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2021年12月の記事

2021年12月30日 (木)

ザ・コンサルタント

★★★★
製作:2016年 米国 上映時間:128分 監督:ギャヴィン・オコナー
 
 原題は『THE ACCOUNTANT』(会計士)なのに、なぜ邦題は『ザ・コンサルタント』になってしまったのだろうか。そもそも主人公のクリスチャン・ウルフはアスペルガー障害でとてつもなく数字に強い。だから数字を扱う会計士の仕事をしているのだから、わざわざコンサルタントという邦題に変更する必要はなかったと思うのだが…。もしかするとアカウンタントでは馴染みがないし、「会計士」と翻訳すると堅苦しく感じるからかもしれないね。
 
 まあそんなことはどちらでも良いのだが、ズバリ内容のほうはとても素晴らしかった。それは主人公のクリスチャンが、表の顔が会計士で難解な企業不正を天才的な調査能力で暴き、裏の顔では超人的な格闘術と射撃力で悪人たちを退治する凄腕の暗殺者という二つの顔を持っているからである。
 これらの能力を具体的にまとめると、15年間の膨大な帳簿から1夜にして不正を読み取る数学脳、超長距離からでもライフルで射止められるゴルゴ13的狙撃力、相手の行動を先読みし瞬時に対抗策を講じる予知能力、死んだ標的にもダメ押しのトドメを刺す完璧主義、などなどきりがない。そして常にクールで用心深いのだが、身の危険を顧みず善人を助ける優しさも身についている。
 
 今回の話の内容は、小さな町で会計士として働くクリスチャンのもとに、ある大手企業からの財務調査のオファーが寄せられるところから始まる。彼はその調査をなんと一日で済ませて、重大な不正を発見することになる。ところがなぜか、依頼は突然取り下げられてしまう。最後まで完璧に終わらせないと気の済まないクリスチャンなのだが、それ以降に身の危険を感じるようになる。…そして悪人たちとの戦闘という展開である。
 
 まあこれだけの話なら必殺仕事人のような話なのだが、なぜ彼が超人的な力を得ることが出来たのか、AIのような声で彼に指令を出しているのは誰か、子供のころにいつも一緒だった弟は何をしているのか、なぜ潰れた水筒を持っているのか、なぜ財務省捜査官は部下に彼の身元調査をさせたのか、などなどいろいろな謎の伏線が張られているのだが、それらの全てがラストまで解明されてゆく。
 
 人によっては分かり難い作品に感じるかもしれない。だがスカッとするアクションに、奥行きのある脚本が絡んだ味わい深い作品であることも否めないだろう。また主人公のクリスチャンを演じたのは、バットマンを演じたベン・アフレックで、さすがその逞しい肉体に加えスピード感のあるシャープなアクションには魅入られてしまった。
 
 これだけ綿密に編まれた作品を一回限りで終わらせるのはもったいない。それに経理部のダナや捜査官のメディナ、それに弟との関係も中途半端なままだし、これは続編というよりシリーズ化するべきだと思っていた。
 そうしたらその続編が製作されることが先日発表され、なんと三部作になる予定らしい。これも本作が大ヒットしたからに違いない。
 
 
評:蔵研人

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2021年12月28日 (火)

アウトランダー

著者:ダイアナ・ガバルトン
訳者:加藤洋子
米国TVドラマ シーズン5まで全67話が放映済だがまだ続く予定
 
 とにかく原作は大長編小説である。なにせ『アウトランダー』というタイトルはシリーズ名ということであり、『時の旅人クレアI~Ⅲ』『ジェイミーの墓標I~Ⅲ』『時の彼方の再会I~Ⅲ』『妖精の丘にふたたびI~Ⅲ』『燃ゆる十字架のもとにⅠ~Ⅳ』『炎の山稜を越えてI~Ⅳ』『遥かなる時のこだまI~Ⅲ』の23冊という大構成になっている。しかも一冊が平均500頁と分厚く、そう簡単には読めない。従ってここでは、既に放映済のTVドラマシーズン5までのうち1~3をまとめて簡単に紹介したい。
 
 ストーリーは、第二次大戦終結直後、従軍看護婦だったクレアが、夫・フランクと一緒にスコットランドのハイランド地方で休暇を過ごすところからはじまる。そして不思議な言い伝えのあるストーン・サークルを訪れた彼女は、突如異様な感覚に襲われ、意識が混濁してしまう。気がつくと、古めかしい衣裳の戦士たちが眼前で戦いを繰り広げているではないか。なんと彼女は18世紀にタイムスリップしていたのであった。
 
