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2023年1月の記事

2023年1月29日 (日)

星空のむこうの国

★★☆
製作:2021年 日本 上映時間:93分 監督:小中和哉
 
 高校生の昭雄は、シリウス座流星群がまもなく降り注ぐ頃、交通事故で頭を強く打ってしまう。するとそれから一週間の間に毎日のように、何かを訴えるような眼差しで見つめる少女の夢を見続けるのであった。一体彼女は何者なのだろうか……。
 ただなぜ画面がモノクロなのだろうか。もしかすると過去の夢想なのだろうか…などと考えていると、突然カラー画面に一変してしまうのである。
 
 そして自宅に帰ると、なんと仏壇に自分の位牌が置かれているではないか。そして窓の外では、あの夢で見た美少女が歩いているのだった。急いで家の外に出るのだが、彼女は見知らぬ男女に車で連れ去られてしまうのだ。自転車にまたがり、必死で車を追いかける昭雄。そしてやっとたどり着いたのは病院の入口であった。
 
 つまりこのカラー世界の昭雄は事故で死に、モノクロ世界の昭雄はギリギリ助かったのだが、死んだ昭雄の恋人だった少女の強烈な意識に惹かれて、助かった昭雄がパラレルワールドを超えてやってきたのである。ただ少女は新しい血が体内で生成されない難病にかかり、余命いくばくもない状況であった。
 
 SF絡みの難病ラブストーリーという訳だが、なにか少女漫画臭くてたまらない。それも中学生低学年向けと言ったレベルなのだ。あとでよく調べたら、原作は漫画ではないが、集英社コバルト文庫の少女向け小説であった。やっぱりね……。
 と言うことで、中学生レベルに脳みそを切り替えられない人には余りお勧めできない。いずれにせよSF映画を創るには膨大な製作費をかけて、いかにも本当のように創らないとあほらしくなるのは周知のはず。
 
 なにしろ会話のある登場人物は、無名の俳優ほぼ7人。VFXはちゃちいし、SF理論も単純過ぎる。さらにストーリーに中身が全くなく、まず恋愛ありきで呆れるほどご都合主義なのだ。途中何度も席を立ちかけたが、ラストのオチ観たさに93分間辛抱を貫いてしまった。ははは、まあそれにしてもネットの評価が良過ぎるのは、ほぼお子ちゃま達の評価なのだろうか……。
 
 
評:蔵研人

 

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2023年1月24日 (火)

ファーザー

★★★☆
製作:2020年 英国・仏国 上映時間:97分 監督:フロリアン・ゼレール
 
 あの名優アンソニー・ホプキンスが認知症の父親役を演じ、「羊たちの沈黙」以来、2度目のアカデミー主演男優賞を受賞したヒューマンドラマである。ほとんどが部屋の中での会話劇なので舞台劇のようだと感じたが、やはり原作は2012年に発表された戯曲「Le Pere 父」であった。
 
 81歳を迎えたアンソニーは、少しずつ認知症の症状が勃発し始めていた。だが癖の強い彼はヘルパーとうまくゆかない。そんなおり娘のアンが、ロンドンからパリに移住するので毎日会えなくなると告げる。
 ところが急に時間軸がずれたような状況になって、見知らぬ男が家の中で寛いでいるではないか。誰かと尋ねると、男はアンの夫だと言うではないか。だがおかしい、確かアンは5年前に離婚したはずである。そこへアンが戻ってくるのだが、それは全く見ず知らずの女だった。そしてパリには移住する予定はないと言うではないか……。
 
 こんな状況でストーリーはアンソニーの幻想のような、訳の分からない形で紡がれてゆくのである。そしてある程度は予測していたものの、衝撃のラストシーンに繋がってゆく。それにしても難解で同じようなシーンが重なる暗い作品なのだが、なぜか全く退屈しなかった。これはきっとアンソニー・ホプキンスの名演技の賜物なのだろう。
 
 
評:蔵研人

 

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2023年1月19日 (木)

将棋の子

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著者:大崎善生
 
 本書は『奨励会』でしのぎを削り、プロ棋士を目指す将棋の天才少年たちの、ノンフィクション劇場である。奨励会とは正式名称を『社団法人日本将棋連盟付属新進棋士奨励会』といい、将棋の天才たちがプロを目指して修行する「虎の穴」だ。
 ただプロとして認められるには、その厳しい「虎の穴」の中で勝ち抜き四段にならなくてはならない。そして四段となれば将棋連盟から給料、対局料などの収入が保障されるが、それまでは何の権利も保証も一切ないのである。つまり三段と四段の差は地獄と天国と言ってもよいだろう。さらに奨励会には、満二十六歳の誕生日を含むリーグ終了までに四段になれなければ「退会」しなくてはならないという厳しい年齢制限規定があるのだ。
 
