5年前に胃がんの手術をしてから、ツアー旅行は一切利用せず、自家用車を使った一泊旅行でお茶を濁していた。しかしながら10月より全国旅行支援が実施され、交通費を含めたツアー旅行がかなりお得になりそうなので、思い切ってそれまで行きそびれていた『琵琶湖周辺と比叡山へのツアー』を計画することにしたのである。
ただし手術で胃を半分切除した影響で、いまだに胃腸の機能が不完全であるため、時間に縛られ観光バスを多用する旅行会社の通常ツアーに参加する自信はない。それで旅行会社経由で、交通費と宿泊費のセットプランを申し込み、自分で旅程を作成するいわゆる「個人ツアー」を実行することにしたのである。
従って旅程はかなり緩やかで、ある程度途中変更も可能な柔軟な計画を練ってみた。だが全く知らない場所であり、ローカル線や路線バスの運行本数の少なさなども考慮しなければならないため、行き当たりばったりという訳にもゆかない。それで事前にネットで電車やバスの乗り場や時刻表を調べながら、何度も旅程をひっくり返すことになる。結局四苦八苦しながら最終的にざっと次のような旅程に決めた。
●1日目
東京(新幹線)⇒京都(琵琶湖線)⇒石山(バス)⇒石山寺山門前・・・・・石山寺参拝(約3時間)
石山寺山門前(バス)⇒石山(琵琶湖線)⇒草津・・・ホテル宿泊
●2日目
草津(琵琶湖線)⇒石山・・・京阪石山(京阪石山坂本線)⇒坂本比叡山口(バス)⇒ケーブル坂本(ケーブルカー)⇒ケーブル延暦寺・・・延暦寺東塔地域参拝⇒シャトルバス⇒延暦寺西塔地域参拝⇒シャトルバス⇒東塔地域(約3時間)
・・・ケーブル延暦寺(ケーブルカー)⇒ケーブル坂本(バス)⇒坂本比叡山口・・・周辺の門前町を散策・・・
坂本比叡山口(京阪石山坂本線)⇒三井寺・・・・・三井寺参拝(約2時間)
三井寺(京阪石山坂本線)⇒びわ湖浜大津・・・三井寺力餅本家・・・大津港散策・・・びわ湖浜大津(京阪石山坂本線)⇒京阪石山・・・石山(琵琶湖線)⇒草津・・・ホテル宿泊
なお京阪石山から先の全区間については、乗り降り自由で延暦寺拝観料も含む『比叡山延暦寺巡拝 大津線きっぷ』2900円を使用することにより、スムースかつ廉価な旅を満喫できたのが嬉しい。
●3日目
草津(琵琶湖線)⇒近江八幡(バス)⇒小幡町資料館前・・・・・郷土資料館・古い商家の家並み・八幡堀・八幡神社など散策(約3時間)
小幡町資料館前(バス)⇒近江八幡(琵琶湖線)⇒京都(新幹線)⇒東京
旅程表を見れば一目瞭然だが、今回の旅の主目的は比叡山延暦寺である。ただ延暦寺最大の見どころである「根本中堂」が約10年の歳月をかけて大改修を行っている最中で、薄暗い本堂の中には入れるものの、外観は工事用のパネルに覆われていて全く見えなかったのが残念であった。ただ西塔地域は、賑やかな東塔とは対照的で、苔むした木々に囲まれた静寂感が旅情をかきたててくれたのが嬉しかった。
工事中の根本中堂
東塔地域の阿弥陀堂と東塔
西塔地域の法華堂
それにしても比叡山延暦寺はだだっ広い。シャトルバスに乗ればさらに横川地域へも行けるのだが、帰りの時間が気になるので今回は省略して下山することにした。
入山した時と同じケーブルカーで下山したのだが、このケーブルカーは日本最長の2025mを誇り、片道11分を要するのである。とにかく恐ろしく長いし、途中トンネルが数か所あるのも珍しい。また琵琶湖の景観も素晴らしいので、比叡山延暦寺を訪れる場合は、是非このケーブルカーに乗って欲しいものである。
ケーブルカーから琵琶湖を望む
ケーブル比叡山駅から琵琶湖を眺める
