カテゴリー「映画・テレビ」の記事

2026年8月11日 (火)

28週後...

28

★★★☆
製作:2008年 英国 上映時間:104分 監督:ファン・カルロス・フレスナディージョ

 本作は、2002年のサバイバルスリラー『28日後…』の続編である。
 新種ウイルス〈RAGE(レイジ)〉の蔓延によって壊滅したロンドン。発生から28週が経ち、ようやく街の再建が始まろうとしていた頃、スペイン旅行で難を逃れた姉弟タミーとアンディが帰国し、軍の管理下に置かれた保護区域で父ドンと再会する。

 母の死を知らされた二人は、遺品を取りに行くため保護区域を抜け出し自宅へ向かうが、そこで待っていたのは“死んだはずの”母アリスだった。救出されたアリスは検査の結果、感染しても発症しないキャリアであることが判明する。しかし、ウイルスを保持していることに変わりはなく、面会に訪れたドンが感染したことで、沈静化していたロンドンは再び恐怖の渦へと飲み込まれていく。

 前作同様、感染者たちの動きは凄まじく速い。ゆっくり歩くゾンビ像に慣れた観客にとって、その異様な俊敏さは受け入れがたいものがある。「彼らはゾンビではなく感染者だ」と説明されても、病人があれほど活発に動き回る姿にはどうしても違和感が残る。逃走シーンの疾走ぶりは、まるで『ミッション:インポッシブル』の“トム走り”を彷彿とさせ、ホラーというよりアクション映画へと変貌してしまった印象すらある。

 せっかく再建の兆しを見せていたロンドンが再び崩壊したのは、二人の子どもが規則を破り、軽率な行動を取ったことが原因である。そして皮肉なことに、生き残るのはその二人だけだという結末が待っている。残念だが観終えた後には、どうにも割り切れない不快感が残る作品であった。

評:蔵研人

 

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2026年8月 9日 (日)

アナザー・ワールド 異次元の怪物

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★★☆
製作:2020年 ロシア 上映時間:96分 監督:スビヤトスラフ・ポドガイエフスキー

 生まれたばかりの赤ん坊ヴァーリヤの世話のため、アレクセイ一家はタチアナというどこか不穏な気配を漂わせるベビーシッターを雇う。だが、いつしか彼女とヴァーリヤは忽然と姿を消してしまう。息子イゴールは両親に必死に訴えるものの、なぜか彼らの記憶からはヴァーリヤの存在そのものが抜け落ちていた。

 やむなくイゴールは友人たちとともに、深い森へと分け入り、妹の行方を追う。やがて森の奥で見つけた古びた家────そこは、異次元へと通じる入口だった。ヴァーリヤはきっとその向こうに連れ去られたに違いない。そう確信した彼らは、未知の世界へと足を踏み入れるのだが……。

 序盤は謎めいた導入が興味を引き、物語への期待を抱かせる。しかし、現れる怪物たちには恐怖の実感が乏しく、なぜ赤ん坊がその世界へ連れ去られたのかという根本的な動機も明確には語られない。あるいはこれは、亡き母を忘れられないイゴールの内面が生み出した心象風景なのかもしれないが、その解釈も十分に掘り下げられているとは言い難い。

 登場人物は限られ、舞台も同じ場所を巡るばかりで、物語は奥行きを欠いたまま進んでいく。結果として、全体に重みや余韻が乏しく、どこか満たされない感覚が残る。ロシア映画にしばしば見られる幻想性と寓意性の片鱗は感じられるものの、本作においてはそれが十分に結実しているとは言い難く、あと一歩の深みが欲しいところであった。


評:蔵研人

 

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2026年8月 7日 (金)

ワーキングマン

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★★★☆
製作:2026年 米国 上映時間:116分 監督:デビッド・エアー

 元特殊部隊員のレヴォン・ケイド(ジェイソン・ステイサム)は、危険と隣り合わせの世界から身を引き、建築現場の監督として静かな日々を送っていた。だがある日、恩人でもある上司の娘ジェニーが忽然と姿を消す。彼女はロシア系の巨大な人身売買組織に拉致されていたのだ。
 レヴォンは封印していた特殊部隊時代の技を解き放ち、建設現場で使い慣れた工具から軍用火器までを手に、たったひとりで犯罪組織へと立ち向かっていく。

