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2022年9月の記事

2022年9月28日 (水)

任侠中仙道

★★★
製作:1960年 日本 上映時間:91分 監督:松田定次
 
 片岡千恵蔵扮する清水の次郎長と、市川右太衛門の国定忠治が手を取り合って、悪代官と悪博徒一味を退治する勧善懲悪時代劇である。余りにもご都合主義で単純な脚本だが、東映恒例の正月オールスター映画であり、ストーリーより超豪華な俳優総出演が見所の作品なのだ。
 
 先にあげた千恵蔵、右太衛門のほか、中村錦之助、大川橋蔵、東千代之介、里見浩太朗、若山富三郎、大友柳太朗、黒川弥太郎、山形勲、進藤英太郎、大河内傳次郎、月形龍之介、などなどいつでも主役を張れる大物俳優たちがズラリと並んでいるのだ。…ということで日本中が沸きに沸き、当時の配収は3億5091万円を達成し1959年度の邦画配収ランキング第1位となったという。
 
 それにしてもまさに大東映時代の超豪華な時代劇である。撮影場所と時代劇俳優が、湯水のようにふんだんに溢れていた良き時代でもあった。もうこうした大時代劇は現代では絶対に創れないだろう。
 また「パシャッ」「カキーン」といった派手な擬音や、首や腕がふっ飛ぶなどの残酷描写は皆無の殺陣だが、よく観ているとそれなりにスピード感もあり完成度の高さが感じられた。さすが誰も彼もが時代劇俳優たちである。
 
 さらに月形・山形・進藤などの、板についた悪役振りも実に懐かしく見せてもらった。彼らは実生活でも悪人なのだと、当時子供心に信じていたくらいの嫌われ役者で、こんな俳優も今では余り見当たらない。まあ映像技術や脚本が現代では通用しないものの、たまにはこうした安心できる東映時代劇に浸って心を癒すのも良いかもしれない。
 
 
評:蔵研人
 

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2022年9月23日 (金)

最高の人生のつくり方

★★★★
製作:2014年 米国 上映時間:94分 監督:ロブ・ライナー
 
 熟年の良作ラブコメである。主演は頑固で変人の不動産エージェント・オーエンにマイケル・ダグラス、隣人の歌手リアにダイアン・キートンという名実ともに熟年の名優が扮する。また監督は『スタンド・バイ・ミー』『恋人たちの予感』『最高の人生のはじめ方』などで有名なロブ・ライナーでありやはり熟年である。本作撮影時は三人とも60代後半で、まさに熟年トリオが創った映画と言えよう。従って若者はともかくとしても、熟年観客にはじっくり楽しめるはずである。
 それにしても邦題には、同監督の前作『最高の人生のはじめ方』にあやかりたい感がプンプン臭うところが嫌みだが、原題の『AND SO IT GOES』が余りぱっとしないので仕方ないか…。
 
 引退間近の偏屈親父・オーエンは、音信普通だった息子が刑務所に入所している間に、初めて会う孫娘を嫌々預かることになる。そんな彼の態度を見た隣家のリアが孫娘の面倒を見てくれる。この孫娘の存在が鎹となり、オーレンの頑な心は少しずつ解きほぐされてゆく…。という単純で平凡なお話なのだが、恋愛だけではなく、親子愛や友情なども鏤められているので、熟年には分かり易くてほっこりするのである。
 
 
評:蔵研人
 

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2022年9月18日 (日)

元彼の遺言状

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著者:新川帆立
 
 若くして亡くなった麗子の元彼が残した遺言状は、「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という荒唐無稽なものであった。そしてその財産の時価はなんと数百億円に及ぶと言うのである。やり手でかつ強気一辺倒の弁護士である剣持麗子は、犯人選考会に犯人の代理人として乗り込むのだが……。
 それにしても主人公の剣持麗子は、自信過剰で負けん気の強い女性弁護士である。ボーナスが減額になったと、大御所の弁護士でオーナーでもある津々井先生に文句を言い、事務所を辞めてしまったり、大企業の森川製薬でもトップの三人に対して平気でハッタリをかます。それどころか警官やチンピラヤクザに向かっても全く動じない。まさにこの世の中には、怖いものなしのスーパーウーマンなのだ。
 
