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2023年6月の記事

2023年6月27日 (火)

風が吹けば

著者:加藤実秋

 高校生の健太が2009年から1984年にタイムスリップし、バイト先の雇用主である女性カメラマン和希の少女時代に遭遇し恋心を抱くという青春物語である。現代が2009年では既にもう現代自体も、過去の遺物になってしまっているのだが、古本なのでしかたがないのだ。
 また過去に跳んだ先で知り合ったのが暴走族たちで、健太も知らず知らずにその仲間になってしまう。そしてその仲間たちの一人が少女時代の和希であり、健太はその和希にほのかな恋心を抱いてしまう。また何人かの気になる友人たちもできるのである。またタイトルの意味は、ある風が吹くと共にタイムスリップするからであろう。

 さて本作の大半は、過去で健太が遭遇するベタな経験なのだが、本当の読み処はそれら過去の出来事ではない。終盤になって健太が現代に戻ったとき、過去に知り合った仲間たちがどのように成長しているのかと言うことに興味を惹かれるのだ。とは言っても、まあ大方が想像通りの展開だったのであるが、それがまた一番安心できる展開だったとも言えるだろう。
 いずれにせよ余り捻りのない素直なストーリーなので、ある意味『お子様ランチ』かもしれない。ただ実に読み易く、1984年を垣間見ながら一気に読めてしまうところがサッパリしていてベターだったかもしれない。ただなぜ1984年なのだろうか、それは著者が18歳の青春時代だったからであろう。従って1984年に思い入れのない人には、余り郷愁は感じられないかもしれないね……。

評:蔵研人
 

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2023年6月24日 (土)

ギフト

★★★
製作:2001年 米国 上映時間:111分 監督:サム・ライミ

 ケイト・ブランシェットが演じる占い師アニーの物語。彼女は生まれながら人の運命を見通す超能力を身に着けている。それで夫が亡くなった後、その超能力を使ってカード占いで生計を立て、三人の子供たちを育てながら細々と暮らしていた。
 ある日、彼女の息子の教師であるウェインの婚約者ジェシカが行方不明になる事件が起こる。そして保安官が不思議な霊感を持つアニーに協力を請うてくる。彼女は気が進まないまま、その能力を使って事件を解き明かしていくのだが……。

 まさにケイト・ブランシェットの独り舞台と言った感覚である。『マトリックス』のキアヌ・リーヴスも共演しているのだが、ちょい役の悪役でしかないというもったいない使い方。ストーリーもありきたりで、途中から犯人がすぐ想像できてしまった。また超能力と言っても、夢見が良くないと言った感覚なのだ。
 サイコスリラー・裁判・ミステリー・ファンタジーと様々な要素がちりばめられているものの、中途半端な感も否めない。だからと言ってつまらない映画でも、駄作でもないのだが……。何と言ってもケイト・ブランシェットの魅力と演技力に支えられた映画だと言っても過言ではないだろう。

 
評:蔵研人

 

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2023年6月19日 (月)

ウルフ

★★★☆
製作:1994年 米国 上映時間:125分 監督:マイク・ニコルズ

 これまでに狼男を題材にした映画は数えきれないほどある。その原典とも言われる代表作は1941年に製作された『狼男』(原題:The Wolf Man)であるが、その後製作された『ハウリング(1981年)』、『狼男アメリカン(1982年)』、『狼の血族(1984年)』などと並んで本作が製作されている。
 本作はジャック・ニコルソンが狼男を演じているが、変身する前から狼男のような顔付をした彼にはぴったりのはまり役かもしれない。ただ本作で彼の演じる狼男は悪人ではなく、凶暴性はあるものの善人そのものであるところが、他の狼男映画とは一線を画するところだろう。

 従って結局のところ悪役を演じるのは、ジャック・ニコルソン演じるところの出版局長ウィルの椅子を狙ってオーナーに取り入る、部下のスチュワートと彼と密通していたウィルの妻ということになる。ストーリーは単純で、古臭いB級ドラマといった感があったが、名優ジャック・ニコルソンの絶妙な演技と、ヒロイン・ミシェル・ファイファーの圧倒的な美貌に支えられて、それなりの映画に仕上げられていたと言ってもよいだろう。

評:蔵研人

 

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2023年6月14日 (水)

