カテゴリー「映画・テレビ」の記事

2022年1月26日 (水)

レヴェナント:蘇えりし者

★★★☆
製作:2015年 米国 上映時間:156分 監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
 
 時は西部開拓時代、場所は米国北西部の極寒地帯。ハンターのヒュー・グラスと息子のホークは、毛皮ハンター一団のガイド役として狩りをしていた。
 そのとき突然、雨のような矢の嵐が降ってくる。それは戦闘的で残忍な原住民アリカラ族の襲撃であった。あっという間に戦争状態になり、毛皮ハンターたちの33名が死亡、残った者たちは必死に船で逃げ出すのだった。
 だが執拗に追いかけてくるアリカラ族から逃げ延びるには、川を下るのではなく、船を降りて山からカイオワ砦に戻ったほうが安全だとグラスが提案する。そして一行は山を登る道を選択するのだが、途中、グラスがグリズリーに襲われて瀕死の状態となる。
 
 その後グラスは、悪人のフィッツジェラルドに息子を殺され、厳寒の荒野に取り残されてしまう。実はここからがこの作品の始まりだったのかもしれない。愛する息子を殺され瀕死のグラスが、這いずりながら火をおこし草の根をしゃぶり、アリカラ族の追跡をかわしながら、厳寒の原野を死に物狂いで生き延びてゆく姿が延々と描かれてゆくのである。なんとまたこの話が実話だというのだから二度驚いてしまった。
 
 この映画の見どころは、オープニングでの「アリカラ族との戦い」、そして「グラスとグリズリーの戦闘」、さらに瀕死のグラスの厳寒原野での「自分との戦い」と言って良いだろう。まさにどのシーンを観ても壮絶としか言いようがない。いずれもCGと自然と人間の合成だと思うのだが実にリアルに創り上げたものだと感心してしまった。
 
 そして主役のグラスを演じたのが、あのレオナルド・ディカプリオだったとは、髭ぼうぼうで傷だらけだったので、エンディングロールを観るまで全く気付かなかった。ディカプリオと言えば、「タイタニック」のイメージが強烈過ぎて、いつの間にかおじさんになってしまったことも忘れていた。それはそれとして迫真の演技派に成長していたんだね。
 
 本作は第88回アカデミー主演男優賞、監督賞、撮影賞、また第73回ゴールデン・グローブ作品賞、男優賞、監督賞を受賞した優れものである。私も終盤近くまでは絶賛していたのだが、終盤から急に小さなドラマに萎んでしまったのが残念でならない。
 
評:蔵研人

 


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2022年1月23日 (日)

子猫をお願い

★★★
製作:2001年 韓国 上映時間:112分 監督:チョン・ジェウン
 
 高校時代に仲の良かった女子5人組。社会に出て遭遇する様々な夢と葛藤。それらを乗り越えながら、少しずつ成長してゆく青春群像劇である。と言っても5人のうち二人は双子で、街で物売りをしている姿を描かれただけ。細かく描かれたのは残りの3人だけである。
 
 少なくとも学生時代は対等の関係であるが、わずか1年でも社会に出れば生活も価値観も大きく変わってくるものである。ヘジュはソウルの証券会社に就職し、高層ビルでOLとして忙しく働き優越感に浸っている。一方でジヨンは父母がいないため、職にも就けず今にも崩れそうなバラックで祖父母と暮らしている。またテヒは家業を手伝っているが、父親たちに支配され自分の意思が通らない。といった具合に、それぞれが全く異なる環境下で暮らしている。
 
 三人三様の生き方をしているが、それぞれがそれなりの葛藤を抱えており、一番優雅そうなOLヘジュでさえ悩みは尽きないようだ。だがやはり貧困の中を彷徨っているジヨンが一番不幸であることは間違いない。そして一番優しくて可愛いのがテヒであり、お気楽なのは双子の姉妹といったところか…。
 
