古い腕時計 きのう逢えたら…
著者:蘇部健一
不思議な古い腕時計。この時計をある時計屋に持ってゆき修理を依頼すると、なんと昨日をもう一度体験できるのである。そうした小話がアンソロジー形式で8話収録されている。
●片想いの結末
片想いしている彼女のハートを射止めるため、トラックに撥ねられた彼女を助けるために昨日に戻るのだが……
●四番打者は逆転ホームランを打ったか?
少年の命を救うため、前日の失敗を繰り返さないように、もう一度バッターボックスに立つ病身の四番打者
●最後の舞台
漫才グランプリに優勝するため、昨日に戻ってもう一度瀕死の相方と舞台に立つ漫才師
●起死回生の大穴
借金返済のため、結果の分かっている昨日の競馬レースに有り金をはたき、人生の全てを賭けて挑む男
●おばあちゃんとの約束
入院しているおばあちゃんと約束した「SF小説大賞」の結果を待つ男のこころ
●明日に架ける橋
ひき逃げ事件の犯人が、時効前日に銀行強盗に遭遇してしまう話
●運命の予感
最後のプロ棋士試験のプレーオフの日。対戦相手がやってこなかったため不戦勝となるのだが、なにかすっきりしない囲碁棋士が、もう一度昨日を繰り返す話
●エビローグ
これは前述した『四番打者は逆転ホームランを打ったか?』の顛末である
以上、昨日をやり直すことによって、人生が大きく変わってしまういろいろな男たちの話である。全話に不思議な時計屋さんが関わってくるところが、なんとなく『笑ゥせぇるすまん』のようで笑ってしまった。
また平易な文体で読み易く、心が打たれて涙がこぼれる話もあり、そこそこ楽しめるはずである。ただ本書は連載物ではなく書下ろしだということで、短編集にするよりも、「群像劇風の長編」としてまとめたほうがもっと感動できる小説に仕上がったのでは、と思うのだがいかがであろうか。
評:蔵研人
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