伊予小松藩会所日記
原典解読:北村六合光 著者:増川宏一
現在の四国小松町に僅か1万石の『伊予小松藩』という小藩が存在していた。本書は小松町に残されており、藩により150年以上に亘って書き綴られてきた膨大な『会所日記』を読み解き、当時の人々の生きざまなどを分かり易く現代風にまとめたものである。
藩の人口は約1万人、正式な武士は僅か数十人という、現代なら謂わば小企業なみの苦しい台所事情と言ってもよいだろう。従って農民や商人からの借金漬けに喘ぎ、参勤交代の費用負担に苦しみ、幕末の異国船打ち払いの際にも老朽化した武器しか持ち合わせていなかった。
第一部では、そんな窮乏した藩の成り立ちと概略や財政状態、武士たちの俸禄などに詳しく触れている。
第二部では、領民たちの暮らしについて丁寧に解説しているが、その内容がなかなか面白い。駆け落ちや、不倫や情死といった生々しい出来事や、目明しと泥棒、盗品の回収などについての裏情報も綴られており、当時の生活環境などが臭ってくる。
さて時代劇と言えば、華やかな殺陣がつきものだが、江戸時代における実際の武士たちは、刀を佩いても戦わず、専ら事務机の前で算盤を弾く日々だったようである。
いずれにせよ、歴史は「出来事」ではなく、「暮らし」であると気づかされた一冊であったことは否めない。
評:蔵研人
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