雷桜
著者:宇江佐 真理
江戸から三日を要する山間の瀬田村で起こった「ある事件」が全ての発端であった。当時赤子であった庄屋の一人娘遊が、雷雨の夜に何者かにさらわれてしまうのである。だが彼女は峠で次兄の助次郎と出会い、15年振りに「おとこ姉様」あるいは「狼少女」として奇蹟的に帰還するのだった。
運命の波に翻弄されながらも、愛に身を裂き、一途に生きた女性を描いた感動の時代小説である。歴史観を外れない質の良いストーリーと、美しい映像を見るような語り口など、その完成度の高さは実に見事と言うよりないだろう。
前半は庄屋の次男助次郎が、江戸に出て将軍の息子清水斉道の屋敷で中間として雇われ、斉道と知り合うところに力点が置かれている。だが後半になって遊が帰還してからは、彼女が主役となって行くのだ。そして江戸と瀬田村での話が交互に描かれてゆくのだが、ある日奇蹟的に斉道と遊が巡り合い、二人は身分違いの恋に落ちて行く。通常なら絶対に実現しないであろう狼少女と将軍家の殿様の恋、だがここに至るまでが、不自然にならないように前半にその種をまいておくという、実に見事なストーリー展開だったのである。
そしてラストはほぼ予想通りなのだが、涙が落ちて止まらない。小説でこれほど泣いたのは本当に久しぶりである。なお本作は蒼井優と岡田将生の共演で映画化されているという。是非一度観てみたいではないか。
評:蔵研人
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