昨日は彼女も恋してた
★★☆
著者:入間人間
本作には続編があるのだが、続編のタイトル名が『明日も彼女は恋をする』なので、間違ってそちらから読んでしまう人もいるらしい。確かに私自身も危うく間違うところであり、また連作と分かってもどちらが上巻なのか迷ってしまった。
これを区分するには目次を開いて第1章から始まるのが上巻で、第6章から始まるのが下巻と見分けるしかない。だがそれだと書店で手に取って買わねば分からないではないか。最近の傾向では、ネットで本を買う人が増えているのだから不親切としか言い様がない。読者側に立てば余り気取ったタイトルに拘らないで、素直に同じタイトルにして上巻・下巻と表記して欲しいものである。
いずれにせよ、本作は著者が明かしている通り、あの名作映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のパロディー小説であり、ドクに該当するのが松平博士で、タイムマシン・デロリアンに相当するのが、オンボロ軽トラという笑える構成になっている。
ニアのことが大嫌いなマチだが、9年前のあの出来事によってマチが障害者になるまでは大の仲良しだったはず・・・。そしてその9年前に2人でタイムトラベルし、その原因を取り除こうとするお話である。
上巻ではその原因が一体何だったのか、そしてそれはなぜ起きたかの説明は一切ない。だが何となく取り除いた雰囲気だけを残して、また現代に戻るのだが、大変な事態を巻き起こしているではないか。それでいやでも応でも下巻を買うハメになるのだ。
それにしても一人称がニアとマチにコロコロ変わり過ぎるので読みづらいことこのうえない。さらにテンポが悪くてクドいので、なかなか先に進まない。もっとテンポが良ければ上下巻に分割する必要もなく、一冊にまとめられたはずである。
そして下巻になっても、最後までマチが障害者になった原因が分からないのだ。まあ裏袋が代わりに障害者になった経緯が、たぶんマチが障害を負った原因なのだろうと想像するしかない。どうしてそんなにもったいぶるのか理解出来ない。
さらに下巻ではストーリーが現実離れしてきて、かなり意味不明な展開になってしまう。またそれにとどまらず、ストーリー自体が全く面白くないのだ。かなり期待して本書を手にしただけに、非常に残念な気持ちで一杯である。
評:蔵研人
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