幻告
★★★
著者:五十嵐律人
著者は弁護士の傍ら創作活動を続けている小説家である。従ってその作品のほとんどが、法廷をバックバーンに描かれているようだ。本作も三つの裁判とその相互関係を紐解きながら、自殺した父親に関わる謎を紐解いて行くという話に終始している。
ただ法律家のためか専門的な話が多く、文章も堅いのでかなり読み辛かったことも否めない。さらに法廷ものにしては珍しいタイムスリップの要素が絡んでくるため、さらに難解になっている。
主役は裁判所書記官の宇久井傑で、ある日突然法廷で意識を失って目覚めると、五年前に父親が有罪判決を受けた裁判のさなかだった。という設定ではじまるのである。そこで父親の冤罪の可能性に気がついた傑は、タイムリープを繰り返しながら真相を探り始めるという流れになっている。それは多分、確定した判決は再度審理ができないという『一時不再理の効力』に疑問を感じた著者が、タイムスリップを利用することによって判決を覆すという離れ業を繰り出したのだろう。
さすが弁護士だけあって、法廷での細かい仕組みや慣習についての描写は巧みであり、いろいろ勉強させてもらった。ただとくに複雑な人間ドラマに深入りすることもなく、パズルを解くような話の流れと予測した範囲での結論で締めくくられているので、のめり込んだり感動に打ち震えることはなかった。それで途中退屈感のため、何度も眠気に襲われてしまったのだが、結末が知りたくてなんとか読破することができ、義務を果たしたと言う満足感だけは得られたようだ。
評:蔵研人
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