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2024年3月の記事

2024年3月28日 (木)

武蔵 むさし

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★★★☆
製作:2019年 日本 上映時間:120分 監督:三上康雄

 監督の三上康雄氏は、学生時代に自主製作映画を数多く手がけていたが、1980年に家業のミカミ工業を引き継ぎ家業に専念する。ところが映画製作への未練を断ち切れなかったのか、突然ミカミ工業の全株式を売却し、2013年に「蠢動 しゅんどう」で映画製作に復帰した。本作はその三上康雄監督の復帰後第2作である。

 過去に宮本武蔵映画は数多くあるが、本作はよくある吉川英治版ではなく史実に基づくオリジナル版として描かれている。従ってその戦い方なども現実に近い手法で繰り広げられ、鋭さと渋さが漂う好感の持てる展開であった。
 また時代劇はロケ地が限られ製作費が多くかかるため、最近は敬遠されがちである。だが本作はその難問をクリアすべく、なるべく金をかけず、慎重に撮影場所を選び、かつ陳腐にならぬように、映像美や音楽などを巧みに駆使して一応の面目は保っていた。
 さらにキャスト陣も、武蔵役を細田善彦、小次郎役を松平健が演じるほか、目黒祐樹、水野真紀、若林豪らを配して万全を期しているところは流石である。ことに細田善彦の入魂の演技と充実した殺陣には驚かされた。また松平健、目黒祐樹、若林豪の存在感も伊達ではなかったな……。

 本作では吉岡一門との闘いに始まり、鎖鎌の宍戸梅軒、宝蔵院流槍の道栄、そして巌流島での佐々木小次郎との決闘までをテンポよく描き続けている。さらに小次郎を剣術指南役にしてしまった細川家の後悔と苦悶、その裏で暗躍する徳川幕府の陰謀など、その現実的な歴史解釈にはなんとなく納得できるものがあった。ただ時間配分の関連だと思うが、吉岡一門との闘い以降の展開が、かなり駆け足だったのが気になったかもしれない。

 
評:蔵研人

 

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2024年3月25日 (月)

片腕マシンガンガール

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★★★
製作:2007年 日本・米国 上映時間:96分 監督:井口昇

 いじめっ子に殺された弟の復讐のため、ヤクザ忍者集団と残虐な殺し合いを繰り広げるアクション映画である。指が切られる、腕が飛ぶ、足が切られる、首が飛ぶ、体中がみじん切り、そしてシャワーのように真っ赤な血が噴き出すのだ。
 普通なら気分が悪くなるスーパースプレッターなのだが、C級低予算映画なのですぐ造り物と分かるしかけ。だからそんな残酷シーンもチンケなので、「気持ちが悪い」程度でなんとか目を開けていられた。どちらかと言うと笑ってしまうかもしれないね。

 主人公は女子高生だが、両親は自死し弟と二人暮らし、弱い弟に比べてめっぽう気も強いし喧嘩も強い。しかし超無謀さが祟って、ヤクザたちに片腕を切り落とされてしまう。だが瀕死のところを弟の親友の両親に助けられ、亡くした腕にマシンガンを装着してもらい復活する、とそれだけでも荒唐無稽なマンガのようなストーリーではないか。
 いずれにせよ、死ぬほどバカバカしいのだが、主人公の女優が可愛いのと、おバカ映画と割り切ればそこそこ面白いので、とうとう最後まで観続けてしまった。ただこれって、海外ではそこそこ受けそうな気がするよね。と……よく調べたら、俳優は日本人でもスタッフはほとんど米国人らしいね。

評:蔵研人

 

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2024年3月21日 (木)

ジャンプ

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★★★☆
著者:佐藤正午

 著者の佐藤正午は、1983年に『永遠の1/2』で「すばる文学賞」を受賞し作家デビューした。ただ当初は好き嫌いの分かれる地味な作家であったのだが、本作でベストセラーを記録してから『Y』、『身の上話』、『鳩の撃退法』、『月の満ち欠け』などのヒット作を生み出している。

 本作では鈍感で融通の利かない下戸の主人公・三谷純之輔が、アブジンスキーという強烈なカクテルを飲んだために、彼女が失踪する事件を招いてしまうという話である。またそのカクテルだけではなく、もしあのとき出張を遅らせたら、もしあのとき電話に出ていれば、もしあのとき女と会っていなかったら、などなど「もしあのときこうしていれば」というテーマとしては『Y』と双璧をなしているようだ。

 それにしても、延々と失踪した彼女捜しが続くのだが、実姉・友人・20年以上逢っていなかった父親やバーのマダムにまで連絡があったのに、なぜか恋人である三谷だけには何の連絡もない、と言う摩訶不思議さに読者はイライラしストレスが溜まってしまうかもしれない。ただし彼女の失踪理由は、最終章で50頁に亘って延々と説明される、という構成になっている。
 ミステリーかと思ってずっと読み進めていたのだが、とどのつまりは恋愛小説だった。そしてもしかすると、この最終章のために創られた小説ではないかと感じたのは私だけであろうか。