 物語は、ステイサム作品ではおなじみの“孤高の男の逆襲劇”であり、前年に製作された『ビーキーパー』と職業設定こそ異なるものの、基本的な構図はほとんど同じだ。それもそのはず、両作とも監督はデビッド・エアーである。
 ただ本作では、主人公が敵を一切ためらわずに殺害し、人質を盾にされても一瞬の隙を逃さず射撃で仕留めるなど、まるで殺人マシンのようなアクションが続く。その徹底ぶりが、観客に妙な安心感とカタルシスをもたらしてくれるのだ。

 それにしても、60歳を目前にしながら、米国人としては小柄な体格にもかかわらず、不死身のタフガイを演じ続けるジェイソン・ステイサムには頭が下がる。彼の魅力は筋肉よりも、あの鋭い“強面”に宿るのだろう。そう考えると、半世紀前に同じく強面で観客を魅了したチャールズ・ブロンソンと、どこか通じるものがあるように思えてならない。


評:蔵研人

 

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2026年8月 5日 (水)

2300年から来た男

2300

★★
製作:2022年 米国 上映時間:117分 監督:リシェラー・アラディン

 本作でメガホンを取ったリシェラー・アラディンは、これが唯一の監督作品であるという。経歴の詳細は不明だが、その仕上がりを見る限り、経験の乏しさを疑われても致し方ない出来と言わざるを得ない。

 物語は、2300年からある使命を帯びて2023年へとやって来た男アシュトンを中心に展開する。彼はネット上で「謎の預言者」として活動を始め、近未来に起こる出来事を次々と的中させていく。その結果、人々の関心を集め、やがてマスコミも巻き込んで騒動は広がっていく。

 導入部の流れ自体は決して悪くない。むしろ、発想としては興味をそそられるものがある。しかし、その後の警察の対応や物語の展開はどこか噛み合わず、観る者を作品世界へと引き込む力に欠けている。

 また、本作は低予算SFの典型とも言える作りで、未来の描写はほとんど省略され、会話によって説明が補われるばかりだ。その結果、肝心の「未来で何が起きたのか」「なぜ過去に来たのか」「どうすれば世界を救えるのか」といった核心が曖昧なまま残され、物語は終始輪郭を結ばない。

 脚本の奥行きは浅く、視覚的な見どころにも乏しい中で、約2時間という上映時間はかなり長く感じられる。興味深い設定を持ちながら、それを十分に活かしきれなかった点が惜しまれる一本である。

評:蔵研人

 

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2026年8月 2日 (日)

ザ・レイク

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★★☆
製作:1960年 タイ・豪州 上映時間:104分 監督:リー・トーンカム

 珍しいタイ産の怪獣映画である。湖畔に放置されていた巨大な卵を拾い帰る少女。しかし姉に諭され、元の場所へ戻しに行くことになる。やがて少女の帰りが遅いことを案じた姉と兄が湖へ向かうと、その静寂を切り裂くように怪獣が姿を現し、彼らに襲いかかる。

 序盤は、不穏な気配をじわじわと滲ませる演出が印象的である。半魚人とエイリアンを掛け合わせたかのような怪獣の造形も一定の完成度を備えており、物語の行方に期待を抱かせる導入であった。

 しかし中盤以降、その緊張は不意に弛緩してしまう。怪獣も人々もどこか緩慢な動きを見せ、あたかもスローモーションの映像を眺めているかのようで、切迫した恐怖が伝わってこない。さらに終盤では仏教的な説話が唐突に前面へ現れ、物語は統一感を欠いたまま散漫に終息へと向かう。

 怪獣と特定の人間の心がリンクする意味、怪獣出現の理由、少女が助かった経緯、そしてあの巨大な卵の行方などなど、提示された数々の謎は、ついに十分な解答を与えられることなく宙に浮いたままである。そのため、作品全体にどこか釈然としない後味が残る。

 本作は果たして、純然たるモンスターパニックとして構想されたのか、それとも宗教的寓意を帯びた物語を志向していたのか。その輪郭は最後まで明確にはならず、むしろ両者の狭間で揺れ動いた痕跡こそが、本作の最も印象的な特徴と言えるのかもしれない。

