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2024年10月の記事

2024年10月29日 (火)

時空旅行者の砂時計

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著者:方丈 貴恵

 序盤は主人公の加茂が瀕死の妻を救うため、謎の人物マイスター・ホラに導かれてタイムスリップするまでの経緯と、タイムスリップについてのいくつかのありきたりな蘊蓄が並ぶ。そのあとは加茂が探偵になりすまし、竜泉家で起こった二人の殺人事件について調査するという流れになる。舞台は1960年の竜泉家別荘で、登場人物は竜泉家の一族とその関係者という構成になっている。広い敷地と複雑な人間関係が絡む話なのだが、人物相関図や建物の図面などが挿入されているので分かり易くありがたかった。

 SFやファンタジーの匂いを振り撒いてはいるが、横溝正史 の長編推理小説『犬神家の一族』のオマージュ作品と言っても過言ではないだろう。ただ本作は真犯人を暴くだけではなく、閉ざされた館の中で起きた不可能犯罪の手法や犯行理由、さらにマイスター・ホラとは何者なのか、果たして加茂の妻は助かるのか、加茂は2018年に戻ることができるのか、といった諸々の謎の解明にも興味を惹かれてしまうはずである。

 もちろん終盤になれば、全ての疑問や犯人の動機などが明かされることになるのだが、タイムトラベル絡みのトリックはやや反則臭いし、次々に殺人が起きているのに、「全く警察に連絡しない」といった現実離れした展開にはやや馴染めなかった。まあ密室殺人をタイムトラベル手法を使ったパズルゲームに仕立てたミステリーと割り切って読めば、その巧みに準備された構成力には脱帽するしかないだろう。また爽やかで優しさの滲んだ締めくくり方にも、大いなる拍手を送りたい気分である。


評:蔵研人

 

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2024年10月25日 (金)

プロトタイプA 人工生命体の逆襲

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★★★
製作:2020年 米国 上映時間:124分 監督:キャサリン・ハードウィック

 なんともはやセンスが悪くて大袈裟な邦題である。これではまるでこの映画はB級映画です、と自ら語っているようなものじゃないか。それに逆襲と言ってもアクションシーンは全くない。

 本作は、ある日女子高校生のアイシャが、大怪我をして自分の体内にある機械部品を見てしまい、自分はロボットなのだと気が付き悩む続けるというお話なのである。ところがなんと、これとそっくりのストーリーが30年以上昔に創られているのだ。それは永井豪の『ミストストーリー・面』というマンガである。もしかすると本作の監督がそのマンガをみてパクったのか、それとも偶然の産物なのだろうか。

 いずれにせよそれほどひどい映画ではないし、ドン・チードルとエミリー・モーティマーが出演しているので良心的な映画なのだろう。ただストーリー的には単調で余り面白くはなかったね。


評:蔵研人

 

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2024年10月21日 (月)

異次元ワールドとの遭遇

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著者:布施泰和

 著者はジャーナリストで、共同通信社富山支局在勤中の1984年に、「日本のピラミッド」の存在をスクープし巨石ブームの火付け役となる。その後、金融証券部、経済部記者などを経て1996年に退社して渡米。ハーバード大学ケネディ行政大学院とジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院に学び、行政学修士号と国際公共政策学修士号をそれぞれ取得。
 専門は国際政治・経済とメディア論なのだが、同時に世界の巨石遺構探査や古代史、精神世界など幅広い分野の取材・研究を続けていたという。

 本書の主なテーマは、「オーブと妖精」「UFOと宇宙人」「スピリチュアルワーカー」「前世の記憶と転生」「予知と未来」「オーラとオーラ測定器」「ストーンヘンジとピラミッド」「素粒子と異次元ワールド」と、謎に包まれた未知の世界観がずらりと並ぶ。なにしろこうした摩訶不思議な世界に興味を惹かれる読者には、たまらない魅力的な内容なのだ。
 ただ嘘か真実かは別として、体験談風の記事が多くて、退屈感が募ってしまったことも否めない。それはそれとして、第9章の「素粒子と異次元ワールド」こそ本書の締めくくりに相応しい興味深い内容であった。


評:蔵研人

 

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2024年10月17日 (木)

幻告

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★★★
著者:五十嵐律人

 著者は弁護士の傍ら創作活動を続けている小説家である。従ってその作品のほとんどが、法廷をバックバーンに描かれているようだ。本作も三つの裁判とその相互関係を紐解きながら、自殺した父親に関わる謎を紐解いて行くという話に終始している。
 ただ法律家のためか専門的な話が多く、文章も堅いのでかなり読み辛かったことも否めない。さらに法廷ものにしては珍しいタイムスリップの要素が絡んでくるため、さらに難解になっている。

