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2021年9月の記事

2021年9月30日 (木)

ワイルド・ローズ

★★★★
製作:2018年 英国 上映時間:102分 監督:トム・ハーパー

 カントリー歌手を夢見るシングルマザーを描いたヒューマンドラマである。美声を誇り地元の酒場で歌っているローズは、グラスゴーを出て米国でカントリー歌手になることが夢であった。
 だが二人の子供を持つ身ながらも、ドラッグ密輸の容疑で1年間服役していたのである。さらに金もなく歌を練習する暇もない。そんな無い無い尽くしの中で、地元の資産家スザンナの家で家政婦として働くうち、カントリー音楽のファンであるスザンナにチャンスを与えられるのだったが…。

 本作では主人公の歌唱力が注目されるわけだが、主人公ローズを演じたジェシー・バックリーの演技はもちろんのこと、その歌唱力もなかなか大したものである。その彼女の演技力は世界中で高い評価を得、アカデミー賞でノミネート、ニューポート・ビーチ映画祭で主演女優賞の受賞、ジョージア映画批評家協会賞や放送映画批評家協会賞など数々の賞を受賞している。また素晴らしかったのは彼女だけではなく、母親役・スザンナ役・それに微妙な少女の心象風景を演じた子役も良かったね。

 本作のタイトルである『ワイルド・ローズ』を直訳すれば、「荒々しく力強く生きていくローズ」と言うことになるだろう。それに加えてバラの野生種のことをワイルドローズと呼び、環境や病気に強く手入れをしなくとも花がたくさん咲くという特徴を持っているという。そしてバラの花言葉は「愛と美」であり、ローズの美声と愛の物語という要素も示唆しているのかもしれない。
 いずれにせよ本作は米国風のサクセスストーリーではなく、なんとなく英国の田舎風味を漂わせたエンディングで締めくくっている。また私自身もこの終わり方のほうが味わい深いと思ったが、皆さんはいかがなものであろうか。

評:蔵研人

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2021年9月28日 (火)

フォルトゥナの瞳 小説

★★★★
著者:百田尚樹

 最近、神木隆之介と有村架純主演の同名映画を観たばかりなのだが、幾つか気になってたシーンがあり、それを確認するためにこの原作小説を読んだ。
 死が近い人の体が透けて見える能力を知った木山慎一郎が、恋人・桐生葵と幸せな人生を送るか、二人の不幸を犠牲にして幼稚園児を含む大勢の命を救うのかの選択に迷い、葛藤してゆく姿を描いてゆく物語である。また言葉を変えて言えば、SF風味を漂わせながら、ミステリアスでヒューマニズムを追求したラブストーリー、という贅沢な小説なのだ。

 慎一郎は、透けて見えた人を救うたびに自分自身の命が蝕まれてゆく。それなのに自分の命と恋人を裏切ってまで「見ず知らずの人を助ける」という気持ちが、私にはどうしても理解出来ない。確かに目の前に死にそうな人がいて、助けられるかもしれないのに、知らんぷりをするのは寝覚めが悪いかもしれない。
 だが本作の中で医者の黒川が言ったように、そんなことをしても誰にも感謝されないし、場合によっては変質者扱いされ、結局自分の命を削ってしまうだけじゃないか。それにある人を助けたとしても、それが殺人犯だとすれば、その反動で別の人が被害に遭うかもしれないのだ。だから簡単に人の運命を変えてはならない。

 またどうしても透ける人を見たくないのなら、外出時は濃いサングラスなどをして他人のことをなるべく見ないようにすれば良いではないか。それなのに慎一郎は外出の都度、キョロキョロし過ぎるし余計な行動が多すぎる。その慎一郎の神経質な心証に、ずっとイライラさせるところが本作の狙いなのかもしれない。だがラストがあれでは、救いどころがなさ過ぎて今ひとつ感動に結びつかないのだ。

 また本書を読むきっかけとなった「映画の中での気になるシーン」だが、かなり映画のほうに脚色があり、原作を読んでも全く解消されなかった。やはり映画には多少荒唐無稽でも見た目の派手さが必要だし、逆に小説のほうは心理描写に力点を置くことになるのであろうか。

