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2025年6月の記事

2025年6月25日 (水)

大相撲の不思議

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著者:内館牧子

 本書は、単なる相撲入門書でも大相撲観戦記でもない。もっとユニークな蘊蓄系エッセイと言えばよいのだろうか。
 著者は作家・脚本家であり、10年にわたって横綱審議委員を務めた内館牧子氏。いわば“超スー女”である彼女は、若い頃には床山を志して相撲協会に自らを売り込んだり、委員就任後には東北大学大学院に進学し、「神事としての相撲」を研究テーマに宗教学を専攻。その徹底した姿勢は、もはや“相撲研究家”と言って差し支えないレベルなのだ。
 さらに、女性でありながら土俵の女人禁制を否定せず、あえて伝統を受け入れる姿勢からも、真の好角家であることがうかがえる。東北大学相撲部の“現役院生監督”という異色の肩書も、彼女の相撲への愛情と献身を象徴している。

 本書では、土俵の生業などを通じて相撲がいかにして“神事”であるかを語るところから始まり、懸賞金や番付の格差、まわしや髷の起源、さらには相撲茶屋、四股名、手形、天皇賜盃の由来までを、平易な語り口でわかりやすく解説しているところが嬉しい。
 また200頁ほどの手軽なボリュームに、大きめの文字と南伸坊による味わい深い挿絵が添えられ、読書の心地良さや満足感を高めてくれる。読んでいるうちに自然と、相撲の歴史やしきたり等についての知識が身につき、今後の観戦の視点や楽しみ方が確実に変わると感じることだろう。
 そして何より嬉しいのは、このシリーズがすでに第三巻まで刊行されていること。相撲を深く知りたい人にも、ちょっと興味があるという人にもおすすめしたい一冊である。

評:蔵研人

 

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2025年6月19日 (木)

エイリアン・レイダース

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★★★
製作:2008年 米国 上映時間:85分 監督:ベン・ロック

 タイトルの"エイリアン"につられてDVDを購入してしまった。もちろんB級作品であることは承知のうえだが、他の偽エイリアン作品に比べると比較的評価が高かったからである。
 舞台はアリゾナ州のあるスーパーマーケット、というより始めから終わりまでの全編がこの中での出来事に終始する。突如スーパーの閉店間際に侵入してくる凶悪なテロリストたち。そして数人が射殺され、残った従業員と客たちが人質となる。

 とここまではよくあるパターンの展開なのだが、このテロリストたちは、なんと地球に侵入してきたエイリアン討伐隊だったのである。そしてこのスーパーがエイリアンの拠点であることを突き止めて、従業員や客たちがエイリアンに寄生されていないかを調査しに来たらしいのだ。……とここらあたりまではハラハラドキドキ緊張感の漂うストーリーに魅せられていたのだが、そのあとが急に雑な展開となってしまったのが非常に残念である。
 
 そもそも画面が暗すぎてよく見えないし、エイリアンの本体もほとんど出現しないのだ。これでは何のためにタイトルで「エイリアン」を名乗ってるのかわからない。創り方としては『SFボディ・スナッチャー』をヒントにした作品だと思うが、『SFボディ・スナッチャー』では町全体がエイリアン化しているという状況に対して、本作は逆にエイリアンの生き残りが数体で、それを調べて退治するという設定である。

 そしてラストの「落ち」は、思った通りまさにB級ホラーの常道手法だったね。まあいずれにせよ、ケチ臭いエイリアンなど無視し、"テロリスト籠城アクション"仕立てだけに徹したほうが面白かったと感じたのは果たして私だけであろうか。

評:蔵研人

 

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2025年6月14日 (土)

終の盟約

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著者:楡周平

 本作は現代における医療システムの問題点と安楽死や尊厳死をテーマにした社会派小説でもあり、登場人物たちの心理的葛藤を綿密に描いた群像劇仕立てのミステリー小説とも言えなくもない。従って常に緊張感が漂い、読者は一瞬たりとも気を抜けないような状態が続くのである。