 主役は裁判所書記官の宇久井傑で、ある日突然法廷で意識を失って目覚めると、五年前に父親が有罪判決を受けた裁判のさなかだった。という設定ではじまるのである。そこで父親の冤罪の可能性に気がついた傑は、タイムリープを繰り返しながら真相を探り始めるという流れになっている。それは多分、確定した判決は再度審理ができないという『一時不再理の効力』に疑問を感じた著者が、タイムスリップを利用することによって判決を覆すという離れ業を繰り出したのだろう。

 さすが弁護士だけあって、法廷での細かい仕組みや慣習についての描写は巧みであり、いろいろ勉強させてもらった。ただとくに複雑な人間ドラマに深入りすることもなく、パズルを解くような話の流れと予測した範囲での結論で締めくくられているので、のめり込んだり感動に打ち震えることはなかった。それで途中退屈感のため、何度も眠気に襲われてしまったのだが、結末が知りたくてなんとか読破することができ、義務を果たしたと言う満足感だけは得られたようだ。

評:蔵研人

 

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2024年10月14日 (月)

-時の回廊- 昭和は遠くなりにけり

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著者:辻真先

 本書の冒頭には、下記のような記載がある
「この拙作を、亡き広瀬正さんと亡き藤子・F・不二雄さんに捧げます。 かつて『マイナス・ゼロ』と『ノスタル爺』に感動した---辻真先』

 『マイナス・ゼロ』と『ノスタル爺』を読んだことのある人なら、本作を読み終えればすぐに「なるほど」と納得できると思う。つまりタイムマシンで昭和の懐かしい時代を回遊しながら、恋人を追いかけるラブファンタジーと、終盤のノスタルジックでもの悲しい結末がブレンドされているオマージュ作品なのである。ただしタイムマシンではなく、事故を利用したタイムスリップで時間を移動することになる。

 作者の辻真先氏は、1932年に名古屋市生まれ、名古屋大学文学部卒業後NHKに入社している。さらにテレビ初期のディレクター、プロデューサーを務めたのち脚本家に転身し、『鉄腕アトム』、『エイトマン』、『ジャングル大帝』、『サザエさん』、『巨人の星』、『デビルマン』など、1500本超のアニメ脚本を執筆している。
 そして本作の主人公である鈴木太郎は、まるで著者の分身のような経歴で昭和時代を生き抜いてゆくのだ。また太郎が追いかけ続けるヒロイン江木速美は、華族出身ということから、もしかすると先日亡くなった久我美子がモデルなのかもしれないね。

 本書の目次を開くと、第1部 太郎、第2部 次郎、第3部 三郎というネーミングと、それぞれが前後した昭和時代に分類されている。はじめは何のことかと考えていたのだが、第2部を読み始めた時点でその意味が理解できるはずである。
 ラストはかなり駆け足になり、想定外の展開となってしまったが、この終わり方にはいろいろな感じ方があるだろう。ただ私自身は、やや暗い『ノスタル爺』色は排除しても、明るい『マイナス・ゼロ』色だけに染めまくって欲しかったかな……。

評:蔵研人

 

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2024年10月11日 (金)

流浪の月

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★★★☆
製作:2022年 日本 上映時間:150分 監督:李相日

 原作は凪良ゆうの同名小説で、2020年に本屋大賞を受賞し、同年の年間ベストセラー1位に輝いている。
 9歳のときに誘拐事件の「被害女児」となり、広く世間に名前を知られることになった女性・家内更紗と、その事件の「加害者」とされた大学生・佐伯文の悲しい物語である。
 なにが悲しいかと言うと、二人の間には何もなかったはずなのに、世間や警察には「被害女児」と「加害者」という烙印が永遠に続いて行くからである。そして二人は、偶然15年後に再会を果たすのだが、それぞれには恋人がおり複雑な感情を抱えたままの再会であった。

 二人とも恋人に対する愛情が中途半端なのだが、だからといって再開した二人が恋に落ちていると言う訳でもないようだ。そこには単純な愛を超えてところで、互いに救いを求めあう感情が渦巻いている感がある。いずれにせよ本作は、複雑な現代の家庭環境が練り込まれた重くて深いテーマに挑戦したのだろう。
 ただ過去のフラッシュバックを多用し過ぎて全体の流れが分かり辛いし、辻褄の合わないシーンが多かったのは、多分時間調整のため編集作業でかなり削られたのではないだろうか。さらには主役の二人が、きちっと真実を伝えようとしないところにもイライラ感が募ってしまった。いずれにせよ、脚本の失敗のような気がする。
 それでも主演の広瀬すず、松坂桃李はもちろん、助演の横浜流星、多部未華子、趣里、さらには子役の二人もなかなか良い味を出していたのが印象に残った。まあどちらにせよ、一度原作を読んでみる必要があるだろう。


評:蔵研人

 

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2024年10月 8日 (火)

シャイロックの子供たち

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★★★☆
製作:2023年 日本 上映時間:122分 監督:本木克英

