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2021年6月の記事

2021年6月29日 (火)

セッション

★★★★
製作:2014年 米国 上映時間:107分 監督:デイミアン・チャゼル

 第87回アカデミー賞で、助演男優賞、音響賞、編集賞の3つの賞に輝いた傑作である。タイトルの『セッション』は邦題であり、直訳すると「ジャズの演奏家たちが集まって、自分たちの楽しみのために行う即興的な演奏」と言うことになる。
 だが原題は『WHIPLASH』であり、やはり直訳すると「むち打ち」ということになる。そうこの作品は最初から最後までフレッチャーという鬼教師のパワハラ物語なのだ。そしてアカデミー助演男優賞に輝いたのも、この鬼教師を演じたJ・K・シモンズなのである。

 それにしても、汚い言葉での罵倒や椅子を投げつける暴力など、限界を超えたスパルタ教育。現代ならパワハラで即、学院を解雇されてしまうだろう。ことに主人公のドラマー・ニーマンに対する指導は、かなり執拗で狂気じみていてまさにホラー映画なみだ。
 たぶんニーマンの素質を認めたフレッチャーが、彼を超一流のプレイヤーに育てようと必死でスパルタの嵐を浴びせたのかもしれない。それに必死で耐えていたニーマンだったが、不運に見舞われてしまい、狂気の世界に落ちてしまう。そしてとうとうぶち切れてしまったニーマンは、退学処分に、そしてフレッチャーもクビになる。

 さらに数年後、二人は偶然ジャズ喫茶で遭遇し、過去を清算したかに見えた。だがフレッチャーは、自分の愛の鞭を理解しなかったニーマンに対して、悪魔的な陰謀を仕掛けるのであった。そして神がかった狂気と感動が渦巻くラストシーンへ・・・。


評:蔵研人

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2021年6月25日 (金)

不思議の扉 時間がいっぱい

★★★☆
編者:大森望

 翻訳家・書評家でとくにSFに造詣の深い大森望氏が選んだ「時間テーマ」ものの短編小説7編が収録されている。その中身を並べると次のようになる。

「しゃっくり」著者:筒井康隆
 時間が何度も繰り返すお話なのだが、一人だけではなく全員の記憶が残っているところがユニークである。ただ1966年に発表されたものなので、やや陳腐化してしまった感が否めない。

「戦国バレンタインデー」著者:大槻ケンヂ
 ゴスロリ少女が戦国時代にタイムスリップし、そこで同年代のお姫様と意気投合という軽くてポップなお話である。

「おもひで女」著者:牧野修
 幼い頃の記憶の中に恐ろしい女が立っている。その女は時間の中を少しずつ現在に向かって近づいてくる。といった恐ろしい記憶ホラーの傑作であり、本書の中では一番面白かった。

「エンドレスエイト」著者:谷川流
 本書の中では一番長く、他の短編の2倍以上あるのだが、正直一番退屈であった。内容はタイトルの如く夏休みの8月17日から31日までを1万回以上繰り返す話なのだが、読者にはその感覚が全く伝わらず著者だけの独りよがりな感がある。

「時の渦」著者:星新一
 時間が過去に向かって空転しながら、人間だけを回収するという摩訶不思議なお話。初出は1966年だが、全く古くささを感じない。さすがショートショートの名手である。

「めもあある美術館」著者:大井三重子
 摩訶不思議な美術館での出来事を綴った児童文学の名作。

「ベンジャミン・バトン」著者:フィツジェラルド
 産まれたときは老人で、だんだん若くなり最後は赤ちゃんから無にというベンジャミン・バトンの生涯を駆け足で描いた小説。どちらかと言えば、ブラッド・ピット主演の映画のほうが印象的である。

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2021年6月23日 (水)

検察側の罪人

★★★
製作:2018年 日本 上映時間:105分 監督:原田眞人

 木村拓哉と二宮和也の初共演で話題を呼んだ作品である。原作は『クローズド・ノート』『犯人に告ぐ』などで知られる雫井脩介の同名ミステリー小説である。
 本作は犯人捜しのミステリーという作り方ではないようだ。一応東京地方検察庁のエリート検事たちが、殺人事件の捜査を進めているシーンで埋められている。だが事件の内容や犯人像などの具体的な描写は殆どない。従って中盤までは彼らが何を捜査しているのか、よく分からないままこの映画を観る羽目になる。
 
