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2025年5月の記事

2025年5月28日 (水)

モテキ

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著者:久保 ミツロウ

 著者は男のような名前だが、実は本名は久保美津子で、もうすぐ50歳のおばさんである。男性誌でマンガを連載するときに男性名に改名したらしい。確かに画風も男性的だし、テーマも色っぽいので黙っていれば男性と言っても誰も疑らないだろう。本作は著者の代表作でドラマや映画化されている。私自身は本則以外には『アゲイン!! 』しか読んでいないので正確な評価は出来ないのだが、少なくとも『アゲイン!! 』よりはずっと面白かったことは間違いない。

 内容はヘタレで女にもてなかった29歳の藤本幸世に、ある日突然知り合いの女の子から次々に連絡が入る。それで「ついに俺にもモテ期が訪れた」とはしゃぎ回り、無我夢中でとっかえひっかえ4人の女性たちとデートやイベントをこなしてゆく。さて彼は一体どの女性と結ばれるのであろうか、チャンチャン!!、といったお話である。

 それにしてもこの4人の女性たちがそれぞれ個性的で可愛いので、読んでいるほうも最後は誰と結ばれるのかとイライラドキドキしてしまうのだ。その4人を簡単に紹介すると次のようになる。
 土井亜紀  27歳の派遣社員。派遣先の同僚で、会社では眼鏡をかけた地味なタイプたったが、素顔は美人で以外に社交的で気の利いた素敵な女性。
 中柴いつか 22歳の照明助手。色気はないが元気で可愛い女の子。2年前に飲み会で知り合い、音楽や漫画の趣味が合う気の置けない女友達。
 小宮山夏樹 28歳のOL。25歳の時に出会った、人生で一番好きだった女性。ただ酒癖が悪く、酔うと誰とでも性的関係を結んでしまう。
 林田尚子  中学の同級生。中学時代は「女ヤンキー」と呼んで避けていた。だが面倒見がよく現在はすっかり丸くなり、娘と二人で暮らしている。
 
 また女性たちの心理状況がかなり分かり易く描かれているのは、著者が女性マンガ家だからであろうか。まあ個人的には、土井亜紀といつかちゃんに惹かれたが、いつまで経ってもはっきりしない藤本にはイライラが募ってしまうのだった。ネタバレになるので結末は保留しておくが、やはり大体予想通りだったとだけバラしておこう。

評:蔵研人

 

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2025年5月24日 (土)

フレフレ少女

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漫画:よしづきくみち

 女子高校生の応援団長が活躍する漫画といえば、久保ミツロウの『アゲイン!!』があるが、本作のほうが先に発表されているので、もしかすると本作をパクったのだろうか。そんなことはどうでもよいのだが、『アゲイン!!』が全12巻だったのに対して、本作はたったの2巻で完結である。まあ『アゲイン!!』のほうは、女子高校生の応援団長は準主役であり、主人公のタイムスリップのほうがメインテーマだと言うところが異なっている。また本作は文学少女・桃子が野球部のエースに恋をしてしまい、その関連から部員1名の応援団に入部し応援団長になるというと設定なのだ。

 その後なんとか5名の部員をかき集めるのだが、ド素人ばかりで話にならない。ところがそこに突然OBの元応援団長が登場し、5名を合宿に連れ出し厳しくしごくことになる。余りにも厳し過ぎて全員が脱落しそうになるのだが、ギリギリのところで全員が心を繋ぎ合い、なんとか耐え凌いでいっぱしの応援団になるという手垢のついたパターンである。そのあと「応援の力」によってバスケット部、柔道部、将棋部が続々と地区優勝してしまう。そしてエースが転校して更に弱体化していた野球部までが、奇跡的な快進撃を続けるのだ。なんと余りにも神がかりでご都合主義な展開ではないか。

 そしてあっという間に完結してしまうのだ。物足りないと言えばそうかもしれないし、あっさりしていてストレスなしと言えないこともない。まあいずれにせよ最後は、ラブストーリーに逆戻りしてめでたしめでたしなのだった。
 なんと本作は漫画だけではなく、2008年に当時人気絶頂だった美少女俳優の新垣結衣主演で映画化されているではないか。彼女が悪いわけではないが、演出や編集などに難があり、ガッキーファン以外の評価は最悪だったみたいだね。

評:蔵研人

 

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2025年5月18日 (日)

