ロブスター
★★★
製作:2015年 ギリシャ他5 上映時間:118分 監督:ヨルゴス・ランティモス
第68回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した作品であるが、ジャンル不明でよく分からない奇妙な映画であった。近未来の話のようだが、ホテルのような収容施設に集められた人々が、45日以内にパートナーを見つけなければ動物にされて森に放たれてしまうというのだ。どんな動物にされるのかは自分自身で選択するのだが、主人公のデヴィッド(コリン・ファレル)が、長生きし海で生活できる「ロブスター」を選んだところからこのタイトルが付けられたようである。またパートナーを得た者は、シングルルームからダブルルームに移され、そこで数日過ごした後さらにヨットで数日間過ごせば収容施設から出ることが出来るというのだ。
オープニングでいきなり、雨の中を車から降りた女がロバを拳銃で射殺するシーンが映される。そしてそのあと何の説明もなく、デヴィッドが前述した収容施設に収容され、その中で友人を創ったり、訳の分からない人間狩り競技を強いられたり、ダンスパーティーやプールで楽しんだりする映像が流される。
全く説明はないものの、まずなんとなく想像できるのは、人間を動物に変身させる技術が実用化された近未来の話だということ。そしてその世界では、独身であることが許されず、離婚などで独身になった男女は収容施設に連行され、そこで一定期間内にカップルにならなければ、動物に変えられて人間社会から追放されてしまうという展開なのだ。
だが背景はそれだけではなかった。実は森の中に裏社会があり、そこで暮らす森人たちは独身でいることが許されるのだが、逆にパートナーを創ってはいけないというルールが存在していたのである。収容施設から森の中に逃げ込んだデヴィッドは、この森人たちとともに暮らすようになるのだが、そこで禁断の恋に落ちてしまうのだった。
とにかくナンセンスで不条理な映画だが、実は結婚と愛について皮肉を交えながら、その本質を無機質に抉り出そうと試みた作品なのだろう。それから本作では愛のベースを「パートナー同士が持つ共通点」だと定義している。それで「鼻血を出すこと」「歌が好きなこと」「ビスケットが好きなこと」「心が冷徹なこと」「近視であること」などなど、どんなつまらないことでもとにかく共通点があれば良しなのだ。
そしてその愛の条件がラストシーンへと繋がってゆく。主人公がトイレの鏡に向かって愛の証を実行できるのか、怖くなって逃げてしまうのか。それをじっと待つ彼女のいじらしさと切なさ…。かなり過激でエキセントリックな映画であり、好き嫌いがはっきりと分かれてしまうことも否めない。ただ私的には年に一度や二度はこうした風変わりな映画に染まるのも悪くないと考えている。
評:蔵研人
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