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2021年12月 7日 (火)

死の谷間

★★★☆
製作:2015年 アイスランド他 上映時間:98分 監督:クレイグ・ゾベ
 
 世界中が死の灰に覆われてしまった。ところが奇跡的に、アンの住んでいる谷だけが放射能の汚染を免れていた。彼女は自分と愛犬だけが世界中で生き残っている唯一の哺乳類だと思い込んでいたのだが…。
 ある日防護服を付けた黒人のジョンと遭遇する。思想や趣向及び性格も全く違う二人だったが、世界中で立った二人の生き残りと考えたのか、次第に心が惹かれ合うようになる。
 
 ところがそこに、若くてイケメンの白人男性が突如現れるのだ。こうなると当然、三角関係が生じるのは火を見るより明らかである。だがしばらくの間は、全員が発電機作りに没頭していて、なんとか三角関係のバランスが保たれていた。しかしとうとう発電機が完成した日に、ある出来事が起こってしまうのである。
 
 とにかく信じられないくらいの超低予算映画である。登場人物はマジ3人のみ。舞台装置も小さな教会と古い住宅だけである。ところがなんとなく面白いから不思議なのだ。
 なぜ世界中が死の灰に埋もれてしまったのかの説明は全くない。多分本格的な核戦争が始まったのだろう。またこの世界観にはいろいろ矛盾も多い。だがそんなことはどうでも良いのだ。場合によっては核汚染でなく、無人島での出来事でもよかったからである。
 
 つまり本作のテーマには、人種・宗教・性欲と理性・老若などが鏤められているものの、本質的には隔離された世界で、男女三人の三角関係は成立するか否かを問う話だからだ。なかなか興味深いテーマで、宗教観もかなり介入しているので、どんな回答を示すのか期待していた。
 だが結局はっきりした答えは提示できず、終盤のどんでん返しもなかった。そしてラストの「モヤモヤ」には賛否両論が沸騰するに違いない。もしかすると「モヤモヤ」にすることにより文学的な匂いを与え、この超低予算映画をギリギリ支えているのだろうか。
 
 
評:蔵研人

 

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