 ここからクレアが過去で体験する波乱万丈の物語が始まる。そのとき彼女は、過去の世界には存在しない薄物の服をまとっていたため、下着でうろついている娼婦と勘違いされてしまう。さらになんとこの時代で最初に遭遇したのが、フランクと瓜二つのイングランド軍のジャック・ランダル大尉だった。実は彼こそフランクのご先祖様で、顔こそフランクそっくりだが、性格は正反対でしつこいサイコ野郎なのだ。
 また彼は、この世界でクレアの夫となるジェイミーとも悪い因縁を持っており二人に執拗に絡んでくる。つまりこの物語の前半では、ジャック・ランダル大尉が最悪の敵役を務めることになるのである。
 
 主人公のクレア役を演じたのは、元モデルのカトリーナ・バルフで、長身でスタイル抜群のうえ、まるでベテラン女優のような存在感が漂っているではないか。またジェイミーとの濡れ場が多く、惜しげなくその美しい全裸を晒してくれるのだ。同様にジェイミー役のサム・ヒューアンも、美しい自然な筋肉美と全裸を十二分に披露してくれる。いずれにせよ、よくも素晴らしい主人公二人を見つけ出したものである。
 また本作は映画を凌ぐほどのスケール感を誇り、過去の建物や衣装などはもとより、不潔・不衛生・危険が伴う時代考証も正確に描き切っているところが凄いのだ。
 
 さて本作のジャンルは、基本的に「ラブファンタジー」と呼んでも良いだろう。また主人公のクレアとジェイミーは美女美男なのだが、ともに気性が激しく頑固で逞しい。そして時にはお互いを罵り合うのだが、逆にそのつど愛を深めていくのである。ただいつもクレアの頑固さが原因で、皆が迷惑を被ったり窮地に陥ってしまう展開にはかなりイライラされられてしまう。
 そんなイライラ感が高じて、何度か嫌気が差してしまったことも否めない。ジェイミーが甘過ぎるのかもしれないが、クレアがもう少し素直になっても良いのだが…。
 
 シーズン1では、ヒロインのクレアが、期せずして過去の世界にタイムスリップしてしまう。そこで彼女は、時代を無視した無謀さが原因で、スパイ容疑をかけられてしまう。その容疑から逃れるため、やむなく自分より年下の美男子ジェイミーと結婚する。
 また当初は元の世界に帰りたかったクレアだったが、ジェイミーと躰を重ね、共に艱難辛苦を乗り越えながら生きているうちに、だんだん強い愛情が芽生えてゆき、彼の子を宿すことになる。
 
 シーズン2では、パリへ逃げ延びたクレアとジェイミーたちが、歴史上大勢のハイランドが虐殺された「カローデンの戦い」を回避しようと政治的にいろいろ画策する。だが結局は歴史を覆すことはできないどころか、ジェイミーもその戦いに参加せざるを得ない状況に追い込まれてしまう。死を覚悟したジェイミーは、妊娠したクレアと胎児を守るため、彼女を無理矢理ストーン・サークルから現代にタイムスリップさせてしまう。
 
 シーズン3では、クレアは現代で「カローデンの戦い」を乗り越えジェイミーが、その後も生き延びたことを証明する資料を発見する。そして娘のブリアナが20歳になる年に、再び一人で最愛のジェイミーの住む過去へ旅立ってゆく。多分50歳を超えているクレアであるが、白髪がちらつく程度で相変わらず美貌を誇り、気性が激しく頑固なところも全く変わらない。
 
 ざっとシーズン3までのあらすじを殴り書きにしてみたが、中身はずしんと重い。年を重ねたジェイミーはかなり丸くなっているのだが、クレアのほうは相変わらずの頑固者で、医師の資格を取ったためか、さらにプライドが高くなり無謀さ健在、まるで「迷惑の根源」のようだ。このあたりでイライラ感が、だんだんクレアに対する腹正しさに変化してゆくのは私だけではないはずである。
 
評:蔵研人

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2021年12月26日 (日)