 本作は女性たちが主演で、若い女性たちのほろ苦い友情と葛藤がテーマである。さらに監督と脚本も女性ということで、全方向が女性視点であり、おじさんにはなかなか感情移入が難しい。もちろん悪い映画ではないのだが、ネットでの高評価にはいまひとつ納得できないでいる。たぶん本作は子猫のような、社会人に成りたての女性たちに捧げる映画なのであろう。
 
 
評:蔵研人

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2022年1月18日 (火)

黄金のアデーレ 名画の帰還

★★★★
製作:2015年 米国・英国 上映時間:109分 監督:サイモン・カーティス
 
 久々に品の良い映画らしい映画を観た気分である。自宅でオンデマンドでの鑑賞だったが、この映画は都心の大きな映画館でゆったりと観たかったね。ヘレン・ミレンが出演する映画は、ほとんど外れがないことを再確認した気分でもある。
 本作を一言でいえば、過去にナチスによって強奪された世界的に有名な名画を取り戻すため、オーストリア政府を相手に返還訴訟を起こしたマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)の実話を描いたドラマである。
 
 そのマリアは、1916年にオーストリア・ウィーンの裕福な家に生まれる。そして21歳でフリッツ・アルトマンと結婚。だが翌年1938年にナチスがオーストリアを占拠。一家はユダヤ人という理由で自宅監禁され、肖像画を含む価値ある家財道具はナチスに奪われてしまう。危険を察したフリッツとマリアは、ナチスの見張り番を騙し、命懸けでアメリカに亡命する。ただやむを得ないとしても、年老いた父母を置いて、自分たちだけ逃げ延びたことに負い目を感じていた。
 
 本作はマリアが亡くなった姉の遺品の中から一通の手紙を見つけるところから始まる。その手紙は戦時中ナチスに奪われた絵画について書かれていた。それは現在オーストリア国立美術館に展示されている国宝級の絵画「黄金のアデーレ」で、法律上の所有権はマリアにあるのだという。だがオーストリア政府は今さらマニアに返還する気は全くない。
 
 オーストリア政府の態度に業を煮やしたマリアは、政府相手に返還訴訟を起こすことになる。ただ彼女を助けるのは親類で新米弁護士のランディ・シェーベンクだけであった。そしてたった二人とオーストリア政府との戦いが始まるのである。
 本作はかなり複雑な構成になっているため、じっくり鑑賞していないとよく分からなくなるかもしれない。さらに二人のやり取りと裁判の経過が続く中で、急に戦時中のシーンがパラレルに映し出されてゆくので、決してよそ見をしないように。
 
 さてでは本作が訴えたかったことは一体何だったのだろうか。ナチスの恐怖や残忍性かもしれない。だがナチスに限らず戦争には必ず強奪がつきまとう。さらに強奪された高級品などが、まるではじめからそこにあったかのように、いつの間にか他人に所有されている。そんな奇妙で恐ろしい現実が存在する、ということではないだろうか。
 
評:蔵研人

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2022年1月16日 (日)

仮面病棟

★★★
製作:2020年 日本 上映時間:114分 監督:木村ひさし
 
 タイトルとポスターから、なんとなくホラーなのかと思っていたら、TVドラマ風のミステリーサスペンス映画であった。また原作は現役医師作家の知念実希人氏の大ベストセラー小説だという。どおりで医療関係に詳しい筋書に納得。
 
 速水医師(坂口健太郎)は、先輩の紹介で一日だけの当直医として、元精神科病院だった田所病院に出向く。看護師にほとんどなにも仕事はないと言われ、宿直室でウトウトしていると、突然内線電話が鳴って至急一階に来るよう告げられる。急いで一階に下りてゆくと、そこにはピエロの仮面を被った凶悪犯と傷を負った女子大生の瞳(永野芽郁)が待っていた。
 
 舞台はこの田所病院が中心で、ほとんどのシーンが迷路のような病院の中を行ったり来たり。64人の入院患者はいるのだが、たまに大声を上げるおばちゃん以外は、ほぼ全員が眠っているだけ。結局病院の中で動いている俳優は、犯人を含めた6人だけという低予算映画である。
 
