アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド
★★★☆
製作:2021年 ドイツ 上映時間:107分 監督:マリア・シュラーダー
ベルリンの博物館で楔形文字の研究に没頭する女性学者アルマは、研究資金を得るため、ある企業が極秘に進める実験に参加することになる。その内容は、ドイツ人女性の膨大な恋愛データと、アルマ自身の性格・欲求をもとに最適化された高性能AIロボットと、三週間の共同生活を送るというものだった。
ロボットの名は「トム」。端正な容姿に穏やかな物腰、豊富な知識と洗練された恋愛スキルを備え、まさに“理想のパートナー”として設計されている。
最初、アルマは彼の過剰な親切や完璧さに不気味さすら覚え、過去の経験から人間関係にも慎重になっていた。しかし、トムは辛抱強く彼女に寄り添い、傷ついた心を少しずつ解きほぐしていく。やがてアルマは、人工物であるはずの彼の中に、奇妙な“人間性”の気配を感じ始める。
本作のテーマ自体は珍しいものではないが、女性が人間、男性がロボットという性別の反転構造が興味深い。これは女性監督であるシュラーダーの視点が色濃く反映されているのだろう。
アルマを演じたマレン・エッゲルトは、中盤まではロボットを嘲笑するような不愛想で刺々しい中年女性を演じているが、物語が進むにつれ、表情が柔らぎ、終盤には可憐さすら漂わせる。演技の変化だけで人物像がここまで魅力的に変わるのかと感心させられた。
また、トム役のダン・スティーブンスも秀逸で、人間らしさと非人間性の境界を絶妙に揺らしながら、微妙な感情の揺れを丁寧に表現している。
人間性の深部に触れようとする誠実な作品であり、静かな余韻を残す佳作である。ただ、ラストがややあっさりと終わってしまう印象があり、もう一歩踏み込んだ情感の高まりを期待していた身としては、少し物足りなさも残った。しかし、その控えめな結末こそが、ドイツ映画らしい“節度”なのかもしれない……。
評:蔵研人
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