LOVE SONG
★★★☆
製作:2001年 日本 上映時間:100分 監督:佐藤信介
同タイトル作品はいくつかあるが、本作の主演は仲間由紀恵と伊藤英明なので念のため。また本作は佐藤信介監督にとって、劇場用メジャー映画の第1作となる意欲作である。主題歌には、伝説的アーティスト・尾崎豊の未発表音源「風にうたえば」が採用されている。ただし、既存楽曲の版権を有するソニー・ミュージックレコーズおよびワーナー・ミュージック・ジャパンから正式な許諾が得られなかったためか、作中では楽曲の使用がごく限られていたのが惜しまれる。
ストーリー展開はこうだ。地方のレコード店で出会った青年・伊藤に淡い想いを抱く女子高生・仲間。しかし彼は何も告げずに東京へと姿を消す。落胆する彼女だったが、ある日店先で伊藤からの葉書を見つけ、彼を探して上京する——。それだけの、きわめてシンプルな筋立てである。
物語は仲間の東京での伊藤探しと、事業に失敗し落魄した伊藤の現状とが、パラレルに描かれる。『君の名は』さながらに、ふたりはなかなか巡り合えない。だが、仲間は本当に伊藤を愛しているのか。それとも母子家庭ゆえの“父への憧れ”が投影された感情なのか。一方の伊藤は仲間の存在をほとんど忘れ、新たな恋の予感に包まれている——そんな微妙な距離感がこの映画の余韻をつくっているようだ。
当初は鬱陶しく見えたが、仲間を想いながらも旅費を工面し、共に伊藤を探してくれる同級生の男子が実に好感の持てる存在だったね。また何より驚かされたのは、当時22歳の仲間由紀恵が女子高生役を演じても違和感がまったくないこと。肌の艶やかさ、表情だけで心情を語る演技——すでに大女優としての資質がほとばしっていた。後年の彼女の成功を思うと、まさにその萌芽を見出すことができる。
舞台となる1980年代は、まだ携帯電話もメールも普及していなかった“近くて遠い過去”。若者たちはただ、自分の足で相手を探し、直接言葉を交わすことでしか恋を確かめられなかった。『LOVE SONG』は、そんな不器用で純粋な時代の青春を描いた、一篇の記録である。
評:蔵研人
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