開業医の正体
著者:松永正訓
タイトルだけを見ると、あたかも開業医の知られざる実態や不正を暴く内容を想像してしまう。しかし実際には、著者自身が現役の開業医であり、自らを過度に批判するような記述は当然ながら見られない。むしろ、へりくだった語り口ながらも、開業医という職業の魅力ややりがいをさりげなく肯定しているようにも感じられた。
一方で、クリニック開業時にリース会社が資金・経営・設備面を全面的にサポートしてくれることや、引退時には営業権の譲渡を仲介する業者が存在するという事実には、思わず「なるほど」と唸らされた。これは医療業界に詳しくない読者にとっては大きな発見であり、本書の価値のひとつと言えるだろう。
また、開業医の収入や経営の採算、勤務医との違い、看護師との関係性、女性医師の力量、そして「名医」とは何かといったテーマは興味深く、ページをめくる手が止まらなかった。業界の裏話や現場のリアルも随所に盛り込まれており、文章も平易で読みやすい。
とはいえ、私が本書に期待していたのは、もう少し批判的かつ客観的な視点からの「開業医の実像」であったため、その点ではやや物足りなさを覚えたのも事実である。著者が当事者である以上、どうしても視野が限られるのはやむを得ないのかもしれない。
いずれにせよ、現役の看護師や事務職員、あるいはすでに引退した医療従事者が執筆した、より外側からの視点による「開業医の正体(実態)」を読んでみたい、という思いがあらためて芽生えた一冊であった。
評:蔵研人
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