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2024年4月の記事

2024年4月27日 (土)

かがみの孤城

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著者:辻村深月

 不登校の少年少女たちを描いた社会派小説なのだが、『不思議の国のアリス』を思わせるような鏡の中の世界が舞台になっているファンタジーのようなノリで本作を読み始めた。なお本作はすでに漫画化され、舞台公演も終わり、アニメ映画も上映され、なんと累計発行部数は200万部を楽に突破し、本屋大賞も受賞している大ヒット作なのだと付け加えておこう。

中学1年生の女子・安西こころは、同級生からのいじめが原因で不登校が続き、子供育成支援教室にも通えず、ひとり家に引き籠もる生活を続けていた。そんな5月のある日のことである、突然自分の部屋にある大きな鏡が光り出し、その中に吸い込まれてしまう。
 そこはオオカミさまという狼面をつけた謎の少女が仕切る絶海の孤城で、自分と同じような悩みを抱える中学生リオン、フウカ、スバル、マサムネ、ウレシノ、アキの6人が集まっていた。そしてオオカミさまは、「この孤城の中に隠された『願いの鍵』を見つけた1人だけが願いの部屋へ入ることができ、どんな願いでも叶えられる」のだと説明するのだった。

 この孤城以外の現実世界では、いじめにあって不登校になっている少女・こころの心象風景を黙々と描いているのだが、なぜ突如として鏡の中の孤城というファンタジックな世界が出現したのであろうか。もしかするとこころの心の中で創造された世界なのだろうか、と考えていたのだがどうもそうではないようだ。
 またこころ以外の6人の少年少女たちは、なぜこの弧城に集められてきたのだろうか。だがどうして彼らは現実世界では会うことができないのか。それに6人は日本に住んでいるのに、なぜリオンだけがハワイに住んでいるのだろうか。
 また『願いの鍵』と『願いの部屋』は孤城のどこにあるのだろうか。さらには本当にどんな願いも叶うのだろうか。それにあのオオカミさまはなぜ狼面をつれているのか、そして彼女の真の正体は……といろいろ謎がバラ撒かれていて興味が尽きない。

 そしてエンディングでは、全く予想外のどんでん返しが用意されており、これらの謎がすべて解明される。それだけではない、涙・涙・涙の三度泣きで感動の渦に巻き込まれてしまうのだ。とにかく震えが止まらないほど見事なエンディングであり、ファンタジー・ミステリー・社会派ドラマ・愛情物語の全ての要素を取り込んだ素晴らしい小説だと絶賛したい。また本書を読んだ後にアニメ映画を観たが、やはりアニメなりの説得力はあったものの、小説の完璧さには遠く及ばなかったことを付け加えておこう。


評:蔵研人

 

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2024年4月22日 (月)

漆黒天-終の語り-

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★★★☆
製作:2022年 日本 上映時間:81分 監督:坂本浩一

 配給が東映ビデオとなっているので、いわゆる東映Vシネマなのかと思ったら、東映が2019年にスタートさせた映画と演劇のメディアミックスシリーズ「ムビ×ステ」の第3弾なのだという。ところで「ムビ×ステ」とは、ムービー(映画)とステージ(演劇)の挑戦的な融合」を掲げ、ひとつの作品世界を連動した作品群として展開するプロジェクトと説明されている。

 さて本作は漆黒天の映画版で、いつも何者かに襲撃されるが、抜群の剣技でそれを凌ぎ続ける記憶喪失の剣士の話である。ストーリー自体は単調なのだが、まずその殺陣の凄まじさに圧倒されてしまうだろう。さらに自分が何者でなぜ狙われ続くのか、というミステリアスな展開にも惹き込まれてしまうのだ。
 まあ簡単に言えば、その殺陣と謎の二点だけに絞った低予算時代劇なのだが、上映時間が短いので文句を言う暇も与えず、二話完結のTVドラマ風に無駄なくまとめられていたと思う。またラストの戦いの勝利者はどちらか、そのヒントはあの「笑顔」なのかな……


