著者:ダイアナ・ガバルトン
訳者:加藤洋子
米国TVドラマ シーズン5まで全67話が放映済だがまだ続く予定
とにかく原作は大長編小説である。なにせ『アウトランダー』というタイトルはシリーズ名ということであり、『時の旅人クレアI~Ⅲ』『ジェイミーの墓標I~Ⅲ』『時の彼方の再会I~Ⅲ』『妖精の丘にふたたびI~Ⅲ』『燃ゆる十字架のもとにⅠ~Ⅳ』『炎の山稜を越えてI~Ⅳ』『遥かなる時のこだまI~Ⅲ』の23冊という大構成になっている。しかも一冊が平均500頁と分厚く、そう簡単には読めない。従ってここでは、既に放映済のTVドラマシーズン5までのうち1~3をまとめて簡単に紹介したい。
ストーリーは、第二次大戦終結直後、従軍看護婦だったクレアが、夫・フランクと一緒にスコットランドのハイランド地方で休暇を過ごすところからはじまる。そして不思議な言い伝えのあるストーン・サークルを訪れた彼女は、突如異様な感覚に襲われ、意識が混濁してしまう。気がつくと、古めかしい衣裳の戦士たちが眼前で戦いを繰り広げているではないか。なんと彼女は18世紀にタイムスリップしていたのであった。
ここからクレアが過去で体験する波乱万丈の物語が始まる。そのとき彼女は、過去の世界には存在しない薄物の服をまとっていたため、下着でうろついている娼婦と勘違いされてしまう。さらになんとこの時代で最初に遭遇したのが、フランクと瓜二つのイングランド軍のジャック・ランダル大尉だった。実は彼こそフランクのご先祖様で、顔こそフランクそっくりだが、性格は正反対でしつこいサイコ野郎なのだ。
また彼は、この世界でクレアの夫となるジェイミーとも悪い因縁を持っており二人に執拗に絡んでくる。つまりこの物語の前半では、ジャック・ランダル大尉が最悪の敵役を務めることになるのである。
主人公のクレア役を演じたのは、元モデルのカトリーナ・バルフで、長身でスタイル抜群のうえ、まるでベテラン女優のような存在感が漂っているではないか。またジェイミーとの濡れ場が多く、惜しげなくその美しい全裸を晒してくれるのだ。同様にジェイミー役のサム・ヒューアンも、美しい自然な筋肉美と全裸を十二分に披露してくれる。いずれにせよ、よくも素晴らしい主人公二人を見つけ出したものである。
また本作は映画を凌ぐほどのスケール感を誇り、過去の建物や衣装などはもとより、不潔・不衛生・危険が伴う時代考証も正確に描き切っているところが凄いのだ。
さて本作のジャンルは、基本的に「ラブファンタジー」と呼んでも良いだろう。また主人公のクレアとジェイミーは美女美男なのだが、ともに気性が激しく頑固で逞しい。そして時にはお互いを罵り合うのだが、逆にそのつど愛を深めていくのである。ただいつもクレアの頑固さが原因で、皆が迷惑を被ったり窮地に陥ってしまう展開にはかなりイライラされられてしまう。
そんなイライラ感が高じて、何度か嫌気が差してしまったことも否めない。ジェイミーが甘過ぎるのかもしれないが、クレアがもう少し素直になっても良いのだが…。
シーズン1では、ヒロインのクレアが、期せずして過去の世界にタイムスリップしてしまう。そこで彼女は、時代を無視した無謀さが原因で、スパイ容疑をかけられてしまう。その容疑から逃れるため、やむなく自分より年下の美男子ジェイミーと結婚する。
また当初は元の世界に帰りたかったクレアだったが、ジェイミーと躰を重ね、共に艱難辛苦を乗り越えながら生きているうちに、だんだん強い愛情が芽生えてゆき、彼の子を宿すことになる。
シーズン2では、パリへ逃げ延びたクレアとジェイミーたちが、歴史上大勢のハイランドが虐殺された「カローデンの戦い」を回避しようと政治的にいろいろ画策する。だが結局は歴史を覆すことはできないどころか、ジェイミーもその戦いに参加せざるを得ない状況に追い込まれてしまう。死を覚悟したジェイミーは、妊娠したクレアと胎児を守るため、彼女を無理矢理ストーン・サークルから現代にタイムスリップさせてしまう。
シーズン3では、クレアは現代で「カローデンの戦い」を乗り越えジェイミーが、その後も生き延びたことを証明する資料を発見する。そして娘のブリアナが20歳になる年に、再び一人で最愛のジェイミーの住む過去へ旅立ってゆく。多分50歳を超えているクレアであるが、白髪がちらつく程度で相変わらず美貌を誇り、気性が激しく頑固なところも全く変わらない。
ざっとシーズン3までのあらすじを殴り書きにしてみたが、中身はずしんと重い。年を重ねたジェイミーはかなり丸くなっているのだが、クレアのほうは相変わらずの頑固者で、医師の資格を取ったためか、さらにプライドが高くなり無謀さ健在、まるで「迷惑の根源」のようだ。このあたりでイライラ感が、だんだんクレアに対する腹正しさに変化してゆくのは私だけではないはずである。
評:蔵研人
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