天使の歩廊
著者:中村弦
時代背景は明治末期から昭和初期まで、主人公は笠井泉二という建築家である。だが笠井は単なる建築家ではなく、悪魔的というか幻想的というのか、とにかく摩訶不思議な建物を設計するのだった。本書はその笠井泉二と彼が創作した建物を取り巻く話六作を繋いだ連作短編集である。
著者の中村弦は本作にてデビューし、同時に「日本ファンタジーノベル大賞」を受賞し、選考委員たちから絶賛のエールを送られたという。それにしてもひとつひとつのストーリーは丁寧な構成で味わい深く、江戸川乱歩のようなおどろおどろしさや、SF的異次元世界の壮大感も漂ってくるではないか。
ただ洗濯屋の次男として生まれた主人公が、なぜこれほど超天才的な能力を発揮できたのかの説明は一切なされていないし、ラストも曖昧なまま無理矢理閉めた感がある。もちろん謎めいた存在感に満ちているからこそファンタジーなのだが、一抹の違和感は拭いきれない。
建築物自体はまさに物質の塊なのだが、そこにはなんとなく怨念や異様な雰囲気を感じることがある。それはある意味「別世界への入口」に通じるからなのだろうか。そして小説のメインテーマに特殊な建物を選んだことが、前述した選考委員たちの絶賛を浴びた一因なのかもしれない。それにしても、著者も本作の主人公同様ある種の天才なのだろう。
評:蔵研人
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