夏目アラタの結婚
★★★★
製作:2024年 日本 上映時間:120分 監督:堤幸彦
日本中を震撼させた連続バラバラ殺人事件。その犯人であり、「品川ピエロ」の異名を持つ死刑囚・品川真珠と、児童相談所職員・夏目アラタが獄中結婚するという異色の物語である。
「死刑囚が獄中で結婚できるのか」と疑問に思う人も少なくないだろう。だが、日本国憲法においては、受刑者や死刑囚であっても婚姻の自由は保障されている。ゆえに、拘留中あるいは刑の執行中であっても、婚姻における形式的・実質的要件を満たせば結婚は成立するのだ。
しかし、なぜ児童相談所の職員が、世にもおぞましい殺人犯と結婚しようと思い立ったのか。その動機を詳述すれば長くなるが、ここでは「いまだ発見されぬ被害者の首を探すため、犯人を油断させようとした」とだけ記しておこう。
本作の主題は、犯人の過去に潜む深い悲しみである。家庭や同級生からの冷淡な仕打ち、無関心、いじめ、虐待——そうした痛ましい記憶の積み重ねが、真珠という人間を形づくっている。
ただ、事件直前まで看護師として真面目に働いていた彼女が、なぜ突如として殺人へと傾いたのか。その転機を描く場面がやや乏しかったのは惜しまれる。父親を名乗る男の登場以降の描写に、もう少し厚みがほしかった。
ジャンルとしてはミステリーやサスペンスに分類されるが、社会派ドラマの要素も強く、真珠の歯の欠けた笑みや無表情の中に漂う不気味さにはホラー的な感触すらある。
当初は、児童相談所職員という役柄に柳楽優弥を起用した意図が掴みにくかったが、物語が進むにつれその理由が腑に落ちる。これは「なぜ柳楽優弥ではなく、柳楽優弥にしか演じられない」役だったのだ。
証拠や証言が二転三転する展開の中、「真珠は本当に真犯人なのか」という謎を抱えたまま物語は終盤へ向かう。そして、エンディングののちに、さらにもうひとつのエンディングが隠されている。少なくとも、エンドロールが完全に終わるまで席を立たないことを強く勧めたい。
また、エンドロール中に流れる英語の主題歌も、この物語の余韻を静かに包み込む一篇の詩のようであった。
評:蔵研人
下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓
↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪
| 固定リンク | 0



コメント