評:蔵研人

 

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2026年7月31日 (金)

ヒックとドラゴン

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★★★★
製作:2025年 米国 上映時間:125分 監督:ディーン・デュボア

  本作は、ドリームワークス・アニメーションによる名作『ヒックとドラゴン』を実写化したものであり、登場人物や背景、物語の骨格に至るまで、原作の魅力を丁寧に映像へと移し替えている点が印象的である。とりわけドラゴンの瞳の愛らしさは観る者の心を和ませ、さらにヒックを演じる少年の柔和で端正な佇まいが、作品全体に温かな余韻をもたらしている。

 島を取り巻く緑豊かな風景は、最新の映像技術によって緻密に描き出されており、その幻想的な美しさは、いつしか観客を物語の深みへと誘い込む。現実と虚構の境界が穏やかに溶け合うその感覚は、本作ならではの魅力といえるだろう。

 総じて本作は、近年のファミリー向けアドベンチャー映画の中でもひときわ完成度の高い一本であり、新たな金字塔となる可能性を秘めている。世代を問わず、家族そろって劇場で味わうにふさわしい作品である。

評:蔵研人

 

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2026年7月29日 (水)

グラディエーター

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★★★★
製作:2000年 米国 上映時間:155分 監督:リドリー・スコット

 さすがリドリー・スコット監督、久し振りにとんでもない迫力映像と、胸を打たれるスペクタクル作品に出会った。それもまだCG技術が完璧でなかった2000年に製作されているのだから驚きだ。

 特筆すべきは、その映像の迫力である。古代コロッセオの全景や観客席の拡張、猛獣が襲いかかる場面などにはデジタル合成やCGが用いられているものの、本作の核はあくまで実写にある。重厚なセット、ロケーション撮影、エキストラやスタントの積み重ねが生む現実感は、公開から長い年月を経た今なお色褪せることがない。むしろ、その物質的な重量感こそが、現代の映像作品には稀有な説得力を与えていると言えるだろう。

 主人公マキシマスを演じたラッセル・クロウもまた見事である。決して誇張された体躯に頼ることなく、内に秘めた激情と哀切を滲ませる演技によって、将軍としての威厳と一人の人間としての苦悩を体現した。その存在感は揺るぎなく、彼以外の配役は想像し難い。

 近年、このような大規模な歴史スペクタクル、とりわけヨーロッパ的時代劇が減少していることは、いささか寂しい限りである。本作は、ベン・ハーや十戒、スパルタカスなどと並び、ハリウッド史における歴史大作の系譜に連なる一作として記憶されるべき完成度を備えている。事実、第73回アカデミー賞において作品賞を受賞したことも、その価値を裏付けていると言えよう。

評:蔵研人

 

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2026年7月27日 (月)

リザード

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★★★
製作:2022年 タイ 上映時間:149分 監督:チャリット・クリリードモンコ

 タイトルそのままの巨大なトカゲが出現する、いわゆるB級パニック映画である。舞台は土埃の舞う乾燥地帯。怪獣はその地下に潜み、まるでモグラのように地中を自在に走り回り、不意に地表へと現れて人々に襲いかかる。

 本作中でも冗談めかして触れられているが、地中から獲物を狙うという発想は、アメリカ映画『トレマーズ』の影響を思わせる。またこの怪獣は、『大怪獣バラン』さながらに空中を滑空する能力まで備えており、厄介さに拍車をかけている。ただ、その愛嬌のある目つきは怪獣らしい威圧感にやや欠け、造形としてはどこか不均衡な印象も否めない。

 物語は、乾燥地帯で水脈を発見した者に賞金が与えられるという噂を聞きつけ、多くの賞金稼ぎが集まるところから始まる。しかし彼らは次々と怪獣の餌食となっていく────という、いかにも怪獣映画の王道を踏襲した展開である。可もなく不可もない筋立てではあるが、149分という上映時間はいささか冗長に感じられる。

 決して退屈な作品ではない。しかし、普段あまり触れる機会のないタイ映画であるためか、俳優の佇まいやユーモアの質に微妙なズレを覚え、物語世界に深く没入するには至らなかったのが惜しまれる。それでもなお、怪獣の造形が一定の水準に達している点は、本作のささやかながら確かな魅力と言えるだろう。