「ぎゃあああーー!」
 内科・開業医の藤枝輝彦は、妻・慶子の絶叫で跳ね起きた。元医者であった父・久が風呂場を覗いていたというのだ。さらに輝彦が久の部屋へ行くと、なんとそこには妻に似た裸婦と男女の性交が描かれたカンバスで埋め尽くされていたのである。
 このときにやっと輝彦は、父の認知症を確信し、専門医に検査を依頼すると、やはり心配していた通り「レビー小体型の認知症と診断されてしまった。

 その後輝彦は、久が残した事前指示書「認知症になったら専門の病院に入院させ、延命治療の類も一切拒否する」に従い、父の旧友が経営する病院に入院させることになるのだった。
 これからの長い介護生活を覚悟した輝彦であったが、なんと久は一か月後に心不全で突然死してしまうのである。だがそれは「医師同士による密約の実行」だったのであろうか……。

 この父の早過ぎる死に疑問を持った次男で弁護士の真也が真相を探ろうとするのだが、結局調査は医師である兄の輝彦に任せて、自身は安楽死や尊厳死という難解なテーマ自体に興味を持ち始めるのだった。そんな夫の煮え切らない行動に不満を感じた真也の妻・昭恵は、友人の美沙の知り合いであるフリー記者に調査を依頼してしまうのである。

 ほとんど極悪人は登場しないのものの、この昭恵の強欲さと嫉妬深さだけは異常極まりなく不快感を拭えなかった。ただ極端に描かれてはいるものの、このような妻は世の中に蔓延していることも否めないだろう。またこの昭恵こそこの小説の影の推進役であったのかもしれない。なかなか重量感のある充実した作品であるが、ラストがあっけなかったのがやや残念であった。

 さて本作を書き上げたころは、認知症は恐怖に満ちた不治の病であったが、近年やっと「認知症の進行を妨げる薬」の発明がなされ、医薬品としての認可に続き保険適用という朗報が流れたことは実に喜ばしい限りである。
 まあいずれにせよ、本作のテーマである安楽死や尊厳死こそ、そろそろ世界中が本気になって論じてゆかねばならないギリギリの瀬戸際に辿り着いているいることだけは間違いない事実であろう。

評:蔵研人

 

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2025年6月 8日 (日)

バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3

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★★★★
製作:1990年(アメリカ)|上映時間:119分|監督:ロバート・ゼメキス

 タイムトラベル映画の金字塔ともいえる超有名シリーズ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』三部作の完結編である。もちろんシリーズの中で一番完成度が高かったのは第一作だと思うが、どの作品も魅力にあふれており、三作すべてを絶賛したい。
 ただ特にこの第3作は、西部劇仕立てという大きな趣向の変化があり、前2作とはまた違った視点で楽しめるところが新鮮だった。そして、美人教師クララとドクとのラブストーリーにも心を奪われた。今作の主役はマーティーではなく、ドクと言っても過言ではないだろう。

 また、マーティーが「クリント・イーストウッド」と名乗った瞬間から、脳内ではあの『夕陽のガンマン』のメロディーが流れ出し、思わず「あの決闘シーン」が蘇ってきた。すると実際に映画の中でそのシーンがパロディーとして再現されるではないか。この粋な“サービス”には、思わずニヤリとしてしまった。こうした細かな遊び心も、このシリーズの魅力のひとつだろう。

 それにしても、クララを演じたメアリー・スティーンバージェンは本当に素敵な女優だ。当時は37歳ほどだったと思うが、2025年現在では72歳。それでも近年の写真を見る限り、歳を重ねても凄く品があって魅力的だ。これではドクが西部時代に残りたくなるのも無理はないよね。

「めでたしめでたし」がこんなに嬉しかった映画も、実に久しぶりだった。シリーズの有終の美を見事に飾ってくれた一作といえよう。

評:蔵研人

 

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2025年6月 4日 (水)

人間標本

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 奇妙なタイトルそのままに、人間――それも美少年たちを蝶に見立てて殺害し、標本にするという狂気のストーリーなのだ。さらにその狂気は小説の中だけにとどまらず、ご丁寧に6ページにもわたる人間標本の口絵まで添えられているという念の入れようではないか。

