ザ・レイク
★★☆
製作:1960年 タイ・豪州 上映時間:104分 監督:リー・トーンカム
珍しいタイ産の怪獣映画である。湖畔に放置されていた巨大な卵を拾い帰る少女。しかし姉に諭され、元の場所へ戻しに行くことになる。やがて少女の帰りが遅いことを案じた姉と兄が湖へ向かうと、その静寂を切り裂くように怪獣が姿を現し、彼らに襲いかかる。
序盤は、不穏な気配をじわじわと滲ませる演出が印象的である。半魚人とエイリアンを掛け合わせたかのような怪獣の造形も一定の完成度を備えており、物語の行方に期待を抱かせる導入であった。
しかし中盤以降、その緊張は不意に弛緩してしまう。怪獣も人々もどこか緩慢な動きを見せ、あたかもスローモーションの映像を眺めているかのようで、切迫した恐怖が伝わってこない。さらに終盤では仏教的な説話が唐突に前面へ現れ、物語は統一感を欠いたまま散漫に終息へと向かう。
怪獣と特定の人間の心がリンクする意味、怪獣出現の理由、少女が助かった経緯、そしてあの巨大な卵の行方などなど、提示された数々の謎は、ついに十分な解答を与えられることなく宙に浮いたままである。そのため、作品全体にどこか釈然としない後味が残る。
本作は果たして、純然たるモンスターパニックとして構想されたのか、それとも宗教的寓意を帯びた物語を志向していたのか。その輪郭は最後まで明確にはならず、むしろ両者の狭間で揺れ動いた痕跡こそが、本作の最も印象的な特徴と言えるのかもしれない。
評:蔵研人
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