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2026年4月の記事

2026年4月29日 (水)

アキラとあきら

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★★★★
製作:2022年 日本 上映時間:128分 監督:三木孝浩

 銀行からの資金融資を断られたことが引き金となり、倒産へ追い込まれた町工場。その息子・山崎瑛(アキラ)と、大企業の御曹司である階堂彬(あきら)は、ともにトップクラスの成績でメガバンクに入行し、ライバルとしてしのぎを削っていく。

 しかし、同じ銀行員という肩書きの裏で、二人の動機は大きく異なっていた。

 山崎は、実家の町工場のように、確かな技術を持ちながらも資金に恵まれない企業を救いたいという理想を胸に銀行の門を叩いた。一方の階堂は、名家に生まれたがゆえに避けがたかった一族の醜い財産争いから距離を置くため、銀行という組織を選んだのである。

 だが、理想と信念に忠実すぎた山崎は、やがて組織の論理に弾かれ、僻地の支店へと左遷されてしまう。対照的に、階堂は順調に出世街道を歩んでいた。ところが父の死をきっかけに、彼もまた否応なく一族間の権力争いへと引き戻される。弟が父の跡を継ぎ社長に就任するも、その暴走によって、盤石に見えた大企業ですら存亡の危機に立たされることになる。

 観ているうちに、銀行の描写の生々しさに「もしかして」と思わされたが、案の定、原作は元メガバンク行員であり、『下町ロケット』で知られる池井戸潤であった。組織の論理と個人の信念がぶつかり合う構図は、本作でも健在である。

 キャストも実に的確だ。山崎瑛を演じる竹内涼真、階堂彬を演じる横浜流星は、ともに役柄と見事に重なり合い、「はまり役」という言葉がこれほどしっくりくる配役も珍しい。また奥田瑛二、江口洋介といったベテラン俳優陣が脇を固め、物語に確かな厚みを与えている点も好印象であった。

 山崎瑛のひたむきな奮闘を追っていると、どこか青春映画のような瑞々しさが漂ってくる。その一方で、本作には恋愛要素や女性キャラクターの存在感がほとんどないことに、ふと違和感を覚えもした。おそらくそれは欠落ではなく、原作者が描きたかった「メガバンクという巨大組織への理想と批評」を、極力純化させるための選択だったのだろう。


評:蔵研人

 

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2026年4月27日 (月)

バレリーナ The World of John Wick

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★★★☆
製作:2025年 米国 上映時間:125分 監督:レン・ワイズマン

 本作はサブタイトルが示す通り、キアヌ・リーブス主演の大ヒットアクション「ジョン・ウィック」シリーズのスピンオフである。シリーズ第3作『ジョン・ウィック:パラベラム』と交錯しながら、女暗殺者イヴの復讐の旅路を描いてゆく。

 興味深いのは、ジョン・ウィック世界の象徴ともいえるコンチネンタルホテルや、支配人ウィンストンらおなじみのキャラクターが登場する点だ。さらにダンスホールでは、ジョン・ウィックさながらの死闘が繰り広げられ、シリーズの空気が濃密に漂う。

 そしてキアヌ演じるジョン・ウィック本人も姿を見せるが、今回は主役ではなく、掟を破り暴走するイヴを止めるために送り込まれた刺客としての登場である。果たして二人の対決がどのような結末を迎えるのかは、ぜひ劇場で確かめてほしい。

 見どころは何といっても、イヴを演じるアナ・デ・アルマスのダイナミックなアクションだ。彼女の努力は称賛に値するが、童顔で小柄な体躯ゆえに、格闘シーンにわずかな不自然さと限界が感じられたのは惜しいところであった。

 また、次から次へと途切れなく現れる敵との戦いは、ジョン・ウィックシリーズの“お約束”とはいえ、ほぼ全編アクションといってよい構成は、年齢を重ねた身にはやや体力を試されるものがありしんどかった。


評:蔵研人

 

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2026年4月25日 (土)