 それから余計なことかもしれないが、本作の解説文には呆れてものも言えない。素人が気張りすぎたのかもしれないが、7頁の解説文の中にはほとんど本作の解説はなく、ただ百田氏の作品は全部おもしろいと記しているだけなのだ。
 あとは本書と関係のない私事をパラパラ綴っているだけなのである。この解説文を書いたのは素人なので、ある程度仕方がないとしても、こんな雑文をそのまま解説文として載せた新潮社の編集者の罪は大きいのではないだろうか・・・。

評:蔵研人

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2021年9月26日 (日)

フォルトゥナの瞳

★★★★
製作:2018年 日本 上映時間:111分 監督:三木孝浩

 幼いころに飛行機事故で同乗していた両親を亡くした木山慎一郎。奇跡的に助かった彼は成長し、自動車整備会社で真面目一筋に働いている。
 ところが最近になって、死の近い人が透けて見えることに気が付き始めるようになっていた。そしてその能力を使って彼女や社長の命を救うのだが、その能力を使うたびに自分の命を縮めていることを知らされる。

 それで透けて見える人たちを発見しても、何もせずにじっと我慢するようにした。だが真面目な慎一郎は、彼らの死が分かっていながら、何もできない自分に対してイライラし続け自己嫌悪に陥ってしまう。
 そしてある日、幼稚園児たちが遠足で乗る電車が事故に遭遇し、全員死亡してしまうことが分かってしまうのである。もし彼等を救えば確実に自分も死ぬだろう。そうすると当然彼女とは結婚できなくなり、彼女を悲しませることになってしまう。
 この二つのジレンマに挟まれ、慎一郎は悩みに悩み抜き、ある決断を下すのだが・・・。

 原作は百田尚樹の小説でまだ未読なのだが、映画を見た限りではなかなかの秀作で、かなり凝ったストーリー展開だと感じた。是非とも小説のほうも一読してみたいものである。それにしても、あの終盤のどんでん返しは「皮肉」で塗りつぶされているように感じたのは私だけであろうか・・・。
 またあのエンディングには賛否両論があるかもしれないが、私的にはなんとなく納得してしまった。まあいずれにせよ、総括すれば「ちょっと切なく心残りな、ミステリー風味のラブ・ファンタジー」ということになるだろう。


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2021年9月24日 (金)

ロスト・ボディ

★★★☆
製作:2012年 スペイン 上映時間:111分 監督:オリオル・パウロ

 珍しいスペイン発のサスペンス・ミステリーである。殺害された疑いのある死体が死体安置所から忽然と消えてしまう。また唯一それを見たと思われる警備員もトラックと衝突して意識不明状態が続く。
 一体誰が何のために死体を盗んだのか。それとも死体は死んだふりをしていたのだろうか…。答えはこの二つのうち、いずれか一つであることは間違いない。いずれにせよ、殺人または殺人未遂を遂行した犯人はすぐに判明し、警察官に拘束されてしまう。だが死体を盗んだのは彼ではないようだ。では誰が何のために死体を盗んだのであろうか。物語の焦点はこの一点に集中するのだが…。

 警察に拘束されたのは、死体になった製薬会社女性会長の夫で妻よりもかなり若い。そしてやきもち焼の妻に隠れて若い女性と浮気をしているのだ。そして妻がだんだん邪魔になってきたのだが、浮気をして離婚すると妻の財産を一銭も手にすることが出来ない。それで絶対にばれない方法で妻を殺害すれば、巨額の財産が手に入り恋人と水入らずで暮らせる…と考えたのである。

 なかなか良く出来た脚本で、グイグイと観客を引っ張ってゆき、ラストにアッと驚くどんでん返しもしっかり用意されている。だからネットでの評価もかなり高い。
 だが余りにも良く出来過ぎていて…と言うよりまるで整形美女のような型に嵌った脚本と、ご都合主義で不自然な後付けトリックも、いま一つ説得力に欠けていたような気がする。
 またオープニングで登場した姉妹たちはそれっきりだし、舞台がだんだん小さくなって登場人物も限定的に絞られてしまったのも中途半端な気がした。いずれにせよ面白い映画であることは間違いないのだが、手放しで褒めちぎるほどの作品とも思えない。まあ死体安置所が舞台になっていても、『ジェーン・ドウの解剖』のようなグロさやエロさも少ないし、それほど恐怖感も煽られないので、女性でも安心して観ていられる作品と言えよう。