 湊かなえの作品としては、かなり世界観を広げた実験的な作品だと感じた。そして添えられた口絵が誘う猟奇的ながらファンタジックな美しさに翻弄されたことも否めない。だが、少なくとも本作の核ともいえる「人間標本収集チャプター」は、特に蝶に興味もなく、かつ人間を標本にする意図も理解できない私としては、延々と続く“蝶の蘊蓄”にうんざりし、モヤモヤとした退屈感も拭い去ることができなかった。ただ、『人質の法廷』での“残虐でえげつない殺戮描写”がなかったことには救われた。

 イヤミスの女王と呼ばれる作者だが、なぜ今、“江戸川乱歩”を髣髴させるような気味の悪い猟奇的な作品を書く必要があったのだろうか。正直、途中で何度か投げ出してしまおうかと思ったのだが、きっとあの湊かなえなら、このあとにゾクゾクするような展開が待っているに違いない……。

 そう信じて辛抱強く終盤近くまで読み進めていると、「えっ! そうだったの」と読者をおちょくるようなどんでん返しが待っていた。それで何となく納得したものの、ところが最後の最後になって、はたまたイタチの最後っ屁のようなダブルどんでん返しに遭遇することになる。
 このとき読者たちの脳裏には、読後もなお焼きつくような衝撃が走るだろう。それは真犯人の意外さだけにとどまらず、主人公の行動をすべて無に帰す超シニカルな結末であった。この後味の悪い皮肉な驚愕こそ、今まで狂気の世界に引きずり込まれていた読者たち、いや主人公自身までもが、現実世界で覚醒する雄叫びになるのだった。


評:蔵研人

 

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2025年6月 1日 (日)

我妻さんは俺のヨメ 全13巻

 

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★★★☆
原作:蔵石ヨウ 漫画:西木田景志

 ルックスはそこそこだが、学力ゼロでスポーツ音痴のさえない男子高校生の青島等。学校一の美少女で学力抜群で水泳部のエースであり、かつ性格の良い学園マドンナ我妻亜衣。全く正反対で、全然釣り合いの取れないこの二人……。
 ところがある日、青島が10年後にタイムスリップする能力を得て未来を覗くと、なんと自分とあの我妻さんが結婚しているではないか!! これが全13巻に亘るこのストーリーのはじまりなのだった。
 ただし状況の変化によって未来は変化することがあり、あるときはハーフ美女の「下妻シルヴィア」、またあるときは漫画家を目指す美少女「伊富蘭」、さらにあるときは、美人教師の梶先生と結婚しているのである。これはパラレルワールドなのだろうか、それとも実はタイムスリップではなく、青島の単なる妄想なのかと勘繰ってしまうのだ。

 この青島という主人公、さえないさえないと言われながら、実はかなりモテまくっているではないか。それにひっついたり離れたり、妄想とかタイムスリップといった展開はなんとなく江川達也原作の『東京大学物語』の前半と似ているような気がしたのは決して私だけではないはずである。ただ『東京大学物語』のようなエロっぽいくだりは殆んどなく、童貞まっしぐらのおバカで品の悪いギャグマンガといったところであろうか。

 また原作者の蔵石ヨウ氏の年齢は不詳なのだが、登場人物たちの名前を見た限りではかなり年配なのかな……。だって青島等とは、青島幸男と植木等のドッキングだし、DX団のメンバーも、小松正男=小松政夫、伊東志郎=伊東四朗、中本高次=仲本工事、小野靖史=小野ヤスシだものね。もっと言えば女子三人組の葉隠メンバーだって、伊富蘭=伊藤蘭、藤村美紀=藤村美樹、田中良子=田中好子という元キャンディーズのパクリじゃないの、ははは。
 まあ少なくとも男性読者には面白いマンガだと思うが、タイムトラベルものとして期待するのはやめたほうが良いかもしれない。あくまでも「青島の妄想」をタイムスリップに置き換えたおバカストーリーなのだと解釈したほうがよいだろう。

評:蔵研人

 

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