 結局事件の犯人や犯行動機などはどうでも良いのだろう。つまり、キムタク扮するところのエリート検事・最上が、無理矢理逮捕した男に罪を着せようとする話なのだから・・・。
 そしてそれを阻止しようとするのが、二宮が演じたキムタクの部下・沖野という妙な取り合わせなのである。だからタイトルが『検察側の罪人』なのであろうか。

 ただ真犯人を殺すくらいなら、はじめから無理矢理逮捕した男を殺せば簡単じゃないのかな。また最上の経歴や暮らしぶりを見る限り、どうして急にあんな行動に走るのか全く説得力がないのだ。さらに二宮や吉高の行動も中途半端で終わってしまうし、なんだか全くのめり込めない映画であった。ただ映像と雰囲気だけは一流感が漂っていた様な気がするが、かなりもったいない映画と言えるだろう。

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2021年6月20日 (日)

アレックス・タイムトラベル

★★★
著者:清原なつの

 タイトルの『アレックス・タイムトラベル』シリーズは、長編の少ない著者が初めて挑んだ連作長編マンガであり、『真珠とり』と並ぶ著者の代表的なSFマンガ である。本書には次の5篇が収録されている。
 「未来より愛をこめて」、「秘密の園から」、「ロゼ」、「ローズガーデンの午後」、「思い出のトロピカル・パラダイス」。これらの主なテーマは管理社会からの脱出、青いバラの秘密、時間を超えた逃避行、避けられない核戦争、タイムパラドックスなどで、正統派SFマンガと言ってもよいだろう。

 そのほか短編として以下の4編も収められている。
「流水子さんに花束を」    驚異の記憶力を身につけてしまったら
「聖バレンタインの幽霊」   亡くなった彼氏と瓜二つの男が現れたら
「カメを待ちながら」       戦死した恋人を待ち続けていたら
「飛行少年モッ君の場合」  目覚めると背中に天使の翼が生えていたら

 どの作品も愛がテーマの少女漫画タッチなので、SFマンガとしては今一つ物足りない。まあ「SF初心者の女性向き」といった趣きであろうか・・・。
 
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2021年6月18日 (金)

シンプル・フェイバー

★★★
製作:2018年 米国・カナダ 上映時間:117分 監督:ポール・フェイグ

 ちょっとした弾みで、急にママ友になったステファニーとエミリー。ステファニーは夫を事故で亡くし、生命保険でなんとか生活を凌いでいるシングルマザーだ。一方のエミリーはファッション業界に身を置き、豪華な家に暮らして、小説家の夫ショーンに愛されている。
 そんな環境の全く異なる二人がなぜか意気投合し、互いの秘密を言い合う仲になる。だがいつもステファニーが、派手で遊び人のエミリーに利用されていた。そんなある日、ステファニーは、エミリーから息子を学校に迎えにいってほしいと頼まれる。ところが、何日待ってもエミリーは帰ってこなかった。

 ミステリアスな展開で、エミリーのかなりエグイ過去も描かれるのだが、コメディー仕立てのためか余り嫌みが感じられない。そして終盤には、一転二転のどんでん返しが続くのだが、逆にそれにもそれほど驚かされないのも、コメディー風味だからであろうか。
 面白くないとは言わないが、なんとなくスッキリしない中途半端な後味を残したままエンディングを迎える。結局何が言いたいのか、淫乱女ステファニーの素人探偵ゴッコに終始したような映画だったね。ははは。


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2021年6月16日 (水)

誰も書けなかった死後の世界地図

著者:A・ファーニス
翻訳:岩大路邦夫 編者:山口美佐子

 本書は死亡したイタリア貴族フランチェッツォが、死後の世界を現世に伝えようと、A・ファーニスという霊媒に詳しく語った話を基に構成されている。そしてその内容をまとめると次のようになる。