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2021年9月22日 (水)

鑑定士と顔のない依頼人

★★★★
製作:2013年 イタリア 上映時間:131分 監督:ジュゼッペ・トルナトーレ

 ある日のことである。天才的審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマンに「資産家の両親が遺した美術品を鑑定して欲しい」という電話がかかってくる。ところが何度会う約束をしても、彼女は一向に姿を見せないのだ。ヴァージルは腹を立てるが、最初は事故に遭遇したと言われ、さらに何度か約束を破られたあとに、彼女は自閉症で人に会えないのだと言い訳する。こんなことが繰り返されていくうちに、ヴァージルはなんとか彼女の姿を見れないものかと切望し、彼女の家に忍び込んで物陰から彼女が部屋から出てくるのを覗き見するのだった。

 このあたりからこの映画の観客たちもヴァージル同様、彼女(クレア)の正体を「見たくてしょうがない状態」に陥ってしまうのだ。
 さてそのヴァージルはかなり年配なのだが、未だに独身で生身の女性には全く興味が湧かない「童貞男」であった。そしてオークションの傍らに友人ビリーとつるんで収集した膨大な「女性絵画」を恋人にしている変態的な人物だったのである。
 こんな変態かつ偏屈な男には、どんな美女でも、正面切ってアプローチしては、相手にされないだろう。だからこそ押したり引いたり、そして姿を見せないなどの手法を用いて、さんざんイライラさせた挙句に、やっと姿を見せて「愛している」と言えば、今度は仕事も手につかないほど夢中になってしまうのであろうか…。

 この作品の邦題はそのものズバリの味気ないタイトルだが、原題は『BEST OFFER』で「最上の出品物」という意味になる。これはオークション中につるんでいるビリーへの合図の言葉でもあり、ヴァージルがクレアに感じていた魅力とも考えられるだろう。
 それにしても、主人公は美術品を見る目は超一流だが、生身の女をしっかり鑑定できなかったという皮肉たっぷりの展開だ。また逆転・逆転と執拗に逆転が続いた後に、やっとハッピーエンドかと思ったのだが、まだ残り時間がかなり残っていたので、「これはきっとまだ何かあるな」と思った途端にまたどんでん返し。
 なんと最後のどんでん返しはかなり厳しい。ヴァージルは驚愕と悲しみの嵐に巻き込まれ失意のまま精神病院へ…、という切なさを遥かに超えた余りにも悲し過ぎる終盤は救い難く観るに堪えられない。

 ただ監督は本作を「ハッピーエンド」だと明言していると言うのだ。うっ…もしかするとラストに頻繁に繰り返される時系列の映像の解釈に、そのヒントがあるのかもしれない。たしか執事が郵便物を持って病院を訪れた回想シーンがあったが、その郵便物の中に彼女からの手紙が混在していたと考えたい。
 そしてその手紙を見たヴァージルが、あの時計だらけの喫茶店で誰かを待っているシーンこそが本来のラストシーンなのかもしれない。その後果たして彼女は本当に現れるのか否かは、もちろん観客の想像力にまかせたのであろうか。

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2021年9月20日 (月)

スペシャルアクターズ

★★★
製作:2019年 日本 上映時間:109分 監督:上田慎一郎

 『カメラを止めるな!』でインディーズ映画として空前のヒットを記録した上田慎一郎監督の劇場長編映画第2弾だ。従ってこの映画を観たほとんどの人たちか前作を上回る面白い作品を期待して劇場に足を運んだはずである。
 なるほど上映が始まるとすぐに上田監督の臭いを嗅がされたのではないだろうか。またも超低予算、そして超無名のキャストに学芸会レベルの演技力。確かにそれは継承されているのだが、だからそれで良いということではない。

