プリティ・リーサル
★★★☆
製作:2026年 米国 上映時間:88分 監督:ビッキー・ジューソン
5人の若きバレリーナたちは、バレエ・ガラ公演に出演するため、飛行機でハンガリーへと向かう。空港からは老朽化したバスに揺られ、薄闇の森を抜けて会場へ向かうはずだったが、車は人気のない林道で息絶えてしまう。行き場を失った彼女たちは、やむなくデボラ・カシマーが営む古びた不気味なホテルへと足を踏み入れることになる。
このデボラこそ、かつて名声をほしいままにした伝説的バレリーナであった。しかし怪我によって舞台を去り、今は森の奥でひっそりと暮らしている。だが、そのホテルはすでに地元マフィアの巣窟と化しており、些細な行き違いから付き添いの教師が殺害されてしまう。事件を隠すため、5人の少女たちは地下室へと監禁されるのだった。
このあたりの展開には、現実味よりも“寓話的な不穏さ”が漂い、物語がゆっくりと非日常へ沈んでいく。
やがて、いずれ自分たちも殺されると悟った彼女たちは、ついに反撃を決意する。これまで反目し合っていた少女たちは、互いの弱さを補い合いながら、ダンサーとして鍛え上げた身体能力を“武器”へと変えていく。鋭いフットワーク、しなやかな柔軟性、そしてカッターナイフを仕込んだトゥシューズまでもが、彼女たちの戦いを支える凶器となる。
純白のチュチュは裂け、血に染まり、舞台衣装は戦闘装束へと変貌する。その姿は、無垢が剥がれ落ち、少女たちが戦士へと変わる儀式のようでもある。この奇抜な発想こそ本作の核であり、ポスターにも象徴的に刻まれている。
ジャンルとしてはアクション・スリラーに分類されるが、現実離れした展開の連続は、むしろブラック・コメディとして受け取ったほうがしっくりくる。5人の少女たちの奮闘は確かに見どころだが、物語の重心をわずかに傾けてしまうほどの存在感を放つのが、デボラを演じるユマ・サーマンである。
彼女が画面に立つだけで、物語の空気が一段階、濃く沈む。その圧倒的な“重み”が、作品全体を支配しているのは否めない。
評:蔵研人
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