サクラ咲く
著者:辻村深月
本書は光文社の『BOOK WITH YOU』として発行されているので、対象読者は中高校生ということになる。だから非常に読み易く読書が苦手な人でも、あっという間に読破してしまうことだろう。
また本書にはタイトルの『サクラ咲く』のほか『約束の場所、約束の時間』と『世界で一番美しい宝石』の三篇の中編が掲載されている。この中の『サクラ咲く』と『約束の場所、約束の時間』は中学生が主人公でやや児童書といった感が拭えないが、『世界で一番美しい宝石』は高校生が主人公で、内容的にも大人が読んでも全く違和感がないだろう。
この本を買った動機は、タイムトラベル系の話だと知ったからである。ただ三作のうち『約束の場所、約束の時間』だけがタイムトラベル系のストーリーであり、タイムマシンで未来から跳んできた少年と現代の少年との心温まる友情の話であった。
また『サクラ咲く』は、中学生の男女グループの友情と淡い恋心に、図書室の本に挟まれていたメモの謎がからんだちょっぴりミステリアスな話だったが、ラストに合唱する歌の歌詞がなかなか良かったね。
そして『世界で一番美しい宝石』では、高校の映画同好会の部長が、「図書室の君」と呼ばれる立花亜麻里に製作映画のヒロインを依頼するのだが、何度頼んでもなかなか引き受けてくれない。それでも小さいときに読んだ「宝石職人の話」が描かれている児童書を探してくれたら、OKしてもよいという返事をもらうのだったが……。
なんとこの立花亜麻里と、『サクラ咲く』に登場した図書室のメモを書いた謎の人物がなんとなくダブってくるのだ。もしかすると彼女たちは、若かりし頃の辻村深月の分身なのではないだろうか。ジュニア向けの中編集であるが、いい年をしたおじさんにも楽しめたのは嬉しかったね。
評:蔵研人
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