鈴木家の嘘

★★★☆
 
製作:2018年 日本 上映時間:133分 監督:野尻克己
 
 ひきこもりの長男・鈴木浩一が、自室で首をつって自殺をしてしまうところから始まる。それをはじめに発見したのが母親の悠子だった。彼女は台所から包丁を取り出して、息子のあとを追うように手首を切って意識を失ってしまう。
 悠子はずっと意識を失ったまま病院のベッドに伏している。その間に浩一の葬儀も終わり、49日の法要が行われていた。なんとそんな日に突然、眠り続けていた悠子が目覚めるのだった。
 
 病院から連絡を受け、法要中だった夫の鈴木幸男、長女の富美、幸男の妹・君子、悠子の弟・博が駆けつけるが、悠子は記憶を失っていて浩一が自殺したことを覚えていないらしい。ここで浩一の死を告げると、また悠子が自殺すると恐れた家族たち。そこで急遽「浩一は博の仕事を手伝うためアルゼンチンで暮らしている」と全員が嘘をついてしまうのである。
 
 本作はこの鈴木家の嘘が「一体どこまで続くのか」また「いつ誰がどのようにばらすのか」さらに「そのとき悠子はどのような行動をするのか」がキーポイントとなっている。また浩一が死を選んだ理由についても知りたくなるのだが…。
 浩一の自死にショックを受けたのは悠子だけではなかった。もしかすると、妹の富美こそが兄の死を一番受け入れられなかったのかもしれない。その理由はセラピーで語られることになるが、そこには母親と長男の親子関係に対する嫉妬も絡んでいたようだ。また家庭のことを殆ど振り返らなかった父親・幸男も、浩一の自死の原因が掴めず葛藤の中を彷徨っている。
 
 テーマとしてはかなり暗く重いのはずだが、岸部一徳のおとぼけのほか、全般的にコメディタッチの臭いがするため、余り深刻にならずに鑑賞することが出来た。上映時間133分の長尺であるが、それほど長く感じなかったのは、そこそこ面白かったからであろう。
 終盤になると、実は本作のテーマは、自殺の動機などの謎解きではなく、残された家族三人のそれぞれの想いと共有の痛み、そして再生を描いているのだと気付き始める。ただソープランド関連の話は、かなり非現実的で意味不明だし、しつこく追及した割には「謎のままジ・エンド」というのも中途半端な感が否めなかった。
 
評:蔵研人

 

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2021年12月22日 (水)

母との約束、250通の手紙

★★★☆
製作:2017年 仏・ベルギー 上映時間:131分 監督:エリック・バルビエ
 
 本作はフランスの作家ロマン・ガリの自伝小説を映画化したものであり、第43回セザール賞で主演女優賞など4部門にノミネートされたヒューマン系ドラマである。
 ロマンはユダヤ系ロシア移民で、ポーランドで幼少期を過ごした。14歳の時、母のニーナと共にフランスニースに移り住み、フランス国籍を取得している。
 
 そして第二次世界大戦後はフランス外務省に勤務し、ブルガリア、スイス、アメリカ各国の大使館参事官や、ロサンゼルス駐在領事を務めた。また小説家としても活躍し、2度ゴンクール賞を受賞している。さらには映画女優のジーン・セバーグと結婚し、『ペルーの鳥』の監督など映画界でも活躍したのだが、1980年12月2日に拳銃自殺し66歳で生涯を閉じてしまった。
 
 本作では母子家庭に育ったロマンが、幼い頃から母のニーナから毎日のように「将来小説家になって、勲章をもらい、外交官になるのよ!」と叱咤激励され続けてきた半生を描いている。その途方もない息子への期待を実現させるためには、どんなことも辞さないニーナの狂気と愛。そしてそれに応えようと、必死になって母の教えを実践する一人息子ロマン。そこには強烈な一卵性親子の引き返せない共存関係が、ドロドロととぐろを巻いていた。
 
 戦地に送られてきた母からの250通の手紙。ロマンはこの手紙に励まされ、戦地の中でも夢中に小説を書き続けた。そしてとうとうニーナの望む通り本が出版されることになる。だがなぜかニーナからの手紙には、賞賛の言葉が全く綴られていなかった。不思議に感じたロマンは母のもとに戻るのだが、そこで彼は母の偉大なる愛の証を知ることになるのだ。
 