 原作は池井戸潤の同名ベストセラー小説。池井戸潤といえば、元銀行員。ということで本作も舞台はメガバンクである。
 
 東京第一銀行・長原支店で現金100万円紛失事件が発生する。ゴミ捨て場から100万円の振り込み明細を見つけた西木雅博係長は、そのことを公表せず、同支店に勤務する北川愛理、田端洋司とともに、事件の裏側を探っていく……。ところがその事件には、10億円の不正融資というメガバンクを揺るがす不祥事が繋がっていたのである。

 主なキャストは阿部サダヲ、上戸彩、玉森裕太、柳葉敏郎、杉本哲太、佐藤隆太、柄本明、橋爪功、佐々木蔵之介と錚々たる顔ぶれが並んでおり、それそれが個性を生かした演技力を発揮していたのが印象的であった。
 ストーリーそのものはそれほど複雑ではないものの、常に現金に囲まれている銀行員たちの良心との戦いやポリシーを問う、元銀行員の池井戸潤らしいストーリー構成だと思った。ただ不正融資事件よりも、お局行員のイジメ行為のほうが面白く感じたのは私だけであろうか。

評:蔵研人

 

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2024年10月 4日 (金)

僕が殺された未来

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著者:春畑 行成

 ある日のことである。僕こと大学生の高木のアパートに、60年後の未来から、大塚ハナという名の中学生がやってくる。彼女がはるばる未来からやってきたのは、3日後に高木が何者かに腹を刺されて殺されると言うことを伝えて、それを回避させるためだと言うのだ。そしてその犯人は、数日前に高木の片想い彼女である小田三沙希を誘拐した犯人と同一人物ではないかと言う。だからもうこれ以上小田三沙希誘拐事件には関わらないでくれと頼むのであった。だが高木は言うことを聞かないで、小田三沙希探しに奔走するのである。

 それにしてもなぜ小田三沙希が誘拐され、関係のない高木までが殺されなければならないのだろうか。登場人物は余り多くないのだが、そのほとんど全員が犯人候補である。まずは小田三沙希の父親、実姉、婚約者、ストーカー、さらにはなぜか高木の親友・健太郎までが含まれているのだ。

 とにかく軽いノリで読み易く、遅読派のぼくでもあっという間に読破してしまった。だからと言って凄く面白かったわけでもない。つまりストーリーが余りにも陳腐で、片想いの彼女に命を懸ける高木の行動にも全く共感できないし、テーマも犯人探しとその目的、そして大塚ハナの正体の三点だけに絞られているだけで、余りにも薄味過ぎて物足りないからだ。まあいずれにせよ、子供向けの作品なのだと承知すれば、腹も立たないかもしれないね。

評:蔵研人

 

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2024年10月 1日 (火)

スイート6ストーリーズ『恋するダイアリー』

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★★★★

 スイート6ストーリーズとは、6つの短編韓国ドラマのことを指す。15分程度にまとめられた話が約10話ほどで完結するので、時間を無駄に消費しないで済むので実にありがたい。米国のTVドラマのように45分ものを30話ほどで1シーズンとし、シーズン5まで続くようなものは、わざとらしい引き延ばしストーリーが多くてイライラが募るばかり。そのうえスポンサーの都合などで、途中で尻切れトンボになったりするものもあり、「時間を返してくれー!」と叫びたくなるときがあるからだ。
 さて本作『恋するダイアリー』は、やはり15分・10話完結の、時空を超えて愛する人を救う青年の奮闘を描いたラブファンタジー作品である。また主演は、韓国人気アイドルグループSHINeeのミンホとなっている。
 
 整形外科医のギョンフィ(ミンホ)は、高校時代に同級生からいじめを受けていた弱々しい青年だった。ある日大勢の前でズボンを脱がされる辱めを受け、耐え切れず自殺をしようとしたところ、転校生のナビの言葉で自殺を思いとどまる。
 その後彼はナビへ好意を寄せるようになるのだが、ある日突然ナビが自殺してしまうのだ。それから10年が経過し医師になった今も、ギョンフィはなぜナビが死んだのか分からないまま悩み続けていた。

 ところがある日、酒に酔ったギョンフィが街でナビらしき人物を見かけ、彼女が入ったドアを開けると、なんとそこは10年前の世界であった。なんだかドラえもんのどこでもドアみたいだな……。もちろん10年前に戻ったと言っても、意識だけが10年前の自分の中に戻ったと言ったほうがよいのかもしれない。さて、果たしてそこで彼は、ナビの自殺の原因を探り、彼女を守ることができるのだろうか、お楽しみ!じゃじゃんじゃん。

 そんな分かり易い展開に好感度がアップしてしまう。さらに突出した美人ではないものの、ナビを演じたイ・ユビの暗い雰囲気とスタイルの良さが、それとなく本作を盛り上げていたように感じた。まあラストにもう一捻りが欲しかったが、なんとかギリギリまとめたような気がしないでもないね。自分の好きなテーマだったので、ちょっと甘いかな……。

評:蔵研人

 

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