 ただ今回は少なくとも大松竹の配給になっているのだから、もう少し予算をかけても良かったのではないだろうか。確かに第一作同様終盤にどんでん返しが用意されていたが、余りにも単純などんでん返しに思わず「あれっ?」と声をあげてしまった。この声は驚きの声と言うよりも疑問の声と言ってもよいかもしれない。

 そもそも私は第一作目の『カメラを止めるな!』自体も、なぜあれほどの熱狂的フィーバー現象が勃発したのか疑問符を投げかけた人なのだ。そしてそれをコミカルタッチの種明かし映画と評したものである。
 本作の場合は「種明かし」ではなく、二重どんでん返しと定義したほうがよいだろう。ただ映画の創り方自体は全く前作と同じ穴のムジナであった。これは監督だけに責任があるとは言い難い、配給した天下の松竹にも問題があったのではないだろうか。前作の『カメラを止めるな!』が僅か300万円の製作費で大ヒットしたのは運も含めた奇跡であり、柳の下に何匹も泥鰌が泳いでいるはずがないよね。


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2021年9月18日 (土)

ニューイヤーズ・イブ

★★★☆
製作:2011年 米国 上映時間:118分 監督:ゲイリー・マーシャル

 大晦日のニューヨーク、過去の絆を取り戻そうと奔走する8組の男女を描いた群像劇である。よく観るとキャストは、ロバート・デ・ニーロ、ヒラリー・スワンク、ハル・ベリー、ジェシカ・ビール、サラ・ジェシカ・パーカー、ザック・エフロンという超豪華メンバーなのだ。

 またタイムズスクエアで行われた実際の「年越しカウントダウンイベント」中に撮影を敢行したことも話題になったようである。まあこうした映画では、英国製の『ラブ・アクチュアリー』などが有名だが、とにかく序盤は登場人物を見分けるのが大変である。

 ただ本作は米国製なので知っている俳優が多かったせいか、序盤はそれほど苦ではなかった。いずれにせよこうした映画は決して毒にはならず、必ず心温まるハッピーエンドが約束されているので、安心して観ることが出来るところが嬉しいよね。

 
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2021年9月16日 (木)

ジム・キャリーはMr.ダマー

★★★
製作:1994年 米国 上映時間:105分 監督:ピーター・ファレリー

 ロイド(ジム・キャリー)は、一目惚れした女性・メアリーが空港でスーツケースを置き忘れたのを見て、スーツケース拾って彼女を追いかける。だがタッチの差で、飛行機は飛び去ってしまう。
 だがロイドはその程度では諦めない。なんとそのスーツケースをメアリーに届けるために、彼女が向かった高級リゾート地アスペンへと向かうのだ。ただ職を失い金欠病のロイドは、友人のハリーを無理矢理誘って、彼の車でアスペンを目指す。そして早速おバカな珍道中がはじまり、旅先でいろいろなトラブルを引き起こすというコミカルロードムービーなのだ。

 さて気になるのはスーツケースの中身なのだか、中盤までロイドはその中身を確認しようとしなかった。ところがハリーと喧嘩をしてスーツケースが放り投げられたときに、その中にぎっしりと大金が入っていることに気がつくのだった。
 実はその大金は、誘拐されたメアリーの夫を返してもらうための身代金だったのである。そんなことを知らぬロイドとハリーの二人を、誘拐犯たちが執拗に追いかけてくるのだが・・・。

 製作年が1994年なので、携帯もなく公衆電話が登場したり、古くさいファッションだったりと、多少陳腐化している感もある。また昔は大笑いしたジム・キャリーの下品でわざとらしい演技も、かなり鼻をつくようになってしまった。やはりお笑いも時代の推移には勝てないのかな・・・。


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2021年9月14日 (火)

100歳の華麗なる冒険

★★★☆
製作:2013年 スウェーデン 上映時間:115分 監督:フェリックス・ハーングレン

 原作はスウェーデンのベストセラー小説「窓から逃げた100歳老人」で、ヨーロッパ各国で大ヒットを記録したという。100歳の誕生日に老人ホームの窓から逃げ出したお爺ちゃんが繰り広げる、成り行きまかせの珍道中であり、コメディー仕立てのロードムービーと言ってもよいだろう。

