« 2022年7月 | トップページ | 2022年9月 »

2022年8月の記事

時の罠

Photo_20220826102501

著者:辻村深月、万城目学、米澤穂信、湊かなえ
 
 『時』をテーマにした4人の作家によるアンソロジー、と聞いて飛びついたのだが、私が期待したタイムトラベルものではなかった。初出誌はいずれも『別冊文藝春秋』で、タイムカプセルがらみの作品が2つ重なっているし、どちらかと言えば『時間の経過』をテーマにしたような話ばかりだった。
 
 まあだからと言ってつまらなかった訳ではなく、そこそこ楽しめたのでここにその四作の内容を簡単に記しておきたい。
タイムカプセルの八年  著者:辻村深月
 四作の中では本編が一番長編で、かつ一番出来が良かった気がする。さすが人気の辻村深月である。テーマのタイムカプセルよりも、いつまで経っても大人になり切れない『人見知り・事なかれ親父』の心情と家庭の事情を、面白おかしく上手に描いている。
トシ&シュン  著者:万城目学
 縁結びの神様が学問の神様の手伝いをするという荒唐無稽なお話。それの何が時間テーマに繋がるのかと言うと、神様と人間の時間間隔の違いと言うところかな・・・。
下津山縁起  著者:米澤穂信
 下津山の大規模土地開発にからむ出来事を2000年間に亘って語り紡いでゆくお話。出来が悪いわけではないが、四作の中では一番短編なのだが退屈だった作品でもある。
長井優介へ  著者:湊かなえ
 本作もタイムカプセルがらみの作品なのだが、主人公の耳が悪くて三秒後にしか相手の声を聴くことが出来ない。それが原因で相手に誤解を与えてしまい、いじめにあったこともある。だがある人にもらった『お守り』のお陰で無事成長することが出来た。その『お守り』とは一体何だったのか。実はタイムカプセルの中に封印してあったのだ。さすが実力派の湊かなえである。辻村深月作品といい勝負だね。
 
評:蔵研人
 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

怪猫からくり天井

Photo_20220826102801

★★★☆
製作:1958年 日本 上映時間:72分 監督:深田金之助
 
 舞台は鍋島藩で、いわゆる化け猫怪談時代劇である。子供の頃に何度か似たような映画を観ている。そして眼の不自由な囲碁打ちが、殿さまに手打ちになると言う設定や、化け猫が行燈の油を舐めるシーンもよく覚えているので、もしかすると大昔に本作を観ているのかもしれない。
 
 子供の頃は化け猫映画が怖くてトイレに行けなくなったものだが、今になって観てみると単純でばかばかしくて全く怖くないのだ。なんと言っても化け猫のキャラが歌舞伎調で笑ってしまう。もし現代のCG技術を駆使しすれば化け猫キャラを、エイリアンのようにおどろおどろしく作れるかもしれないが、まあ64年前の作品なので仕方ないよね。
 
 ただ化け猫映画と言っても、化け猫が飼い主を殺された恨みを晴らすため、殿さまに復讐しておしまいという話ではないのだ。つまり本当に悪い奴は殿さまではなく、殿さまの悪行を後押して失脚させ、お家乗っ取りを謀っている悪家老なのだった。この悪家老に当代一の悪役だった三島雅夫が悪人臭を漂わせ、それを阻止しようとする重臣役・月形龍之介の渋み走った演技にしびれてしまうのだ。なんと化け猫映画というよりは、化け猫をダシに使った「東映本格時代劇」という趣であった。いずれにせよ私のような老人には、郷愁を呼び起こされる懐かしい映画と言えるだろう。
 
作:蔵研人
 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

七花、時跳び!

★★★
著者:久住四季
 
 一時は100名もいた部員が、いつの間にか部長の柊和泉と後輩・七花蓮のたった二人になってしまった『未来研』だが、なかなか新規入部者が集まらない。そんなある日突然、なんと七花にタイムトラベル能力があることが分かってしまう。それから二人は『退屈しのぎのタイムトラベル遊び』を始めるのであった。
 登場人物はこの二人に加えて、柊の同級生・鈴ヶ森くるみと二人の先生だけのたった5人、しかも舞台はほぼ高校の中だけという超低予算C級映画といった趣である。まあ厳密に言えば過去や未来の二人も出演しているのだが、それが話を少しややっこしくしている。それにしてもこれだけの構成で300頁近く稼いでいるのだから、稼ぎ過ぎではないだろうか(笑)。
 
 前半はやや退屈なのだが、後半からタイムパラドックスがらみの展開となり、私的には俄然面白くなってくる。ただ気になったのは主人公の柊が余りにもおバカ過ぎてウザイこと、小説というよりはアニメやゲームで観たくだらないギャグとタメ口満載のマンガそのものだということ。
 さらにタイトルは梶尾真治の『つばき、時跳び』のパクリだし、世界観は『サマータイムマシン・ブルース』のオマージュというかパロディーというか、いずれにせよいろいろなところからの寄せ集めといった感が拭えないのだ。そのうえラストは「特別な捻り」もなくあっさり幕となり感動も湧かない。結局のところ本作は「タイムトラベルをおもちゃにした世界観の狭い軽い学園ラブストーリー」だったのかもしれないね。
 