 本書の主人公は、著者と同郷の北海道から奨励会入りした成田英二なのだが、中座真、岡崎洋、秋山太郎、関口勝男、米谷和典、加藤昌彦、江越克将など、無事プロ棋士になった者、あるいは途中で奨励会を退会した者たちの悲哀のエピソードも織り交ぜて描かれている。
 著者の大崎も少年時代から将棋が好きで大学時代に四段まで昇段したが、奨励会に入会できるほどの腕はなかった。ただ毎日将棋を指しに来る大崎を見ていた将棋道場の席主の紹介により、大学卒業後の1982年、日本将棋連盟に就職し、将棋道場の手合い係を経て、雑誌編集部に移り、『将棋年鑑』『将棋マガジン』『将棋世界』を手がけ、1991年には『将棋世界』編集長となった。
 
 そんな大崎だから奨励会の少年たちとは親しく付き合ったが、ことに同郷で親しみの持てる成田英二は弟のようにかわいがったようである。その成田は両親の期待と愛情に染まりながら、青春の全てをかけて四段を目指して必死に頑張った。だが残念ながら父を亡くし、母を亡くし、将棋の夢も叶わず泣く泣く奨励会を退会してゆく。そしてその先に待つ、無残で非情な生活に溺れてゆくのだった。
 本書はそんな成田を優しく見守る感動の一冊であり、第23回講談社ノンフィクション賞受賞作でもある。将棋好きな人はもとより、将棋を知らない人たちにもお薦めしたい名作である。
 
評:蔵研人

 

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2023年1月14日 (土)

罪の声

★★★★
製作:2020年 日本 上映時間:142分 監督:土井裕泰
 
 本作は昭和59年と昭和60年に大阪府と兵庫県を舞台に起きた、江崎グリコや森永製菓などの食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件『グリコ・森永事件』をモチーフとしている。また犯人が「かい人21面相」と名乗ったことから、別名『かい人21面相事件』などとも呼ばれた。本作ではそれを『ギン萬事件』と呼び、犯人は「くらま天狗」と名乗っている。
 
 主演は父親の残したテーラーを営む曽根俊也を演じる星野源と、新聞記者の阿久津英士を演じる小栗旬である。その曽根俊也が自宅の天袋で見つけた手帳とテープから、自分が子供のころに『ギン萬事件』にかかわっていたことを知り、その謎を知るために過去を追いかけることになる。
 またそれと同時に、大日新聞文化部所属の阿久津栄士が、社会部の鳥居に年末企画の取材班に入るよう命令される。その企画とは、35年前に起きた未解決事件の『ギン萬事件』を追うというものであった。すでに時効になった事件であり、何をどう調べてよいか分からないまま取材を続ける阿久津だった。
 
 このように二人がそれぞれ調査をして行くのだが、正直この前半の流れは退屈であった。やっと面白くなるのが、この見ず知らずの二人が知り合って共同調査をし始める後半からであろうか。そして次第に犯人グループと犯行の謎も解明してゆくことになる。
 また本作では犯人と犯行目的の解明のほか、犯罪に利用された子供3人の運命を同時に描いているのだが、こちらのテーマのほうが社会性もあり感動的でもあった。
 
 ここ最近はマンガの実写化ばかりが幅を利かせている邦画の中で、昔の松本清張ばりの社会派映画は非常に珍しいし懐かしい。また主役二人の演技力の確かさに加えて、脇を固めるベテラン陣、そして英国ロケなど久々に映画らしい邦画に巡り合えたことが嬉しくてたまらない。
 
 
評:蔵研人

 

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2023年1月11日 (水)

お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方

★★★★
製作:2021年 日本 上映時間:113分 監督:香月秀之
 
 死を意識し始めて人生の最期を迎えるための様々な準備と総括、そして新たな気持ちで残された人生に臨む熟年夫婦の姿を描いたヒューマン・コメディーである。
 いつも空威張りばかりで家事は一切やらない夫・大原真一に橋爪功、その妻・千賀子役に高畑淳子が扮して熱演している。それにしても橋爪功はいつも同じような役柄が多いね。もしかするとこれが彼の地なのであろうか。
 そして彼らと同居している長女・亜矢役に剛力彩芽、さらに葬儀社に転職したばかりの菅野を水野勝が演じている。この4人が主役なのだが、ほかにも西村まさ彦、大和田伸也、石橋蓮司などのベテラン勢が脇を固めていた。
 
 大原夫妻は結婚四十数年になる。だが夫・真一が螺子会社を定年退職し自宅に居座り続けており、妻の千賀子は夫在宅ストレス症に陥っていた。そして二人とも相手への気遣いが全く無くなり、真一は健康麻雀、千賀子はコーラスに通い、趣味仲間にお互いの愚痴を言い合うという、よくあるパターンの繰り返しであった。
 そんな折、娘の亜矢がキッチンカーの営業中に、葬儀社に転職したばかりの新米社員・菅野と出会う。その菅野から終活フェアのパンフをもらった亜矢は、母親の千賀子にそのパンフと菅野の名刺を渡すのである。そしてここから、千賀子の終活作戦が始まるのだが……。
 
