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2026年9月27日 (日)

木挽町のあだ討ち

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★★★★☆
著者:永井紗耶子

 第169回直木賞と第36回山本周五郎賞を同時受賞した話題作である。父を殺めた下男を見事に討ち果たした若侍の物語だが、これは単なるあだ討ち譚にとどまらない。筋立ての妙もさることながら、何より物語の運び方と構成の巧みさに心を奪われる。

 あだ討ちを成し遂げるのは、元服前の美少年・伊納菊之助。しかし本作の狂言回しを務めるのは、彼の縁者である加瀬総一郎である。舞台は江戸の芝居小屋・森田座。実質的な主役は、むしろ森田座に身を置く五名の人物たちと言ってもよいだろう。

 物語は第一幕から終幕まで六つのパートに分かれ、それぞれが重要人物の語りによって紡がれていく。

 第一幕「芝居茶屋の場」:吉原育ちで、森田座の木戸芸者となった一八の語り
 第二幕「稽古場の場」:かつて武士であったが失望し、森田座の殺陣師となった与三郎の語り
 第三幕「衣装部屋の場」:芳町上がりで、森田座の女形兼衣装管理を担うほたるの語り
 第四幕「長屋の場」:無口な木彫り職人で、小道具を手掛ける久蔵とその妻の語り
 第五幕「枡席の場」:旗本家の次男坊ながら武士を捨て、森田座で筋書きを創る金治の語り
 終 幕「国元屋敷の場」:あだ討ちを果たし、元服した伊納菊之助自身の語り

 それぞれの語りには、菊之助の人柄やあだ討ちの真相だけでなく、語り手たちが森田座に身を寄せるまでの苦難や生い立ちが織り込まれており、物語に豊かな陰影を与えている。

 本作は時代劇の装いをまといながら、ミステリーを縦糸に、人情を横糸に、そして歌舞伎の世界を絵柄として織り上げた物語である。直木賞受賞も納得の完成度と言えるだろう。

 映画化されたらさぞ面白いだろうと思っていたところ、なんと2026年2月に、狂言回し役・加瀬総一郎を演技派の柄本佑が演じる映画が公開されて好評のようだ。映像での再現もぜひ確かめたいが、すでにラストの謎解きを知ってしまっていることだけが、少しばかり惜しまれる。

評:蔵研人

 

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