ほかならぬ人へ
著者:白石一文
本書にはタイトルの中編のほか、似たような題名の『かけがえのない人へ』も収められている。なお著者の白石一文は、『ほかならぬ人へ』で、2009年第142回直木賞を受賞し、史上初の親子二代受賞でも話題となった。因みに父の白石一郎氏は1987年『海狼伝』で第97回直木賞を受賞している。
それにしても、これほどストレートに愛を語った作品は珍しい。『ほかならぬ人へ』は「俺」という一人称視点であり、『かけがえのない人へ』のほうは、「みはる」という三人称視点なのだが、実際は一人称とほぼ変わらない三人称一元視点という手法を用いている。
また前者は男性、後者は女性が主人公であり、どちらも不倫で恋人はエネルギッシュで仕事のできる人物という設定なのだ。したがってこの二作は別物と言うより、姉妹作と呼んだほうがよいだろう。ただ後者のほうは、ヒロインの心情について行けない部分があり、かつドロドロとしたセックス描写も練り込まれているため、かなり好き嫌いが分かれるかもしれない。私的にもやはり直木賞を受賞したタイトル作のほうに軍配を上げたい気分である。
ひとは容貌・学歴・家柄などを重視して結婚するものの、それは本当の愛なのだろうか。それよりも、なにか別の観点から「この人に間違いない!」とい感じるような明らかな証拠が見つかったときこそ真の愛が芽生えるのだ。それが「ほかならぬ人」であり、「かけがえのない人」なのだが、現実はなかなか上手くゆかないものである。
評:蔵研人
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