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2024年9月の記事

2024年9月28日 (土)

ちょっと思い出しただけ

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★★★
製作:2022年 日本 上映時間:115分 監督:松居大悟

 主演は池松壮亮と伊藤沙莉で、松居大悟監督が執筆したオリジナルのラブストーリーである。第34回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、観客賞を受賞している。
 怪我をしてダンサーの道を諦めた男と、女タクシードライバーの恋なのだが、男の誕生日ごとに時間軸が遡って描かれているので分かり辛いところがある。また個人的には、池松壮亮に漂う厭世的な暗さがあまり好きではないこともあり、途中眠くて眠くて堪らなかった。
 
 ことに特筆すべき出来事もなく、訴えたいテーマも見当たらず、ただ淡々と過去の思い出を描いているだけの作品だ。まさにタイトルそのもの「ちょっと思い出しただけ」じゃないか。監督がちょっと気張り過ぎなので、観ている人も気張らないと置いてけぼりになりそうだ。ただ尾崎世界観の歌だけは、なかなか印象的だったね。

 
評:蔵研人

 

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2024年9月24日 (火)

ある男 (小説)

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著者:平野啓一郎

 本作は2018年に刊行され第70回読売文学賞を受賞した長編小説である。
 テーマは差別問題であり、殺人罪で死刑になった父親との縁を切り捨てたくて苗字交換した男と、それを調査する在日三世の弁護士の生きざまを描いている。従ってタイトルの「ある男」とはその双方に掛けているのかもしれない。

 また2022年には、本作を原作とした同名映画が製作されており、そちらについては本ブログでも紹介しているので、興味があれば下記URLをクリックして欲しい。私の場合は映画を先に観て、やや分かり難い部分をより明らかにするために小説を読んでいる。そしてさらに小説を読んだ後にもう一度映画を観ることにした。
 基本的なストーリーは小説も映画もほとんど変わらないものの、やはり映画はストーリー的に惹かれる部分に焦点を当てていたが、小説のほうは弁護士の調査と彼自身の心情の移ろいのほうに力点を置いていた。従ってどちらが良かったということではなく、映画と小説の双方が補完し合ってひとつの作品を構成していたような気がしたのは私だけであろうか。

 
評:蔵研人

 

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2024年9月21日 (土)

トップガン マーヴェリック

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★★★★
製作:2022年 米国 上映時間:131分 監督:ジョセフ・コジンスキー

 トム・クルーズの出世作で1986年に公開された世界的ヒット作『トップガン』の続編である。前作に引き続きトム・クルーズが主役を演じるのだが、あれから36年経過しているため今回は指導員の立場だった。と言っても訓練生と一緒に飛行するので、彼自身が演じるアクションシーンも健在である。

 マーヴェリックはトップガン史上最高のパイロットでありながら、型破りで組織に縛られない振る舞いから、大佐以上に出世できず、現役でありながら伝説のパイロットと呼ばれながらも現役を続けていた。そこに出世した旧友アイスマンの特命を受けて、エリートパイロットたちの教官として赴任することになる。またその任務とは、針の穴を通すほど困難であり、超高度な技術を取得しかつ強運に恵まれない限り生きて帰ってこれないほど厳しいものであった。そして訓練する十分な時間もない切羽詰まった任務でもあった。

 かなり評価の高い作品であるが、間違いなく面白く楽しめることは保証しても良いだろう。それにしてもあのスピード感に満ちた飛行シーンは、本当に素晴らしいね。そして還暦を過ぎたとはとても信じられないトム・クルーズの若さにも脱帽してしまうのだ。さらにバンザイを叫びたくなるほどのハッピーエンド、まさにアメリカのアメリカたるゆえんといった映画であった。

 
評:蔵研人

 

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2024年9月18日 (水)

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著者:白石一文

 ニコラ・ド・スタールが描いた『道』という一枚の絵画をじっと見つめていると、時間を超越して過去や未来にタイムリープしてしまい、そこで人生をやり直そうというお話である。だからと言ってSFという雰囲気ではなく、人間が生きる真理のようなものを描きたかったのだろうか。
 本書の主人公である唐沢功一郎は、大手食品メーカーで品質管理を統括する優秀な男である。だが残念なことに3年前に愛娘の美雨を事故で亡くし、それ以来、精神を病み自殺未遂を繰り返す妻を介抱しながら暮らしている。

 そんな苦しい世界から抜け出したくなった功一郎は、ある方法を使って美雨が事故に遭う直前に戻り、彼女を救出することを決心する。その方法とは、彼が高校受験に失敗した時に、過去に戻り受験をやり直したときと同じやり方であり、『道』という絵画を使って過去に戻ることであった。

