火垂るの墓
★★★☆
製作:1988年 日本 上映時間:88分 監督:高畑勲
今更かもしれないが、戦後80周年の節目にテレビ放映されたのを機に、名作として名高い本作をようやく観ることができた。
物語は、終戦直後の阪急電車の駅構内から始まる。息も絶え絶えの少年・清太が手にしていたドロップの缶から、ぽろりと何かが零れ落ちる。のちにそれが、亡き妹・節子の遺骨であることが明かされるのだが……。
空襲で家と母を失い、軍人の父とは音信が途絶えた清太は、厳格な叔母のもとに預けられる。しかし、折り合いのつかぬ日々に耐えきれず、兄妹は古びた防空壕に身を寄せる。体中を蚊に刺され、栄養失調で弱り果てる節子の姿が胸を締めつける。
原作は野坂昭如の小説であり、その内容は作者の実体験に根ざしている。彼も神戸の家に養子に出され、義理の妹を栄養失調で失った過去があるようだ。ただ野坂自身は、作品の清太のように妹に優しくはなかったことを告白している。だからその後悔が、小説の底流に流れているとも言えるだろう。
涙もろいので、終盤には必ず涙が溢れるかと思いきや、私の目からは一滴の涙もこぼれなかった。理由はおそらく、当時の中学生であれば、大人同様の働き手になっていた時代にあって、学校にも通わず幼い妹とただ遊んでいるだけの清太の姿に共感できなかったからだ。また居候の身でありながら叔母に反発し、度重なる盗みの末に妹を栄養失調で死に至らしめた彼の行動には、全く感情移入できなかった。
さて本作の位置づけを考えると、単なる反戦映画やお涙頂戴のドラマではなく、戦時下の過酷な社会に適応しきれなかった一人の少年--すなわち野坂自身の回顧録に近いのではないだろうかと、勝手に考えてしまうのである。
評:蔵研人
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