仕掛人・藤枝梅安2
★★★☆
製作:2023年 日本 上映時間:119分 監督:河毛俊作
池波正太郎の代表作にして、これまで幾度となく映像化されてきた時代小説「仕掛人・藤枝梅安」シリーズ。本作は、池波正太郎生誕100年を記念して製作された映画二部作の後編であり、前作に続き豊川悦司が藤枝梅安を演じている。
梅安と相棒・彦次郎が旅路の途中で目にしたのは、かつて彦次郎の妻子を死に追いやった、決して許すことのできぬ仇の姿であった。しかし、その男は当人ではなく、瓜二つの双子の兄であることが判明する。一方、真の仇である剣の達人・井坂惣市は、取り締まりの緩い京の町で悪行の限りを尽くしていた。
弟の所業に耐えかねた兄の依頼を受け、梅安は井坂の暗殺を引き受けることになる。だが同時に、梅安自身もまた、亡き妻の仇と信じる井上半十郎に執拗に狙われていた。
筋立ては一見複雑に見えるものの整理されており、観る者は早い段階で物語の流れに引き込まれる。しかし、展開に深みや意外性は乏しく、残念ながら大傑作と呼ぶには一歩及ばない。それでも、極めて美麗な映像と大規模なセットによって、本格時代劇ならではの重厚な世界観は存分に味わえる。
藤枝梅安を演じた豊川悦司の渋みある演技には一定の説得力があるものの、その長身ゆえ、江戸の闇を生きる仕掛人としてはやや異物感を覚える。そこを補っているのが、彦次郎役の片岡愛之助であり、歌舞伎で鍛えられた時代劇慣れした所作と存在感が、作品全体を安定させている。
ただし、針を操る梅安と吹矢を使う彦次郎の戦いは、いずれも一瞬で勝負が決する性質のものであるため、剣戟を中心とした殺陣とは本質的に噛み合わない。その結果、見せ場となるはずの立ち回りが短く終わってしまう点は、やはり物足りなさを残す。美と様式に徹した本作だからこそ、なおさらその余韻が惜しまれるのである。
評:蔵研人
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