 さて永野芽郁は何のために登場しているのか、またメイクがド派手で全く似合わないなと思っていたら、終盤にその理由が分かった。でもかなり無理な設定のような気がしたのは、決して私だけではないはずである。また坂口健太郎は何をやっても、坂口健太郎しか演じられないね。まあそこが好きだと言う人には逆らわないけどね。
 
 
評:蔵研人

 

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2022年1月13日 (木)

東京喰種S

★★☆
 
製作:2019年 日本 上映時間:101分 監督:川崎拓也
 
 二年前に上映された『東京喰種』の続編であるが、なぜ東京喰種2でなくSなのだろうか。secondの意味なのか、美食家の喰種・月山習(松田翔太)の頭文字なのか、巷ではいろいろと想像されているが、明確な回答はないようである。まあそんなことはどちらでもよいのだが、そんなことを話題にしなければならないほど内容がないのだ。
 
 前作を観ていないとよく理解できないかもしれないが、簡単なあらすじは次の通り。
 半喰種になってしまった大学生のカネキは、人間と喰種の狭間で葛藤しつつ、喰種たちの駆け込み寺・喫茶店「あんていく」で働いていた。そこへ美食家と呼ばれる喰種の月山がやってくる。そして彼は半喰種のカネキが放つ特殊な匂いにうっとりとしてしまう。グルメの月山はカネキを食べたくて堪らなくなり、彼を「グールレストラン」の屠殺場へ連れてい行くのだった…。
 
 とにかく本作は月山とカネキの交際と戦いだけに終始するだけであとは何もない。良かったのは月山習を演じた松田翔太の演技力と存在感ぐらいであろう。
 さてなんとなくまた続編が創られそうな気もするが、もうお腹が一杯でこれ以上は見る気にはなれないね…。
 
 
評:蔵研人

 

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2022年1月10日 (月)

武士の献立

★★★★
 
製作:2013年 日本 上映時間:121分 監督:朝原雄三
 
 江戸時代、加賀百万石・前田家の料理番を引き継ぐ男とその妻のお話である。主なキャストが上戸彩、高良健吾、西田敏行、余貴美子で、予告編を観たときには、妻に料理指導を受けている包丁侍のシーンが強調されている。それでこれはてっきり『武士の家計簿』のようなコメディータッチの時代劇かと勘違いしていた。
 
 ところがその直感は見事外れていた。もちろん重厚で暗い作品ではないが、そこそこシリアスな作品であった。
 本作は料理番がテーマなので、ところどころに料理の蘊蓄などを鏤めながらも、加賀藩の宿命、武士の意地、武家の立場、夫婦の愛などにも言及している。そしてもちろんお約束のハッピーエンド。
 
 まずまずの出来だと思うが、終盤の盛り上がりがいま一つだったのと、エンディングの曲が酷いミスマッチ。ただ役者さんたちは全員良く頑張っていたと感じた。それにそこそこ面白かったので、それでいいじゃないの。
 
 
作:蔵研人

 

 

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2022年1月 5日 (水)

エスケープ・ルーム

★★☆
製作:2017年 米国 上映時間:90分 監督:ウィル・ワーニック
 
 タイラーの誕生日に集まった仲間の男女6人が、酔った勢いで「体験型謎解き脱出ゲーム」に参加する。このゲームのルールは、参加費は1人1000ドル、制限時間は1時間で、謎が解けないと死ぬというゲームらしい。はじめは都市伝説的ジョークかと思っていたら、本当に「生きて帰れない」ゲームだったのだ。目隠しのまま会場に入ると、そこは数人づつ閉じ込められた密室であった。
 