君と僕のアシアト

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★★★
著者:よしづきくみち

 サブタイトルが「タイムトラベル春日研究所」と記されているように、本作はタイムトラベル系のマンガである。ただタイムマシンで過去や未来に自由に跳び回るのではなく、春日市内に固定された「脳内タイムトラベル」であり、過去20年間に収集したデーターを利用するため、タイムトラベル範囲は過去20年間に限定されているのだ。

 主役は脳内タイムトラベル春日研究所所長の風見鶏亜紀という美女だが、脳内タイムトラベル装置を発明したのは彼女の亡父である。この脳内タイムトラベルサービスを利用するには1回40万円かかるのだが、荒唐無稽で信じる人が少ないためか、宣伝が行き届いていないためか、利用客は極端に少なく破産寸前といった状況なのである。

 たまに訪れる客の悩みと脳内タイムトラベルの話がいくつか続いて行くというパターンでコミック誌に連載されていたのであるが、「死んだ妹が実は生きているのでは、それどころか姉まで存在していた」といったテーマとも繋がっているのだった。結局はタイムトラベルだけではなく、パラレルワールドも絡んでくるのだが、だんだん複雑になってきてラストはなんだかよく分からないまま終わってしまった。
 それにしても著者のよしづきくみちの画風は丁寧で美しい。ことに美少女の絵が実に美麗である。やはりイラストレーター出身だからであろうか……。

評:蔵研人

 

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2025年5月14日 (水)

十字路

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著者:五十嵐貴久

 タイトルの「十字路」とは、神代小学校教諭の織川俊英が殺された自宅近くの交差点のことである。またタイトルにしたくらいだから、この交差点に犯人逃亡のヒントが込められているのだが、それはラストに明かされることになる。

 さて本作では三つの話がパラレルに語られることになる。
 まずは全国学生絵画コンクール高校生の部で最優秀賞を受賞するほど天才的な才能を発揮している織川詩音の話、そう彼女は殺された織川俊英の義理の娘でもあった。
 そしてこの詩音に勝るとも劣らないほどの絵画センスを持っている椎野流夏という、女のような名のイケメン大学生の、なんと彼の父親も毒入りチョコレートで殺されてしまうのである。
 さらにこの二つの事件を追う警察官で、かなり変人だが優秀な探偵役を務める星野警部が捜査・推理してゆく話で構成されている。

 なかなか読み応えもあり、中盤からはぐいぐいと惹かれてあっという間に読破してしまった。本作では中盤までに犯人は大体想像できてしまうのだが、その動機とどのようにして現場から逃走したのかという疑問点が焦点となっているようだ。
 ただオチにどんでん返しや捻りがなく、こじつけのような動機に無理があったかもしれない。それと現代の病巣のような社会問題にメスを入れているものの、吐き気を催すような推理にはかなり辟易してしまった。

評:蔵研人

 

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2025年5月 9日 (金)

ペギー・スーの結婚

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★★★☆
製作:1986年 米国 上映時間:103分 監督:フランシス・フォード・コッポラ

 タイムトラベルファンのくせに、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と並ぶこの「タイムトラベルのレジェンド作品」を今頃になって観たのである。もちろんそれを知らなかったわけでもなくDVDも所持していたのだが、いつでも観れると油断しているうちに10年以上経っていたのだった。40年近く昔の映画だが、まったく色褪せずに楽しめたし、ラストも想像通りだったにも拘らず涙が溢れて止まらなかった。またなんと監督はあのコッポラで、主演はキャスリーン・ターナーとニコラス・ケイジという豪華なキャストなのだ。そしてキャスリーン・ターナーは、本作での演技が認められ第59回アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされている。

 ストーリーは高校時代の同窓会ではじまり、夫との離婚を決意した中年女性ペギー・スーが会場で卒倒するのだが、そのまま高校時代にタイムスリップしてしまう。そこで彼女は昔同級生だった夫や友人たちや、父母や祖父母たちとめぐり逢い、過去の人生を見つめ直してゆく。また本作で夫役を演じたニコラス・ケイジは、2000年に製作された本作と似たような作品『天使のくれた時間』で主役を務めていたためか、なんとなく印象が重なってしまった気がする。
 
