イニシエーション・ラブ
著者:乾くるみ
イニシエーションとは「通過儀礼」のことである。従ってタイトルの『イニシエーション・ラブ』とは永遠の恋ではなく、大人になる前の一時の恋ということになるのだろうか。また本書はバリバリの恋愛小説だと思っていたのだが、実は「必ず二回読みしたくなる」と絶賛された傑作ミステリーであった。
本書の裏表紙にある内容紹介文には、「甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説----と思いきや、最後から二行目(絶対先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。」と綴られているのである。
これは一体何を意味しているのだろうか、ネタバレになるのでここでは解説は避けることにするが、いくつかのヒントだけ紹介しよう。第一のヒントはこの小説のタイトルである。そして第一章、第二章という区分ではなく、かつてのカセットテープのようなside-Aとside-Bという区分も意味深ではないか。さらにside-Aではしつこいくらい細かくじっくりと丁寧な描写に終始しているのだが、side-Bではテンポの速い展開に変化しているのだ。また本作はタイムトラベル系の小説ではないのだが、時系列をゆがめて描いているため、二度読みが必要だということ……。まだほかにも矛盾することがいろいろあるのだが、これ以上記すとネタバレになってしまう恐れがあるのでこのへんで止めておこう。
なお本作はなかなか映像化し難い部分があるのだが、なんとそれを巧みに凌ぎながら2015年に映画化されているようである。ちなみに監督は堤幸彦で、主演は松田翔太と前田敦子になっている。機会があったら是非観てみたいものである。
評:蔵研人
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