評:蔵研人

 

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2026年7月24日 (金)

一秒先の彼

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★★★☆
製作:2023年 日本 上映時間:119分 監督:山下敦弘

 台湾映画『一秒先の彼女』を日本の風土に移し替えたリメイク作品である。物語の大きな流れはオリジナルを踏襲しているが、主人公が女性から男性へと置き換えられたことで、作品の温度感や視点が微妙に変化している点が興味深い。

 イケメン郵便局員のハジメは、第一印象こそ良いものの、何事も人より“ワンテンポ早い”性質のため、恋愛が長続きしない。そんな彼が、路上ミュージシャンの桜子の透明な歌声に心を奪われ、花火大会でのデートを約束する。しかし、バスに乗っていたはずのハジメは、気がつくと自宅で目覚めており、花火大会はすでに終わっている。彼の一日は、まるで誰かに切り取られたかのように忽然と消えていた。

 やがてハジメは、この“消えた一日”の謎を、郵便局に毎日のように現れる「ワンテンポ遅い」女性・レイカが握っていることに気づく。二人の“時間のズレ”が、物語の中心に静かに据えられていく。

 見どころの一つは、時間が静止した世界を描くシーンである。だが注意深く観察すると、近くの人物の衣服は風に揺れ、身体もわずかに動いているのに対し、遠景の人々は写真のように完全に静止している。この差異は、近景では俳優が静止を演じ、遠景では静止画を合成しているためだろう。もちろん、こうした技術的な粗さは物語の本質を損なうものではないが、時間停止という幻想的な瞬間にわずかな現実の綻びが覗く点は、観客によって好みが分かれるかもしれない。

 リメイクゆえに結末の驚きが薄れてしまうのは避けがたいが、その代わりに本作は、男女を入れ替えたことで生まれる新たな情緒を獲得している。岡田将生の繊細な佇まいと、清原果耶の静かな強さを湛えた演技は、作品全体に柔らかな光を与え、二人の“時間の距離”が縮まっていく過程に自然な説得力をもたらしている。

 オリジナルの鮮烈な仕掛けを知っている観客にとっては驚きが弱まる一方で、日本版は人物の心の揺らぎや孤独の質感を丁寧に描き出し、別種の余韻を残す作品へと仕上がっている。男女を入れ替えた判断は、単なる設定変更ではなく、物語の感触そのものを刷新する効果をもたらしたと言えるだろう。

評:蔵研人

 

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2026年7月22日 (水)

リバース 過去の代償

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★★★
製作:2021年 英国 上映時間:96分 監督:ジム・イーヴス

 家族を顧みず、酒に溺れ、職場の同僚との不倫関係に溺れていたアーリン。そんなある夜の飲酒運転が悲劇を呼び、同乗していた一人息子を失い、仕事も家庭も失うことになる。絶望の淵で、彼女の前に一人の男が現れ、「不可能を可能に」と書かれたチラシを手渡す。最初は無視するアーリンだったが、精神に異常をきたす日々の中で、チラシに記された『エンデバー・インスティテュート社』を訪れる決心をする。

 そこは、過去をやり直すことができるという不思議な施設だった。無理やり薬を飲まされ、目を覚ますと、数日前に戻っており、死んだはずの息子が目の前にいた。今度こそ、酒も浮気もやめ、誠実に生きようと決意するアーリン。しかし、過去の記憶が交錯するたびに異常な行動に走り、何度過去をやり直しても事態はうまく収まらない。

 観客として、これは単なるタイムループ映画なのだろうか、あるいはアーリン自身に何か秘密があるのか────脳内に埋め込まれたチップが暴走するサイボーグの可能性さえ、頭をよぎる。しかし、確たる答えには至らない。ストーリーはやや粗削りでありながら、結末への期待は募るばかりだった。
 ところが、いつの間にか物語は予想外で余り期待しないエンディングへと突入し、いくつもの謎を残したまま幕を閉じてしまう。とても後味が悪いし、消化不良で残酷な結末にも共感できなかった。


評:蔵研人

 

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