信仰
著者:村田沙耶香
本書は、タイトル作『信仰』を中心に十一編を収めた短編集である。ただし、『信仰』のみが約五十頁を費やして丁寧に物語を紡いでいるのに対し、他の十編は一編十頁前後の、いわばショートショート的な趣を持つ。私はもともと短編小説を好まないため、『信仰』以外を数編読んだところで、本書を閉じてしまった。
表題作『信仰』は、コストパフォーマンスを過剰に重視するあまり、カフェのコーヒーにはじまり、ディズニーランドの土産物、エステやネイル、ブランド品に至るまで、「原価に比して高すぎる」と批判し続ける女性を主人公とした物語である。
当然のように、彼女は友人から「他人の夢や幻想を壊さないで」と反論される。そこで主人公は、自らの性格を改めようと決意し、知人が主宰する奇妙なセラピーに参加する。無駄遣いだと理解しながらも、あえて十万円を支払うという選択は、彼女なりの“信仰”への第一歩なのかもしれない……。
村田沙耶香は今年四十六歳になるが、その文章から立ち上がる感触は、どこか二十代前半のような瑞々しさを帯びている。小説家としてのデビュー作は、2003年の『授乳』で、第46回群像新人文学賞優秀作に選ばれた。その後、2016年に『コンビニ人間』で第155回芥川賞を受賞している。
私が彼女の作品に初めて触れたのも『コンビニ人間』であり、その後『消滅世界』、そして本作を読んだ。村田沙耶香の小説には、どこか「異常」「不思議」「荒唐無稽」「非現実」「非常識」「奇妙」といった臭気がまとわりついている。しかし不思議なことに、読み進めるうち、いつのまにかその世界に強く引き込まれてしまう。なぜ彼女の物語は、これほどまでに読者の感覚を揺さぶるのだろうか。
評:蔵研人
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