 なんと若かりし頃のアランも100歳のアランも、スウェーデンを代表するコメディー俳優ロバート・グスタフソンが演じているという。そりゃあそうだよね。本物の100歳のお爺ちゃんにあんな過酷なロケはできないものね。最初はかなり年配の俳優なのかと思っていたのだが、若かりし頃のフィードバック映像がそっくりだし、顔の皺がほとんど動かないので途中で老人メーキャップだと気付いた。

 それにしてもお爺ちゃんに接触する悪者たちはみんな簡単に死亡してしまうし、いきなり象が登場したりと荒唐無稽な脚本には呆れてしまう。だがコメディーなので細かいことに目くじらを立てるな、と言われれば「はいそのようですね」と縮こまるしかないよね。
 また若い頃の話と現代の話がパラレルで進んでゆくのだが、何のために若い頃の話をくどくどと挿入しているのか疑問である。せっかく現代の話が佳境に入った途端に、全く関連のない昔の話にチェンジでは、なんだかはぐらかされたようで調子が狂っちゃうのだが…。まあこのお爺ちゃんそのものが、調子はずれな存在なのだから仕様がないのかもね。


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2021年9月12日 (日)

トロッコ

★★★☆
製作:2009年 日本 上映時間:116分 監督:川口浩史

 日本映画だが、登場する日本人は夕美子を演じた主演の尾野真千子と子役2人だけ。あとはすべて台湾人なのである。それもそのはず、台湾人の夫の遺骨を持って、夫の実家での数日間を描いたヒューマンドラマだからである。原作はなんとあの芥川龍之介の同名短編小説で、それを現代の台湾を舞台に置き換えた脚本となっているのだ。

 登場人物も少なく、台湾の田舎村での小さな出来事を淡々と描いているだけの低予算映画である。だが何かが心の中に染み込んでくる。主役の夕美子をはじめ、義父母、義弟夫妻、さらに子供たちまでが、それぞれが葛藤に憑りつかれているのである。
 その中でも義父の悩みは重く深く、日本人にのしかかってくる。彼は第二次世界大戦で日本人に占領されたにも拘らず、日本人を尊敬し必死で日本語を覚え日本のために戦い、自らも日本人になりきろうと心底努力してきた。
 だが日本が敗戦するとそのまま切り捨てられて、いまだに年金も支給されず「ご苦労様」のねぎらいもないのだ。その悲しみを目の当りにしたら、なんだか日本人として申し訳ない気分で一杯になってしまった。

 そしてクライマックスのトロッコシーン。トロッコを押して山奥へ入ってゆく兄弟と、日本に憧れているお兄さん。奥へ進むとだんだん靄が濃くなってきて弟が泣き出して走り去ってしまう。それをなだめながら追いかける兄。結局帰り道は延々と線路伝いに二人だけで泣きながら帰路に就くことになる。
 このあたりの風景描写は実に美しい。また夕暮れに二人の物悲しさが漂うようだ。さらにこのあとは、誰もがあの日あの時を思い出して、感動の涙に溺れてしまうことだろう。

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2021年9月10日 (金)

著者:佐藤正午

 アルファベットの「Y」というタイトルの意味は、人生の分岐点と考えて欲しい。つまりあの日あのとき、もし別の選択をしていたら、現状とは全く異なる人生を歩んだかもしれない、ということで言葉を変えれば「パラレルワールドの世界」ということになる。

 1980年9月6日、井の頭線・渋谷駅のプラットホームで、ある青年がかねてより想いを募らせていた女性を見かけて、同じ車両に乗り込むところからはじまる。そして彼は車内で彼女に声をかけることに成功し、二人して下北沢で降りることになる。だが手違いが重なって、ドアが閉まる直前に、一度ホームに降りた彼女が再び車内に戻ることになってしまう。この電車はそのまま発車し、そして運悪く次の駅の手前で凄惨な事故に遭遇してしまうのである。