評:蔵研人

 

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2024年4月18日 (木)

ほかならぬ人へ

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著者:白石一文

 本書にはタイトルの中編のほか、似たような題名の『かけがえのない人へ』も収められている。なお著者の白石一文は、『ほかならぬ人へ』で、2009年第142回直木賞を受賞し、史上初の親子二代受賞でも話題となった。因みに父の白石一郎氏は1987年『海狼伝』で第97回直木賞を受賞している。
 それにしても、これほどストレートに愛を語った作品は珍しい。『ほかならぬ人へ』は「俺」という一人称視点であり、『かけがえのない人へ』のほうは、「みはる」という三人称視点なのだが、実際は一人称とほぼ変わらない三人称一元視点という手法を用いている。

 また前者は男性、後者は女性が主人公であり、どちらも不倫で恋人はエネルギッシュで仕事のできる人物という設定なのだ。したがってこの二作は別物と言うより、姉妹作と呼んだほうがよいだろう。ただ後者のほうは、ヒロインの心情について行けない部分があり、かつドロドロとしたセックス描写も練り込まれているため、かなり好き嫌いが分かれるかもしれない。私的にもやはり直木賞を受賞したタイトル作のほうに軍配を上げたい気分である。

 ひとは容貌・学歴・家柄などを重視して結婚するものの、それは本当の愛なのだろうか。それよりも、なにか別の観点から「この人に間違いない!」とい感じるような明らかな証拠が見つかったときこそ真の愛が芽生えるのだ。それが「ほかならぬ人」であり、「かけがえのない人」なのだが、現実はなかなか上手くゆかないものである。

評:蔵研人

 

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2024年4月13日 (土)

人狼ゲーム デスゲームの運営人

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★★★☆
製作:2020年 日本 上映時間:103分 監督:川上亮

 本作は人狼ゲームシリーズの9作目にあたり、なんと原作者の川上亮氏がはじめて監督・脚本を手掛けた作品である。さらには人狼ゲームの運営側が初めて登場するという画期的な構成になっている。

 ただ運営側と言っても、裏側でゲーム進行などの操作をしている作業スタッフであり、もっと上層部やオーナーではない。従ってまだ本作では、このゲームの真の運営者が、何のために大金を使って犯罪がらみのゲームを続けているのかの回答のかけらも見えてこなかった。つまりまだまだ続編を予定していると言うことなのだろうか。

 今回の特徴は、最新作と言うことで女性キャストが良かったし、撮影場所も小奇麗だったね。それと運営側と参加者との相関図が描けるほど複雑な人間関係が設定されていたことも斬新であった。
 ただ運営側の作業スタッフたちが、想像していたほどの極悪人ではなかったのが意外であった。また前述した相関関係もなにか無理矢理創ったようで余り説得力はなかった。さらにラストもスッキリせず記憶に残らなかったのも残念であった。

評:蔵研人

 

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2024年4月10日 (水)

人狼ゲーム マッドランド

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★★★

製作:2017年 日本 上映時間:98分 監督:綾部真弥

 川上亮原作の心理ホラー作品「人狼ゲーム」シリーズ第6弾である。ではそもそも「人狼ゲーム」とはどのようなゲームなのかを簡単に説明しておこう。

 さてその「人狼ゲーム」とは、味方になりすましたウソつきを会話で見つけ出す10名前後で楽しむパーティーゲームである。プレイヤーたちは、全員がある村の住人として振る舞うのだが、その中の何名かは人狼役で、村人に化けて村を滅ぼそうとする。
 そこで村人たちは毎日、発言や仕草などを頼りに見分けのつかない人狼を探し、多数決でもっとも疑わしい 1名を人狼とみなして処刑する。一方、人狼たちは人知れず毎晩誰か1名を選び餌食にしてゆく。そして人狼をすべて処刑できたら人間の勝利。それよりも早く人間を減らし、生存者の半数を人狼で占めたら人狼の勝利となる。