 この主人公はもしかすると、作者の新川帆立自身のコピーなのかもしれない。彼女は1991年生まれで、米国テキサス州ダラス出身で、東大法学部卒業後に弁護士として活躍している女性だし、弁護士・作家のほか麻雀のプロでもあり、高校時代は囲碁部所属で全国大会への出場経験もあるという。まさに剣持麗子同様のスーパーウーマンなのである。
 
 本作は宝島社主催の「第19回『このミステリーがすごい!』大賞」の大賞を受賞している。たぶんそれは本作のタイトルと「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」というストーリーテーマのお陰であろう。また序盤からバンバンと出し惜しみせず、面白い話をスピーディーに書き連ねていることも審査員たちの印象に残ったのかもしれない。そういう意味では、弁護士で培った「教養とハッタリ」が、上手くブレンドされて本作を生み出したのだろう。まさに受賞するためのテクニック全開であり、受賞するべくして受賞した作品なのだ。
 
 ただ残念ながら、面白かったのは序盤だけで、読むにつれてワクワクドキドキ感がだんだん薄れてゆく。また伏線回収はされているのだが、登場人物たちの深堀がなくストーリーが単純で未消化であった。さらに終盤の犯人登場や種明かしもあっけなく、なんとなく気怠さを感じただけでさしたる感動も湧かなかったのである。
 さて本作は綾瀬はるか主演のTVドラマが創られていて、かなり好評だったようである。と言うことは、もしかしたら小説というよりはTVドラマの脚本向けの作品なのかもしれないね……。
 
評:蔵研人
 

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2022年9月14日 (水)

ロストワールド

★★★
製作:1997年 米国 上映時間:129分 監督:スティーヴン・スピルバーグ
 
 ジュラシック・パークシリーズの第2弾であり、タイトルが語る通りコナンドイルの『失われた世界』を髣髴させられる。ヒロインのサラが登場したとき、どこかで観たような女優だなと思っていたら、なんと若かりし日のジュリアン・ムーアであった。ただこのサラの行動がハチャメチャで、あとから来た調査団が捕獲した恐竜を逃がしたり、Tレックスの赤ちゃんを連れてきたりとやりたい放題。
 
 そしてその結果として大勢の人が死に、街が破壊されてしまうのである。ところが彼女のそんなデタラメ行動には何のお咎めもなく、何事もなかったかのように淡々とストーリーが進んでゆくのだ。もうそれだけでも一体何のためにあの島に行ったのかも不明で、ストーリーも非論理的なのだ。スピルバーグ監督は、なぜこれほど破壊された脚本を野放しにしたのだろうか。
 
 ただ恐竜の数と種類は前作を遥かに上回っているし、精巧なロボット恐竜を使った迫力たっぷり映像は、素晴らしい技術力の結晶だと感じた。また車が崖から落ちるシーンは大迫力で、俳優さんたちの命懸けの演技に感動したものの、なんとなく『インディージョーンズ』の焼き直しのような気がしないでもなかったね。そしてTレックスが赤ちゃんを探して街で大暴れするシーンは『ゴジラ』と『キングコング』と『怪獣ゴルゴ』のカクテルかな…。
 
評:蔵研人
 

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2022年9月11日 (日)

柳生武芸帳 柳生十兵衛五十人斬り

★★★☆
製作:1990年 日本 放映時間:109分 監督:原田雄一
 
 BS日本テレビの「時代劇スペシャル」で単発で放映されたドラマであるが、東映が製作しており舞台設定もしっかりしている。また主役の柳生十兵衛に松方弘樹を配し、山村總、京本政樹、長門裕之、中条きよし、高橋幸治、草笛光子、斉藤慶子、など錚々たる俳優たちが脇を固めている。もうこうなるとテレビドラマと侮れず、全くもって映画そのものであった。
 
 映画と言えば、『柳生武芸帳』は松方の父親である近衛十四郎の当たり役であり、シリーズとして1961年から1964年にかけ9作品が製作されている。さらにその後TVドラマとしても、NET系列で26話も放映されているのだ。
 その父の意思を受け継いだかのように、松方版の『柳生武芸帳』は日本テレビのスペシャルドラマとして5作放映されており、本作はその中の第2話である。彼が演じる十兵衛は実に人情味溢れていて、いかにもTVドラマ向きという趣きが漂っていた。
 