 それから18年後の8月に、主人公の秋間文夫は自宅で不審な電話を受ける。声の主は北川健と名乗り秋間の高校時代の親友だと言うのだが、秋間には全く心当たりがなかった。戸惑う秋間だったが、北川の必死な願いを受けて、彼の代理人と名乗る女性から、1枚のフロッピーディスクと巨額の預金通帳を受け取ることになってしまう。そして18年前に井の頭線で起こった大惨事の顛末を知ることになる。

 というような荒唐無稽でミステリアスな時間SFである。そして秋間文夫の現状の生活と、フロッピーディスクに記載されている北川健の過去の話が並行して語られてゆく。なんとこの創作手法もまた、ある意味でパラレルワールドなのであろうか・・・。

 本作は作中でも言及されているとおり、18歳から43歳までの25年間を何度も生き直す男の話を描いた、ケン・グリムウッドの『リプレイ』が下敷きになっている。さらに北村薫の『リセット』、筒井康隆の『時をかける少女』、さらに映画『恋はデジャヴ』などを参考にしているようだ。

 いずれにせよ「あの日あの時、ああすれば良かった」「あの時に戻ってやり直しをしたい」という人間の永遠のテーマを描いたストーリーはかなり魅力的だ。もし私自身が現在の記憶を持ったまま過去の自分に戻れるとしたら、小学生になりたての頃に戻りたい。そして沢山の失敗を正してみたいのである。そしてその結果と現在の自分とを比較してみたいのである。もしかすると失敗ばかりの現在の自分のほうが、幸せなのかもしれないことを確認するために・・・。

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2021年9月 8日 (水)

パパVS新しいパパ

★★★
製作:2015年 米国 上映時間:96分 監督:ショーン・アンダース

 離婚大国の米国ならではのコメディー。ママが再婚した相手、つまり義理の父と離婚した実の父親の「どちらが子供たちに好かれるか」というお話である。
 義父のブラッドは真面目で、子育てだけではなく、学校やご近所の人間関係にも気を配る誠実な男である。ただ真面目過ぎて面白みがない。それに比べて実父のダスティは、ハンサムで派手好きで誰からも好かれるキャラ。さらに筋肉モリモリで喧嘩も強く、有名人の知り合いも大勢いる。

 まあ誰が見てもブラッドには全く勝ち目がないのだが、それでもブラッドは必死になってダスティと張り合うのであった。やっとブラッドが勝ちそうになっても、すぐにダスティに逆転されてしまうのだ。なんだか気の毒になってしまうのだが、ブラッドは悔しくって酔っぱらって大醜態を晒してしまい完全にノックアウト。
 ところがそんな完璧なブラッドだったら、なぜ離婚したのかを考えてみよう。結局子供や友人に好かれても、スーパーマンのように何でもこなしても、家庭生活とはそんな甘いものではないのである。

 まあ結論は観てのお楽しみとするが、最後のオチが実に面白い。因果応報というか、ループと言ったらよいのやら。それでなんとなく続編がありそうだと思ったら、やっぱり続編が創られていた。ただそれほどヒットしたとは思えないのだが…。
 

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2021年9月 5日 (日)

ジェイコブス・ラダー 新作

★★☆
製作:2019年 米国 上映時間:89分 監督:デヴィッド・M・ローゼンタール

 評価が高かったので鑑賞したのだが、どうもよく分からないまま推移し、大した高揚感も味わえないままエンディングになってしまった。そこで後でもう一度調べたら、評価の高かったのは1990年に製作されたエイドリアン・ライン監督の作品であり、なんと本作はそのリメイク版だったのである。
 ストーリーは、死んだはずの兄が生きていることを知った主人公が、だんだん悪夢を見るようになり、しまいには人生が崩壊してしまうという話である。いずれにせよ、次から次へと幻覚映像が映し出されるため、どれが現実なのか幻覚なのかよく分からなくなってしまう。

