MERCY マーシー AI裁判
★★★☆
製作:2026年 米国 上映時間:100分 監督:ティムール・ベクマンベトフ
近未来、ついにAIによる厳格な裁判制度が導入され、AI裁判長が統括する「マーシー裁判所」が設立された。
ある日、警官レイヴンが目を覚ますと、妻殺しの容疑でその裁判所に拘束されていた。彼は無実を訴えるものの、アルコール依存の影響か、事件直前の記憶は断片的で曖昧である。
無実を証明するためには、AIが支配する世界中のデータベースから証拠を収集し、AI裁判官が算出する「有罪率」を規定値以下まで引き下げなければならない。制限時間は90分。それまでに無実を立証できなければ、即座に処刑が執行される。
この制度はきわめて苛烈であるが、同時に超合理的でもある。時間や施設、人的労力を最小限に抑えつつ裁きを下せるため、犯罪率の低下や国家予算の削減にも寄与しているという。しかし、AIの判断は本当に絶対無謬なのだろうか────。そうした疑念を胸に抱きながら、本作を興味深く鑑賞した。
AIと被告との対話、さらにはデータベース情報の即時的な映像化といった新感覚の演出は魅力的であり、物語の推進力となっている。しかしながら、裁判の全過程をAIと被告の二者のみで進行させる構成には、やや没入しきれないものがあった。
むしろこれは裁判というより、被告自身による自己推理の様相を呈している。警官であるレイヴンだからこそ成立し得たが、一般人に同様の推理力を求めるのは酷であり、不公平さは否めない。少なくとも被告人にAI弁護士の補助が与えられていれば、より説得力が増したのではないだろうか。
また、クライマックスにおけるトラック暴走の演出は過剰に感じられ、緊張感よりも違和感が先立った。一方で、その後の結末はあまりに簡潔に収束し、やや物足りなさを残す。全体として、物語にもう一層の厚みが加わっていれば、より優れた作品となり得ただけに、惜しさの残る一作であった。
評:蔵研人
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