評:蔵研人

 

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2024年3月17日 (日)

予告犯

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★★★☆
製作:2015年 日本 上映時間:119分 監督:中村義洋

 ある日突然、ネットに新聞紙製の頭巾を被った謎の男が出現し、明日の犯罪予告をする。そしてその予告通り集団食中毒を起こしながらも、法律上の不備を指摘して開き直った食品加工会社の工場が放火される事件が勃発するのだった。
 その後も幾つかの事件を予告しては実行し、ネットで注目され賛否両論が飛び交うのだが、どうやら犯人は複数のグループのようである。だが愉快犯にしては義賊のようでもあり、その目的がよく分からないのだ。果たして彼等の究極の目的は一体何なのか、そして社会を震撼させた衝撃のテロリズムの結末はいかに……。

 犯人グループを構成するのは、恵まれない男たち4人で、生田斗真をはじめとして、鈴木亮平、濱田岳、荒川良々が好演している。ただ彼等を追うキャリア捜査官に、戸田恵梨香が扮しているのはなんとなくスッキリしないと感じたのは私だけであろうか。まあ原作がマンガだからしょうがないか……。
 いずれにせよラストは良かったね。ついホロリとさせられたもの。さてこの映画の続編がオリジナルTVドラマとして放映されたようだが、まだ観ていないので機会があったら是非観てみたいものである。

評:蔵研人

 

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2024年3月15日 (金)

隊務スリップ 全6巻

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★★★☆
著者:新田たつお

 あの108巻に亘る大長編マンガ『静かなるドン』の新田たつおが、2014年から2016年にビックコミック誌に連載した作品である。
 舞台は日本国憲法第9条が撤廃された近未来の日本が舞台なのだが、自衛隊は軍隊に昇格しあたかも昔の軍国主義が復活したように描かれているではないか。これは当時、安倍晋三が「憲法を改正して自衛隊を国防軍に」という発言をしたためだと言われている。

 それにしても新田たつおの作品は、シリアスなストーリーにギャグを織り交ぜ、主人公は一見弱々しく見えるが実はかなり強いというお決まりパターンなのだろうか。だがその奇妙な味わいが堪らないという読者も多いようだ。
 本書の主人公・青乃盾も、熱海の饅頭屋に勤務し、「人類最弱」とあだ名される虚弱体質の持ち主なのだが、何かの拍子に目覚めると神的な超能力を発動するのである。

 近未来、東京は核テロに見舞われてしまう。そしてそれをきっかけに、日本では再び軍が台頭する。日本国軍はアフリカに派兵したが、現地でテロ国家相手に苦戦を強いられていた。そんな中、精鋭の職業軍人の犠牲を避けたい軍の意向と、余剰人員を軍に押し付けたい財界の意向とが一致し、政府は密かに徴兵制の復活を企んでいた。

 主人公以外の主な登場人物は、悪知恵の塊のような饅頭屋の主人・五代目饅頭屋宗兵衛、頭脳明晰で切れ味抜群の龍騎玄一郎大佐、謎のテロリスト九条直道などだが、そのほか首相や米国大統領、政財界の黒幕たちなどが続々登場する。
 そしてだんだんスケールが大きくなるのだが、序盤の戦闘訓練所での話が一番面白かった。そしてあれよあれよという間に終盤に突入し、無理やり終わってしまうのだ。著者が息切れしたのか、あるいは不評で打ち切られたのかどちらかであろう。それほど余りにも端折り過ぎで、あっけない結末だったのである。
 それにして何が隊務(タイム)スリップなのだろうか、と思っていたのだがオーラスになってやっとその意味が分かった。

評:蔵研人

 

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2024年3月12日 (火)

老後の資金がありません

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★★★☆
製作:2021年 日本 上映時間:115分 監督:前田哲

 本作は第45回日本アカデミー賞で、天海祐希が主演女優賞、草笛光子が助演女優賞を受賞している。また三谷幸喜が監督でも脚本でもなく、おとぼけ役人として俳優として出演していた。なお原作は垣谷美雨の同名ベストセラー小説である。

 老後資金が4千万円必要と言う時代に、後藤家には700万円の預金しかない。夫の後藤章は優柔不断で頼りなく、年頃の娘は我儘で奇妙な男とできちゃった結婚、食べ盛りの息子は大学生と言う状況だ。だから妻の篤子は壊れたバッグで我慢して、パートで家計の穴埋めをしていたのだが、次から次へと難問が降りかかるのだった。

 まずは義父の葬式で約400万円の無駄遣いをしてしまう。さらに娘が豪華な結婚式をしたいと言い出す。ところが章の会社が倒産、篤子もパートをクビになる。そのうえ義母を引き取るはめになるのだが……。その義母は贅沢三昧で挙句の果てはオレオレ詐欺に引っ掛かり、結納で貰った100万円を失ってしまうのだ。さらに篤子が最後に頼った実家では、両親がサーフショップ開店のため借金漬けになっていたのである。

