-時の回廊- 昭和は遠くなりにけり
著者:辻真先
本書の冒頭には、下記のような記載がある
「この拙作を、亡き広瀬正さんと亡き藤子・F・不二雄さんに捧げます。 かつて『マイナス・ゼロ』と『ノスタル爺』に感動した---辻真先』
『マイナス・ゼロ』と『ノスタル爺』を読んだことのある人なら、本作を読み終えればすぐに「なるほど」と納得できると思う。つまりタイムマシンで昭和の懐かしい時代を回遊しながら、恋人を追いかけるラブファンタジーと、終盤のノスタルジックでもの悲しい結末がブレンドされているオマージュ作品なのである。ただしタイムマシンではなく、事故を利用したタイムスリップで時間を移動することになる。
作者の辻真先氏は、1932年に名古屋市生まれ、名古屋大学文学部卒業後NHKに入社している。さらにテレビ初期のディレクター、プロデューサーを務めたのち脚本家に転身し、『鉄腕アトム』、『エイトマン』、『ジャングル大帝』、『サザエさん』、『巨人の星』、『デビルマン』など、1500本超のアニメ脚本を執筆している。
そして本作の主人公である鈴木太郎は、まるで著者の分身のような経歴で昭和時代を生き抜いてゆくのだ。また太郎が追いかけ続けるヒロイン江木速美は、華族出身ということから、もしかすると先日亡くなった久我美子がモデルなのかもしれないね。
本書の目次を開くと、第1部 太郎、第2部 次郎、第3部 三郎というネーミングと、それぞれが前後した昭和時代に分類されている。はじめは何のことかと考えていたのだが、第2部を読み始めた時点でその意味が理解できるはずである。
ラストはかなり駆け足になり、想定外の展開となってしまったが、この終わり方にはいろいろな感じ方があるだろう。ただ私自身は、やや暗い『ノスタル爺』色は排除しても、明るい『マイナス・ゼロ』色だけに染めまくって欲しかったかな……。
評:蔵研人
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