映画狂時代
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★★★☆
製作:2024年 日本 上映時間:155分 監督:白石和彌
久々に劇場で時代劇を観た。そもそも劇場で映画を観るのも『ゴジラ-1.0』以来の約1年振りなのだが、かつ時代劇となるとなんと2017年に観た『忍びの国』以来かもしれない。従って約7年振りということになる。
当初過去に二度上映されている『十三人の刺客』のリメイク作品なのか、と勘違いしてしまったが全く別の作品であった。本作の時代背景は幕末であり、戊辰戦争で官軍につくか幕府軍につくか、はっきり決められない新発田藩で繰り広げられる裏切りの連鎖を描いた時代劇なのである。
11人の罪人たちは、新発田藩の命運を握る「ある砦」を守る任に就き、官軍と戦うことを命じられる。そして無事任務を遂行すれば、無罪放免とすると説得され、嫌々ながらも任務に就き壮絶な戦いに身を投じるのだった。
幕末なので官軍の大砲や鉄砲、さらには手作りの爆弾などが主な武器になるのだが、接近戦ではやはりチャンバラがメインになる。また1対1の戦いもあれば、複数同士の戦いもあり、様々な殺陣を堪能することができるのだが、やはりその中でも元槍術指南の老剣士を演じた本山力の圧巻の殺陣と渋い演技が実に素晴らしかった。
へぇー現代にも、こんな凄い時代劇俳優が残っていたんだね。その本山は、1969年10月7日生まれ、京都府出身の55歳だという。エキストラの仕事から始め、現在は殺陣技術の向上・発展と継承を目的に、東映京都撮影所を拠点に活動する「東映剣会」所属の俳優なのだった。
映画『壬生義士伝』や『座頭市 THE LAST』「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」シリーズなど、数多くの時代劇作品で活躍しており、話題の『侍タイムスリッパー』にも出演。多くの作品で斬られ役を担ってきており、時代劇の立ち回りには絶対に欠かせない存在なのである。
脇役専門のようだが、是非彼が主演の時代劇を創ってもらいたいものである。例えば『剣聖:上泉信綱物語』とか『柳生石舟斎物語』などはどうだろうか……。
さて話が横道にそれてしまったが、前述した通り本作は新発田藩家老:溝口内匠(阿部サダヲ)の裏切りをテーマにした映画である。なにせ奥羽越列藩同盟に対する裏切りをはじめとして、幕府に対する裏切り、官軍に対する裏切り、主役である藩士:鷲尾兵士郎に対する裏切り、罪人たちに対する裏切り、そして自分の娘に対する裏切りと裏切りの大安売りなのだ。
だがそのために新発田藩と藩民たちは無傷で生き延びることが叶ったのである。つまり大義のためには、あらゆる者を騙すことも許されるということなのであろうか。まあそのあたりはケースバイケースであり、賛否両論もあるかと思うのだが、難しい問題であることも否めないだろう。
本作は155分という長丁場なのだが、テンポの良さと迫力の殺陣、そして裏切りの連鎖によるどんでん返しなどに飲まれているうちに、あっという間に終劇となってしまった。ただ実話を基にしているため荒唐無稽な展開を避けたのか、期待していたような11人それぞれの個性的な活躍が見られなかったのが残念である。望むべくは、弓の達人とか忍者とかのプロフェッショナルをメンバーにして欲しかったね。
また頭の弱いノロが簡単に爆弾を創ってしまうのも納得できないので、せめて彼を花火職人にするとかの設定が必要ではなかったか。さらにラストの鷲尾兵士郎(仲野太賀)の怒りはもっともなのだが、まるでターミネーターもどきの不死身の大暴れもやはりあり得ないだろう。面白い映画なのだが、もう少し共感できる丁寧な設定とわくわくする展開があれば文句はなかったのだが……。
評:蔵研人
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★★★★
著者:青山美智子
長編小説かと思ったら、二章から主人公が変わったので短編集なのかと早とちりしてしまった。実はそのどちらでもなくどちらでも通じるといった連作短編集なのである。
一章から五章までの五作が描かれているのだが、全ての作品に絡んでくるのが、ポッドキャスト「ツキない話」でタケトリ・オキナが語る月にまつわる話なのだ。このオキナの存在も面白いのだが、彼が語る月にまつわる豆知識もなかなか興味深かった。
さらにそれぞれの主人公は年齢・性別・職業がかなり異なっているのだが、それぞれが何らかの関わりを持っている。そして気が付くと今まで脇役だった人が、いつの間にか主役になっているのだ。それらをさりげなく全ての話に繋げてあるのだから「絶妙の筆使いじゃないか!」とおもわず手を叩きたくなってしまうだろう。
また全ての登場人物が訳ありで、その心情を知ったときには思わずホロリと温かい涙が頬を伝ってしまうのである。なかなか気づき難い身近な人のありがたみと優しさを再認識できる一冊なのだ。さらに何と言っても謎の「タケトリ・オキナ」の正体を知ったときには、またまた今度は熱い涙が溢れてしまうのだった……。
評:蔵研人
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★★★★
製作:2023年 米国 上映時間:134分 監督:ニール・ブロムカンプ
プレイステーションのドライブゲーム『グランツーリスモ』で遊んでいた青年ヤン・マーデンボローが、本物のレーサーになって活躍するというお話なのだが、驚いたことに彼は実在の人物だというのである。ただ映画の中ではPS5レベルのゲーム機が使用されていたような気がしたが、実在の彼が遊んでいたのはPS3なので、それほど精密なシュミレーター機能を発揮できたのか疑問に感じることも否めない。
それはそれとして、映像のほうはハラハラドキドキ迫力満点で実に素晴らしいではないか。まさにゲームと実走がマッチングした完璧なレース映像であった。とにかくそれが本作の肝であり全てであると言い切っても良いだろう。それ以外のコメントは何もない。
評:蔵研人
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