またケーブルカー坂本駅からバスに乗って京阪石山坂本線の坂本比叡山口まで戻るのだが、そのまま帰ってしまうと後悔することになる。できれば途中の日吉大社入口というバス停で途中下車したい。そして駅まで続く風情ある並木道を歩いてみよう。またこの門前町にある生源寺には、比叡山を開山した最澄が産まれたとき、産湯の水を汲んだという井戸がある。あまり期待していなかったのだが、なかなか心地よく楽しい「坂本散歩」であった。
紅葉の美しい並木道で坂本散歩
このあと京阪石山坂本線で帰路に就くのだが、途中の三井寺という駅で下車し『三井寺(園城寺)』に立ち寄ってみた。この三井寺の創建は7世紀頃と伝えられており、その長い歴史の中で幾度ともなく伽藍焼失と再建を繰り返し「不死鳥の寺」とも呼ばれているという。また国宝や県の重要文化財も数多く所蔵しており、境内も広く数多くの見所があり、桜や紅葉の名所となっていて風情豊かな光景を楽しむこともできる。
このように三井寺は由緒ある素晴らしい寺院なのだが、本日までお寺ばかり巡ってきた影響か多少疲れが出てしまい、駆け足で参拝してしまったのが悔やまれる。逆に初日に参拝した石山寺のほうが、なんとなく印象に残っているのだ。
三井寺仁王門
三井寺金堂
その石山寺とは、琵琶湖に流れる清流瀬田川のほとり、伽藍山の麓に位置し、奈良時代から観音の聖地だったと言われている。また縁起によれば、石山寺は天平19年に聖武天皇の勅願にて良弁僧正が創建したとされ、現在も安産、福徳、縁結びなどに霊験あらたかな仏様として信仰を集めているようである。
さらに平安時代には貴族達の間で石山詣が流行し、紫式部が参籠の折に『源氏物語』の着想を得たと言われている。ほかにも『枕草子』『蜻蛉日記』『更級日記』などの文学作品に登場するなど、石山寺は平安王朝文学の開花の舞台となった。したがって文学の寺として絵画・聖教・典籍など数多くの歴史的な寺宝を有しているという。
石山寺本堂
紫式部像、後ろに見えるのは光堂
広い境内はかなり起伏に富んでおり、ゆっくり巡れば楽に2時間以上はかかるだろう。春は梅、桜、つつじ、牡丹、夏は紫陽花、百日紅などの開花が見どころだと言うが、なんと言っても秋の紅葉の美しさは、まるで絵画から飛び出たようで感動的である。この紅葉を見ただけでも「十分満足」と言っても過言ではないだろう。そして境内めぐりが終わった後、東大門前にある叶匠寿庵で食べる『石餅』の味も、風情がありなかなかおつなものであった。
石山寺の庭園・無憂園
叶匠寿庵で食べた『石餅』
ここまでお寺巡りばかりが続いたが、最終日は新幹線に乗る前にびわ湖線で近江八幡駅まで戻って、近江商人たちの古き商人町を散策することにした。3日目の旅路を迎え、寺巡りの疲れがどっと出てしまい、予定より1時間ほど寝坊してしまったが、京都発3時半の新幹線にはだいぶ余裕がある。
近江八幡駅でコインロッカーに荷物を入れて、駅前のロータリーからバスに乗ると、なんと急に雨が降ってくるではないか。天気予報では午後から一時雨となっていたのに、午前10時前からザアザア降りになってしまったのである。
バスに10分位乗車して、小幡町資料館前という停留所で降りたが、雨足はさらに激しくなってくるばかりだ。ずぶ濡れになりながらも、そこから約100メートル先にある郷土資料館に飛び込んだ。
雨宿りも兼ねて郷土資料館周辺にある『歴史民俗資料館』、『旧西川家住宅』、『旧伴家住宅』等の共通入場券を購入し、これらをゆっくり順に巡ることにした。ここでは近江八幡に開城した豊臣秀次の人物紹介や、その功績などが学べるし、昔の近江商人たちの居室や店舗などを見学することができる。