PARKER/パーカー

Parker

★★★☆
製作:2013年 米国 上映時間:118分 監督:テイラー・ハックフォード

 主役の強盗パーカーを演じるのは、『トランスポーター』シリーズで不動のアクション俳優としての地位を築いたジェイソン・ステイサムである。
 パーカーは犯罪者でありながら、汚れた金しか奪わない、殺すのは悪人のみ、そして仕事は完璧かつ美しく遂行するという、三つの厳格なルールを自らに課している男だ。

 ある日、パーカーは師匠ハーリーの依頼を受け、新たに集められた四人の仲間とともに強盗計画に参加する。舞台はオハイオ州の祭り。計画は成功したかに見えたが、彼は仲間の裏切りによって瀕死の重傷を負い、置き去りにされてしまう。

 ここまでくれば、物語が復讐譚へと転じることは想像に難くない。生き延びたパーカーは、やがて現地の不動産会社に勤める女性レスリーと知り合い、彼女から情報を引き出しながら敵を追い詰めていく。
 このレスリーを演じるのは、ラテン系のスター女優ジェニファー・ロペスである。ただし、パーカーにはすでに恋人が存在し、二人が情熱的な関係に発展することはない。アクション一辺倒になりがちな物語に、柔らかな彩りを添える存在として配置されたのだろう。

 渋く、知的で、そして圧倒的に強い──それがこれまでのステイサム像であった。しかし本作のパーカーに、スーパーマン的な無敵さを期待してはいけない。重傷に苦しみ、殺し屋との戦いでも死力を尽くしてようやく勝利を掴む。その姿はリアルである反面、爽快感を求める観客にはやや物足りなく映るかもしれない。

 それでもなお、本作が一定の娯楽性を備えた作品であることは確かだ。完璧ではない男の復讐劇として、最後までそれなりに楽しませてくれる一本である。


評:蔵研人

 

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2026年4月23日 (木)

ペリフェラル ~接続された未来~

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★★★☆
2022年 米国ドラマ

 原作は、ウィリアム・ギブスンによるSF小説『The Peripheral』。
 テクノロジーが社会のあり方を大きく変貌させた2028年、アパラチア山脈の麓に広がる静かな田舎町に暮らす女性フリンは、仮想現実のゲームに没頭する日々を送っていた。だがある日、彼女は何の理由も告げられぬまま、現実世界で突然刺客に狙われる。

 実は、彼女が単なるVRゲームだと思い込んでいた世界は、70年後の未来そのものだった。フリンはゲームを進める過程で、自覚のないまま重大な機密情報を脳に移植されており、それを巡って未来のリサーチ機関の命を受けた刺客たちが、現在の彼女の命を狙っていたのである。

 主人公フリンを演じるのは、子役時代に『キック・アス』で鮮烈な印象を残したクロエ・グレース・モレッツ。活発さと知性を併せ持つ本作のヒロイン像は彼女に驚くほどよく似合い、まるで彼女のために用意された役柄であるかのようだ。

 ストーリーそのものの魅力もさることながら、特筆すべきは「未来に存在するアバターを操作することで時間を越える」というタイムトラベルの発想である。従来の時間移動SFとは一線を画すこのアイデアには、思わず心を打たれた。

 シーズン1は1話約1時間、全8話という構成で、米国ドラマとしては比較的コンパクトにまとまっている。その後シーズン2の製作も発表されたが、全米脚本家組合および俳優組合のストライキの影響を理由に、Amazonスタジオは最終的に制作中止を決定した。

 難解ながらも、クロエの存在感、美麗な映像、そして数多く残された謎に強く惹かれていただけに、物語が途中で断ち切られてしまったことは痛恨の極みである。これほどの世界観を提示しながら、完結を許されなかったことに、やり場のない悔しさを覚えずにはいられない。


評:蔵研人

 

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2026年4月21日 (火)

ビーキーパー

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★★★☆
製作:2025年 米国・英国 上映時間:105分 監督:デビッド・エアー

 タイトルの「ビーキーパー」とは養蜂家を意味し、ジェイソン・ステイサム演じる主人公アダム・クレイの異名でもある。かつて彼は、世界最強と謳われる秘密組織「ビーキーパー」に所属していたが、今は米国の片田舎で静かに養蜂を営み、世間から身を隠すように暮らしている。

