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2025年4月 9日 (水)

メモリー・ラボへようこそ

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著者:梶尾真治

 本書はタイトルの『メモリー・ラボへようこそ』と『おもいでが融ける前に』の二本立ての構成になっている。どちらの作品も平凡社の『月刊百科』という雑誌に2008年から2009年にかけて掲載されたもので、後者は前者の第二ストーリーであり、著者得意の甘く切ない恋愛ファンタジー作品である。
 
 『メモリー・ラボへようこそ』は、結婚もせず仕事一途に生きてきた主人公・和郎が、定年退職したあとになってそれまでの味気ない人生を振り返り、しょぼくれて屋台で飲んでいる。すると帰りがけに屋台の主人から、奇妙なチラシを手渡されるのだった。そこにはこう記載されていた「あなたの必要なおもいでが揃っています。メモリー・ラボへ」と……。

 そこではコピーした他人の記憶を人工的に移植する、という摩訶不思議な研究と提供が行われていたのだった。それにしても、なぜそんな重大な研究を、古ぼけた雑居ビルの一室で行い、1回8万円という微妙な金額で提供しているのだろうか、もしかすると詐欺なのではないだろうか。ファンタジーというより、『笑うセールスマン』的な漫画チックな展開である。

 他人の記憶を植え付けられた和郎は、その記憶に登場する女性が気になり始め、その記憶に振り回され続けることになる。いったいこの結末はどうなるのだろうか、またその記憶の彼女とは何者なのだろうか。そうこうしているうちに、終盤にアッと驚くどんでん返しが巻き起こり、100頁程度の本作はあっという間に終了してしまった。その締めくくりは実に見事なのだが、「もう少し引き延ばしてくれてもよいのになあ」と感じてしまうはずである。

 さて二作目の『おもいでが融ける前に』では、当然一作目のような驚きはないものの、ストーリー的には第一作を凌ぐ面白さがあった。こちらは笙子という女性が主人公であり、母親が教えてくれない謎の父親を捜すというお話で、ラストに連発するどんでん返しが用意されている。
 いずれにせよ二作とも、いつもながらカジシンさんオリジナルの甘く切ないラブファンタジー仕立てでとても読みやすかったね。

評:蔵研人

 

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