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2024年11月の記事

2024年11月30日 (土)

映画狂時代

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 本書は映画評論の本ではない、女優檀ふみが編纂した「映画に纏わるエッセイと小説」16編を収録した本である。著者は武田百合子、谷崎潤一郎、小津安二郎、村上龍、江戸川乱歩、北杜夫、西川美和、恩田陸、太宰治、筒井康隆、向田邦子、三浦しをん、内田百聞、塩野七生、松本清張、檀一雄と錚々たるメンバーが連なっている。
 
 ただやはり漠然としたエッセイより、ある程度ヴォリューム感のある『思い出の銀幕』三浦しをん、『顔』松本清張の二編の短編小説が読みごたえがあり面白かった。それにしても流石才女のふみさん、映画狂ではないにしても、かなりいろいろな本を読んでいるし、洒落たセレクトセンスにも感心した次第である。
 
評:蔵研人
 

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2024年11月26日 (火)

月の満ち欠け

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★★★☆
製作:2022年 日本 上映時間:128分 監督:廣木隆一
 
 半年前に直木賞を受賞した佐藤正午の原作小説を読んでいるが、やっと追いかけ映画のほうも観ることができた。本作の主な出演者は、大泉洋を筆頭に有村架純、目黒蓮、伊藤紗莉、柴咲コウ、田中圭と錚々たるメンバーが顔を連ねている。またいつもながら子役たちの熱演は、心の中に染み込んでくるよね。
 
 本作のテーマは、輪廻転生を巡るラブ・ストーリーで、月の満ち欠けのように何度も生まれ変わるヒロイン瑠璃が紡ぐ30数年間におよぶ時の流れと、さまよい続ける魂のお話と言うことになる。小説も映画も出来栄え的にはほぼ同程度であったが、映像のほうがだいぶ分かり易かったかもしれない。また中盤は少々だれ気味であったが、終盤の約15分間は涙・涙の連続射撃にタジタジになってしまった。
 
 主題曲を含めて全体的に音楽の使い方が良かったし、月の映像も心底美しかったよね。ただし時系列と辻褄合わせにかなり無理があったのも否めない。また輪廻転生というファンタジックな流れを許容できない人には退屈かもしれないので、観る人を選ぶ作品とも言えるだろう。
 
 
評:蔵研人

 

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2024年11月21日 (木)

リバー

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★★★★
著者:奥田英朗
 
 なんと648頁に亘るこの分厚い本を10日かかってやっと読み終わった。タイトルのリバーとは、渡良瀬川連続殺人事件のことを警察で『リバー事案』と略称で読んでいるからであろう。
 この事件は、群馬県桐生市と栃木県足利市で若い女性の殺人が相次いで勃発したもので、いずれも首を絞められ全裸で両手を縛られており、発見場所も群馬県と栃木県の県境付近を流れる渡良瀬川の河川敷であった。さらに10年前にも、同様の手口で若い女性が2人殺された未解決の事件が存在していたのである。
 
 本書はこの『渡良瀬川連続殺人事件』をめぐり、刑事、犯罪被害者、新聞記者、それぞれの視点でストーリーが紡がれてゆく。ただ犯人と思われる三人の人物たちの内面については真っ黒に塗りつぶされているだけで、読者としては彼らの行動や刑事たちの調査内容から想像するだけに留められている。そうすることにより、より犯人の不気味さやリアル感、さらには逮捕の難解さを強調しているのであろう。
 