 そんなある日、彼の恩人である善良な老婦人がフィッシング詐欺に遭い、全財産を奪われた末に絶望して自ら命を絶ってしまう。深い怒りに駆られたクレイは、たった一人で詐欺組織への復讐に乗り出すのだが──その背後に潜む黒幕は、想像をはるかに超える大物であった。

 FBI、CIA、傭兵部隊、暗殺者……。押し寄せる強敵たちにほとんど丸腰で立ち向かい、なお悠然と引き上げていくクレイの姿は、まさに現代のスーパーマンそのものだ。現実では到底あり得ないはずなのに、ジェイソン・ステイサムが演じると、なぜか妙に納得してしまうから不思議である。
 とにかく胸のつかえがすっと下りる、痛快無比の一本であった。

評:蔵研人

 

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2026年4月19日 (日)

海神

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著者:染井為人

 東日本大震災で甚大な被害を受けた天ノ島に、NPO法人代表の遠田政吉が姿を現す。彼は当初こそ島の救世主のように振る舞うが、実際には災害を食い物にし、復興支援金を横領するなど、弱者につけ込む卑劣な人物であった。
 島民たちもはじめは彼を崇めていたものの、あまりに派手な金の使い方に疑念を抱き始める。ただ、東京から長期休学してボランティアに来ている女子大生・姫乃だけは、終始遠田を信じ、尊敬し続けていた。

 染井為人の小説は、いつも冒頭から読者を強く引き込む力がある。しかし本作は震災という重い現実を背景にしているためか、ドキュメンタリーのような質感が漂い、さらに時系列が頻繁に入れ替わる構成が読みにくさを生んでいた。そのうえ、登場人物の誰にも共感しづらく、物語に没入するのが難しかったのも否めない。

 極悪非道な遠田はもちろんだが、ヒロインである姫乃にも終始苛立ちが募った。現代の若者は、一度誰かを信じると、まるで神を崇めるかのように“推し”の感情に支配されてしまうことがあるのかもしれない。
 後半になって多くの人が遠田を批判しても、姫乃が耳を貸さなかったのは、遠田への心酔だけでなく、「信じ続けた自分」を否定することへの恐れもあったのだろう。

 そして結局、彼女は遠田に裏切られ、尊厳を踏みにじられ、命まで危険にさらされることになる。身から出た錆と言ってしまうにはあまりに酷だが、他者の意見を受け入れず、一方的な感情だけで人を判断する姿勢には、どうしても賛同しがたいものがある。二年間の休学とボランティアの末、彼女はいったい何を得たのだろうか。
 もちろん得難い経験もあっただろう。しかし、周囲にかけた迷惑や失ったものの大きさを思うと、複雑な思いが残る。いずれにせよ、これもまた染井作品らしさなのかもしれないが、読後にどこか苦い余韻が残る作品であったことも否めない。


評:蔵研人

 

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2026年4月17日 (金)

ラブ・アンド・タイムトラベル

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★★★☆
製作:2016年 ニュージーランド 上映時間:92分 監督:ヘイデン・J・ウェアル

 珍しいニュージーランド製の映画である。タイトルに掲げられた「タイムトラベル」という言葉に惹かれ、軽い気持ちで鑑賞したのだが、いわゆるタイムマシンが登場するわけでも、時空を自在に行き来する描写があるわけでもない。そのため、観賞中はその意味が掴めず、どこか腑に落ちない感覚が続いた。

 しかし物語の後半になって、主人公自身が五日前の自分に向けてメッセージを残していたことが明かされる。その瞬間、これまで曖昧だった出来事の輪郭が静かに結び直されていく。

 本作の核心は、文字通りの「時間移動」ではなく、時間を隔てた因果の連なりにあるのだろう。「タイムトラベル」という言葉は、その構造を象徴するメタファーに過ぎず、物語の中心に据えられているのは、恋愛と人間関係の微妙な揺らぎである。

 中盤までは明確な方向性が見えないまま物語が進むが、その間にも、ニュージーランドの美しい風景には何度も心を奪われる。また、淡々としていながら突如として激しさを見せる主人公の振る舞いも印象的で、気づけば終盤へと導かれていた。