評:蔵研人

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

俺たちは天使じゃない

★★★★
製作:1989年 米国 上映時間:107分 監督:ニール・ジョーダン
 
 1935年、カナダに近いアメリカの某刑務所で、極悪囚人のボブが処刑されることになる。ところがボブが電気椅子に座ると急に停電になり、彼は看守から奪った銃で周りの看守たちを撃ち殺して脱走を謀る。
 そのときたまたま処刑場に居合わせたコソ泥のネッドとジムは、無理矢理ボブに連れられて一緒に脱走する羽目になる。翌朝ボブとはぐれたネッドとジムの二人は、カナダ国境を目指すのだが…。国境の小さな町で著名な神父と間違われて教会に身を潜めることになる。そしていくつもの偶然が重なり、国境をなかなか超えることが出来ずモタモタしているところへ、刑務所の所長たちが彼等を探しにやってくるのだった。
 
 主演はロバート・デニーロとショーン・ペンで、そこに貧しい母親役としてデミ・ムーアが花を添えている。基本はドタバタコメディーであるが、ロバート・デニーロとショーン・ペンの軽妙なおとぼけ演技と、ハラハラドキドキ感がなかなか絶妙にブレンドされているではないか。
 また涙を流すマリアと神父の祈りが、摩訶不思議に絡み合うところも、なかなか感動的でただモノではない。さらにいかにもアメリカンなラストシーンにも、思わずニヤリとせずにはいられないだろう。
 
評:蔵研人
 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

NINJA THE MONSTER

★★
製作:2015年 日本 上映時間:84分 監督:落合賢
 
 長野藩の取り潰しを救う方法は、幸姫が幕府老中の側室になるしかなかった。だが江戸に向かう長野藩の幸姫一行にもののけか襲いかかり、一行はほぼ全滅してしまう。それでもなんとか生き残った護衛の忍者伝蔵と幸姫は、苦渋の決心をして二人だけで江戸に向かうのだった。…という展開のロードムービーなのだが、天下の松竹が配給している割には余りにも製作費をケチり過ぎている感がある。
 
 まず登場人物は10人以下だし、知っている俳優は忍者役のディーン・フジオカぐらい、それにギョロ目のお姫様にもゲンナリだ…。さらにCGは貧弱過ぎるし、ただ山の中を彷徨っているだけの背景の繰り返しも退屈この上ない。
 それに人は絶対に切らないし、忍びの技もなにもなし。海外向けに製作したと言うが、外人はこんな程度の映画で満足するのだろうか。それでは余りにも外人を馬鹿にしているとしか思えない。
 
 またなかなか姿を見せないもののけにもイライラし続けたが、正体を見てもっとガッカリしてしまった。なんだこのお粗末さは、もし劇場で鑑賞していたら「金返せ~!」叫んでいたことだろう。
 
 
評:蔵研人

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

秘忍伝 NINJA KILLER

★★☆
製作:2008年 日本 上映時間:86分 監督:雑賀俊郎
 
 幕府の女隠密組織?に鍛えられた三人の女性剣士が、討幕をたくらむ悪人たちを退治するというお話。タイトルから想像するとまるで女忍者(くノ一)なのかと錯覚させられるが、彼女たちは忍者ではなくそれぞれ槍使い・一刀流・二刀流の女剣士である。
 
 なんとなく『あずみ』と『無限の住人』を足して二で割ったようなパクリ的作品ではあるが、構想的にはなかなか面白そうじゃないの…。と思ったのもつかの間、何と言っても所詮はⅤシネマであり、圧倒的な資金不足と役者不足が否めない。
 やはり時代劇は製作費がかかるのでⅤシネマには荷が重い。それに主役の三人がほぼ無名で演技も殺陣もかなり悲しいレベル。それらをなんとかカバーしていたのが、「敵キャラのどぎつさ」と「ギリギリ特撮」くらいかもしれないね。
 
 まあ上映時間が短いから、なんとか我慢して最後まで見ることが出来たのだが…。せっかくAV女優?が出演していたのだから、露天風呂のお尻出しシーンだけではなく、もっとエロいシーンを織り込んでいたならもっとヒットしたような気がしたのは私だけであろうか。
 
 
評:蔵研人
 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

天国までの49日間

Photo_20220802101601

★★★
著者:櫻井千姫
 
 中学2年生の少女・折原安音は、女子クラスメイトからのいじめに耐え切れず、マンションの最上階から飛び降り自殺する。ところが死んだ直後に天使が現れて、49日の間に天国へ行くか地獄へ行くかを考えて決めろと言う。
 もちろん幽霊になった安音はものに触れることもできないし、誰にもその姿を見ることが出来ない。はずなのだが、なんと男子クラスメートの榊洋人にだけは姿も見え会話もすることが出来るのであった。そして安音は彼の家に転がり込んで、常に彼と一緒に過ごすことになる。
 
 そんなマンガのようなストーリー展開なのだが、本作では中学校でのいじめの実態とその問題点にのめり込んで追及しているようだ。もしかすると著者自身のいじめ体験を小説化したのかもしれないね。
 あとがきで著者自身が認めているが、文章はやや稚拙でいじめ以外の内容は底が浅い感がある。ただいじめや友情に対する熱意だけはひしひしと伝わってくるため、同年代読者の圧倒的な支持を得たのだろう。そしてそのあたりが評価されたことこそ、本作が日本ケータイ小説大賞を受賞した理由かもしれない。
 
評:蔵研人
 

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | | コメント (0)

« 2022年7月 | トップページ | 2022年9月 »