 また本書は単なる推理小説ではなく、複数の登場人物の葛藤などを巧みに練り込んだ群像劇であり、主な登場人物を記すと次のようになる。
警察側
・斎藤一馬:捜査一課三係の刑事で、イチウマの愛称で呼ばれている警察側の主人公
・野島昌弘:足利北署刑事一課の巡査部長で、斎藤より若いが終盤に犯人逮捕の証拠をつかむ大手柄を挙げる
・滝本誠司:元刑事。十年前の事件を担当していたが、現在は警察を退職しているがOBとして後輩から慕われている
容疑者側
・池田清:十年前の渡良瀬川連続殺人事件の際に逮捕されたが、証拠不十分で不起訴となっている。ヤクザも怯える狂気の満ちた恐ろしい男
・刈谷文彦:ゼネラル重機に勤める期間工で、無口だがスナック「リオ」のママに惚れられて男女の関係となる
・平塚健太郎:県会議員の息子だが、無職でひきこもりで多重人格者である
新聞記者側
・千野今日子:中央新聞の新人女性記者で、まじめで一生懸命事件の担当をこなしている
・小坂:支局デスク。警察担当のキャップで警察との折り合いのつけかたが巧い
事件関係者側
・松岡芳邦:十年前の事件で娘を殺された遺族。写真館を営むが、その執拗な性格と復讐心は恐ろしいくらいだ
・吉田明菜:スナック「リオ」のママで、容疑者刈谷文彦にぞっこんである
・篠田:犯罪心理学の学者で、平塚健太郎の内部に潜む別の人格と会話ができる
 
 とにかく事件そのものよりもこれらの登場人物たちの行動や心象風景に圧倒されるだろう。ことに被害者遺族の松岡芳邦と元刑事の滝本誠司の異常とも思える行動としつこさ頑固さには、読者までが辟易させられてしまうだろう。また警察出身でもない著者が、よくこれほど詳細に警察の内部事情を書き連ねることができたものだと感心しっぱなしである。それにしてもよくできた小説であり、著者の最高傑作作品かもしれない。
 
評:蔵研人

 

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2024年11月17日 (日)

時のむこうのきみの星

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★★★☆
著者:浦川佳弥
 
 鹿王院高校の此ノ花繭子は、ラグビー部の森下先輩に憧れ、チアリーディングで応援している。そんなある日、東伊理弥という転校生に暴走族の突進から救われる。なんと彼は小さい頃から時々夢に現れていた青年とそっくりだったのである。そのうえ彼には、まゆの事を知っている様な雰囲気が漂っていた。
 
 タイムトラベルものなので、すぐに謎の青年・東伊理弥の正体に思いあたった。ある意味でドラえもんの世界であったが、少女漫画として明るくかつ切なく描かれているところに惹かれてしまうだろう。
 著者の浦川佳弥は、中学生の頃から手塚治虫の大ファンで、サイン会で手塚に見せたカットを褒められたことが忘れられなかったようだ。SF作品はほとんどないものの、本作は少なからず手塚治虫の影響を受けて描いたようである。
 
評:蔵研人

 

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2024年11月13日 (水)

十一人の賊軍

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★★★☆
製作:2024年 日本 上映時間:155分 監督:白石和彌

 久々に劇場で時代劇を観た。そもそも劇場で映画を観るのも『ゴジラ-1.0』以来の約1年振りなのだが、かつ時代劇となるとなんと2017年に観た『忍びの国』以来かもしれない。従って約7年振りということになる。

 当初過去に二度上映されている『十三人の刺客』のリメイク作品なのか、と勘違いしてしまったが全く別の作品であった。本作の時代背景は幕末であり、戊辰戦争で官軍につくか幕府軍につくか、はっきり決められない新発田藩で繰り広げられる裏切りの連鎖を描いた時代劇なのである。
 11人の罪人たちは、新発田藩の命運を握る「ある砦」を守る任に就き、官軍と戦うことを命じられる。そして無事任務を遂行すれば、無罪放免とすると説得され、嫌々ながらも任務に就き壮絶な戦いに身を投じるのだった。

 幕末なので官軍の大砲や鉄砲、さらには手作りの爆弾などが主な武器になるのだが、接近戦ではやはりチャンバラがメインになる。また1対1の戦いもあれば、複数同士の戦いもあり、様々な殺陣を堪能することができるのだが、やはりその中でも元槍術指南の老剣士を演じた本山力の圧巻の殺陣と渋い演技が実に素晴らしかった。
 へぇー現代にも、こんな凄い時代劇俳優が残っていたんだね。その本山は、1969年10月7日生まれ、京都府出身の55歳だという。エキストラの仕事から始め、現在は殺陣技術の向上・発展と継承を目的に、東映京都撮影所を拠点に活動する「東映剣会」所属の俳優なのだった。
 映画『壬生義士伝』や『座頭市 THE LAST』「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」シリーズなど、数多くの時代劇作品で活躍しており、話題の『侍タイムスリッパー』にも出演。多くの作品で斬られ役を担ってきており、時代劇の立ち回りには絶対に欠かせない存在なのである。
 脇役専門のようだが、是非彼が主演の時代劇を創ってもらいたいものである。例えば『剣聖:上泉信綱物語』とか『柳生石舟斎物語』などはどうだろうか……。