 欧州の映画の中には、本作のように「大真面目で冗談を演じる」ような作品を見かけることがある。私自身は大げさな表現や皮肉がらみの作品は嫌いではないのだが、本作はやや中だるみ感が拭えなかったのが残念である。不要なシーンも多かったので、せめて2時間以内にまとめて欲しかったね。
 まあそれはそれとして、呪いのような息子愛に憑りつかれたニーナの狂気。それを演じたシャルロット・ゲンズブールの怪演こそ、本作最大の見どころであることは誰にも否定できないだろう。彼女もいつの間にか50歳、だんだんこういった役柄に染まって行くんだね。
 
評:蔵研人

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2021年12月20日 (月)

ANNA/アナ

★★★★
 
製作:2019年 米・仏 上映時間:119分 監督:リュック・ベッソン
 
 あの名作『レオン』から約25年、久々の傑作再来でリュック・ベッソンの面目躍如。やはりリュック・ベッソンの描く孤高の殺し屋は凄まじい。それもあのニキータ以上のスタイリッシュでパワフルな女殺し屋の物語なのだ。
 
 その女殺し屋の名はANNA。1990年彼女はロシアKGBに所属し、国家にとって危険な人物を抹殺するため育成される。彼女は頭脳明晰かつ抜群の身体能力を身に着けており、なんと5分で敵を40人を倒してしまう超人的な強さを発揮するのだった。
 だがあるとき米国CIAの罠にはめられ、KGBを裏切ることになる。それでKGBとCIAにそれぞれ愛人を作り、二重・三重スパイはお手のもの。そしてラストの見事などんでん返しに繋がってゆく。果たしてアナが求めていたものは、愛だったのか自由だったのであろうか…。
 
 主演のアナを演じたのはロシア出身のスーパーモデルであるサッシャ・ルスだが、よくもあれだけのアクションをこなしたものだ。それもスタントなしで満身創痍だったと言う。彼女のプロ根性には、ただただ脱帽するばかりである。
 ただなぜ2年位の訓練で彼女があれほど怪物化したのだろうか。というような野暮な突っ込みはやめておこう。本作はその豪快なアクションシーンを楽しむためにあるのだから…。
 またKGBの女上司オルガを演じたヘレン・ミレンの存在感溢れる怪演ぶりもなかなかのものである。結局のところ陰の主役は彼女だったのかもしれないね…。
 
 
評:蔵研人

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2021年12月17日 (金)

フッド:ザ・ビギニング

★★★
製作:2018年 米国 上映時間:116分 監督:オットー・バサースト
 
 原題は『ROBIN HOOD』なのだが、邦題はなぜか『フッド:ザ・ビギニング』になっている。子供の時からロビンフッドは馴染みがあるのだが、なぜわざわざ邦題を『フッド』に変えたのだろうか。因みにフッドとはフードつまり古臭い言葉で言えば「頭巾」のことである。
 またロビン・フッドは、中世イングランドの伝説上の人物であり、何度も映画化されているが、頭巾をかぶっている画像は見たことがない。だが本作ではフードにマスクをしているので、あえてフッドを強調したのだろうか。
 
 時代背景は十字軍のころ、主人公のロビン・ロクスリー卿が4年ぶりに戦地から帰還すると、なんと死亡届が出されて領地と財産は没収され、恋人は領民の妻になっているではないか。そんな最悪の状況に激怒したロビンは、敵の狙撃手だった男に弓の特訓を受け、頭巾姿の義賊フッドとして奪われた領民の金を奪い返す行動を続けるのだった。これが本作でのロビンフッド誕生の経緯だ。
 
 残念ながら現代風にアレンジされた世界観と映像にはついて行けなかった。また取って付けたような薄っぺらいストーリーも肌触りが良くないのだ。しかしながら、豪快な弓矢アクションだけは手放しで褒め称えたい。連続撃ち・4本撃ち・鉄の矢を猛スピードで放つ凄まじさ。ただこれも最初のうちだけで、だんだん飽きてくるから困ったものである。
 
 まあいずれにせよ、昔の『ロビンフッド』を期待すると、かなり違和感を抱くことになってしまうので、別のお話と考えたほうが良いだろう。もしかすると、それを考えた末の邦題だったのかもしれないね。
 
 
評:蔵研人

 

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2021年12月15日 (水)

ザ・ボーイ ~人形少年の館~

★★★☆
製作:2016年 米国 上映時間:97分 監督:ウィリアム・ブレント・ベル
 
 城のようなクラシカルで立派なお屋敷に住む老夫婦に雇われたグレタ。彼女の仕事は老夫婦の息子である8歳の少年・ブラームスの子守だった。ところがそのブラームスとは、写真そっくりで等身大の人形ではないか。
 