 こう次から次へと不運と問題ばかり続くのだが、篤子はボーリングで憂さを晴らし、なんとか我慢し続けるのだった。だが離職中の章が子連れの若い女と楽しそうに歩いているのを目にして、とうとう切れてしまうのである。
 それにしても悪いことの連鎖が続き過ぎて、観ているほうもストレスが溜まってくる。だがご心配なく。終盤になってやっと不幸から解放されて、誰もがほっこりと涙を流してしまうだろう。まあ終わり良ければ全て良しかな。なんともはや、赤いブランドバッグにはじまり、赤いブランドバッグで終わるという女性視点の作品だったね。
 
 
評:蔵研人

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2024年3月 8日 (金)

ぼくは明日、昨日のきみとデートする

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著者:七月隆文

 この小説を読む7年前に、すでに映画のほうを先に観ている。配役は福士蒼汰と小松菜奈でピッタリと息の合った演技をしていたと思う。その後この原作本を購入したのだが、どうした訳かタイミングが合わず、7年間も書棚に置き去りしたままだった。

映画の記事はこちら↓

ぼくは明日、昨日のきみとデートする: ケントのたそがれ劇場 (cocolog-nifty.com)

 映画を観たときはかなり感動して涙が止まらなかったのだが、なぜか原作のほうは全く涙腺を刺激されなかったのだ。文章がやさしく読み易いのだが、「時間が逆行している」というイメージがどうしても浮かばないからかもしれない。
 逆に映画のほうはその難問を巧みに映像でカバーしていたのである。つまり小説は心理的な部分の描写に長けているが、説明的な部分の描写は映像のほうが長けていると言うことなのだろうか……。
 そうしたことからも、まさにこの小説こそ映画向きだったのかもしれない。いずれにせよ、だいぶ前に観た映画なので、もう一度観て確認したくなってしまった。

評:蔵研人

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2024年3月 4日 (月)

凛 りん

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★★★
製作:2019年 日本 上映時間:83分 監督:池田克彦

 原作は、お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹が舞台用に書き下ろした長編サスペンスだという。主な登場人物たちは田舎の高校生5人組であり、序盤はなんとなくあの名作映画『スタンド・バイ・ミー』を思わせる雰囲気が心地よかった。また田舎によくある「怖い伝説」をモチーフにした事件展開にも興味をそそられた。

 ところが山の中で、5人の一人が消えたところ辺りから、急につまらない三文芝居に成り下がってしまった気がする。せっかく個性的で難しい家庭事情を抱えた青年たちを配したのだから、もっと彼らの生活や行動の中に入り込んだ人間ドラマを描いて欲しかった。ことにDV親父や継母たちの存在や始末の付け方が尻切れトンボになっていたのは非常に残念だった。

 そしてラストの犯人解明とその動機も、なにか取って付けたような強引な筋書きで陳腐さを禁じえなかった。結局は欲張っていろいろな味付けをしたものの、それらを巧く絡みつけられなかったのであろう。そもそも又吉直樹の名前に頼り過ぎて、舞台用に書かれたものを無理矢理映画化したところから間違っていたのかもしれないね。

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2024年3月 1日 (金)

竜の柩

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著者:高橋克彦

 竜とは何か?西洋ではドラゴンと呼ばれ羽を有し火を吐く怪獣だが、東洋では龍とか辰と呼ばれ聖なる存在とされている。もちろんどちらも空想上の生物なのだが、本書では竜を一族に例えたり、ロケットに例えたりしながらその真相に迫ってゆく。
 まず古代文明が栄えたと言われる日本の津軽地方に始まり、信濃、出雲を転々と訪れ、ついにインド、パキスタン、トルコへの壮大な旅が始まるのである。とにかくスケールの大きな物語で、550頁を超す分厚い新書版の二段書き、という大長編に収まっているのだ。しかも本作は前編であり、ストーリーはさらに後編である『新・竜の柩』へと繋がって行くのである。

 本書はストーリーよりも、『古事記』『日本書紀』や風土記に残る寓話や、『ノアの箱舟』などの神話が、ぐるぐると絡みついてくる。とにかく竜の伝説にまつわる蘊蓄の数々が、「もうたくさんだ」と疲れるほど網羅されるのだ。荒唐無稽なのだが、無理やりこじつけてまるで真実のように創りあげているところが凄い!凄すぎるとしか言いようがない。著者の驚くべきパワーには頭が下がる思いだ。
 ただ本書を読破するのに、私自身もかなりのパワーと時間を消費してしまった感がある。従って続編『新・竜の柩』も所持しているのだが、当分は休息時間が必要かもしれないな……。

評:蔵研人

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