 一般的な評価は決して高くないようだが、静かに観る者の内側へ入り込んでくる、不思議な魅力を備えた作品である。派手さはないが、ふとした拍子に思い出される──そんな「掘り出し物」と呼ぶにふさわしい一本かもしれない。

評:蔵研人

 

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2026年4月15日 (水)

モスラ3 キングギドラ来襲

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★★★☆
製作:1998年 日本 上映時間:99分 監督:米田興弘

 モスラ映画の嚆矢は1961年にまで遡る。
 東宝が『ゴジラ』『ラドン』に続く新たな怪獣スターとして満を持して世に送り出した本作は、構想三年、製作費二億円、撮影日数200日という、当時としては破格のスケールを誇る特撮大作であった。
 その後もモスラは数々の作品に登場し、先の二怪獣と並んで「東宝三大怪獣」と称される存在となる。従来の怪獣映画に比して、より濃厚なファンタジー性を帯びている点が、この怪獣の大きな特徴である。

 本作『モスラ3 キングギドラ来襲』は、平成ゴジラシリーズ(1984年〜1995年)の終幕から、ミレニアムシリーズ(1999年〜2004年)開始までの空白期間に製作された、いわば“つなぎ”の怪獣シリーズであり、同時に「平成モスラシリーズ」の最終章でもある。

 最大の見どころは、数々の変身を重ねてきたモスラが、宿敵キングギドラを打ち倒すため白亜紀にタイムスリップし、究極の戦闘形態〈鎧モスラ〉へと姿を変え、最後の戦いに挑む場面だろう。
 本来であれば全く歯が立たない相手に対し、モスラは自らの弱点である身体の柔軟さを克服すべく、全身を金属のような外骨格で覆う。〈鎧モスラ〉は、キングギドラの強力な引力光線すら弾き返すほどの強度を備え、翼の前縁は鋭利な刃と化し、あらゆる物質を切断・破壊する“翼カッター”として機能する。

 本作には自衛隊や防衛組織は一切登場しない。描かれるのは、ただ空中で激突するモスラとキングギドラ、その二者の戦いのみである。ゴジラ映画に見られるようなプロレス的な肉弾戦もなく、純然たる空中戦に特化した構成だ。
 そんな中、プロレスラーの大仁田厚が主人公の少年の父親役で出演しているのは、どこか微笑ましくも可笑しい。いまだかつてないほど大勢の子役エキストラが登場する点も含め、本作はよくできた「お子様ランチ」のような一作だと言えるだろう。


評:蔵研人

 

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2026年4月13日 (月)

ザ・ボーイズ

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★★★★
2019年 米国ドラマ

 2019年に配信が始まったアメリカのドラマ『ザ・ボーイズ』は、一話およそ一時間の物語が長大なシリーズとして展開されるSF作品である。アメリカン・コミックを原作とするスーパーヒーローものではあるが、その内容は単なる社会風刺にとどまらない。暴力描写に加え、過激なエロティシズムやグロテスクな表現も多く、明らかに成人向けの作風であるため、子供に見せる作品ではないだろう。

 登場するヒーローたちは、いずれも既存のヒーロー像を思わせる存在である。スーパーマンを想起させるホームランダー、ワンダーウーマンに似たクイーン・メイヴ、アクアマン風のディープ、フラッシュを思わせるAトレイン、そして透明人間のトランスルーセントなど、どこか本家を戯画化したようなヒーローが次々と現れる。

 とりわけホームランダーは、スーパーマンに匹敵する最強のヒーローとして描かれている。しかしその人格はあまりにも自己中心的で、暴力的であり、精神的にも歪んだ人物である。長年スーパーマンに親しんできた者としては、このキャラクターに対して強い反発を覚えずにはいられない。なぜこれほど露骨にスーパーマン像を逆転させた存在が許されているのかと、不思議に思うほどである。