 老婦人は少し狂気じみていて、人形をまるで本物の息子のように可愛がっている。夫のほうは諦めたような眼差しで妻の仕草を観ているが、特に反論もせず妻の言いなりになっている。だが二人とも冷静であり、かなり高額の報酬を支払ってくれるのだ。またグレタがこんな寂しい場所で仕事をする気になったのは、暴力夫から逃れるために、夫に知られない場所で資金稼ぎをするためだった…。
 
 それにしても、たかが子守にどうしてあんな高額の報酬を払うのだろうか。またなぜ老夫婦は二人きりで旅立ってしまったのだろうか。そしてグレタの靴や洋服が消えてしまったり、人形の座っている位置が変わってしまうのはなぜだろうか。
 
 まさか『チャイルド・プレイ』のチャッキーじゃあるまいし、人形が生きているという訳でもあるまい。あるいはあの便利屋のマルコムの仕業かな。…と思わせておいて、実は「あれ」だったりして、となんとなく見当がついてくる。そしてやっぱりその通りだった。ははは。なんだなんだ13日の金曜日じゃないの。
 とは言いつつも、最近おバカなホラーばかり観ているためか、まあストーリーもしっかりしているし、そこそこ楽しめるホラーかなという感じではある。なぜ「あれ」はそうなっちゃったのか、とかもっといろいろ言いたいことはある。だけとそれを言ってしまっては、完全ネタバレになっちゃうので、残念だが秘密のままにしておこうか。
 
 
評:蔵研人

 

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2021年12月13日 (月)

フラッド

★★★
 
製作:1998年米国 上映時間:97分 監督:ミカエル・サロモン 
 
 クリスチャン・スレーターとモーガン・フリーマンが共演するクライム・アクションである。大洪水のため沈みかけた街で、現金輸送車を襲う強盗グループと警官の激しい攻防戦を描いてゆく。1998年製作のためか、映像がやや陳腐化している感があった。
 
 ストーリーのほうは、洪水のため行き場を失った現金輸送車を、モーガン・フリーマン率いる強盗団が襲う。だが間一髪難を逃れたクリスチャン・スレーター扮する警護員が現金を持って逃走し、それを強盗団が追跡するという構図。さらにその現金に欲がくらんだ警官たちとの三つ巴の闘争を描いている。
 
 まあアクション映画としてはよくある展開なのだが、大洪水の中での攻防というところが斬新である。また洪水に沈みかけている街のセット造りは大変だったろうなと、裏方スタッフたちの苦労を想像してしまった。上映時間も97分とそれほど長くはないので、テレビドラマを見るような軽い気分で観ることをお勧めする。
 
作:蔵研人

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2021年12月11日 (土)

ロング・ベッド

★★☆
 
製作:2017年米国 上映時間:85分 監督:モニカ・ミッチェル
 
 ロング・ベッドと言っても「長いベッド」ではなく、Wrong Bed「間違ったベッド 」のことである。つまり目が覚めたら、ベッドの中で全裸で知らない男と手錠で繋がれていたというお話なのだ。
 もうこのシチュエーションだけで、この映画を観たくなってしまうのだが、実は殆どそれだけが売りの作品だった。また映画と言う触れ込みだが、15分おきに画面が真っ黒になって、直前のシーンが繰り返されるのだ。もしやこれはテレビドラマを映画風にアレンジしたのでは、と思って調べたらやっぱりその通りだった。
 
 どおりで映画にしては安っぽく、作り方がテレビドラマ風だと感じていた。いずれにせよ、面白かったのは前半だけ。なぜ彼等が全裸でベッドに寝ていたのか、またなぜ女性研究員に追われているのか、という疑問だけで話を盛り上げているからであろう。
 だが少しずつその訳が解明されるにつれ、だんだんつまらなくなるのだ。そして手錠で繋がれていた理由もありきたりだし、その事件の発端もある男の嫉妬だったと言うお粗末な結末に腹が立つ。さらに笑ってしまうのは、主人公の男は消防士だというのにブラブラし過ぎだし、女の仕事先に一緒に引っ越すとは、一体全体彼は本当に消防士の仕事をしているの?。
 
評:蔵研人

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2021年12月 9日 (木)

