラッターを繰り出すのだ。それでR15指定となっているので、子供と一緒に観てはいけない。

 またなんとX-MENも登場し、クライマックスシーンでは、デッドプールと一緒に敵と戦うことになるのだが、そのアクションもなかなか過激で面白かった。
 また恋愛ありホラーありギャグありの、今まで余り観たこともない奇妙なヒーロー映画であった。ただかなり好き嫌いが別れる作品かもしれないので取扱いに注意すること。

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2017年1月14日 (土)

トスカーナの休日

★★★☆

製作:2003年 米国 上映時間:113分 監督:オードリー・ウェルズ

 突然の離婚ショックから立ち直れないフランシス(ダイアン・レイン)は、親友からプレゼントされたイタリア旅行へ旅立つ。だが別れた夫に住んでいた家を譲ってしまった反動からか、旅先のトスカーナで古くて広い家を衝動買いしてしまう。

 たった一人でこんな広い家は不要なのだが、この家で結婚式を挙げファミリーと一緒に暮らすのが、フランシスのたった一つの希望だった。そして紆余屈折の挙句、彼女の想いとはちょっぴり異なる形だったが、ラストシーンでは彼女の希望が叶うのである。

 現在はスーパーマンの母親役などをしているダイアン・レインだが、この映画を撮ったときはまだ30代後半位でとてもチャーミングだ。全般的に淡々としてストーリー展開なので、トスカーナーの美しい風景と彼女の魅力に支えられた部分が大きいはずである。

 ラブコメということになっているが、どちらかと言うと苦い恋が多く、毎日花を添えに来る老人や人柄の良い不動産屋など味のある登場人物が実に渋いのだ。まさにブラックコーヒーのような、深みのある大人のラブコメ映画だった。

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2017年1月11日 (水)

幸せなひとりぼっち

★★★★☆

製作:2015年 スウェーデン 上映時間:116分 監督:ハンネス・ホルム

Hitori
 愛妻のソーニャに先立たれて失望の縁を漂っている矢先、40年以上真面目に勤めてきた会社からリストラをほのめかされ、その場の勢いで会社を辞めてしまったオーヴェ老人の話である。曲がったことが大嫌いな彼は、毎朝家の周辺を巡回してルールを守らない人がいると、容赦なく大声で罵るのであった。
 具体的には、自動車の通行禁止のルールをはじめ、ゴミの分別、自転車の駐車、犬の小便から扉の開閉まで、些細なことにまでいちいち神経を尖らせているのだ。そのため近所の人々は、陰で彼のことを偏屈な頑固爺とか変人と囁いている始末。

 近所の人々の思惑などはどうでも良かったが、そんな彼を理解して愛してくれた妻は、既にこの世にはいないという絶望感だけが、彼の全身を侵し続けていた。それで自殺を決行するのだが、なかなかうまくゆかない。
 そんな絶望的な彼の隣家に、陽気なアラブ人の家族が引っ越してくる。この家族の奥さんと子供たちが、なかなか人懐こくて愛嬌があり、人間嫌いのオーヴェとの絡みがなかなか楽しく感動的なのである。

 こんな感じでストーリーはとんとん拍子で進んでゆくのだが、彼が自殺を実行するたびに、父親との想い出やら愛妻との出逢いなどが回想されるというユニークな構成となっているのも面白かった。
 それにしても主人公オーヴェのような頑固オヤジは身近でも時々見かけるし、もしかすると私自身も他人からはそう見られているかもしれないのだ。
 ・・・そう他人ごとではないのだから、思い切り感情移入してしまい、劇場の中は嗚咽しているオジサンたちで溢れ返っていた。笑いあり、涙あり、愛ありの文句のない作品で、久々に良い映画を観たと言う充実感に浸れることだろう。
 
 スウェーデン映画は余り見慣れないのだが、このような素晴らしい作品がまだ沢山創られているとしたら、それは宝の持ち腐れと言うものである。もっと他の作品も観たくなってしまった。
 それなのにこの作品は、関東でも『ヒューマントラストシネマ渋谷』と『新宿シネマカリテ』の2館だけ、全国併せてもたった8館でしか上映していないのは、実に勿体ない話ではないか。配給がテアトル系ということもあるが、今後はシネコンなどでも上映出来ないものだろうか・・・。

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2017年1月 8日 (日)

スポットライト 世紀のスクープ

★★★☆

製作:2015年 米国 上映時間:128分 監督:トム・マッカーシー

 第88回アカデミー賞で作品賞・脚本賞を受賞した実話映画である。とにかく変化球なしのガチガチに真面目な作品だ。また取材方法や編集会議などを詳細に描いた、ジャーナリスト映画の見本」のような格調高い作品であることも間違いないだろう。

 この作品のテーマは、ボストンの地方新聞「The Boston Globe」の記者たちが、カトリック教会の神父による性的虐待と、それを隠し続けたカトリック教会組織の事実を暴くまでの綿密な過程と言えよう。
  それにしても被害を受けた児童が1000名以上で、性的虐待を行った神父が200名超とは・・・これが事実だと言うのだから、驚きを超えて余りの衝撃に慄然としてしまった。

 ただストーリー的には、地味で淡々と進み会話が多いため、前半は睡魔に襲われる人も多いだろう。だからある意味で『ドキュメンタリー』を観ているかのようであった。
 しかしながら終盤に近づくに従い、登場人物たちの人間臭さが描かれてきて、スクリーンに釘付けとなるだろう。それにしても非常に重い作品で、疲れがどっと出てしまった。

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