 それにしてもネットの評価は意外と低いので驚いた。たぶん話のほとんどが想像できてしまう範囲だったこと、ラストにどんでん返しが用意されていなかったこと、夢落ちの可能性もあったこと、主役の二人が高校生役にはかなり無理があったなどが影響したのだろうか。まさにその通りなのだが、どうしてもタイムトラベル系の作品には甘くてね、てへへへ……。
 

評:蔵研人

 

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2025年5月 5日 (月)

黒牢城

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著者:米澤穂信

 第166回直木賞受賞作品である。時は本能寺の変より4年前、舞台は織田信長に叛旗を翻した荒木村重が立て籠もる有岡城である。
 秀吉に命ぜられ、頑固者の荒木村重を説得に訪れたのが黒田官兵衛だが、すでに村重の心は信長から離れて説得の甲斐もない。それどころか暗い土牢に閉じ込められてしまうのであった。この歴史的に有名な話がこの小説の序章となり、なんとなく重そうな歴史小説を彷彿してしまうのだが、なんと実は時代劇を装ったミステリーだったのである。

 まず謎の始まりは、村重を裏切った安部仁右衛門の一子安部自念の密室殺人事件である。自念は人質として村重の城中で暮らしており、本来なら親の裏切りにより、すかさず成敗されるのが当時の習わしだった。ところがなぜか村重は彼を殺さず牢に繋ぐ決断をしてしまう。家中の者たちはその理由が呑み込めず、誰もが自念の処刑を望んでいるため、誰が殺したとしても不思議ではなかった。では誰がいつどのような方法で、密室状態の自念を殺害したのだろうか。……と、この謎に立ち向かうのが、なんと藩主村重本人であり、なんと土牢に繋がれている官兵衛の助言まで引き出すのだった。

 さて次の章「花影手柄」では、いつの間にか織田方・大津伝十郎の手勢約100名が有岡城の近くまで押し寄せて陣を張っている。すぐそれに気付いた村重は、これまで手柄を立てられなかったと不満を漏らす雑賀衆と高槻衆各々20名、さらに子飼いの御前衆を率いて敵に夜討ちをかけるのだった。
 この章でのミステリーは、雑賀衆と高槻衆のどちらが敵の大将首を討ち取ったのかという謎解き話である。だがこの章では謎解きだけではなく、斥候のやり方に始まり、夜討ちの仕掛け方、兜首の見分け方、褒章の手筈などが事細かく解説されておりかなり勉強になった。

 さらに第三章「遠雷念仏」では、村重の命を受け明智光秀に密書と家宝の茶壷「寅申」を届ける役目を引き受けた旅の僧「無辺」が何者かに殺害されてしまう。しかもその骸からは「寅申」が収められていた行李までもが消え失せていたのである。
 さて犯人の目的は「無辺」を殺すことだったのか、それとも「密書」や「寅申」を奪うことだったのだろうか。またそもそも誰がどのようにして警備の堅かった場所に忍び込んで無辺を殺害したのか、そのうえ護衛で手練れの秋岡四郎介をいとも容易く斬り殺したのだろうか。と謎が謎を呼ぶ展開に加えて、意外な犯人と結末には驚かざるを得ないだろう。

 そして第四章「落日孤影」では、長期に亘る籠城のなかで、次第に家臣たちの信頼が薄れてゆき、村重の焦りが手に取るように鮮やかに描かれてゆくのである。また今まで起こった事件の首謀者が解明するのだが、何となくすっきりせず部下たちに対する不信感も完全には拭えない。そこでまたまた土牢に繋がれている官兵衛のもとに訪れるのだが、それが官兵衛との最後の会見となるのである。
 
 さらに僅か20頁の最終章へ続くのだが、もはやそこでは「村重が有岡城を去った後」の歴史に沿った解説文が綴られてゆくだけであった。それにしても村重逃亡後に、信長の命により「有岡城の女房衆122人が尼崎近くの七松において鉄砲や長刀で殺される」という残酷な事態を招くぐらいなら、もうあと3年位辛抱して籠城を続けていれば、本能寺の変で信長が討たれたのになあ……。結局は最後になって、ミステリーから歴史小説に戻ったようである。
 歴史小説とミステリーをブレンドしながらも、なかなか含蓄のある内容には脱帽するばかりであり、一番心に残ったのは「この時代の武士たちは、中途半端に生かされるより、さっぱりと殺されたほうが嬉しかった」のだということであろうか。

評:蔵研人

 

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