時空旅行者の砂時計
著者:方丈 貴恵
序盤は主人公の加茂が瀕死の妻を救うため、謎の人物マイスター・ホラに導かれてタイムスリップするまでの経緯と、タイムスリップについてのいくつかのありきたりな蘊蓄が並ぶ。そのあとは加茂が探偵になりすまし、竜泉家で起こった二人の殺人事件について調査するという流れになる。舞台は1960年の竜泉家別荘で、登場人物は竜泉家の一族とその関係者という構成になっている。広い敷地と複雑な人間関係が絡む話なのだが、人物相関図や建物の図面などが挿入されているので分かり易くありがたかった。
SFやファンタジーの匂いを振り撒いてはいるが、横溝正史 の長編推理小説『犬神家の一族』のオマージュ作品と言っても過言ではないだろう。ただ本作は真犯人を暴くだけではなく、閉ざされた館の中で起きた不可能犯罪の手法や犯行理由、さらにマイスター・ホラとは何者なのか、果たして加茂の妻は助かるのか、加茂は2018年に戻ることができるのか、といった諸々の謎の解明にも興味を惹かれてしまうはずである。
もちろん終盤になれば、全ての疑問や犯人の動機などが明かされることになるのだが、タイムトラベル絡みのトリックはやや反則臭いし、次々に殺人が起きているのに、「全く警察に連絡しない」といった現実離れした展開にはやや馴染めなかった。まあ密室殺人をタイムトラベル手法を使ったパズルゲームに仕立てたミステリーと割り切って読めば、その巧みに準備された構成力には脱帽するしかないだろう。また爽やかで優しさの滲んだ締めくくり方にも、大いなる拍手を送りたい気分である。
評:蔵研人
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