 このあたりまでは、タイムマシン代わりに絵画を使うということ以外は、タイムトラベルものによくある展開なのだが、実はタイムトラベルというよりは、時間を遡るパラレルワールドの世界と言ったほうがよいのかもしれない。彼は3回タイムリープを繰り返すのだが、移動するたびに別の世界へ跳んでしまうのである。従って前の世界では東日本大震災が起こったのに、今の世界ではまだ起きていないとか、またそれほど重大な出来事ではなくとも、微妙に変化しているようであった。

 また前の世界に存在していた自分自身が今の世界に跳んできたのではなく、今の世界に住む自分の肉体の中に、前の世界の自分の意識だけが乗り移ったのだ。では前の世界の自分の肉体はどうなってしまったのだろうか。普通に考えれば、前の世界で絵画の前で死んでいることになるのだが、結論は異なっていた。さらにでは今の世界の自分の意識は、一体どこへ行ってしまったのだろうか。これらはラストに全て解明されるのだが、分かったような分からないような、それでいて実に見事な論理で締めくくっている。

 もしあのとき、ああすればよかったと考えてもどうにもならないが、万一その願いが叶ったとしても、結局は何かほかの運命に巻き込まれてしまうのである。それに人の運命なんていうものは、どうにかなるとかならないとかという類のものではなく、たまたま選んだ道の一つでしかない。それが我々の住む世界の心理なのかもしれない。
 さて「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」とは、フランスの画家ポール・ゴーギャンの有名な絵画のタイトルであるが、本作にもなんとなくそんな臭いが漂っていると感じたのは私の勝手な思い込みなのだろうか……。

評:蔵研人

 

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2024年9月15日 (日)

ケイコ 目を澄ませて

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★★★☆
製作:2022年 日本 上映時間:99分 監督:三宅唱

 耳が聞こえないボクサーの実話をもとに描いた人間ドラマである。舞台は下町にある古くて小さなボクシングジム、モデルは実在した元ボクサー小笠原恵子で、彼女の自伝『負けないで』が原作となっている。

 耳が聞こえないということは、喋れないということでもあるので、練習をするにしても試合をするにしてもハンデが大きすぎる。それでも3勝1敗の成績を残した小笠原恵子さんは、いかに努力家だったかであり、映画の中でもノートにぎっしりと練習方法などを記入していたではないか。成績はともかくとして、とにかく精一杯力を出し切ることの素晴らしさ、清々しさが伝わってくる作品である。
 
 会長役の三浦友和が良い味を醸し出していたし、ラストの終わり方も観客一人一人に考えさせるさっぱりとした締め方であった。ただ最近は暗めの映画が多かったので、次は明るいコメディーでも観ようかな。 


評:蔵研人

 

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2024年9月12日 (木)

ノマドランド

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★★★★
製作:2020年 米国 上映時間:108分 監督:クロエ・ジャオ

 米国西部で車上生活を営む人々の生きざまを描いたロードムービーである。またタイトルのノマドランドとは、放浪者や遊牧民を意味し、特定の住居を持たず、自分なりの生き方を貫いている人々が集まる国を指す。もちろん現代のノマドたちは、自家用車を住み家として各地を移動して生活する人々であり、各人が様々な理由でそうした生活を選択しているようだ。

 本作はジェシカ・ブルーダーが2017年に発表したノンフィクション『ノマド:漂流する高齢労働者たち』を原作としているため、実在している人々を参考にして描かれていることになる。また本作は第93回アカデミー賞で、計6部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、さらにフランシス・マクドーマンドが主演女優賞を受賞している。いずれにせよ各種映画賞を受賞したことを証明するが如く、しっかりと丁寧に創り込まれた格調高い大人の作品に仕上がっていた。

 それにしても「アメリカはとてつもなく広いなー」とつくづく再認識してしまった。ヒッピーは若者が多かったが、ノマドたちは殆どが高齢者ばかり。そして貧しくてやむなく放浪している者もいれば、裕福だが趣味や主義主張からあえてノマド生活を選択している者もいる。そうした意味でもホントにアメリカは広く奥が深いね。
 豊かになった現代社会の中では、本作を観て共感できる人はそれほど多くはないかもしれない。ただ少なくとも還暦を過ぎた人、愛する人を失った人、難病で余命を悟った人、どうにもならない悩みを抱え続けている人たちは感動するに違いない。従ってこのような作品の評価や感想をまとめることは難しいのだが、それぞれが持っている価値観や世界観によっていろいろな評価が産まれることだろう。
 
 
評:蔵研人

 

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2024年9月 8日 (日)