 ざっとあらすじを記すと次のようにまとめられる。
 徳川家光の時代に参勤交代制度が定められ、諸大名から反発の声があがるなか、その制度を提案した柳生家の門前に、薩摩に送った裏柳生の隠密5人の生首が届けられるところから始まる。
 実は大坂夏の陣で死んだとされる豊臣秀頼が薩摩で生き延びており、島津藩主島津義弘と共に徳川幕府転覆を謀っているのでは…という情報がもたらされていたのである。この情報の真偽を探るため、父・柳生宗矩の命を受けて柳生十兵衛が旅立つのだ。しかしこの情報の裏にはいろいろな思惑が絡み事情を複雑にしていた。果たして真実はいかに。
 
 ……といったところであり、クライマックスの50人斬りがなかなか凄まじい。松方弘樹の殺陣もなかなか見応えがあったが、やはり父親の近衛十四郎の豪快な殺陣にはいまひとつ及ばなかった気がする。それともテレビドラマということもあり、ひたすら残酷さを排除した殺陣だったのだろうか。
 
 
評:蔵研人
 

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2022年9月 6日 (火)

囲碁殺人事件

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著者:竹本健治
 
 『囲碁の鬼』と恐れられている槇野九段が、タイトル防衛戦の最中に何者かに殺されてしまう。しかも首なし死体で発見されるのである。一体誰が何の目的でこのような大事な時に、このような残酷な殺人をしたのであろうか。
 本作は囲碁知識を鏤めながら、天才囲碁少年・牧場智久とミステリーマニアの姉・典子、そして彼女の恋人で大脳生理学者の須堂信一郎の素人探偵トリオが迷宮事件を推理してゆくやや明るいタッチのミステリーである。
 前半は謎解きと犯人捜しに終始する。そしていつしか、智久が犯人の目星をつけるのだが……。今度はそれを良しとしない犯人が、智久を執拗に襲撃するのであった。
 
 著者の竹本健治は『匣の中の失楽』や『ウロボロスの偽書』などの幻想的で毒の漂うような作品で有名だが、本書はその概念を一掃するような健康的なミステリーだ。そしてさらに本作の続編とも言える『将棋殺人事件』と『トランプ殺人事件』さらには短編の『チェス殺人事件』へと繋がってゆくのである。
 こんな小説を書くくらいだから、もちろん竹本健治は大のゲーム好きのようだ。そしてその中でも囲碁に一番憑りつかれていて、アマ五段の腕前だという。従って本書の中では、囲碁用語や実在したプロ棋士の名前などが頻繁に登場する。だからと言って決して囲碁知識がなければ読めない小説ではないのだが、やはり多少でも囲碁に興味がないと殊に前半はやや退屈かもしれない。
 
 私自身は一応囲碁をたしなむため、前半は全く退屈しなかったし、後半の謎解きや智久が犯人に襲撃されるシーンも、ハラハラドキドキしながら十分に楽しめた。ただ犯人が解明されるシーンのあっけなさや、殺人の動機・殺害方法などにかなり無理があり、急にエネルギーが減速してしまった感がある。もう一捻りの構想が欲しかった、と感じたのは私だけであろうか。
評:蔵研人
 

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2022年9月 1日 (木)

禁断の惑星

★★★★
製作:1956年 米国 上映時間:98分 監督:フレッド・マクロード・ウィルコックス
 
 小学生の頃、この映画のポスターを何度か見て、この映画を観たくて堪らなかった。だが残念ながら、その機会がないまま時が過ぎてしまう。ただその後あのロボットのロビーが、動くおもちゃとして長期に亘って人気を博していたことが記憶の底にへばりついていた。そしてたまたま運よく、TVでこの作品が放映されることが分かり、約66年の時を超えて本作を鑑賞することになったのである。
 
 という経過の中で恐る恐る本作を鑑賞したのだが、「期待通りの名作」と言っても良いほどの出来栄えであった。円盤型の宇宙船がかなりチープなのは残念だったが、多少古臭さを感じるものの66年前の特撮技術を考えれば「立派な映像だ!」と拍手喝采しても良いだろう。
 また映像だけではなくSF的なストーリー構成にもセンスの良さを感じずにはいられない。そして男性なら誰もが、博士の娘役を演じた『アン・フランシス』の美貌と抜群のプロポーションに、思わず唾を飲み込んでしまうはずである。さらにラストの哲学的なオチも、この作品が只者ではないことを匂わせていたよね。
 
 
作:蔵研人
 

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