残された者-北の極地-

★★★☆
製作:2018年 アイスランド 上映時間:97分 監督:ジョー・ペナ
 
 登場人物は三人だが、一人は死人でもう一人も重体で会話不可、結局動いているのはたった一人。しかも一人なのでほとんど会話なしという超省力映画である。
 
 ストーリーは、飛行機事故で北極地帯に不時着したパイロットのサバイバル物語である。彼は壊れた飛行機をシェルター代わりにし、毎日白銀の荒野を歩き、魚を釣り、救難信号を出しながら救助を待っていた。
 そんな状況の中で、やっと救助に来たヘリコプターも強風のため墜落してしまう。そして男性パイロットは死亡、女性パイロットは腹部に損傷を受けて重体。瀕死の彼女を救うため、彼は遥か彼方にある北極基地目指して決死の旅に出る。
 
 それにしてもリアルな描写で、観ているほうもクタクタになってしまう。しかしあれだけの距離を、瀕死の人間をソリで引っ張りながら歩けるかな。途中で白熊にも襲われるし、実話だったら半分も歩かないうちに二人とも凍死間違いなしだね。まあそこが映画の映画たる所以だから仕方ないのだが…。
 ただたった一人だけの映画で、最後まで飽きずに鑑賞できたのは、主人公を演じたマッツ・ミケルセンの地味だが抜群の存在感と渋い演技力のお陰と称えたい。
 
評:蔵研人

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2021年12月 7日 (火)

死の谷間

★★★☆
製作:2015年 アイスランド他 上映時間:98分 監督:クレイグ・ゾベ
 
 世界中が死の灰に覆われてしまった。ところが奇跡的に、アンの住んでいる谷だけが放射能の汚染を免れていた。彼女は自分と愛犬だけが世界中で生き残っている唯一の哺乳類だと思い込んでいたのだが…。
 ある日防護服を付けた黒人のジョンと遭遇する。思想や趣向及び性格も全く違う二人だったが、世界中で立った二人の生き残りと考えたのか、次第に心が惹かれ合うようになる。
 
 ところがそこに、若くてイケメンの白人男性が突如現れるのだ。こうなると当然、三角関係が生じるのは火を見るより明らかである。だがしばらくの間は、全員が発電機作りに没頭していて、なんとか三角関係のバランスが保たれていた。しかしとうとう発電機が完成した日に、ある出来事が起こってしまうのである。
 
 とにかく信じられないくらいの超低予算映画である。登場人物はマジ3人のみ。舞台装置も小さな教会と古い住宅だけである。ところがなんとなく面白いから不思議なのだ。
 なぜ世界中が死の灰に埋もれてしまったのかの説明は全くない。多分本格的な核戦争が始まったのだろう。またこの世界観にはいろいろ矛盾も多い。だがそんなことはどうでも良いのだ。場合によっては核汚染でなく、無人島での出来事でもよかったからである。
 
 つまり本作のテーマには、人種・宗教・性欲と理性・老若などが鏤められているものの、本質的には隔離された世界で、男女三人の三角関係は成立するか否かを問う話だからだ。なかなか興味深いテーマで、宗教観もかなり介入しているので、どんな回答を示すのか期待していた。
 だが結局はっきりした答えは提示できず、終盤のどんでん返しもなかった。そしてラストの「モヤモヤ」には賛否両論が沸騰するに違いない。もしかすると「モヤモヤ」にすることにより文学的な匂いを与え、この超低予算映画をギリギリ支えているのだろうか。
 
 
評:蔵研人

 

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2021年12月 5日 (日)

君は月夜に光り輝く

★★★☆
製作:2019年 日本 上映時間:101分 監督:月川翔 
 
 難病ラブストーリーは食傷気味で余り触手が動かなかったのだが、永野芽郁ちゃんの明るい笑顔のポスターに釣られて観るはめになってしまった。原作は第23回電撃小説大賞を受賞した佐野徹夜のライトノベルで、高校生が主人公のプラトニックラブ。だから大人にはいま一つ物足りないかもしれない。だが誰にでもある青春の1頁だと思えば、きっとラストには涙で頬を濡らしてしまうだろう。
 
 ヒロインは月の光を浴びると体が淡く光る発光病と呼ばれる不治の病に侵されて、ずっと病院でモルモットのような暮らしを強いられている。そこに見舞いにやってきた同級生男子と恋に陥ってしまうのだが…。それにしても「発光病」と呼ばれる難病は本当に存在するのだろうか。
 