 ただし人狼や村人以外にも、夜に人狼を見つけることができる予言者や、昼間に処刑した相手が人狼だったか分かる霊媒師など数多くの役割があり、これらはプレイ開始前に配られたカードによって決まっている。人狼は巧みなウソで、村人は的確な推理で、会話を通じて仲間を説得し相手を追い詰めていくのが「人狼ゲーム」の醍醐味ということになる。

 とまあ大雑把なルールは前述した通りなのだが、シリーズごとに少しずつルールに変更が施されているようだ。だが本作ではルールや役割が大きく変更されたと言われている。
 参加者は男女高校生5名ずつ計10名で、役割は村人が狂人で7名、人狼1名、予言者1名、用心棒1名と言う構成であった。そして狂人は1名しか生き残れないし、人狼が死ぬと狂人が全滅するという厳しいルールなのだ。マッドランドつまり狂人村なんだね。また用心棒は誰か一人を守ることができるという設定になっていたが、予言者の能力はよく分からないままだった……。
 さらに建物の外へ逃げて入れない、建物の備品を壊してはいけない、他人に危害を加えてはいけない、そしてこれらに違反する首輪が閉まって処刑される。また自分の役割カードを見せたり、他人のカードをみてはいけない。ただカードさえ見せなければ、自分の正体をバラしても違反にはならないようだ。
 
 こうして毎晩高校生同士の殺し合いがはじまるという訳だが、よく考えるとあの深作欣二監督の『バトルロワイヤル』と似ているよね。それにしても同じパターンでそれほど面白くないのに、よくもまあ9作もシリーズが続いているものである。そしてこのような作品が支持され続けていると言う現実にも恐怖を感じてしまったね。

評:蔵研人

 

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2024年4月 6日 (土)

水上のフライト

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★★★☆
製作:2020年 日本 上映時間:106分 監督:兼重淳

 走高跳びのオリンピック出場を目指して頑張ってきた藤堂遥だったが、不慮の事故に遭遇して半身不随になってしまう。だが希望の灯を消さないために、今度はパラリンピックのカヌー競技に挑戦する。というド根性実話ドラマであり、始めから終わりまでのストーリー展開はほぼ丸見え状態であった。

 結果的にピッタシ予測通りの展開と結末だったが、それなりに感動しそれなりに楽しめたのが不思議である。それにカヌーについての基礎的な知識が得られたのも嬉しい。また主演の中条あやみのストイックさ、小澤征悦のムードメーカーさ、杉野遥亮の寡黙さ、さらに生き生きとした子役たちが、本作にピッタリとはまっていたのが良かったね。

「ひとは誰でも一人ではない。そして誰でも誰かに助けられて生きている。それは健常者も障害者も同じだ」実に含蓄のある言葉ではないか!


評:蔵研人

 

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2024年4月 1日 (月)

四畳半タイムマシンブルース

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著者:森見登美彦

 本書は森見登美彦『四畳半神話体系』と上田誠『サマータイムマシン・ブルース』のコラボレーション作品である。また2022年にはアニメ版も公開されている。
 まあコラボと言っても、ほとんど話の展開は『サマータイムマシン・ブルース』と変わらない。違うのは舞台が大学のSF研の部室だったものが、主人公が住んでいるアパートの四畳半ということ。あとは登場人物の名前が違うとか、主人公が隠れた場所や田村くんのキーアイテムが異なるといった、話の流れとは直接関係ない部分だけである。

 従ってここでくだくだ本作の感想を書き連ねても繰り返しになるばかりである。従って映画版ではあるが、興味のある方は下記URLをクリックして『サマータイムマシン・ブルース』評を読んでいただきたい。


http://ryuugorinji.livedoor.blog/archives/16905854.html

 

評:蔵研人

 

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