 そしてさんざん引っ掻き回しておいて、あの結末はないだろう。あれではそれまで観てきたのは一体何だったのか。これは夢落ちと同じで反則ではないだろうか。それでも面白ければ許せるのだが、本作にはその味わいさえも感じられなかったのが残念である。
 では評価の高いオリジナルはどうだったのだろうか。こちらもよくよく調べたら、だいぶ以前に鑑賞済だったのだが完璧に失念していた。つまりそれほど印象的ではなく、本作ほどではないものの、たいして面白くなかった感想文を記しているのだ。これらを知っていれば、たぶん本作は観なかったのにね…。またまた時間の無駄遣いをしてしまったようである。


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2021年9月 3日 (金)

見えない目撃者

★★★

製作:2019年 日本 上映時間:128分 監督:森淳一

 警察学校の卒業式の夜、浜中なつめは車で事故を起こす。同乗していた弟は死亡し、自分は視力を失ってしまう。それで警察官を諦めて盲導犬に導かれる障害者生活を送っていた。
 そんなある日、自動車の中から助けを求める女性の声を聞き、警察に届けるのだが障害者の目撃ということもあり、十分な捜査をしてもらえない。それに不満を持ったなつめは、不自由な身の上にも拘らず、一人で独自の捜査活動を始めちゃうんだな。

 昔なら「座頭なつめ捜査帖」というタイトルが付けられたかもしれないね。だが生まれつき目が見えないのならともかく、視覚障害者になって3年間のうちに、聴覚や嗅覚が異常に発達するという設定にはかなり無理がある。また警察学校を卒業したとはいえ、あの無茶な探偵振りは全く納得できないよな。そのほかにも山のように突っ込みどころがあるのだが、まあそこそこ面白かったので許すことにしようか。
 それにしても主演の吉岡里帆もいまひとつだし、映画というよりはテレビの「土曜サスペンス劇場」という感覚だったな。ただテレビでは絶対にないエグイシーンが多いので要注意。

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2021年9月 1日 (水)

負け犬の美学

★★★☆
製作:2017年 フランス 上映時間:95分 監督:サミュエル・ジュイ

 原題の『SPARRING』そのままで良いのに、なぜこんな感じの悪い邦題を付けたのだろうか。まあそれはそれとして、映画の中身のほうはまあまあの出来だったと思う。
 主人公のスティーブは、40代半ばで49戦13勝3分33敗のロートルボクサーである。だがこの映画を『ロッキー』のようにチャンプに駆け上がるアメリカンドリーム的なスポーツドラマと勘違いしてはいけない。
 どちらかと言えば、貧乏にもめげず、愛妻や娘・息子たちとの平和な暮らしを営むホームドラマかもしれない。いやそれらをバックボーンにしながらも、ボクシングを淡々と続けてゆく男のヒューマンドラマなのだろうか。

 スティーブはレストランで働きながら、間を見てボクシングの試合に出場していたが、最近は年齢や戦績などからなかなか相手が見つからない。そんな情けない父親なのだが、娘のオロールには尊敬されていた。そのオロールの夢を叶えるためピアノを買ってやりたいが金がない。
 そんな折りに、欧州統一戦に出場するタレクのスタッフが、スパーリングパートナーを探しにやってくる。 だが実際の試合よりも危険が孕むことがあるため、妻はスパーリングパートナーの応募には大反対する。しかしどうしても娘にピアノを買ってやりたいスティーブは、妻の反対を押し切って無理矢理スパーリングパートナーになってしまうのだった。

 もしかするとスパーリングで大怪我をしたり死んでしまうのかなと想像していたのだが、無事スパーリングパートナーの役割を終えホットする。その後タレクの好意で、タレクが戦うリングの前座戦に出場することが決まる。そしてこれが50戦目でスティーブの「最後の試合」となるのだった。
 このクライマックスシーンこそ、米国映画なら大いに盛り上がってラストは感動の涙・涙となるはずなのだが、やっぱりこれはフランス映画なんだねえ…。
 なんと娘も応援に来ないし、勝敗もはっきりしないままエンディングとなるのである。やはり尻切れトンボ。これを文学的と考えるか物足りないと思うか、その解答は観る人の感性によって異なることだろう。
 

評:蔵研人

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