1章 死の「扉」の向こうに何が見える?
 --“死後の世界”に関するソボクな疑問

2章 死んだらあなたはどこへ行く?
 --「死後の世界」の歩きかた

3章 ここまでわかった! 霊界の「しくみ」
 --学校、仕事、人間関係、宗教

4章 フランチェッツォが旅した「地獄」
 --地獄にも“希望の光”は差している

5章 “天国”へ到る道
 --フランチェッツォが教えてくれた「幸福な生きかた」

 そして死後の世界は単純に天国と地獄だけではなく、少なくとも15以上の世界に区分されているという。また死者がどの世界に行くかは生前の自分自身の行動などによって自動的に決められてしまうようだ。さらにそれぞれの世界の風景や暮らし方も、全て自分自身の心が創っているものだというのである。
 なお本作は三部作の1作目であり、以下「地上生活編」と「完結編」が続くのだが、死後世界の概略を知りたいのなら、本書だけで十分かもしれない。

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2021年6月14日 (月)

ヒューマンズ

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★★★★
英国TVドラマ シーズン3まで全24話

 シンスと呼ばれるアンドロイドたちが、忠実に家事や仕事をこなす理想の未来社会。もちろん彼らには意思や感情はなく、人間には危害を加えないように設計されている。まるでアシモフの『われはロボット』や手塚治虫の『鉄腕アトム』の世界である。

 ところがある日、ミアと名付けられた中古シンスに「感情を生み出すプログラム」が組み込まれていることが判明する。さらに彼女以外にも感情を持つシンスが存在するようなのだ。
 これは人間達にとっては驚きかつ脅威であり、人々は共存派と排除派に分かれてゆくが、何と言っても排除派のほうが圧倒的に多くなる。またシンスたちもいろいろな個性や価値観を持ち、人間と対立する者や友好的な者に分かれてゆく。

 つまり一言で言えば、人間と感情を持つシンスとの友情や戦いを描いてゆくドラマと言うことになる。シーズン3まで全24話と、海外TVドラマとしては比較的短くまとめられており、短期間に鑑賞を終了させたい人には最適のドラマかもしれない。
 主な登場人物をあげると、人間側はまだ目覚めていないミアを購入した家族5人、感情を持つシンス側はミア、マックス、ニスカ、カレンと半分人間のレオということになるだろう。またちょっぴりエッチなシーンもあるので、子供達と観るときは要注意。

 いずれにせよ、次から次へとストーリーが転化して、なかなか先が読めないため、ついつい引き込まれてしまう。またストーリーのテーマが最終話までは一本で通っており、軸がぶれなかったところも見事だった。ただ急に打ち切りになったためか、ラストが少しチグハグなまま終わってしまったのが残念である。

 本作はタイトルが表わすとおり、感情を持ったアンドロイドが、人と共存しようとして遭遇する葛藤や悩みを描いたヒューマンドラマである。SF仕立てなのだが、どちらかと言えばホームドラマを織り込んだヒューマンドラマなので、派手なアクションなどは余り期待しない方が良いだろう。

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2021年6月12日 (土)

昨日は彼女も恋してた

★★☆
著者:入間人間

 本作には続編があるのだが、続編のタイトル名が『明日も彼女は恋をする』なので、間違ってそちらから読んでしまう人もいるらしい。確かに私自身も危うく間違うところであり、また連作と分かってもどちらが上巻なのか迷ってしまった。
 これを区分するには目次を開いて第1章から始まるのが上巻で、第6章から始まるのが下巻と見分けるしかない。だがそれだと書店で手に取って買わねば分からないではないか。最近の傾向では、ネットで本を買う人が増えているのだから不親切としか言い様がない。読者側に立てば余り気取ったタイトルに拘らないで、素直に同じタイトルにして上巻・下巻と表記して欲しいものである。

 いずれにせよ、本作は著者が明かしている通り、あの名作映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のパロディー小説であり、ドクに該当するのが松平博士で、タイムマシン・デロリアンに相当するのが、オンボロ軽トラという笑える構成になっている。
 ニアのことが大嫌いなマチだが、9年前のあの出来事によってマチが障害者になるまでは大の仲良しだったはず・・・。そしてその9年前に2人でタイムトラベルし、その原因を取り除こうとするお話である。