 とはいえ、この逆説的なヒーロー像こそが作品の魅力であり、結局のところ私は長いシリーズを最後まで観続けてしまった。もし現実世界にスーパーヒーローが存在するとすれば、理想的な正義の象徴であるばかりではなく、権力や欲望に翻弄される存在にもなるのかもしれない。そう考えると、この作品の皮肉は決して空想だけでは済まない。しかし一方で、ヒーローという夢を壊されたような寂しさもまた否定できない。

 この物語では、堕落したヒーローたちに立ち向かう、超能力を持たない数人の集団が「ザ・ボーイズ」と呼ばれている。彼らのリーダーであるブッチャーは、元イギリス軍特殊部隊員であり、かつてCIAの工作員でもあった人物である。しかし彼もまた、ホームランダーと同様に自己中心的で暴力的な側面を持つ人物として描かれている点が、作品の皮肉である。

 個人的にはホームランダーも好きになれないが、それ以上にブッチャーのほうが嫌悪感を抱かせる人物に見えた。ホームランダーは極端なマザコンでありながら家庭に憧れ、世論の評価を気にするという奇妙な一面を持つ。機嫌さえ取っていれば、ある程度は危険を回避できそうにも思える。一方ブッチャーは笑顔を見せることもほとんどなく、家庭にも子供にも関心を示さず、狂気じみた復讐心を周囲に撒き散らす人物だからである。

 ところがシーズン4あたりになると、この印象は逆転する。ホームランダーはついに人間を露骨に見下し、レーザー光線で平然と殺戮を行うようになる。一方で、死期を悟ったブッチャーのほうが次第に人間的な優しさを見せるようになるのだ。こうして両者の立場は、まるで攻守が入れ替わったかのように変化する。

 やがて私は、ホームランダーが画面に現れるだけで不快感を覚えるようになってしまった。もしかすると、この人物像には、現代政治のポピュリズム的なリーダー像が誇張されて投影されているのかもしれない。
 そう考えると、このドラマの風刺は、単なるヒーロー物語のパロディを超え、現代社会そのものを映し出しているようにも思えるのである。もしかすると、トランプ大統領的な振る舞いを誇張したのがホームランダーなのかもしれない……。


評:蔵研人

 

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2026年4月11日 (土)

信仰

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著者:村田沙耶香

 本書は、タイトル作『信仰』を中心に十一編を収めた短編集である。ただし、『信仰』のみが約五十頁を費やして丁寧に物語を紡いでいるのに対し、他の十編は一編十頁前後の、いわばショートショート的な趣を持つ。私はもともと短編小説を好まないため、『信仰』以外を数編読んだところで、本書を閉じてしまった。

 表題作『信仰』は、コストパフォーマンスを過剰に重視するあまり、カフェのコーヒーにはじまり、ディズニーランドの土産物、エステやネイル、ブランド品に至るまで、「原価に比して高すぎる」と批判し続ける女性を主人公とした物語である。

 当然のように、彼女は友人から「他人の夢や幻想を壊さないで」と反論される。そこで主人公は、自らの性格を改めようと決意し、知人が主宰する奇妙なセラピーに参加する。無駄遣いだと理解しながらも、あえて十万円を支払うという選択は、彼女なりの“信仰”への第一歩なのかもしれない……。

 村田沙耶香は今年四十六歳になるが、その文章から立ち上がる感触は、どこか二十代前半のような瑞々しさを帯びている。小説家としてのデビュー作は、2003年の『授乳』で、第46回群像新人文学賞優秀作に選ばれた。その後、2016年に『コンビニ人間』で第155回芥川賞を受賞している。

 私が彼女の作品に初めて触れたのも『コンビニ人間』であり、その後『消滅世界』、そして本作を読んだ。村田沙耶香の小説には、どこか「異常」「不思議」「荒唐無稽」「非現実」「非常識」「奇妙」といった臭気がまとわりついている。しかし不思議なことに、読み進めるうち、いつのまにかその世界に強く引き込まれてしまう。なぜ彼女の物語は、これほどまでに読者の感覚を揺さぶるのだろうか。

評:蔵研人

 

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2026年4月 9日 (木)

