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2022年9月18日 (日)

元彼の遺言状

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著者:新川帆立
 
 若くして亡くなった麗子の元彼が残した遺言状は、「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という荒唐無稽なものであった。そしてその財産の時価はなんと数百億円に及ぶと言うのである。やり手でかつ強気一辺倒の弁護士である剣持麗子は、犯人選考会に犯人の代理人として乗り込むのだが……。
 それにしても主人公の剣持麗子は、自信過剰で負けん気の強い女性弁護士である。ボーナスが減額になったと、大御所の弁護士でオーナーでもある津々井先生に文句を言い、事務所を辞めてしまったり、大企業の森川製薬でもトップの三人に対して平気でハッタリをかます。それどころか警官やチンピラヤクザに向かっても全く動じない。まさにこの世の中には、怖いものなしのスーパーウーマンなのだ。
 
 この主人公はもしかすると、作者の新川帆立自身のコピーなのかもしれない。彼女は1991年生まれで、米国テキサス州ダラス出身で、東大法学部卒業後に弁護士として活躍している女性だし、弁護士・作家のほか麻雀のプロでもあり、高校時代は囲碁部所属で全国大会への出場経験もあるという。まさに剣持麗子同様のスーパーウーマンなのである。
 
 本作は宝島社主催の「第19回『このミステリーがすごい!』大賞」の大賞を受賞している。たぶんそれは本作のタイトルと「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」というストーリーテーマのお陰であろう。また序盤からバンバンと出し惜しみせず、面白い話をスピーディーに書き連ねていることも審査員たちの印象に残ったのかもしれない。そういう意味では、弁護士で培った「教養とハッタリ」が、上手くブレンドされて本作を生み出したのだろう。まさに受賞するためのテクニック全開であり、受賞するべくして受賞した作品なのだ。
 
 ただ残念ながら、面白かったのは序盤だけで、読むにつれてワクワクドキドキ感がだんだん薄れてゆく。また伏線回収はされているのだが、登場人物たちの深堀がなくストーリーが単純で未消化であった。さらに終盤の犯人登場や種明かしもあっけなく、なんとなく気怠さを感じただけでさしたる感動も湧かなかったのである。
 さて本作は綾瀬はるか主演のTVドラマが創られていて、かなり好評だったようである。と言うことは、もしかしたら小説というよりはTVドラマの脚本向けの作品なのかもしれないね……。
 
評:蔵研人
 

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