 まずタイラーが目隠しを外すと、部屋には1人だけ閉じ込められていた。「出口」と書かれた扉があるが「出口」のランプは消えている。壁にはアナログ式の壁掛け時計がいくつも並んでおり、古いモニター画面が複数あり新聞の束が積み重ねられている。
 アンダーソンとナターシャは、別の部屋に閉じ込められていた。2人は手首を手錠で繋がれており、長い鎖は互いに絡まっている。壁には動物のイラストの額が飾ってあり、アナログ式の壁掛け時計が4つ架かっている。
 コンラッドとタビーは白い部屋に閉じ込められていた。コンラッドの股間に貞操帯のようなものがつけられており、外すには南京錠の4ケタの数字を入れねばならないようだ。また部屋には9文字のアルファベットが表示されたランプもある。
 この奇妙なゲームを仕掛けたのは、このゲームに誘ったクリステンなのだろうか…。ところがなんとタイラーの部屋のモニターに、全裸で拘束されているクリステンが映し出されているではないか!。
 
 なんとなく『キューブ』とか『ソウ』というイメージが強い。そしてこのあたりまでの前半はなかなか面白いのだ。一体彼等はどのようにしてこの迷宮から脱出するのか、また誰が何の目的でこのようなトラップを仕掛けたのか、と誰でも後半が楽しみになるだろう。ところが何も解決しないのだ。
 またそもそもこのゲームの設定に全くリアリティーを感じられない。なぜこんな不明なゲームに大金をはたいて参加するのか、なぜクリステンだけが全裸で拘束されるのか。
 さらに謎自体も陳腐で無理矢理創った感があり、解答を見ても全く納得感が湧いてこない。それに6人のうち謎を解くのはほとんどタイラーで、他のメンバーたちはただ殺されるためだけに存在しているようだった。もう少し各人の特技などを発揮できるシーンがあっても良かったと思うのだが…。
 
 本作はネットの評価をみても最悪である。そして私も含めてほとんどの人が2020年上映の同名の映画と勘違いして観てしまったと言うのだ。そしてそちらのほうが本作よりずっと評価が高いのである。タイトルが同じで内容も似ている映画と言えば、後で製作したほうが偽物のはずであるが、ところが評価は大逆転していると言うのはなかなか興味深い。できればその2020年版の『エスケープ・ルーム』を鑑賞してみたいね。
 
評:蔵研人

 

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2022年1月 2日 (日)

デス・ウィッシュ

★★★☆
 
製作:2018年 米国 上映時間:107分 監督:イーライ・ロス
 
 かつてあのチャールス・ブロンソンが主役を演じた『狼よさらば』をリメイクしたアクション作品。本作の主演はダイハードのブルース・ウィルスである。
 普段は真面目で暴力を振るわない外科医のポール・カージー(ブルース・ウィリス)だったが、彼が急務で病院に出勤した隙に数人の強盗が侵入する。そしてちょっとしたはずみで妻と娘が銃弾を浴び、妻は死亡し娘は昏睡状態になってしまう。
 すぐに警察の捜査が始まるのだが、犯罪が多発しているシカゴでは、なかなか捜査が進展しない。そんな状況にだんだん怒りを抑えきれなくなったポールは、自分自身で犯人を探し出して抹殺することを決意するのだった。
 
 急変したポールが極悪人どもを次々に処刑するシーンは胸がスカッとする。だがその中には犯行現場の描写がない者もいるため、なんだかポールが遊び半分に殺人ゲームを楽しんでいるようにも感じた。またポールの家族が襲われたシーンも、『狼よさらば』に比べるとだいぶ穏やかである。
 もちろん極悪人たちの過激な犯行シーンは見たくはない。だがそれが余りないので、ポールの処刑も残虐性ばかりがクローズアップされてしまった感がある。またポールの私的処刑は、正義の鉄槌で正当性があるのか、いや法を犯した犯罪者に過ぎないのか、の議論はなんとなく邦画の『デスノート』と似ている。それにしても60代のブルース・ウィルスさん、ちょっとフラフラ気味だが、よく頑張っているよね。
 
 
評:蔵研人

 

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2021年12月30日 (木)

ザ・コンサルタント

★★★★
製作:2016年 米国 上映時間:128分 監督:ギャヴィン・オコナー
 
 原題は『THE ACCOUNTANT』(会計士)なのに、なぜ邦題は『ザ・コンサルタント』になってしまったのだろうか。そもそも主人公のクリスチャン・ウルフはアスペルガー障害でとてつもなく数字に強い。だから数字を扱う会計士の仕事をしているのだから、わざわざコンサルタントという邦題に変更する必要はなかったと思うのだが…。もしかするとアカウンタントでは馴染みがないし、「会計士」と翻訳すると堅苦しく感じるからかもしれないね。
 