ゴジラ FINAL WARS

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★★★

製作:2004年 日本 上映時間:125分 監督:北村龍平

 ゴジラ映画の始まりは、1954年製作の『ゴジラ』である。すでに伝説と化した初代ゴジラだが、実は私が生まれて初めて観た映画でもあった。幼稚園児の頃、祖母に連れられて、当時まだ明大前駅前にあった「正栄館」で観たのだが、その衝撃はあまりに強烈で、七十年以上経った今でも、映像のほとんどが脳裏の底にこびりついている。

 幼児だったこともあるが、それ以上に、それまで触れたことのない“高度な特撮”に翻弄されたのだろう。祖母から「中に人間が入っている」と聞かされたときも、私は何十人もの大人が肩車をして怪獣の中に入っているのだと本気で信じていた。
 モノクロ映像が生む荒隠しの効果や、恐怖を煽る陰影も見事で、前半はゴジラ登場までの不穏な空気づくりに徹し、全身が姿を現すのは後半に入ってからという構成も巧みだった。さらに、当時問題となっていた米露の水爆実験への批判的メッセージが込められていた点も、単なる怪獣映画とは一線を画していた。

 初代の大ヒットを受け、ゴジラ映画はシリーズ化され、2026年1月1日現在で30作が公開されている。アニメ版やハリウッド版を含めれば、実に38作に及ぶ。

 ただし、初代を除けば、第29作『シン・ゴジラ』が登場するまで、長らく“ゲスト怪獣との対決”がシリーズの中心であった。そして、その怪獣対決路線の総決算が、本作・第28作『ゴジラ FINAL WARS』である。
 上映時間は2時間を超え、登場怪獣もミニラ、モスラ成虫、アンギラス、ラドン、マンダ、エビラ、カマキラス、クモンガ、ヘドラ、ガイガン、キングシーサー、ジラ、モンスターX(のちのカイザーギドラ)と、まさに総進撃の大盤振る舞いだ。

 しかし、ミニラやマンダ、エビラ、カマキラス、クモンガ、ヘドラ、ガイガン、キングシーサーといった、かつて子ども向けシリーズで登場した怪獣たちは、大人の鑑賞にはやや耐えがたい造形のままである点が惜しい。また、宇宙人や地球防衛軍、特殊部隊M機関の描写もスケールが小さく、『仮面ライダー』の一編を観ているような印象すら受けた。
 この作品が“ゴジラシリーズ最終作”を名乗った時期の作品であることを思えば、もう少し大人の目にも耐えうる重厚さが欲しかった。


評:蔵研人

 

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2026年4月 6日 (月)

星から来たあなた

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★★★☆
2022年 日本版ドラマ

『私の夫と結婚して』と同じく、韓国ドラマを原作としたリメイク作品である。韓国では最高視聴率33.2%を記録し、アジア全域で大ヒットしたことから、日本版のみならずフィリピン版、タイ版と各国で映像化が進んだ。

 物語は、400年前に地球へ降り立った宇宙人・東山満と、気まぐれで自信家のトップ女優・笹原椿との恋を描くSFラブストーリーである。ハレー彗星の接近により、満が地球を去らねばならない日が迫る中、二人の関係がどのような結末を迎えるのかが大きな見どころとなる。さらに、秘密を握ってしまった椿に、悪人・宇和島雅哉の魔手がたびたび迫るのだが、彼を追い詰め逮捕できるのかというサスペンス要素も物語に緊張感を添えている。

 そして何より印象的なのは、東山満が見せる卓越した知識と超能力の数々だ。とりわけ“時間を止める”という大胆な設定は、日本のラブストーリードラマではなかなか生まれにくい発想であり、荒唐無稽でありながらも不思議と物語に馴染んでいる。この能力がなければ成立しない物語構造こそ、韓国ドラマならではの力強さと言えるのかもしれない。

 ただし、東山満を演じた福士蒼汰の存在感は評価できるものの、笹原椿役の山本美月の演技は“わがまま”の一点に偏り、単調さが目立ったのは残念であった。また、満が江戸時代に出会った女性に似ているという理由だけで椿に命を懸ける展開には説得力が乏しく、感情移入の妨げとなった。
 韓国版を未視聴のため断定的な批判は避けたいが、ラブストーリーの核である“心が動く瞬間”に触れられず、涙を誘われることがなかったのは惜しい。

