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2024年12月の記事

いまこそ人生で大切なことは映画から学ぼう

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著者:蓑宮武夫

 著者の蓑宮氏はソニーで初期トランジスタ開発などを手掛け、老後は地元小田原の街中に映画館を復活させようと、小田原シネマ(株)を設立し精力的に活動してきたが、残念ながら2023年10月に出張先のメキシコで体調を崩して急逝している。

 さて本書の内容は小田原での街おこしミニシアター『小田原シネマ館』設立までの経緯にはじまり、著者の選んだ不朽の名作12作、人生と仕事に役立つ17作、英国映画協会が選んだ史上最高の映画8作などが紹介されている。さらに小田原以外の街中映画館で地域が元気になったいくつかの事例と、映画『二宮金次郎』で妻役を演じた田中美里との特別対談などが収められている。

 この本の中で何回も登場する著者の持論である「映画は映画館で観ることを前提に製作されている、従ってDVDで見る映画はテレビで見る花火と同じく全くの別物である」という思想には共鳴してしまった。つまり映画館では大画面や大音響だけではなく、途中で抜け出せない暗闇の中での孤独と拘束感に襲われながらも、周囲の観客たちと感情を共有することができるのである。

 ところで著者が推薦する映画たちは、いわゆる名作が多く当然納得せざるを得ないのだが、かなり古い作品や真面目な作品ばかりが並んでいるところがやや物足りない。もし私が選ぶとしたら『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『エイリアン』、『ターミネーター』、『マトリックス』は絶対に外せないけどね……。

評:蔵研人

 

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鳥類学者のファンタジア

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★★★
原作:奥泉光 画:望月玲子

 不可思議な音階がジャズピアニスト・希梨子を時空を超える冒険に巻き込んでいく。……謎の音階を探して、現代から第二次大戦中のドイツへと時空を超える旅を描いたマンガなのだが、とにかく音楽と宇宙の蘊蓄が脈絡もなく混在し難解で、凡人の私には理解しがたい内容であった。

 それもそのはず、原作が芥川賞作家・奥泉光の小説だったのである。原作は未読であるが、マンガでさえ理解不能なので、小説はさらに難解なのだろうか、いやたぶんマンガには不向きの原作なのかもしれないね。……ごめんなさい、いずれにせよもうこれ以上は、評論を書く元気も喪失してしまったようだ。あーあ、マンガを読んでこれほど疲れたのは、生まれて初めてかもしれない。

評:蔵研人

 

 

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市子

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★★★
製作:2023年 日本 上映時間:126分 監督:戸田彬弘

 三年間同棲していた長谷川から結婚の申し込みを受け、感動の余り涙を流した市子だったが、なんと翌日になって突然失踪してしまうのだった。そのときラジオからは、某所から死体が発見されたというニュースが流れていた……。たぶんそのニュースが、彼女にとって都合の悪いニュースだったのだろうな、と推測しながらそのあと本作を観ることになる。

 最近になって立て続けに、佐藤正午の『ジャンプ』、辻村深月の『傲慢と善良』など、失踪した女性を追いかけるミステリアスなラブストーリーを読んだばかりなのだが、本作もそんなタイプのラブストーリーなのかと想像していた。ところが延々と失踪する訳でもなく、ラブストーリーと言うよりは、平野啓一郎の『ある男』と似たような、かなり暗くて重いテーマを背負っているではないか。

 市子を演じた杉咲花をはじめとして、全員が必死に演技していた事実は評価したい。ただ警察の捜査が緩い割には恋人たちの追跡が厳しすぎるとか、失踪した後どうやって生活できたのかとか、よくもあれほど簡単に義父を殺せたのだろうかとか、美人でもなく不機嫌な性格なのに、なぜに次から次へと支援してくれる人たちが現れるのだろうか。また義父と妹の死体は、どうやって処分したのだろうか。
 などなどかなり突っ込みどころが多くて、リアリティーに欠けるところが最大の難点だろう。つまり本作のようなヒューマンドラマは、絶対に嘘臭いニオイを漂わせてはならないからである。

 また余りにも時間が行ったり来たりし過ぎて、ストーリーが分かり辛くなっているとこころも感心しない。そしてオープニングとラストシーンが繋がったことにより、市子が何をしたのか大体のことは想像できるのだが、だから何なのだと言いたくなる歯切れの悪い不愉快なエンディングでもあった。

 
評:蔵研人

 

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ジェンダー・クライム

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著者:天童荒太

 タイトルの『ジェンダー・クライム』とは、性にまつわる犯罪という意味である。土手下に全裸で転がされていた中年男性の無惨な遺体には、暴行の痕が残されており「目には目を」との恐ろしいメッセージが残されていた。

 この事件の犯人を探し出すのは容易ではなく、多分読者たちも最後の最後まで騙され続けていたことだろう。さてこの被害者こそ、3年前に起きた集団レイプ事件の加害者だった青年の父親であり、本作はこの3年前の集団レイプ事件の詳細に迫って行くのである。いつの間にか64歳を迎えている天童荒太が原点回帰して描いた会心の一作とも言えよう。

 一人の人間を廃人にしてしまう集団レイプには、心底からぞっとする恐怖感が沸き上がり、同時に世間や警察などの誹謗中傷や誤った認識には疑問を隠し切れない。冒頭の中年男性の遺体には、そんな感情がぎっしりと詰め込まれていたような気がしたのは、決して私だけではないだろう。

