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2024年7月31日 (水)

かさなりあう人へ

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著者:白石一文

 直木賞受賞作『ほかならぬ人へ』から14年、折り重なる出逢いと恋愛を描いた『ほかならぬ人へ』のアンサー小説である。まずはスーパーでの万引きが縁で親しくなり始める、野々宮志乃と箱根勇の中年カップルという構想が面白い。志乃は夫に先立たれ義母と一緒に暮らしており、勇は浮気がバレて妻と離婚して独り暮らしである。だから中年同士の恋と言っても、決して不倫ではない。
 この二人は、タイトル通りあの日以来ずっとお互いに何かを感じて、二人で食事もしているのだが、なかなか肉体関係までは進まないのだ。一体いつになったら、と思いながらもかなり終盤までは友達関係が続くのである。

 文体は一人称なのだが、あるときは「俺」でまたあるときは「わたし」に変化する。そして面白おかしく読ませてくれる。ここいらが白石文学の真骨頂なのだが、二人がダラダラと付き合っている時間が長すぎたせいか、盛り上がりどころを逸してしまい中途半端なエンディングを迎えてしまった。そのあたりに無暗な残念感が残ったのは、決して私だけではないはずだ。

 それにしても本作に登場する女性たちは、なぜ全員が性に関して積極的なのだろうか。ことに70を過ぎた幸ばあさんが一番元気者だったね。まあいずれにせよ、タイトルの意味は「人生には自分には合わない人もいるが、ぴったりとこころが重なり合う人が必ずいるはずだ」ということだろうか。ただ中高年以上の人には思い当たることが多いが、若い読者にはやや退屈感が残る作品かもしれないね。

評:蔵研人

 

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