 日本版は全10話で完結しているが、原作である韓国版は全21話とスケールが大きく、キャストの演技も高く評価されているという。機会があれば、ぜひ本家の韓国版にも触れてみたいと思う。

評:蔵研人

 

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2026年4月 3日 (金)

仕掛人・藤枝梅安2

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★★★☆
製作:2023年 日本 上映時間:119分 監督:河毛俊作

 池波正太郎の代表作にして、これまで幾度となく映像化されてきた時代小説「仕掛人・藤枝梅安」シリーズ。本作は、池波正太郎生誕100年を記念して製作された映画二部作の後編であり、前作に続き豊川悦司が藤枝梅安を演じている。

 梅安と相棒・彦次郎が旅路の途中で目にしたのは、かつて彦次郎の妻子を死に追いやった、決して許すことのできぬ仇の姿であった。しかし、その男は当人ではなく、瓜二つの双子の兄であることが判明する。一方、真の仇である剣の達人・井坂惣市は、取り締まりの緩い京の町で悪行の限りを尽くしていた。
 弟の所業に耐えかねた兄の依頼を受け、梅安は井坂の暗殺を引き受けることになる。だが同時に、梅安自身もまた、亡き妻の仇と信じる井上半十郎に執拗に狙われていた。

 筋立ては一見複雑に見えるものの整理されており、観る者は早い段階で物語の流れに引き込まれる。しかし、展開に深みや意外性は乏しく、残念ながら大傑作と呼ぶには一歩及ばない。それでも、極めて美麗な映像と大規模なセットによって、本格時代劇ならではの重厚な世界観は存分に味わえる。

 藤枝梅安を演じた豊川悦司の渋みある演技には一定の説得力があるものの、その長身ゆえ、江戸の闇を生きる仕掛人としてはやや異物感を覚える。そこを補っているのが、彦次郎役の片岡愛之助であり、歌舞伎で鍛えられた時代劇慣れした所作と存在感が、作品全体を安定させている。

 ただし、針を操る梅安と吹矢を使う彦次郎の戦いは、いずれも一瞬で勝負が決する性質のものであるため、剣戟を中心とした殺陣とは本質的に噛み合わない。その結果、見せ場となるはずの立ち回りが短く終わってしまう点は、やはり物足りなさを残す。美と様式に徹した本作だからこそ、なおさらその余韻が惜しまれるのである。


評:蔵研人

 

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2026年4月 1日 (水)

バイオハザード:デスアイランド

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★★★☆
製作:2023年 日本 上映時間:89分 監督:羽住英一郎

 ミラ・ジョヴォヴィッチ主演の実写シリーズとは異なる系譜に属する本作は、カプコンのサバイバルホラーゲーム「バイオハザード」を原作とした長編CG映画である。

 アメリカ大統領直属の組織「DSO」に所属するエージェント、レオンは、機密情報を握るアントニオ・テイラーを拉致した武装集団の車両を追跡していた。しかし、謎めいた女の介入によって妨害され、テイラーを取り逃してしまう。一方その頃、対バイオテロ部隊「BSAA」のクリスとジル、そしてアドバイザーとして同行する大学教授レベッカは、サンフランシスコを中心に発生したゾンビ事件の調査に当たっていた。

 クリスの妹クレアが所属するNGO団体「テラセイブ」の調査により、感染者たちがいずれも、かつて刑務所として使われていたアルカトラズ島を訪れていたことが判明する。クリスたちは真相を探るべくフェリーで島へ向かうが、そこはゾンビと怪物が蠢く、危険に満ちた孤島であった。

 実写シリーズはいくつか観てきたものの、CG作品は今回が初めてであり、その映像のあまりの高精細さに思わず息を呑んだ。しかし、慣れてくるにつれ、映画というよりはゲームの世界を操作しているような感覚が芽生えてしまう。
 アクションシーンは実写では到底不可能なほど豪快で、映像表現の自由度を存分に活かしているものの、どこか心に深く響く感動には結びつかなかった。これもまた、CG映画が抱える宿命の一端なのかもしれない。


評:蔵研人

 

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