カラオケ行こ!
★★★★
製作:2024年 日本 上映時間:107分 監督:山下敦弘
合唱コンクールの強豪校として知られる森丘中学校。その合唱部部長・岡聡実は、ある雨の日、ヤクザの成田狂児から突然カラオケに誘われる。狂児は、組長主催のカラオケ大会で最下位の罰ゲームを避けるため、聡実に歌の指導を懇願するのだった。気乗りしないままレッスンを始めた聡実だが、次第に二人の間には奇妙で温かな友情が芽生えていく。
この奇抜な組み合わせを描いた物語の原作は、和山やまによるマンガであり、2025年10月時点でシリーズ累計160万部を突破しているという。
原作未読のまま鑑賞したが、まず心を掴んだのは成田狂児を演じる綾野剛の独特の存在感だ。そして、オーディションで選ばれた新星・齋藤潤が演じる岡聡実の清々しさが加わり、二人の質感が混ざり合うことで、不思議な調和を帯びた世界観が立ち上がっていた。
当初は、カラオケが上達していく成長物語なのだろうと軽く考えていた。しかし、変声期と思春期の揺らぎに戸惑う少年と、過去に囚われたヤクザの若頭補佐という組み合わせは、予想をはるかに超えて斬新で、物語に深い陰影を落としている。
正直に言えば、中盤までは大きな盛り上がりがあるわけではない。だが、終盤に向かうにつれ、物語は静かに心の奥へと染み込んでくる。そしてクライマックス——聡実が初めて歌う鎮魂の「紅」。
声変わりで思うように声が出ない中、ただ想いだけを燃やして歌い上げる姿は、まさに魂の叫びだった。気づけば私の頬も涙で濡れていた。本作は、この一曲のために存在していると言っても大げさではない。そしてその直後に訪れる、粋などんでん返しが、さらに涙のおかわりを誘うのだ。
評:蔵研人
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