 笑いあり涙あり人情や社会批判もあり、さらにラストはハッピーエンドで締めくくられていて、年配の私には爽やかな読後感が得られた気がする。ただ中盤までの丁寧な描き方に比べると、終盤の駆け足的な展開には、やや物足りない気分が頭をもたげてしまったかもしれない……。

評:蔵研人

 

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アイスマン。ゆれる

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著者:梶尾真治

 アイスマンとはヒロイン山本知乃のニックネームである。つまり男女を結びつける呪文を知っているので、あたかも縁結びの神、つまり月下氷人だからアイスマンということらしい。
 ただしこの呪文を使うたびに体が衰弱して、三度使えば命をも失うというのだ。そうとは知らず過去に二回使っているので、もう二度と使えないのだが、そのことを知らない親友から、どうしても愛されたい男性がいるので呪文をかけて欲しいと懇願されるのだった。

 それにしてもいつもカジシンさんが描く女性は初々しく清楚で優しいね。本作の知乃さんも30代だというのに、まるで中学生並みの純真な女性なのである。きっとこうした女性がカジシンさんの理想の女性なんだろうと、勝手に思い込んでいる。なんと終盤は友情のために自分の好きな男性を譲って、命まで捧げるのだから「ありえない!」と叫びたくなってしまうだろう。
 といいながらも、ラストはいつもながらの満を持していたようなハッピーエンドで締め括られるのである。また彼女たちがレストランや割烹で味わうグルメの数々も、きっとカジシンさんの趣味なのだろうとすぐに推測できてしまう。とにかくいつも通り「カジシン印」ががっちり押された小説なので安心して読めるのが嬉しいね。

評:蔵研人

 

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一秒先の彼女

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★★★★
製作:2020年 台湾 上映時間:119分 監督:チェン・ユーシュン

 人よりワンテンポ早い郵便局員のシャオチーと、逆にワンテンポ遅いグアタイのラブストーリーである。オープニングは、朝起きたら大切なバレンタインデーが消失してしまい、日焼けだけが残ったと、真っ黒な顔で交番に駆け込むシャオチーのドタバタシーンが印象的だ。はじめは何の意味かよく分からなかったのだが、実はそのバレンタインデーにイケメンの彼とデートの約束をしていたのである。ではなぜその日に限って突然、彼女の記憶が消えてしまったのだろうか。
 その謎解きは、終盤に明らかにされるのだが、そこに辿り着くまでには数多くの伏線が見事に紡がれていたし、そもそもストーリー自体もなかなか楽しかったね。その一つはシャオチーを演じたリー・ペイユーという女優のキャラのユニークさのお陰かもしれない。

 彼女は決して美人とは言えないが、愛嬌のある表情に抜群のスタイルが見事にマッチングして、本作のようなファンタジックラブコメのヒロインにはピッタシカンカンなのだ。だから彼女の行動を観ているだけで、楽しくて堪らなくなってしまったのである。さらにオマケと言っては失礼だが、「どこかで聞いたような声と顔だな」と思った郵便局の同僚役を演じていたのが、台湾の美人囲碁棋士の黒嘉嘉ことヘイ・ジャアジャアだったのは驚きだった。

 いずれにせよ本作最大の見どころは、「全ての謎を解き明かしながら美しい風景の中を走り続けるバス」が織りなしてゆくスペクタクルシーンであろう。さらにエンドロールで流れるうっとりする音楽を聴いていると、なぜかうっすらと涙が滲んでくるから不思議である。したがってこのエンドロールは飛ばさないで、かならずじっくりと味わって欲しいものである。

  
評:蔵研人

 

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ゴジラ×メカゴジラ

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★★★☆
製作:2002年 日本 上映時間:88分 監督:手塚昌明
 
 本作はゴジラシリーズ第26作目の作品であり、メカゴジラ登場作としては第3作目となる。とにもかくにもゴジラとメカゴジラのプロレスゴッコに的を絞った映画なので、特に見応えのあるストーリーがあるわけでもなく、上映時間も88分とやや短めであるがそれに関しては特に文句は言わない。
 
 当然だが、シン・ゴジラやゴジラ-1に比べればまだまだ感が漂ってはいるが、当時の邦画特撮レベルからすればかなりハイレベルだったのかもしれない。ことにメカゴジラの造形や、スピード感あふれるCGによるミサイル攻撃や高軌道形態での俊敏なアクションなどは、従来のイメージを一新するほどの出来栄えであった。また水野久美が演じた女性総理大臣は、多分当時外務大臣に就任し脚光を浴びていた田中真紀子氏をモデルにしたのかもしれない。 
 
 それにしても自衛隊の協力体制も半端ではなく、戦車・装甲車・大型トラック・護衛艦・潜水艦・戦闘機などなど惜しげもなく提供してくれたものである。やはりこの時代あたりになると、ゴジラ映画も国際化し始めそれなりに説得力を持つようになさったのかもしれないね。
 ただひとつだけいちゃもんを付けるとすれば、なぜメカゴジラに搭載した強力な武器を、メカゴジラだけではなく切り離して単独の武器としても創らないのかということである。そんなことを言うと「それを言ってはお終いよ」と言われそうだがね、はははは。
 
評:蔵研人

 

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