夏のダイヤモンド

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★★★
著者:高瀬美恵

 ダイヤモンドとは野球のグランドのことを指す。したがってタイトルの由来は、『夏の野球場での出来事』と言ってもいいだろう。ということで、本作は小学生の頃に野球チームで活躍した本宮、一条、大滝、久坂の4人のストーリーと言うことになる。もっとも話は大人になってからの彼等と、少年時代の彼等の時代を往復するドタバタSFという構成になっているのだが……。

 主役は一人称で語る本宮と親友のイッチこと一条であり、野球がテーマになっているにも拘らず、著者はなんと女性なのである。その影響かどちらかと言えば脇役で登場する二人の女子小学生のほうに、著者のこころが乗り移っているかのようであった。この二人は正反対の性格なのだが、著者のあとがきを読むと、大学になってから急変した著者の性格を反映しているような気がする。まあ女性というものは二面性を持つ生き物であり、年を重ねるにしたがって本性が現れるものなんだね。

 タイムトラベル小説なのだが、タイムマシンの自転車が酷すぎるし、時間論やタイムパラドックスもいい加減だ。まあどちらにせよ真剣に読む小説ではないし、ストーリーも浅くて退屈なのだが、読み易さだけは抜群で、あっという間に読破してしまった。とにかくフワフワして軽い作品なので、病院で順番待ちするときに、斜め読みするにはもってこいの小説かもしれないね。

評:蔵研人

 

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2024年9月 5日 (木)

RUN ラン

Run

★★★☆
製作:2020年 米国 上映時間:90分 監督:アニーシュ・チャガンティ

 オープニングは極端に小さな未熟児が誕生するところから始まる。そして約18年後、クロエは生まれつきの難病で車椅子生活を送っているが、大学への進学を希望している頑張り屋の女性に成長していた。それは母親ダイアンが、愛情をこめて彼女の体調管理や食事などの身の回りの世話をしてくれているお陰でもあった。
 ところがある日、母の与えてくれた薬の瓶には、クロエの名前ではなく母親ダイアンの名前が記されていることに気付き疑問を持つ。それで色々調べてみるのだが、なんとその薬は人間用ではなく犬の薬だったのである。さらに地下室であるものを見つけて、愕然となってしまうクロエであった。

 このあたりから母娘のホームドラマが一転してホラー映画となってゆく。圧巻は部屋に閉じ込められたクロエが窓から這い出て、なんと屋根を伝って別の部屋に移動するシーンである。この満身創痍の脱出劇を演じたキーラ・アレンは、実生活でも車椅子を使用している女優らしい。いずれにせよ役柄のクロエ同様、頑張り屋さんの女性なのだろう。

 本作は母親の異常な愛情がテーマのサイコホラーという位置づけであるが、クロエの疑念と恐怖感がジンジンと伝わってくるので、観客自身も逃げたくなってしまうのだ。さらにラストに用意されていた切り返しが実に見事であり、なかなか見応えのある作品であった。

 
評:蔵研人

 

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2024年9月 2日 (月)

アーカイヴ

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★★★☆
製作:2021年 英国 上映時間:109分 監督:ギャビン・ロザリー

 なぜか日本の山梨県の山奥にある研究施設が舞台なのだ。そしてここで人型アンドロイドの開発を進めるロボット工学者ジョージ・アルモアが主人公である。表向きは彼の研究は成果をあげられず不評であり解雇寸前なのだが、実は自動車事故で亡くなった妻の記憶を繋げたロボットを試作中であった。
 1号機は4歳レベルの知能で腕のないロボット、2号機は16歳程度の知能を有しているが、まだ外形が機械そのものの醜い姿だ。そして完成間近の3号機こそは、亡妻そっくりで臭いの嗅ぎ分けや食事も可能なパーフェクトなアンドロイドだった。またなんとその完璧な3号機に嫉妬した2号機が自殺してしまうというというおまけまでついている。

 それにしても山奥と言っても、断崖絶壁に建つ研究所の脇には大滝が流れ、研究所と道路を繋ぐ橋は開閉できるという優れもの、……というよりどうやってそんなところに建物を建てることができたのだろうか。さらに時々起こる原因不明のセキュリティー装置の故障は何を意味するのだろうか。またたまにやってくる訳の分からない物騒な連中は、一体何なのか何を目的としているのだろうか……なんだかよく分からないままストーリーは進んでゆく。

 なおタイトルの『アーカイヴ』とは、故人の生前の記憶や意識が保存されている装置のことであり、そのアーカイヴ装置を通して故人と会話することも可能なのである。さて何となく分かり難い作品であったが、ラストのどんでん返しで全てが解明された。あーっそうだったのか、でもなんだか反則スレスレの夢落ちみたいな気がしないでもないよね……。


評:蔵研人

 

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