なんとこれらを見学している途中で、運よく土砂降りだった雨が降りやんでくれた。それで急いで古き商人町の町並みを散策したのだが、残念ながら期待していたほどの旧町並みは存在せず、今見学したばかりの旧西川家住宅や旧伴家住宅を含む数件の旧家しか見当たらないのだ。
旧商家の町並み
旧商家の住宅内部
まあこんなものかなと考え直し、近くの八幡掘りをぶらり散策してみた。ここではちょうど、八幡掘り巡りの小型定期船を間近に見ることが出来てなかなか趣があった。そのあと八幡神社にお参りした後、千成亭という牛肉専門店で近江牛のすき焼きを食べて、近江八幡観光は手仕舞いすることにした。
さて帰路は、近江八幡駅行のバスが5分遅れたことと、駅のコインロッカーから荷物を引き出すのに手間取ったため、駅のホームに着いた瞬間に列車が発車してしまったのだ。それになんと次の列車は30分後だと、電光掲示板に表示されているではないか!。なんだそんな田舎だったんだと溜息をつきながら、次の列車を待つことになってしまったのである。
八幡堀遊歩道の散策
千成亭の近江牛すき焼き
こんな流れで滋賀個人ツアーは終わるのだが、初めて経験する個人ツアーだったため、とにかくいろいろと反省することや勉強になったことが多かった。
ホテルの予約は完了しても、JRの予約は1か月超の部分はできない。従ってツアーを組んだ日が、出発日より1か月超前だったため、新幹線の往路・復路の予約が、全て旅行会社任せになってしまったのだ。その結果、往路の第一希望である「のぞみ号」が確保できず、そのあとの「ひかり号」に割り振られてしまったのである。このため当初予定より、約1時間ばかり遅く京都に到着することになってしまったのだ。この1時間は大きい。午後5時までの見学場所が多いからである。
もしちょうど1か月前に予約していれば、少なくとも往路は自分で予約がとれるため、第一希望の列車を確保できたはずである。というのも旅行会社のお任せ予約だと、復路が1か月以内になる日まで予約作業をしないので、その間に往路の予約が取り辛くなってしまうのだ。それでも通常なら2~3日のずれ位なら、希望通りの列車が確保できると思うのだが、この度のように全国旅行支援が実施されて混雑しているときは僅か数日間のズレでも確保できなくなるのだろう。
また今回利用した「旅行会社経由の新幹線と宿泊費のセットプラン」はいかにもお得なプランのように宣伝されているのだが、ある落とし穴があることが分かった。それは時間帯によっては、新幹線の追加料金を取られるというシステムである。これが意外にもかなりの金額で、便利な時間帯を希望するとセットプランで得た割引額がほとんど消えてしまうのだ。
従って場合によっては、宿泊セットプランを利用するより、「えきねっとトクだ値」などのプランを利用したほうがお得かもしれない。ただ今回は全国旅行支援を利用したためこの方法で間違いはなかったのだが…。
それにしても疲れた。毎日寺社巡りが続いて2万歩前後歩かされたこともあるが、限られた時間の中で最良の旅程を計画・実行することもきつかったのだ。また観光バスや自家用車を使わずに、本数の限られたローカル線や路線バスの時刻表を気にしながら「ギリギリ観光」すること自体がしんどいのである。
当たり前だが、それに比べれば、やっぱり旅行会社主催のツアー旅行の便利さとコスパの良さは抜群だね。なんの準備も予備知識も必要なく、荷物は観光バスが運んでくれるし、ピンポイントで観光名所を効率よく回れるからね。まあとは言っても、自分は長時間バスに乗れないのだから仕方がないし、今回はいろいろ勉強になったので良しとしておこうか。
作:蔵研人
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