 さて話が横道にそれてしまったが、前述した通り本作は新発田藩家老:溝口内匠(阿部サダヲ)の裏切りをテーマにした映画である。なにせ奥羽越列藩同盟に対する裏切りをはじめとして、幕府に対する裏切り、官軍に対する裏切り、主役である藩士:鷲尾兵士郎に対する裏切り、罪人たちに対する裏切り、そして自分の娘に対する裏切りと裏切りの大安売りなのだ。
 だがそのために新発田藩と藩民たちは無傷で生き延びることが叶ったのである。つまり大義のためには、あらゆる者を騙すことも許されるということなのであろうか。まあそのあたりはケースバイケースであり、賛否両論もあるかと思うのだが、難しい問題であることも否めないだろう。

 本作は155分という長丁場なのだが、テンポの良さと迫力の殺陣、そして裏切りの連鎖によるどんでん返しなどに飲まれているうちに、あっという間に終劇となってしまった。ただ実話を基にしているため荒唐無稽な展開を避けたのか、期待していたような11人それぞれの個性的な活躍が見られなかったのが残念である。望むべくは、弓の達人とか忍者とかのプロフェッショナルをメンバーにして欲しかったね。
 また頭の弱いノロが簡単に爆弾を創ってしまうのも納得できないので、せめて彼を花火職人にするとかの設定が必要ではなかったか。さらにラストの鷲尾兵士郎(仲野太賀)の怒りはもっともなのだが、まるでターミネーターもどきの不死身の大暴れもやはりあり得ないだろう。面白い映画なのだが、もう少し共感できる丁寧な設定とわくわくする展開があれば文句はなかったのだが……。


評:蔵研人

 

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2024年11月 7日 (木)

月の立つ林で

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★★★★
著者:青山美智子

 長編小説かと思ったら、二章から主人公が変わったので短編集なのかと早とちりしてしまった。実はそのどちらでもなくどちらでも通じるといった連作短編集なのである。

 一章から五章までの五作が描かれているのだが、全ての作品に絡んでくるのが、ポッドキャスト「ツキない話」でタケトリ・オキナが語る月にまつわる話なのだ。このオキナの存在も面白いのだが、彼が語る月にまつわる豆知識もなかなか興味深かった。
 さらにそれぞれの主人公は年齢・性別・職業がかなり異なっているのだが、それぞれが何らかの関わりを持っている。そして気が付くと今まで脇役だった人が、いつの間にか主役になっているのだ。それらをさりげなく全ての話に繋げてあるのだから「絶妙の筆使いじゃないか!」とおもわず手を叩きたくなってしまうだろう。

 また全ての登場人物が訳ありで、その心情を知ったときには思わずホロリと温かい涙が頬を伝ってしまうのである。なかなか気づき難い身近な人のありがたみと優しさを再認識できる一冊なのだ。さらに何と言っても謎の「タケトリ・オキナ」の正体を知ったときには、またまた今度は熱い涙が溢れてしまうのだった……。

評:蔵研人

 

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2024年11月 3日 (日)

グランツーリスモ

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★★★★
製作:2023年 米国 上映時間:134分 監督:ニール・ブロムカンプ

 プレイステーションのドライブゲーム『グランツーリスモ』で遊んでいた青年ヤン・マーデンボローが、本物のレーサーになって活躍するというお話なのだが、驚いたことに彼は実在の人物だというのである。ただ映画の中ではPS5レベルのゲーム機が使用されていたような気がしたが、実在の彼が遊んでいたのはPS3なので、それほど精密なシュミレーター機能を発揮できたのか疑問に感じることも否めない。

 それはそれとして、映像のほうはハラハラドキドキ迫力満点で実に素晴らしいではないか。まさにゲームと実走がマッチングした完璧なレース映像であった。とにかくそれが本作の肝であり全てであると言い切っても良いだろう。それ以外のコメントは何もない。

 
評:蔵研人

 

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