 発光病は現実には実在しない病気で、作者の空想のたまものらしい。ただエビが感染する病気に発光病のような症状の病気があるという。いずれにせよヒロインが病院の屋上で、月の光を浴びて発光するシーンは最大の見せ場である。
 このロマンチックな病気と永野芽郁の明るい性格のためか、難病ラブストーリーにありがちな暗いイメージが全くないところが嬉しかった。欲を言えば映像を超美麗に仕上げて、音楽をもっとロマンチックなものに差し替えれば文句はなかったのだが…。
 
評:蔵研人

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2021年12月 3日 (金)

サムライチャンプルー

★★★★
TVドラマ シーズン全26話
 
 マングローブ原作・制作の新感覚時代劇アニメである。そのとぼけたタイトル同様かなりいい加減で、時代考証もほとんど無視状態なのだが、これが結構くせになるほど面白い。なので、あっという間に全26話を視聴してしまったぜ。
 
 時は単純に江戸時代であり、それ以上の詳細は不明。ガラが悪くチンピラ然としたムゲンと、剣の達人ジンの喧嘩が原因で、ある茶屋が大火事になってしまう。そのため二人は代官所に捕らえられ、処刑されることになるのだが…。
 それを茶屋でバイト中だったフウが助ける見返りとして、ある約束を二人にさせるのである。それは「ひまわりの匂いのする侍」を探すために三人で旅をすることであった。ひまわりの匂いのする侍とは一体何者なのか、なぜフウは彼を探したいのかが前半のキーとなる。
 
 ムゲンは琉球からやってきた流れ者で、現代人のような服装をしている。旅の目的は強い奴と戦うためだが、修行ということではない。剣も体術も超人的なスピード感も並大抵ではないのだ。ただし性格は粗暴で自己中な女好き。
 ジンは現代風のメガネをかけた美剣士である。無住心剣流の達人で、まさに電光石火のような鋭い剣を振るう。ただやむなく恩師を殺害してしまったため、一門から追われている。そんな重い過去を引きづっているためか、クールで無表情だが優しい心の持ち主のようだ。
 ヒロインのフウは、可愛い顔をしているが超・大食漢。暗い過去を持つ割には明るく前向きに頑張っている。また彼女が探している「ひまわりの匂いのする侍」と彼女の関係については、中盤以降に少しずつ解明されてゆく。
 
 結局このアニメは、この三人が織りなすおバカで楽しく悲しいロードムービーなのである。その旅の途中では、かなり個性的な100人以上のキャラクターが登場し、この珍道中を盛り上げてくれるのだ。
 なかにはどーでも良い話がいくつか混在しているが、無敵だったムゲンとジンの前に立ちはだかる最強の瞽女・沙羅と、ラスボスの超達人・霞清蔵との死闘が一番印象的である。
 
 本作は奇想天外なキャラとテンポのよい展開も見ものであるが、何と言ってもその豪快な絵やデザインと音楽の使い方の巧さにも舌を巻いてしまうだろう。あの将軍をめざす男がラップを歌うシーンには、笑いと驚愕の双方が同居していたものね…。
 
評:蔵研人
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2021年12月 1日 (水)

恋人まで1%

★★★
製作:2014年 米国 上映時間:94分 監督:トム・ゴーミカン 
 
 結婚どころか真剣に恋人を作る気も湧かないジェイソン(ザック・エフロン)は、同僚で友人のダニエルと一緒に、後腐れなくセックスができる女性と、いいかげんな交際を繰り返していた。さらに親友マイキーが妻に浮気され離婚すると聞いて、3人で独身を貫こうと決意する。
 だがジェイソンもダニエルもそれぞれ好きな女性が出来てしまう。さらにマイキーも妻と復縁しようと画策する。だが3人で独身を謳歌しようと誓った手前、誰も本心を打ち明けられないまま中途半端な生活が続いてゆく。
 
 ここまで話せばあとは起承転結の「転と結」だけで、よくあるラブコメ同様の展開が待っている。それにしてもジョークと下ネタの繰り返しばかりで、ラストはお定まりという軽すぎるおバカ映画だった。まあそこそこ面白かったが、時間と金の浪費だったと感じる人も多いかもしれないね。
 
 
評:蔵研人

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