 上巻ではその原因が一体何だったのか、そしてそれはなぜ起きたかの説明は一切ない。だが何となく取り除いた雰囲気だけを残して、また現代に戻るのだが、大変な事態を巻き起こしているではないか。それでいやでも応でも下巻を買うハメになるのだ。
 それにしても一人称がニアとマチにコロコロ変わり過ぎるので読みづらいことこのうえない。さらにテンポが悪くてクドいので、なかなか先に進まない。もっとテンポが良ければ上下巻に分割する必要もなく、一冊にまとめられたはずである。

 そして下巻になっても、最後までマチが障害者になった原因が分からないのだ。まあ裏袋が代わりに障害者になった経緯が、たぶんマチが障害を負った原因なのだろうと想像するしかない。どうしてそんなにもったいぶるのか理解出来ない。
 さらに下巻ではストーリーが現実離れしてきて、かなり意味不明な展開になってしまう。またそれにとどまらず、ストーリー自体が全く面白くないのだ。かなり期待して本書を手にしただけに、非常に残念な気持ちで一杯である。

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2021年6月 9日 (水)

ラスト・ムービースター

★★★★

製作:2017年 米国 上映時間:104分 監督:アダム・リフキン

 本作がバート・レイノルズの遺作となってしまった。そして本作は、まるでバート・レイノルズ自身のドキュメンタリーのような映画である。
 かつて映画スターとして一時代を築いたものの、現在は落ちぶれたヴィック・エドワーズ。そして友人・知人は亡くなったり去ってしまったり、さらに愛犬までも、安楽死させることになってしまう。

 そんな絶望の淵に佇むヴィックの元に、ある映画祭から功労賞受賞の招待状が届くのであった。はじめは興味のなかったヴィックだったが、歴代受賞者がイーストウッド、デニーロ、ニコルソンと聞いて参加する。だが本当は映画オタクの若者による自主上映会のような映画祭だった。腹を立てたヴィックは、すぐに帰り支度をして、空港に向かうのだが、会場は故郷のノックスビルの近くで、彼の胸に懐かしい思い出が去来する。

 時々若かりし頃のバート・レイノルズの映画シーンと、年老いたヴィックを重ねて写す映像がユニークで面白い。そして軽快な音楽が実に良かった。
 老いた映画スターのヴィックは、落ちぶれた自分自身を否定するように過去の栄光と思い出を重ねながらかろうじて生きている。現実でも年寄りの大半がそんな生き方に頼っているかもしれない。しかし時間は容赦なく流れてゆき、過去には戻れないのだ。それを悟ったとき、彼は残り少ない人生を前向きに生きてゆくことになるのだ。

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2021年6月 7日 (月)

四月の永い夢

★★★

製作:2017年 日本 上映時間:93分 監督:中川龍太郎

 第39回モスクワ国際映画祭でW受賞した作品、というのが売りのちょっとマイナーな邦画である。映像は美しいのだが、脚本に難がある。低予算なのでキャストが少ないのは仕方ないのだが、特に大きな盛り上がりもないまま、ヒロインが淡々と過去を引きずる状況ばかりが描かれていて退屈だ。
 そのうえその原因がハッキリしないままで終演という、文学的かつ哲学的なモヤモヤ感を漂わせた観客無視の作品のような気がした。決して悪い映画ではないのだが、全く感情移入できない淋しい作品である。


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2021年6月 5日 (土)

キツツキと雨

★★★☆
製作:2011年 日本 上映時間:129分 監督:沖田修一

 キツツキは多分木こりのことだろう。雨はラストシーンを観れば分かるだろう。それにしても何気に豪華メンバーを揃えたものである。役所広司と小栗旬が中心人物なのだが、チョイ役で高良健吾、さらに超大物の山崎努も登場するのだ。

 ストーリーはあるようなないような感があり、ドキュメンタリー風にまったりと流れてゆく。舞台は岐阜の山間を走るローカルな明知線の沿線。山と川と温泉しかない山村での出来事である。
 ふとした弾みで、ゾンビ映画の撮影に巻き込まれてしまう木こりの岸さん。女房に死なれてから、自分の息子とは上手くいかず制御できない。その息子は仕事を辞め、なんと母親の三回忌を直前に控えているにも拘わらず家を出てしまう。
 