 まあそんなことはどちらでも良いのだが、ズバリ内容のほうはとても素晴らしかった。それは主人公のクリスチャンが、表の顔が会計士で難解な企業不正を天才的な調査能力で暴き、裏の顔では超人的な格闘術と射撃力で悪人たちを退治する凄腕の暗殺者という二つの顔を持っているからである。
 これらの能力を具体的にまとめると、15年間の膨大な帳簿から1夜にして不正を読み取る数学脳、超長距離からでもライフルで射止められるゴルゴ13的狙撃力、相手の行動を先読みし瞬時に対抗策を講じる予知能力、死んだ標的にもダメ押しのトドメを刺す完璧主義、などなどきりがない。そして常にクールで用心深いのだが、身の危険を顧みず善人を助ける優しさも身についている。
 
 今回の話の内容は、小さな町で会計士として働くクリスチャンのもとに、ある大手企業からの財務調査のオファーが寄せられるところから始まる。彼はその調査をなんと一日で済ませて、重大な不正を発見することになる。ところがなぜか、依頼は突然取り下げられてしまう。最後まで完璧に終わらせないと気の済まないクリスチャンなのだが、それ以降に身の危険を感じるようになる。…そして悪人たちとの戦闘という展開である。
 
 まあこれだけの話なら必殺仕事人のような話なのだが、なぜ彼が超人的な力を得ることが出来たのか、AIのような声で彼に指令を出しているのは誰か、子供のころにいつも一緒だった弟は何をしているのか、なぜ潰れた水筒を持っているのか、なぜ財務省捜査官は部下に彼の身元調査をさせたのか、などなどいろいろな謎の伏線が張られているのだが、それらの全てがラストまで解明されてゆく。
 
 人によっては分かり難い作品に感じるかもしれない。だがスカッとするアクションに、奥行きのある脚本が絡んだ味わい深い作品であることも否めないだろう。また主人公のクリスチャンを演じたのは、バットマンを演じたベン・アフレックで、さすがその逞しい肉体に加えスピード感のあるシャープなアクションには魅入られてしまった。
 
 これだけ綿密に編まれた作品を一回限りで終わらせるのはもったいない。それに経理部のダナや捜査官のメディナ、それに弟との関係も中途半端なままだし、これは続編というよりシリーズ化するべきだと思っていた。
 そうしたらその続編が製作されることが先日発表され、なんと三部作になる予定らしい。これも本作が大ヒットしたからに違いない。
 
 
評:蔵研人

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2021年12月28日 (火)

アウトランダー

著者:ダイアナ・ガバルトン
訳者:加藤洋子
米国TVドラマ シーズン5まで全67話が放映済だがまだ続く予定
 
 とにかく原作は大長編小説である。なにせ『アウトランダー』というタイトルはシリーズ名ということであり、『時の旅人クレアI~Ⅲ』『ジェイミーの墓標I~Ⅲ』『時の彼方の再会I~Ⅲ』『妖精の丘にふたたびI~Ⅲ』『燃ゆる十字架のもとにⅠ~Ⅳ』『炎の山稜を越えてI~Ⅳ』『遥かなる時のこだまI~Ⅲ』の23冊という大構成になっている。しかも一冊が平均500頁と分厚く、そう簡単には読めない。従ってここでは、既に放映済のTVドラマシーズン5までのうち1~3をまとめて簡単に紹介したい。
 
 ストーリーは、第二次大戦終結直後、従軍看護婦だったクレアが、夫・フランクと一緒にスコットランドのハイランド地方で休暇を過ごすところからはじまる。そして不思議な言い伝えのあるストーン・サークルを訪れた彼女は、突如異様な感覚に襲われ、意識が混濁してしまう。気がつくと、古めかしい衣裳の戦士たちが眼前で戦いを繰り広げているではないか。なんと彼女は18世紀にタイムスリップしていたのであった。
 