 本作を観ているだけで、なんとなく熟年夫婦のあり方や終活に対する知識が得られる。さらに笑いあり涙ありの楽しい映画なのだが、クライマックスの金婚式が大袈裟過ぎて現実味が湧かない。金婚式など余程の金持ちか著名人でもない限り、ふつうは家族だけでやると思うのだが……。
 それに1941年生まれの橋爪と、1954年生まれの高畑が夫婦では、余りにも年が離れ過ぎていてしっくりしない。ただコメディーなのだし、二人とも演技達者で「ほっとするような雰囲気」が漂っていたので良しとしようか。
 
  
評:蔵研人

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2023年1月 8日 (日)

ダレカガナカニイル…

著者:井上夢人
 
 話の中身は、タイトル通り自分の中から別の声が聞こえてくるという話である。その声が聞こえ始めたのは、新興宗教の教祖が焼死した直後だということで、その教祖が乗り移ったのではないかと推測しながらストーリーが展開してゆく。
 なんとなくホラー染みているが全く怖くない。どちらかと言えばオカルト風味がたっぷり漂ってくる。俄然興味はこの声の主は本当に教祖なのか、またこの声を追い出すことが出来るのか、さらには教祖は自殺したのか殺されたのか。もし他殺だとしたら一体誰が犯人なのだろうか、といったミステリーモードに染まってゆく。
 
 そして中盤以降の見せ場は、精神科医による催眠術の施術と、それによって「声」が目覚めるということ。また突然現れた教祖の娘とのラブストーリー展開にも、ワクワクとこころが奪われてしまう。さらにラストの着地では、オカルト風味が突如としてSF色に大転換というおまけまでついているのだ。
 約650頁に亘る長編であるが、全く苦も無く退屈せずに一気読みできた。それは本作が新興宗教批判にはじまり、ミステリー、オカルト、恋愛、SFを融合し、ジャンルを超越した面白さに支えられているからであろう。
 
 さて著者の井上夢人とは、漫画家の藤子不二雄同様コンビで岡嶋二人と名乗り、創作活動を続けていた井上泉と徳山諄一のうち、コンビ解消後の井上泉のことである。そして本作はそのデビュー作となるようだ。従ってデビュー作と言えども、すでにベテランの味がするのは当たり前なのである。まあ間違いなく面白いことは保証するが、終盤の説明なしの急展開は理解不能だし、こんな結末なら全体的にもう少し短くまとめられたのではないだろうか。
 
評:蔵研人

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2023年1月 3日 (火)

キネマの神様

★★★☆
製作:2021年 日本 上映時間:125分 監督:山田洋次
 
 松竹100周年記念映画で、原田マハの同名小説を映画化した作品である。本来主役は志村けんが務める予定だったのだが、ご承知の通り新型コロナウィルスに感染し死亡してしまった。そこでかつて志村と同じ事務所で年齢の近い沢田研二が、急遽代役を引き受けたという曰く 付きの作品でもある。
 
 老いても酒と賭け事に溺れるダメ老人・ゴウを演じたのが沢田研二。そして映画監督を目指し颯爽とした若き日のゴウを演じたのが菅田将暉。この主人公ゴウと妻の淑子、さらに親友の映写技師テラシンとの三角関係を織り込みながら、ストーリーは時代を超えてパラレルに紡がれてゆく。
 本作は古き良き時代の映画への思いと、友情と恋愛の捻れを心地良く描いた良作と言える。まさに松竹100周年記念映画にふさわしい作品だと言ってもよいだろう。
 
 ただ余りにも「志村けん追悼にこだわり過ぎた感」が臭くてたまらなかった。ジュリーが志村と似たような演技をしたことはともかく、カラオケで『東村山音頭』まで歌うことはなかったと思う。せめてジュリーの持ち歌を歌ったほうが笑えたのではないだろうか。
 あと予算の関係なのか、せっかく山崎貴がVFX監修となっているのに、撮影所と飲み屋のセットシーンが多く、『三丁目の夕日』のような昭和の風景が余り描かれていなかったところが残念である。
 
 ただ妻・淑子役の宮本信子と若き日の淑子を演じた永野芽郁が、微妙にシンクロしていて好感が持てた。そして小林稔侍のテラシンだ、さすが「この役は俺にしかできないぞ」というようなオーラが漂っていた。だけど一番良かったのは、引きこもりだが優しい孫・勇太をさりげなく演じた前田旺志郎かもしれない。とにかくゴウじいちゃんと、孫の勇太のほっこりした空気感には感動したよな……。
 
 
評:蔵研人

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