 息子は説得できなかったものの、息子と同年代で自信喪失気味の若い映画監督との接触は成功。そして木こりの仕事を放り出し、三回忌の準備も忘れて映画製作の手助けに夢中になる岸さん。
 一応コメディと言うことになっているのだが、苦笑いしか出てこないのだ。そして余りにも時間がゆっくりと流れてゆくため、なかなか本作の趣旨がハッキリと見えてこない。おそらく年代・環境・価値観が大きく異なる者同士でも、目的を共有すれば心を開けるようになると言うことなのだろうか。

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2021年6月 3日 (木)

泣くな赤鬼

★★★☆
製作:2019年 日本 上映時間:111分 監督:兼重淳

 重松清の短編集「せんせい。」に収められた一編を原作にしたヒューマンドラマである。高校野球部監督で「赤鬼」と呼ばれた教師と、ゴルゴと呼ばれた教え子の再会と交流を描いている。
 赤鬼先生には堤真一、ゴルゴ役には柳楽優弥が扮しているが、二人とも芸達者でまさにドンピシャのキャスティングであった。ほかには川栄李奈、キムラ緑子などがしっかり脇を固めていた。

 城南工業野球部の監督として鬼のような厳しい指導、そして陽に焼けた赤い顔から「赤鬼先生」の異名を持つ小渕隆(堤真一)。彼は城南工業野球部を甲子園出場目前まで導くが、惜しくも叶わなかった過去を持つ。そして10年後、小渕は50代になり城南工業から進学校の教師へ転身し、野球への情熱も衰えていた。
 そんなある日、病院で偶然教え子だったゴルゴ斎藤智之(柳楽優弥)と再会する。ゴルゴは城南工業野球部に籍を置いており、抜群の野球センスに恵まれていたのだが、チームプレーに徹せず、自分の殻を破れずしまいには退部し、さらに退学してしまうのだった。もしも彼が真面目に努力していれば、多分甲子園に行けたであろう。だが彼は歯を食いしばって、もう一歩前に進むことが出来なかったのである。

 そのゴルゴは、高校を中退したものの、現在はまっとうに働き、結婚して一子をもうけていた。ところが病院で検査した結果、悲しいかな末期ガンで余命半年だという事実が判明するのだ。死を受け入れた彼の最後の願いとは・・・。いずれにせよ終盤は、赤鬼だけではなく観客全員が号泣すること間違いなし。良い映画なのだが、若いのに急に難病に罹ってしまうという展開に、やや興ざめ感を拭いきれない。


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2021年6月 1日 (火)

長いお別れ

★★★☆
製作:2019年 日本 上映時間:127分 監督:中野量太

 原作は直木賞作家・中島京子の実体験を基にした小説だという。認知症の父を施設に送らず、7年間に亘って介護し続けた家族の記録である。
 主なキャストは、父親役を山崎努、その妻を松原智恵子、長女役は竹内結子で次女役が蒼井優といった組み合わせである。
 長女は夫の仕事で米国に住んでいるため、どうしても独身の次女に介護の矛先が向かってしまう。だが厭な顔ひとつせず、父親が漏らした大便の始末までする彼女は、余りにも理想的で立派な娘である。実体験と言うことから、この次女が中島京子氏なのだろうか。

 次女の男運と仕事運が悪いというサイドストーリーが、本来退屈な認知症物語を飽きずに鑑賞できたスパイスだったのかもしれない。またラストに明かされた米国に住む孫の心情もなかなか泣けるではないか。
 この作品上映の1年後に自殺してしまった竹内結子は、心ここにあらずで元気のない演技だったような気がしたのは、私の思い違いであろうか。また松原智恵子は昔からのいつも通りで、蒼井優もいつも通りなのだが、その存在感は超一流に近づきつつある。さらに山崎努の認知症は、日本映画界最後の大物俳優による迫真の演技だったと言っても良いだろう。


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