 ここからクレアが過去で体験する波乱万丈の物語が始まる。そのとき彼女は、過去の世界には存在しない薄物の服をまとっていたため、下着でうろついている娼婦と勘違いされてしまう。さらになんとこの時代で最初に遭遇したのが、フランクと瓜二つのイングランド軍のジャック・ランダル大尉だった。実は彼こそフランクのご先祖様で、顔こそフランクそっくりだが、性格は正反対でしつこいサイコ野郎なのだ。
 また彼は、この世界でクレアの夫となるジェイミーとも悪い因縁を持っており二人に執拗に絡んでくる。つまりこの物語の前半では、ジャック・ランダル大尉が最悪の敵役を務めることになるのである。
 
 主人公のクレア役を演じたのは、元モデルのカトリーナ・バルフで、長身でスタイル抜群のうえ、まるでベテラン女優のような存在感が漂っているではないか。またジェイミーとの濡れ場が多く、惜しげなくその美しい全裸を晒してくれるのだ。同様にジェイミー役のサム・ヒューアンも、美しい自然な筋肉美と全裸を十二分に披露してくれる。いずれにせよ、よくも素晴らしい主人公二人を見つけ出したものである。
 また本作は映画を凌ぐほどのスケール感を誇り、過去の建物や衣装などはもとより、不潔・不衛生・危険が伴う時代考証も正確に描き切っているところが凄いのだ。
 
 さて本作のジャンルは、基本的に「ラブファンタジー」と呼んでも良いだろう。また主人公のクレアとジェイミーは美女美男なのだが、ともに気性が激しく頑固で逞しい。そして時にはお互いを罵り合うのだが、逆にそのつど愛を深めていくのである。ただいつもクレアの頑固さが原因で、皆が迷惑を被ったり窮地に陥ってしまう展開にはかなりイライラされられてしまう。
 そんなイライラ感が高じて、何度か嫌気が差してしまったことも否めない。ジェイミーが甘過ぎるのかもしれないが、クレアがもう少し素直になっても良いのだが…。
 
 シーズン1では、ヒロインのクレアが、期せずして過去の世界にタイムスリップしてしまう。そこで彼女は、時代を無視した無謀さが原因で、スパイ容疑をかけられてしまう。その容疑から逃れるため、やむなく自分より年下の美男子ジェイミーと結婚する。
 また当初は元の世界に帰りたかったクレアだったが、ジェイミーと躰を重ね、共に艱難辛苦を乗り越えながら生きているうちに、だんだん強い愛情が芽生えてゆき、彼の子を宿すことになる。
 
 シーズン2では、パリへ逃げ延びたクレアとジェイミーたちが、歴史上大勢のハイランドが虐殺された「カローデンの戦い」を回避しようと政治的にいろいろ画策する。だが結局は歴史を覆すことはできないどころか、ジェイミーもその戦いに参加せざるを得ない状況に追い込まれてしまう。死を覚悟したジェイミーは、妊娠したクレアと胎児を守るため、彼女を無理矢理ストーン・サークルから現代にタイムスリップさせてしまう。
 
 シーズン3では、クレアは現代で「カローデンの戦い」を乗り越えジェイミーが、その後も生き延びたことを証明する資料を発見する。そして娘のブリアナが20歳になる年に、再び一人で最愛のジェイミーの住む過去へ旅立ってゆく。多分50歳を超えているクレアであるが、白髪がちらつく程度で相変わらず美貌を誇り、気性が激しく頑固なところも全く変わらない。
 
 ざっとシーズン3までのあらすじを殴り書きにしてみたが、中身はずしんと重い。年を重ねたジェイミーはかなり丸くなっているのだが、クレアのほうは相変わらずの頑固者で、医師の資格を取ったためか、さらにプライドが高くなり無謀さ健在、まるで「迷惑の根源」のようだ。このあたりでイライラ感が、だんだんクレアに対する腹正しさに変化してゆくのは私だけではないはずである。
 
評:蔵研人

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