身代わり忠臣蔵
★★★☆
製作:2024年 日本 上映時間:119分 監督:河合勇人
幾度となく映像化されてきた忠臣蔵の物語に、奇抜な切り口で挑んだ本作は、吉良上野介の弟・吉良孝証を主人公に据えた、斬新な時代劇コメディである。何よりも特筆すべきは、吉良上野介と孝証の二役を演じたムロツヨシの圧倒的な存在感であり、彼の演技が作品の骨格を成していると言っても過言ではない。
物語の発端は、江戸城内で嫌味な吉良上野介が斬られ、屋敷に運ばれた後に死亡するという事件。斬った赤穂藩主は当然ながら切腹となるが、吉良家にとってはそれ以上に深刻な事態が待ち受けていた。主君を失った吉良家は、幕府の策略によって取り潰しの憂き目に遭う可能性があったのだ。その窮地を救うべく、上野介に瓜二つの弟・孝証が身代わりとなり、幕府を欺くという前代未聞の「身代わりミッション」が展開される。
前半は、ムロツヨシ演じる孝証がドタバタとした滑稽さを振りまき、笑いを誘うが、身代わりとして上野介に扮してからは、次第に人間的魅力を備えた人物へと成長してゆく。その変化の過程を見守るのは、観客にとっても愉快であり、時に胸を打つ。また、永山瑛太が演じる大石内蔵助との友情の描写には、静かな感動が宿っていた。
ただし、終盤に挿入された「首争奪ラグビー」の場面は、物語の流れを著しく損なうものであり、いかにコメディとはいえ、あの描写は蛇足だったと言わざるを得ない。奇抜さと感動が絶妙に交錯する本作において、唯一の瑕疵であった。
評:蔵研人
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