13時間前の未来
著者:リチャード・ドイッチ
何者かに最愛の妻を殺害され、そのうえ犯人容疑で警察に拘留されてしまうニック。無実を叫ぶものの、凶器に使われた拳銃にはニックの指紋が付着していたのである。そんなとき、混乱するニックの前に謎の初老の男が現れ「きみには12時間ある」言い残し、古い懐中時計を置いて去ってゆくのだった。
なんとこの懐中時計は、一種のタイムマシンであり、1時間前の世界に戻って1時間経過すると、又2時間前へ戻る仕組みになっているのである。その度に、事件の真相に迫ってゆくのだが、協力してくれた友人などが殺されたり、妻が別の形で死んだりして、なかなか上手くゆかないのだ。
過去に戻って何度もやり直すタイムループ作品は、小説では『リプレイ』、映画では『恋はデジャヴ』などに代表され、その他にも多くの作品が発表されている。だが本作は単純に同じ過去をやり直すのではなく、1時間前へさらに1時間前へと13時間前まで、1時間ずつ過去に向かってやり直してゆくところが実にユニークなのである。
いずれにせよスピード感に溢れ、細かい捻りや趣向も随所にちりばめられており、息をつかせぬ連続ドラマを観ているかのようだった。またタイムトラベルあり、謎解きあり、アクションあり、恋愛ありの贅沢三昧な物語なのである。だから映画化される予定だったのだが、残念ながら今のところ製作された軌跡はないようだ。多分映画化するには長過ぎるので見送られたのかもしれない。しかし連続TVドラマならばピッタリカンカンなので、いずれはその方向で検討されることだろう。
ただコアなSFファンの評価はいまひとつなのだが、そもそもタイムトラベル自体が荒唐無稽なのだから、余りむきになってタイムパラドックスや時間論を戦わせる必要はないと考えたい。なかなか馴染めない海外小説が多い中で、これほどスタートからスラスラと読み続けられた小説は珍しい。エンタメは面白ければよいので、クドクドとあら捜しをせず素直に楽しもうではないか。と言いながらも、ダンス刑事のしぶとさと悪知恵にはムカムカ・イライラが募ったね。
さて著者のリチャード・ドイッチの本業は不動産投資関連の仕事で、執筆活動は夜の9時から午前3時までを当てているとのことである。彼はトライアスロン、スキー、スキューバダイビング、スカイダイビングなどをこなし、さらにギターとピアノの腕前を駆使して作曲まで手がけるスーパーマン振りを発揮しているらしい。
評:蔵研人
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