決算!忠臣蔵
★★★☆
製作:2019年/日本/上映時間:125分/監督:中村義洋
あの有名な『忠臣蔵』を、まさかの「経費」という切り口から描いた異色の時代劇コメディ。これまで何度も映像化されてきた忠臣蔵だが、本作はコメディの装いの中に、歴史や人間の本質に対する皮肉や風刺を織り交ぜた、非常にユニークなアプローチが印象的だった。
最近の時代劇は「超高速!参勤交代」以降、シリアス路線よりもコミカルな演出が主流になりつつあり、殺陣シーンなども控えめな傾向にある。本作もその流れにある一作だが、事実に沿って描かれているし、単なるおふざけで終わらない仕掛けも随所に見られる。
特に、討ち入りまでにかかった経費を現代の金額に換算してリアルタイムで表示する手法は斬新で、赤穂浪士たちの行動に現実味を持たせている。また、討ち入りの決断に至るプロセスも、忠義や正義に燃えるというより「金と体裁と面子」に振り回される姿が滑稽かつ人間的で、むしろ“あり得たかもしれない真実”を想像させるほどだった。
とはいえ、終盤の盛り上がりにはやや物足りなさが残った。討ち入りそのものの描写やその後の処遇がばっさりと省略されているため、クライマックスの高揚感やカタルシスに欠けていたのは否めない。あくまで「収支決算」にこだわった構成ゆえとはいえ、忠臣蔵という素材の持つ「ドラマ」をもう少し引き出してもらいたかったね。
またキャスト面では、ダブル主演の堤真一と岡村隆史が役どころにしっかりとハマっており安定感はあったものの、妻夫木聡や石原さとみなど豪華俳優陣の個性が活かしきれていなかったのは少々もったいない感があった。
とはいえ、当時の金銭感覚や経済事情、そして武士の生活実態に目を向けさせてくれたという点では非常に興味深く、学びのある作品だったことは間違いない。さらに赤穂浪士=英雄という固定観念に一石を投じる、時代劇としての「新解釈」に拍手を送ってもいいだろう。
評:蔵研人
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