社交ダンスが終わった夜に

著者:レイ・ブラッドベリ

 本書は現代米国文学界の大御所レイ・ブラッドベリが、2002年に上梓した短編集である。そしてこの短編集の中には、深夜の路面電車に乗り合わせた男女の会話を描き、ふわりとした余韻を漂わせたタイトル作をはじめとして全25作が収録されている。

 全編を通して言えることは、SF抒情詩人と評されている著者らしい「メタファーを多用したファンタジックな作品」で溢れ返っているということであった。従ってストーリーを追うというより、詩の音律を味わう気分で読まないと期待外れになるかもしれない。またSFと言っても、宇宙や未来や科学を描いたものはなく、どちらかというと日常的な事象を、メタファーによって塗り固めたという感がある。またそこがこの作家の好き嫌いの分岐点にもなるだろう。

 どちらかと言えば、私的には余り馴染まない作品が多く、最後まで読み通すのは難行であった。ただそんな中で『時の撚糸』など、タイムトラベル系の作品が2、3作混在していたのは嬉しかったかな。まあ好き嫌いは別として、全般的に「お洒落な短編集」と言えば良いのだろうか……。

評:蔵研人

 

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2023年6月10日 (土)

パーフェクト・ケア

★★★★
製作:2021年 米国 上映時間:118分 監督:J・ブレイクソン

 認知症などで判断能力の低下した老人たちに代わり、財産管理や法律行為を行う法定後見人であるマーラ・グレイソン(ロザムンド・パイク)が主役である。こう言えば、なんとなく社会的な貢献に身を挺している立派な女性のお話かと勘違いしてしまうかもしれない。
 だが本作の主役マーラは、裁判所の厚い信頼を利用し、合法的に高齢者の資産を奪い取る悪徳後見人なのだ。そして彼女は医者や介護施設長などを抱き込んで、強引に裁判所の認可をとり、無理やり老人たちを施設に閉じ込め、老人不在の間に勝手に資産を処分してしまうのである。その素早い手際は実に見事であり、観ていて恐ろしくなるくらいだ。

 こんな調子で老人たちをいたぶっていたのだが、ある日マーラが後見している裕福な老人が急死し、施設で最高級の部屋が空き部屋となってしまう。急遽その代わりを探し出さなければならない。焦った彼女は医者とつるんで、ほぼ健康状態である老女ジェニファーを、裁判所の許可証を提示して、無理やり施設に隔離してしまうのだった。ところがこの老女はただの老女ではなかった。実は恐ろしいマフィアのボスの母親だったのである。

 起承転結、逆転また再逆転と、めまぐるしくストーリーが展開してゆく。そして社会派ドラマからホラー、ミステリー、さらにアクションドラマへと、どんどんチェンジしてゆくのでついてゆけなくなるかもしれない。だがマーラを演じたロザムンド・パイクの性悪女っぷりに、どっぷりと嵌められてしまう。さすがゴールデン・グローブ賞女優賞を受賞しただけの価値はあるね。

 それにしても、どいつもこいつも悪人ばかりという映画も珍しい。さらに皮肉感が蔓延する脚本も面白い。ただマーラがまるでロボットのように、心身ともに余りにも強過ぎたことが鼻についた。またラストの結末は何となく予想通りだった。ああしないと不公平感だけが残ってしまうからね……。
 
 
評:蔵研人

 

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2023年6月 2日 (金)

インビジブル2

★★★
製作:2006年 米国 上映時間:91分 監督:クラウディオ・ファエ

2000年に公開された第一作は、SFホラーというタッチであったが、本作はアクションホラーといった趣だった。ネットではかなり評価が低いのだが、なんと言っても低予算だからであろう。通常は第一作目はアイデアと斬新さで売り、続編は製作費を倍増してダイナミックさを売りにするのが常道なのだが、珍しく本作は逆転現象を呈しているからだ。

 売りはただ一つ、それは笑ってしまうが、透明人間との格闘シーンでの役者たちの一人芝居の数々だろう。とにかくワイヤーアクションだったり、ハーネスに棒を付けて振り回したりとか、涙ぐましい努力の結晶だったようである。
 もう一つの不評の原因は、透明人間が余りにも強すぎるし、それは許されたとしても、車に惹かれたりビルから落とされてもまるっきり元気印だしいうことだ。そしてどこにでも神出鬼没に現れる。これではまるであのジェイソンそのものではないか。まあそれでも女科学者が可愛いので許してあげることにしよう。ははは。お暇なら観てよねってか!

評:蔵研人

 

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